後遺障害14級9号の慰謝料計算と示談金相場、認定基準、逸失利益を詳しく解説

人身事故で後遺障害認定を受ける方の約6割は14級に認定されています。

ただ「多くの人が認定されているのだから、後遺障害14級の獲得は簡単なんだ」と判断してしまいがちなんですが、実際には、後遺障害14級の認定を期待していたのに、「非該当」と判定されてしまうケースが数多く見受けられます

本記事において、人身事故でむち打ちが後遺症として残ってしまった方に、後遺障害14級9号の後遺障害認定を獲得するためのポイントや認定基準、また慰謝料・示談金相場、逸失利益の相場などについて解説いたします。

後遺障害等級14級9号の慰謝料相場・示談金計算

後遺障害等級14級9号の場合に、受け取れる後遺障害の示談金の中でも、慰謝料の相場計算方法は下記の表のとおりです。

14級9号の後遺障害慰謝料相場

後遺障害14級9号の後遺障害慰謝料の各基準の相場は、以下の通りです。

自賠責基準で計算相場 任意保険基準で計算相場(※) 弁護士・裁判基準で計算相場
32万円 40万円 110万円

※ 任意保険基準は、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載

慰謝料計算基準が3つあることに注意

慰謝料や示談金の計算方法には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士・裁判基準の3つの基準があり、自賠責基準から順に額が大きくなっていきます。

上表からお分かりいただける通り、弁護士基準は自賠責基準の3倍以上にもなっています。

ただし、この額は、あくまで相場で、実際の後遺障害慰謝料額は、事故態様などを勘案して事故ごとに決まるので個々に異なります。

つまり、慰謝料を増額できるかどうかは、慰謝料増額に繋がる被害者の個別の事情をうまく立証できるかにかかっていると言えるでしょう。

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14級9号の後遺障害逸失利益の計算

14級9号の場合、後遺障害慰謝料のほかに、もう一つ示談金として請求をすることができる、後遺障害逸失利益があります。

後遺障害逸失利益とは、事故で後遺障害が残ったことで労働能力が落ち、本来得るはずだった収入が減ってしまったことに対する補償です。

逸失利益は、以下の計算式で算出することができます。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

14級9号では、労働能力喪失率は5%とされています。

ライプニッツ係数や、詳しい具体的な計算例は下記ページを併せてご参照ください。

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また、逸失利益、入通院慰謝料を含め実際にいくらくらいの賠償額・示談金になるのか気になる方は、下記の「慰謝料相場シミュレーション」を併せてご活用ください。

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後遺障害14級9号の認定基準・症状

自賠責保険における後遺障害14級9号の認定基準は以下の通りです。

後遺障害等級 後遺障害の内容 実務上の判断基準
14級9号 局部に「神経症状」を残すもの 症状が医学的に説明可能なもの

局部に「神経症状」を残すものとは

14級9号の認定基準は「局部に神経症状を残すもの」です。

例えば、交通事故の被害にあい、打撲、骨折、切り傷など外傷を受けて、一定期間が過ぎた後に、頭痛や首の痛み・吐き気・めまい・肩こり等の不快な自覚症状が残った場合、これらの症状が「神経症状」に該当する可能性があります。

後遺障害における神経症状には、明確な基準や規定はありませんが、交通事故後に痛みや痺れなどが残った場合を指します。

交通事故で発症したこのような不快な症状は、被害者のクオリティオブライフレベルを大幅にさげてしまうので、適切な補償がなされるべきです。

後遺障害14級9号で要求される「医学的に説明可能」とは?

14級9号で等級認定されるためには、自覚症状があってもそれを「医学的に説明」することができなければなりません。

特に、むち打ち症が「末梢神経障害」に分類されていることが、後遺障害認定を受ける際の難点となるのです。

末梢神経とは、中枢神経から枝分かれした神経であり、この末梢神経に障害が起こると痛みや痺れといった感覚障害、筋力が低下したり筋肉が萎縮したりする運動障害、発汗機能に障害が生じる自律神経障害が引き起こされることになります。

むち打ち症の感覚障害の場合、自覚症状はあっても、外傷性を外から認めにくいことが立証を困難にしています。

ただ、同じ神経症状でも「医学的に証明」することが要求される12級13号とは違い、14級9号は「証明」までは要求はされていません。「説明」さえできれば認定される可能性があるのです。

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後遺障害14級9号の3つの認定ポイント

では、どのようにすれば、「医学的に説明」ができたことになるのでしょうか?

