人身事故と物損事故では大違い!人身切り替えで知っておくべき事を解説

  • 人身事故と物損事故の違いとは?どっちがいいの?
  • 物損事故から人身事故に切り替えると、慰謝料・示談金に差が出るの?
  • 軽い接触事故にまきこまれた!物損事故ではなく、人身事故扱いにしないと保険金請求できない?

この記事では、交通事故における人身事故と物損事故の違いやそれらの定義について説明します。さらに、物損事故から人身事故への切り替える際のメリットとデメリット、そして人身切り替えの方法、3ヶ月以内なのか期限はあるのかについても解説します。

また、人身事故と物損事故がいつ、誰が決めるか、人身事故と物損事故の違い、どっちがいいか、物損事故の場合の加害者に対する罰金の有無、そして弁護士に依頼する必要性など、注意すべきポイントについても記載します。

交通事故に遭遇した際、それが「物損事故」として処理されるか「人身事故」として取り扱われるかによって、結果が大きく異なることがあります。

物損事故として処理される場合、加害者には一定のメリットが存在しますが、一方で被害者には重大なデメリットが生じる可能性があります。

人身事故と物損事故の違いとは?

交通事故には、人身事故(じんしんじこ)と物損事故(ぶっそんじこ)があります。

人身事故と物損事故の違い

人身事故と物損事故の違い

  • 「人身事故」の定義:人の命や身体に損害が発生する事故(物が壊れた場合も含む)
  • 「物損事故」の定義:物だけが壊れて人が怪我をしていない事故(ペットが死傷した場合も含む)

交通事故の被害に遭ったとき、物損事故として扱われるか人身事故として扱われるかによって、加害者も被害者も大きく結果が変わります。

加害者が物損事故扱いにしたがる理由とは?どっちがいいの?

「人身扱いにしない」とは、簡単に言うと、交通事故で怪我したことを警察や保険会社に隠して、”物の損害しかなかった”と事故を届け出ることです。

もちろん、本当に被害者に怪我がない場合はそれで問題ないのですが、人身事故ではないと嘘をつくケースがあり、その場合に「人身扱いにしない」「物損扱いにする」と表現することがあります。

なぜ加害者は「人身扱いを拒否しようとするか」「物損扱いにしたがるのか」…それは、物損事故扱いにすることで、加害者にとって下記のような4つのメリットがあるからです。

  • 点数が加算されない
  • 罰金なし・刑事罰なしで済む
  • 賠償金が低額で済む
  • 示談交渉の期間が短く終わる

人身事故にしない場合の加害者の4つのメリット

人身と物損どっちがいいのかを理解する必要があります。加害者側のメリットを解説します。

メリット①点数が加算されない

人身扱いにしない場合、加害者の免許の点数が加算されません*。

一方、人身事故扱いとなった場合には、必ず免許の点数が加算され、また事故の程度によって、「免許停止処分」や「免許取り消し」になる可能性もあります。

*ただし「道路交通法違反」の場合は、物損だけでも点数が加算されます。また「建物を損壊した場合」等でも点数が加算されます(道路交通法施行令別表代二の二)。

メリット②罰金なし・刑事罰なしで済む

2つ目のメリットは、物損事故扱いになると、加害者は刑事罰(例えば罰金刑など)を受けません

一方、人身事故扱いになった場合には、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が適用され、相場の罰金を支払うという大きな違いがあります(もちろん保険会社は肩代わりしてくれません)。

特に人身事故の罰金額は高額のため、加害者は何とかそれは拒否し避けたいというのが本音でしょう。

メリット③賠償金が低額で済む

また、物損事故になると罰金なしになるだけではなく、加害者が支払う賠償金・保険金の金額が低額になることが挙げられます。

物損事故扱いになった場合、加害者は被害者に慰謝料や逸失利益などを支払う必要がありません。
ほとんどの場合は「車の修理代だけ支払う」ということになります*。

※高級外車の修理代や買替え代で、まれに数百万円から数千万円の賠償義務を負うケースもあります。

メリット④示談交渉の期間が短い

最後のメリットとして、被害者側との示談交渉が比較的「短期間」で終わるという点があります。

交渉が短期間なら、加害者の精神的負担も少なくなるため、被害者には嘘でも物損事故から人身事故に変更しないでほしいと考えることが通常でしょう。

以上のように、加害者にとって、物損事故扱いにすることは、メリットが大きく、物損事故と人身事故で大きな違いが出てきます。

人身事故を拒否したがる加害者の特徴

「物損から人身に切り替えてほしい」と言ってくる加害者のタイプは2種類存在します。

まず、「事故慣れしている人」が挙げられます。なぜならこういうタイプの人は、交通事故では人身事故より物損事故の方が加害者にとって得になることをよく知っているので、物損事故にしたがるのです。
例えば、タクシーやトラック運転手などは、こうした事情に詳しいので、物損事故にしてほしいと言ってくることが多いようです。

