全損事故に遭った場合、いくらの賠償金・買い替え費用を請求できるか?

もらい事故の中に、車が全損してしまう全損事故があります。全損事故の場合、次のような疑問を抱くかもしれません。

  • 全損事故の賠償額の計算はどうやってすればいいのでしょうか?
  • 全損事故による愛車に対する慰謝料は、請求することができますか?泣き寝入りですか?おかしくないですか?
  • 全損事故で、買い替えまでの代車費用など諸々の経費は、支払ってもらえるのでしょうか?

全損事故の知識がないと、加害者側の保険会社にうまく言いくるめられて、正当な賠償金を受け取ることができず、泣き寝入りする恐れがあります

そこでこの記事では、10対0のもらい事故などで、全損事故の被害者の方が損をしないために、車が全損で廃車になった場合、相手に請求できる賠償金、買い替え費用、おかしいと感じる点などについて解説します。

全損事故とは

全損事故とは、次のいずれかに該当する場合を言います。

  1. 被害車両が物理的に修理不能なとき
  2. 修理費よりも同等の中古車に買い換えた方が安価となる場合

1.を物理的全損、2.を経済的全損と呼びます。つまり、車両や乗り物が事故によって大きな損傷を受け、修理が不可能または経済的に不利益である状態を指します。

物理的全損の基準|廃車になった場合など

損傷が激しくて物理的に車を修理することができないことがあります。

その車を丸ごと失うこと自体が「損害」ですから、同等品を入手する費用を補償する必要があります。

これが物理的全損です。

経済的全損の基準

また、修理にかける費用より、安い値段で同等品を手に入れることが可能なケースもあります。

この場合、その同等品の値段を「損害」と評価すれば足ります。

わざわざ高額な「修理」を施すことには、合理性がありません。

これが経済的全損です。

買替えが相当と認められる例外的な場合

なお、車体フレームのように自動車の本質的な構成部分が重大な損傷を受け、たとえ修理が可能でも、実際に走行した際に支障が出る可能性がある場合があります。

このような場合など、社会通念上、買替えが相当と認められるケースでは「全損扱い」とするのが判例です(※)。

もっとも、これは例外的な取扱いであり、現実に認められた事案はほとんどありません

最高裁昭和49年4月15日判決

全損事故でいくらの賠償金請求ができるのか?

全損事故で相手に請求することができる「賠償金の内容」は下記になります。

買替え差額

全損となった車と同等の車両の価格(車両時価)と事故車両を処分して得た代金(スクラップ代や下取り代金)の差額を請求することができます。これを「買い替え差額」と呼びます。

仮に、全損した車の新車が販売されており、入手可能であっても、新車の購入代金が補償されるわけではありません。

自動車は新車登録した時点から中古車となり、価格は下落しますから、事故の時点では被害車両に新車価格と同等の経済的価値を認めることはできないのです。

判例では、「同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得しうるに要する価額」とされています(前出の最高裁昭和49年4月15日判決)。これを「車両時価」と呼びます。

したがって、新車に買い替えた場合には、「買い替え差額」と「新車代」の差額は「自腹」ということになり泣き寝入りに近い状態と言えるでしょう。

車の時価額の調べ方|レッドブック

では、車両時価はどのように決められるのでしょうか?

具体的には、事故前の事故車の中古市場での時価が基準となり、事故車と同じ車種、型式、年式で、同程度の走行距離の中古車の市場価格の相場を調べて、時価を算定します。

調査にあたっては、次のような資料を用いることが通常です。

  • オートガイド自動車価格月報」(通称「レッドブック」、 オートガイド社)
  • 中古車価格ガイドブック」(通称「イエローブック」日本自動車査定協会)

追突事故やもらい事故などにまきこまれ、全損した場合には、過失割合に応じた金額が、相手側の保険会社もしくは相手から直接支払われることになります。

全損事故は慰謝料請求不可

また、ここまで説明してお分かりの通り、単なる物損事故の場合は全損とはいえ、慰謝料を請求することはできず、泣き寝入りに近い状態となるのが現状です。

なお、物損事故と慰謝料の関係については、下記ページも併せてご参照ください。

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事故で10対0!買い替え諸費用は、加害者に請求できるか

もらい事故など10対0の事故後など、車両を買い替えると、様々な経費がかかります。

その中には、加害者側に請求できる費用と、請求できない費用があります。

加害者側に請求できる費用

  • 登録手数料とその代行手数料
  • 車庫証明手数料とその代行手数料
  • リサイクル法に基づくリサイクル関連費用
  • ナンバープレート代
  • 車検整備費用
  • 消費税(但し、同等車両を購入した場合の金額に相当する金額)
  • 事故車両の自動車重量税の未経過部分(但し、「使用済自動車の再資源化等に関する法律」により適正に解体され、永久登録抹消されて還付された分は除く)
  • 廃車手数料とその代行手数料

加害者側に請求できない費用

  • 事故車両の自動車税(未経過分の還付があるため。但し、軽自動車を除く)
  • 事故車両の自賠責保険料(未経過分の還付があるため )
  • 購入した車両の自動車重量税

代車費用はどこまで請求できるのか?

基本の代車費用

追突事故で自分の車が全損被害に遭った場合などには、代車が必要になるケースが多いです。代車費用の支払い請求をすることは可能ですが、どのようなケースでも認められるわけではありません。

代車費用は、日常的に車で通勤・通学をしていたり、病院に通院していたり、タクシーなどの営業用に使用していたりと、代車の必要性が認められる場合に損害と認められます。

基本的にレンタカー代による算定となり、実際にレンタカーを利用した場合に、その金額の支払いが認められることになります。

代車が必要な事情があっても、実際にレンタカー車を利用しなければ代車費用の請求はできないことが原則です。

そして、代車費用としてのレンタカー代が支払われる期間は、修理や買い替えのための「相当な期間」を限度とします。通常は、修理で2週間程度、買替えで1ヶ月程度です。

但し、個別事情に応じて、これ以上の期間が必要なことを立証できた場合は別です。

例えば、保険会社のアジャスターが、なかなか事故車を調査に来なかったり、修理方法について保険会社と意見が対立したりして、修理の着手が遅れたケースでは、その期間を相当な期間に含めることが認められています(※)。

※ 大阪地裁平成9年6月27日判決・交通事故民事裁判例集24巻3号670頁など

通勤などでタクシー代を利用できる場合

代車費用として基本的に認められるのはレンタカー代ですが、タクシー代を請求できるケースもあります。

例えば、足の怪我で、通勤や通学に公共交通機関の利用が困難な場合など、必要性・相当性が認められる場合です。

まとめ

今回は、交通事故(物損)の全損事故について解説しました。

全損事故とは、車が破壊されて修理ができない場合の物損事故を意味します。

また、物理的に車が破壊されたケース以外にも、修理代が時価額を上回り、修理費用ではなく時価額での賠償が行われるケースでも全損(経済的全損)となります。

支払い請求ができる金額は「時価額」であって、新車買い替え費用の実費ではありません。

また全損した車を以前、通勤や通院、仕事などに使っていたケースでは、代車費用の請求も可能です。

ただし、いくら愛車だったとはいえ、慰謝料の請求をすることはできません。

全損事故は、泣き寝入りになる場合も多いですが、諦めずに加害者側に最大限の請求を求めていくことが重要です。

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