交通事故を調停で解決する!慰謝料のためのポイントなどを詳しく解説!

調停

交通事故に遭って相手の保険会社などと慰謝料などについて示談交渉を進めても、示談が成立しないことがあります。

示談ができない場合、当事者が本人でも利用しやすい手続きが民事調停です。

民事調停は、裁判所で行う手続きの1種ですが、同じ裁判手続きでも、相手と争うための民事裁判とはかなり性質が異なります。調停ではできることとできないことがあるので、その特徴をよく理解して、適切に利用する必要があります。

そこで今回は、慰謝料などについて保険会社との示談が決裂した場合などに行う民事調停について流れやメリットなどを解説します。

民事調停とは|保険会社との話し合いがスムーズに進まない場合に

交通事故に遭った被害者が相手に対して損害賠償請求をするための手続きとして利用しやすいのが、民事調停です。

民事調停の内容

民事調停とは、当事者が簡易裁判所において、相手に対して何らかの請求をしてその解決のための話し合いをするための手続きです。民事調停では、裁判所の調停委員2名と裁判官1名が調停委員会を作り、その調停委員会が中心になって、手続き進行をしてくれます。

事件進行においては、簡易裁判所の調停委員が間に入って、話し合いの仲介をしてくれるので、直接話し合いをすると当事者が感情的になってしまったりする事案でも、冷静になって話を進めやすいです。

また、法律に詳しい裁判官も関与するので、法律的に妥当な解決を目指すことも可能です。

民事調停の調停委員は、弁護士や公認会計士、建築士などの専門知識がある人や、民事事件、家事事件の解決について経験がある人などから選ばれています。

交通事故の調停利用のタイミング

交通事故で民事調停を利用するタイミングは、相手方の保険会社や相手本人と直接話し合いをしても、慰謝料や過失割合などで決着がつかず、示談できなかったときです。

お互いの対立が深く、示談交渉をしてもうまく行かない場合には、民事調停か示談斡旋、民事裁判のうちからどの手続きを利用するか選んですすめていくことになるので、このとき調停を選択すると、民事調停で損害賠償手続をすすめていくことになります。

相手に対して民事調停を起こす場合、こちら(請求した被害者側)が調停の申立人、相手(請求を受けた加害者側)は相手方と呼ばれます。

民事調停と裁判の違い

次に、民事調停と裁判(民事裁判)の違いを見てみましょう。

紛争解決の手段が異なる

両者の根本的な違いは、それぞれの紛争解決の手段です。

具体的には、民事調停は話し合いの手続きであるのに対し、民事裁判は争うための手続きであるということです。民事調停では、お互いが話し合いによって解決する必要があるので、主張や証拠がさほど重視されません。自分に有利な証拠があっても、自分から譲って合意することも可能ですし、自分に不利な証拠があっても、相手が譲ってくれたらそれなりの支払いを受けることもできます。

結論を強制されない

民事調停は、話し合いの手続きなので、裁判官が何らかの判断や結論を押しつけてくることもありません。当事者のどちらかが、明らかに法律的に誤った主張をしているとしても、無理にその主張を取り下げさせたり、法律的に正しい解決方法を受諾させたりすることはできません。

民事調停では、当事者双方が納得しない限り問題が解決しないので、どちらかが納得しないなら、不成立になって手続きが終わってしまいます。
このようなことから、民事調停では、問題を終局的に解決できるとは限りません。調停が不成立になると、問題が未解決のまま放置されてしまいます。

手続きが簡単

民事調停は、手続きが簡単で手間も時間もかかりません。弁護士を雇わなくてもさほど不利にならないので、交通事故の当事者が自分ですすめやすい手続です。かかる費用も民事裁判に比べて少額です。