2つ目は、免許の点数が加算されていて、もう少し点数があがると免停になったり、免許が取り消されたりする危険がある人です。

被害者側が車の物損事故として届け出る3つのデメリット

交通事故を物損事故扱いにすると、被害者にとっては不利益が大きいので、交通事故で怪我をしている場合、必ず人身事故として届出をする必要があります。

では、怪我をした被害者側が車の物損事故として届け出た場合のデメリットは何でしょうか。以下で解説致します。

交通事故の示談金が低額になる

物損事故として届出するか、人身事故として届出するかは、加害者に対する賠償請求権の内容には無関係です。警察や保険会社にどのように届出をしようと、加害者に人身損害の賠償金を請求することは可能です。

しかし、相手の保険会社が動いてはくれなかったり、また自分で請求する方法が分からなかったりで、結果的に人身損害の賠償金を請求せず、物損に対する損害賠償しか請求しないのであれば、賠償金の金額が非常に少なくなります

人身事故の場合、怪我の程度が大きいほど示談金も慰謝料も高額になります。必ず人身扱いで届け出ましょう。

物損事故だと、病院に通院しても治療費・慰謝料なし

物損しか請求しないのであれば、被害者が病院に通院しても治療費も出ませんし、後遺障害が残っても「慰謝料(精神的損害への補償)」も支払われません。

被害者は自腹で治療を続けないといけませんし、後遺障害が残っても泣き寝入りするしかなくなってしまいます。

また、物損事故の場合、自賠責保険からの支払いを受ける事ができません。自賠責の補償対象は人身損害だけだからです。

過失割合で揉めたとき「実況見分調書」が出ない

交通事故の「過失割合」について被害者と加害者との間で争いになることは多いです。

争いになった時に事故状況の証明に役立つのが警察の実況見分調書ですが、これは、警察が交通事故現場に来て実況見分・現場検証をすることによって作成される書類です。

物損事故では多くの場合、警察が作成するのは簡単な「物件事故報告書」で、これだけでは事故状況の証明として不十分です。もしも後日、事故状況について過失割合の争いが発生したときに、事故の状況を証明できる資料がなくて困る可能性が出てきます

※「物件事故処理要領について(概要)」平成4年2月26日警察本部長通達

被害者が受けるデメリットは以上4点です。人身事故を物損事故として届け出ると、被害者にとってはさまざまな不利益があるので、交通事故で怪我をしたら必ず人身事故として届け出ましょう。

物損事故から人身事故へ切り替え・変更する方法

TwitterやYahoo!知恵袋などにも投稿されることが多いですが、軽い接触事故・追突事故に巻き込まれた場合などに、事故当初は怪我がないように見えて、後日「むちうち症状」が出る場合などがあります。

その場合、実は人身事故なのに「物損事故」として届け出てしまっている場合があります。その場合、後から人身事故扱いに変更してもらう必要があります。これを俗に「物損事故から人身事故に切り替え(変更)」と呼びます。

下記、物損事故から人身に変更する方法を解説致します。

方法1.警察に人身事故の届出をする

まず、警察に人身事故の届出をして変更を進めます。

いったん物損事故として届け出てしまっても、早めに「医師の診断書」をもって届出をすると、人身事故扱いに切り替えてもらえます(必要書類など詳しくは後述致します)。

ただ、事故から日数が経過しすぎて人身事故としての捜査を開始する時期を失していると受け付けてくれない可能性もあります。

警察への届出の内容を人身事故として切り替えたい場合には、診断書を入手し早期に変更する必要があります。

方法2.人身に変更の時は、相手の保険会社に報告(必要書類を提出)