過去の判例などから推測すると、14級9号に認められるためのポイントは以下の3つです。

  • 事故状況と症状の関連性が認められる
  • 病院での治療を定期的に行なっている
  • 症状に「連続性・一貫性」がある

これらが整っていれば、第14級9号に認定される可能性があります。

事故状況と症状に関連性がある

たとえば、追突事故で加害車両のスピードが遅く、事故があまりにも軽微である場合は「非該当」となる可能性が高まります。

事故当時にむち打ち症になってもおかしくない衝撃があったことが求められるのです。

病院での定期的な治療をする

神経症状が残っているにも関わらず、我慢して病院に通院しない方がいます。しかしその場合、後ほど後遺障害認定を受けられない可能性が高くなります。なぜなら、「医学的に説明可能」な症状の改善経過を辿っていないからです。

症状は通常、事故発生直後をピークに緩やかに回復に向かうはずです。

しかし、事故直後から通院していない場合「事故直後には症状が出ずに、しばらくしてから症状が出た」と受け止められかねません。

「医学的に説明がつかない」ということになります。

同様に、突然治療を止め、その後また治療を再開した場合は、いったん治まったはずの症状が再発したと認識されかねず「医学的に説明可能」な経過を辿っていないので、非該当となる可能性が高まります。

そこで、被害者に求められるのは、事故直後からの定期的な通院です。

通院回数・日数は6ヶ月必要

通院回数が気になる方もいるようですが、一般的には、

  • 通院期間6か月以上
  • 通院実日数100日

を満たすことが重要などとは言われていますが、正確に必要な通院日数が定められているわけではありません。無理やり6ヶ月以上通院しても認定されない場合もありますし、3ヶ月程度でも認定されるケースはあります。

このあたりは後遺症・後遺障害に強い弁護士に相談しながら、進めていくことが重要となります。

自覚症状の「連続性・一貫性」が必要

むちうち症は、レントゲンやMRIなど画像でその原因を特定することがとても難しい傷病です。しかし、自覚症状だけでも後遺障害14級の認定を受けることは可能です。

そこで、カギを握るのが、症状の「連続性・一貫性」です。

前述した治療を止めた後にまた再開するなどといったケースと同様に、症状が継続し一貫していなければ、「医学的に説明可能」ということにはなりません。

もしも、すでに後遺障害申請をして「非該当」となっている方は下記の記事を併せてご参照ください。

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後遺障害14級9号で障害者手帳は交付されるのか

後遺障害14級9号で障害者手帳は交付されません。後遺障害認定は行政サービスではありません。

詳しくは下記の記事をあわせてご参考ください。

後遺障害14級9号の認定を受けたからといって、障害者手帳の交付対象とはなりません。

これは、後遺障害認定が、日本の行政サービスの一環として提供されるものではないためです。

後遺障害等級の認定は、自動車損害賠償保障法(自賠責保険)に基づくもので、交通事故などによる被害者の身体的な損傷を評価し、適切な補償を行うための制度です。

このように、後遺障害の認定と障害者手帳の交付は、それぞれ異なる基準と目的で行われるため、後遺障害認定の結果が直接障害者手帳の交付に結びつくわけではありません。

交通事故の被害者が障害者手帳の交付を希望する場合には、改めて適切な手続きを行う必要がある点を理解しておくことが重要です。

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交通事故むちうちの慰謝料!解説動画

交通事故でむちうちになってしまった場合、慰謝料はどの程度請求できるのでしょうか。慰謝料の相場と増額の方法をわかりやすくお話しします。

後遺障害14級9号の認定は専門家に相談

後遺障害14級9号の慰謝料・示談金・逸失利益の金額増額には、弁護士基準で交渉することが必要ですが、被害者本人が主張しても、相手側の保険会社が応じるとは限りません。

しかし「弁護士が介入」すれば、保険会社も交渉に応じざるを得ません。

弁護士に依頼すれば、後遺障害診断書の作成サポートや作成後のチェック、被害者請求の代理など後遺障害等級認定のサポートも受けることが可能です。

万が一、後遺症が残り、期待した等級認定が受けられなかった場合にも異議申し立てをしてもらうことが可能です。

またむちうち症状の場合、12級13号に認定される可能性もありますので、この点も弁護士に相談したほうが良いでしょう。

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それ以外にも弁護士に示談の代理交渉をしてもらうことで、精神的な負担も大きく減少するはずです。

そのためにも、後遺障害の医学的知識を持ち、手続きに通じた弁護士の選任が欠かせないことになります。一人でお悩みなら、是非一度、ご相談いただくことをお勧めします。

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