以上のように、民事調停には民事裁判と比べていろいろな違いがありますが、当事者が自分で利用するなら、圧倒的に民事調停の方が手続きしやすいので、覚えておきましょう。

民事調停のメリット

次に、民事調停のメリットをご紹介します。

手続きが簡単で費用が安い

民事調停のメリットの第1は、手続きが簡単で費用が安いことです。

裁判手続きとは言っても、民事調停は比較的簡単な手続きです。当事者が自分ですすめているケースも多いです。

調停自体にかかる費用も安いです。かかる費用は、申立の際の印紙代数千円~数万円程度と予納郵便切手代の数千円程度、後は裁判所との往復の交通費くらいです。

自分一人ですべての手続きをすると、総額でも1万円以内でおさまることが多いでしょう。

これに対して、民事裁判では、手続きが複雑で専門的なので、弁護士に依頼しないと有利にすすめることは極めて困難です。そうなると、数十万円程度の費用がかかってしまうことが普通なので、これに比べると、民事調停には費用的に大きなメリットがあると言えます。

期間が短い

民事調停は、かかる期間も短く、だいたい3ヶ月もあれば終結することが多いです。

民事裁判のように詳しい審理などを行う必要がなく、基本的に話し合いが成立するかどうかを見て、合意をするだけなので、数回話をしても当事者間の溝が埋まりそうもなければ、調停が打ち切りになってしまうからです。

もちろん、打ち切りにならず、2、3回の調停で話し合いが成立することも多いです。
民事裁判では最低でも半年以上の期間がかかることが普通なので、これと比べると民事調停にはメリットがあります。

柔軟な解決ができる

民事調停では、当事者同士が話し合いで問題解決することができるので、事案に応じた柔軟な解決ができます。
当事者が譲り合うことによって、一方的な解決方法だけではなく、お互いが利を得られるような解決方法も目指すことができます。
このようなことは、裁判官が一方的に判断を下す訴訟には見られないことで、民事調停の大きなメリットです。

強制執行ができる

民事調停が成立したら、その内容に従って調停調書が作成されますが、この調停調書には強制執行力(差し押さえをする効力)があります。

調停が成立しても、相手がその通りの支払をしないことがありますが、その場合には、調停調書をもって、相手の財産を差し押さえて取り立てをすることができます。
示談斡旋の場合などには、示談が成立しても必ずしも相手の財産を差し押さえることができないので、これと比べると調停にメリットがあります。

民事調停のデメリット

次に、民事調停のデメリットをご紹介します。

紛争を終局的に解決できない

民事調停の最大のデメリットは、紛争を終局的に解決できないことです。

民事調停では、当事者の双方が納得して合意する必要があるので、当事者の一方が結論を受け入れなかったり、当事者間の溝が深すぎたりするケースでは、調停が成立しません。そうなると、調停は不成立となって問題が解決できず、未解決のまま放置されることになります。問題を解決したい場合には、民事裁判を起こす必要があります。

この点民事裁判なら、当事者間に争いがあっても、裁判官が判決によって、解決方法を一方的に決めてくれるので、紛争を終局的に解決できます。

手間と費用が無駄になる危険がある

民事調停では、話し合いをすすめても当事者間に合意ができなかったら解決はできません。その場合、調停で話し合った内容は、すべて無駄になってしまいます。
民事調停でのやり取りが、その後の訴訟などで有利に利用できることなどは通常ありません。調停が不成立になると、それまで調停にかけた手間や時間、費用などがすべて無駄になってしまいます。

このように、何ヶ月もかけた結果調停が不成立になるのであれば、示談交渉に失敗した時点で、当初から民事裁判を起こしていれば良かったということになってしまいます。
このように、民事調停では、不成立になった場合にそれまで調停にかけた手間や労力、費用や時間などがすべて無駄になる点がデメリットとなります。

民事調停の流れ・進め方と手順

次に、民事調停の流れをご説明します。

①調停申立書を提出

民事調停を起こしたい場合、簡易裁判所に対して調停申立書を提出します。
このときの申立先の簡易裁判所は、相手方の住所地の簡易裁判所です。

申立の際には、調停申立書という書類を作成して提出することが普通ですが、その内容については、さほど詳しく書き込む必要はなく、交通事故損害賠償の請求をしたいと言うことがわかれば最低限の用は足ります。

具体的な賠償額がわからない場合には「相当額」などと書いていても大丈夫です。

損害の明細や、請求出来る根拠なども書き込む必要はありません。証拠があれば一緒に出しても良いですが、特に出さなくても大丈夫です。

②裁判所から呼出状

申立が済んだら、しばらくして裁判所から呼出状が届きます。

当日裁判所に行ったら、相手も出頭してきているのが普通なので、当事者が順番に調停室に呼出を受けて、室内に待機している調停委員に対し、自分の主張を説明して聞いてもらいます。そして、主張内容について、調停委員を通じて相手に伝えてもらい、相手からの返答はやはり調停委員を通じて伝えられます。

このようにして基本的に調停委員を介して話し合いをすすめ、最終的に合意ができたら調停が成立します。

③調停成立後

調停が成立したら、後日自宅に裁判所から調停調書が送られてきて、その内容に従って相手から支払いを受けることができます。相手が任意で支払をしない場合には、調停調書をもって強制執行(差し押さえ)をすることもできます。

調停は一回の期日で終了することはあまりなく、話し合いが成立するまで何度か開催されることが普通です。通常は1ヶ月に1回くらいのペース期日が開催されます。
何度か話し合いの期日を設けても当事者間に折り合いがつかない場合には、調停は不成立になって手続きは終了します。

民事調停の費用

民事調停には、どのような費用がどのくらいかかるのか、ご説明します。

民事調停の場合にも、裁判所に対する手数料が必要です。ただ、その金額は民事裁判より安くなります。

たとえば、300万円の請求をする場合、民事裁判なら2万円かかりますが、民事調停なら1万円で済みます。500万円の請求の場合、民事裁判なら3万円かかりますが、民事調停なら15000円で済みます。

民事調停でも民事裁判と同様、手数料は収入印紙の形で支払います。具体的には、必要な金額の収入印紙を購入して、調停申立書に貼付して収めることになります。

また、民事調停でも予納郵券が必要です。調停の場合の予納郵券は、民事裁判より安いことが普通で、通常は2000円~5000円くらいです。
弁護士に依頼しなくても手続きしやすいので、その場合には弁護士費用がかからず、費用を大幅に節約できます。

民事調停を自分ですすめた場合、かかる費用は総額でも1万円程度におさまることが多いです。

民事調停に回数・期間制限はある?

民事調停には、期間制限があるのかという疑問がよく聞かれます。

調停は3回までとか、半年までなどと言われているのを耳にしたことがある人も多いでしょう。

実際には、民事調停には期間や回数の制限はありません。話し合いが成立する余地がある限りは、何度でも話し合いの機会が持たれます。

4回以上の期日が開催されることもありますし、半年以上調停が続くケースもあります。

ただ、民事調停では、当事者がお互いにどこまで譲れるかが問題になることが多いので、そう何度も同じ話し合いを繰り返しても、合意に近づけるというものではありません。
お互いの対立が激しかったり、埋められない溝があったりする場合には、それ以上何度話し合いを繰り返しても無駄になることは目に見えています。

その見極めができるのが、だいたい3回や半年程度なので、それらの回数や期間が限度であるかのように言われます。実際には、必要がある限り、それ以上の期間や回数、調停が続くこともあります。

反対に、明らかに話し合いが成立する可能性がない場合には、調停が1回で不成立になることもあります。

民事調停の出頭義務は?欠席したらどうなる?

民事調停では、当事者双方に呼出が行われます。民事裁判では、裁判に欠席したら相手の主張を認める事になって不利になってしまいますが、民事調停では、出席しないとどのような不利益があるのかが問題です。一般的に、調停を申し立てられた相手方には、調停に出頭義務があるといわれています。

しかし、民事調停の場合、出席しないからと言って、自分の不利な内容で勝手に調停が成立することはありません。調停は、あくまで話し合いの手続きで、当事者双方が合意する必要があるので、たとえ欠席したとしても、その人が合意していないのに一方的に結論を押しつけることはできないからです。

ただ、調停に出席しないと、話し合いの意思がないとみなされて、調停進行が困難と判断されて不成立になってしまうおそれがあります。

調停を申し立てても相手が出頭しないケースでは、不出頭(無断欠席)が2回くらい続いたら、調停が不成立になってしまう可能性が高いです。

また、調停に理由なく欠席すると、5万円以下の科料の制裁が科される可能性もあります。ただ、これはあくまで「可能性」であり、現実に科料が科されるケースはほとんどありません。

調停期日が決まったけれども、どうしても都合が悪くて出頭できない場合、事前に裁判所に連絡を入れる必要があります。

期日変更申立書を提出したら、都合のつく期日に変更してもらうこともできますし、変更ができなくても、きちんと連絡を入れていたら、いきなり不成立にされてしまうこともありません。

申立人側でも相手方側でも、調停の呼出を受けた場合、くれぐれも無断欠席しないようにしましょう。

弁護士に依頼するメリット

民事調停は、弁護士に依頼しないで当事者が自分でも手続きしやすいですが、弁護士に依頼するメリットもあります。

弁護士に依頼すると、面倒な調停の手続きをすべて代わりにしてくれるので、当事者は何もする必要がなくなり、手間が省けます。弁護士が調停委員に対し、強く説得的にこちらの主張を展開してくれるので、比較的有利に話し合いをすすめられることも多いです。

また、法律的な観点から判断ができるので、提案を受けた場合にその内容が妥当かどうか判断しやすく、不当な条件を受け入れる危険性もなくなります。
このように、弁護士は調停段階でも役に立ちますので、費用的に余裕がある場合には、調停でも弁護士依頼を検討してみると良いでしょう。

民事調停で解決できない場合の対処方法

民事調停を利用しても、相手と合意ができず不成立になってしまうことがあります。この場合には、いよいよ民事裁判によって解決する必要があります。
確かに民事調停は何度でも利用できるので、同じ問題で再度調停をすることもできますが、実際には一回不成立になった問題で何度調停をしても、やはり不成立になる可能性が高く、あまり意味がありません。

また、民事調停が不成立になったとき、何もしないで自然に訴訟手続きに移行することはありません。
訴訟をする場合には、別途民事裁判の申立手続き(提訴)をしなければなりません。民事裁判のためには、いよいよ弁護士が必要なので、提訴前に弁護士に相談に行くと良いでしょう。

さらに、交通事故の損害賠償請求には3年の時効があることにも注意が必要です。調停が不成立になってしまった場合、その後問題を放置して長期間が経過すると、いつの間にか3年が経過して賠償請求ができなくなってしまうおそれもあります。

交通事故で民事調停が不成立になったら、交通事故に強い弁護士に依頼して、速やかに訴訟の手続をすすめるようにしましょう。

まとめ

今回は、交通事故でも利用できる民事調停について解説しました。民事調停は、簡易裁判所で調停委員会を介して相手と話し合いをするための手続きです。
間に調停委員が介入してくれるので、相手と直接話し合いをする必要がなく、お互いが冷静になって話を進めやすいです。

手続きも簡単で弁護士を依頼せずに当事者がひとりでもすすめやすいので、費用も安いですし、手間も期間もあまりかからないので、大きなメリットがあります。

ただ、調停では、当事者に結論を強制できないので、双方が合意しないと不成立になって紛争の終局的な解決ができないというデメリットがあります。

調停が不成立になった場合には、民事裁判を利用して相手に対して損害賠償請求をする必要があります。

民事調停でも弁護士に依頼するメリットがあるので、調停や訴訟によって交通事故の損害賠償請求をしたい場合には、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は交通事故弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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