また、物損事故から人身事故に変更するときには、相手の保険会社に報告します。
このとき、人身事故としての「事故証明書」を警察から入手できるので、そのコピーを保険会社に送付します*。

この手続きによって、保険会社が人身事故としての取扱を認めてくれたら、「治療費」「慰謝料」などの支払を求めることができるようになります。

なお、事故証明書がない場合は、保険会社宛てに「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を提出する必要があります。

この書類は、 なぜ人身事故としての事故証明書を入手することができないのかを説明するための書類です。
保険会社に書式がある*ので、取り寄せて自分で作成することになります。

理由の書き方としては、下記のように記載すると良いでしょう。

「当初に痛みがなかったために物損事故として届出をしてしまったが、後に強い痛みが出てきて病院に行った」
「ただ、警察では人身事故への切り替えが認められなかったため、事故証明は物損事故扱いになっていて、人身事故の証明書の取得ができない」

*外部リンク(例:三井ダイレクト損保):人身事故証明書入手不能理由書のひな形(テンプレート)

方法3.弁護士に依頼|裁判を起こす

事故とケガとの因果関係を疑われて、事故によるケガであることを保険会社に否定される場合があります。
その場合、裁判を起こして裁判所で人身事故であることを認定してもらう必要があります。

もっとも、訴訟を起こす前に、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
弁護士が介入したら、相手の保険会社も人身事故への切り替えを認めてくれることがあります。

また、弁護士ならば本当に裁判で争って、事故によって怪我をしたことを立証できれば人身損害についても賠償金の請求ができます。

裁判所で人身事故であることを認めてもらうためには、交通事故と怪我の因果関係や交通事故による怪我の内容などについて、適切に主張して立証する必要があります。
そのためには、交通事故問題に強い弁護士を探して対応を依頼すると良いでしょう。

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警察に人身事故の切り替えの届出をする6つのポイント

前項の「警察署での物損から人身に切替え」について、もう少し詳しく解説致します。

①人身・物損は誰が決めるか?いつまでに?

よくある質問の1つとして、人身・物損は誰がいつまでに決めるのかというのがあります。

ただ、最初に解説した定義どおりですが、人が怪我をすれば人身事故ですし、ものだけ壊れれば物損事故というだけで「誰が決める」「いつ決まる」というものではありません。

もちろん被害者が警察に「人身事故です」と言えば、人身事故扱いにしてくれそうなため、誰が決めるというと「被害者が決めるのでは」とも言えそうです。
しかし、後日治療後に警察に出向くときには、後述しますが「加害者」も出向く必要があります。

そしてその後「警察」が受け付けるというわけなので、被害者一人で手続きを進めていくわけではないことは念頭に置いておきましょう。

②警察署に行く前に予約は必要か?

人身切り替え手続は、警察署の担当の職員が行ないます。

そのため、いきなり行っても対応してもらえず、あらかじめ「警察署の交通捜査係」へ連絡し、日時の予約をとってから出向く必要があります。

③3ヶ月?1ヶ月?半年?届け出る期限・タイミングは?

多くの手続きは期限があるため、物損事故から人身に変更する手続きについても、いつまでに変更手続きをしないといけないんだろう?と悩みがちです。

しかし、切り替えを届け出る期限は特に定められていません。

つまり事故から3ヶ月でも1ヶ月後でも半年後でも問題はないと言えば無いのです。

ただ、早めに行かないと警察が拒否する場合があるようですので注意が必要です。

手続きに遅れた時に正当な主張ができなそう場合は、早めに言ったほうが無難でしょう。

④人身事故現場を管轄する警察署へ申請に行くべきか?

どこの警察署に出向いても良いわけではありません。

あくまで「人身事故を起こした現場を管轄」する警察署に出向く必要があります。

⑤被害者と加害者、怪我された同乗者が一緒に警察署へ行くべきか?

警察に出向く必要があるのは被害者だけではありません。被害者と加害者、および事故によって怪我をした全ての人が出向く必要があります。

しかし、加害者が協力的ではない場合はやむおえないので、被害者のみで早めに出向きましょう。

⑥警察署に持って行く必要書類は何?

また人身事故へ切り替え手続きのためには、必要なものを持っていく必要があります。
具体的には以下の5つです。

  • 1. 医師の診断書
  • 2. 事故車両(走行不能な場合はナンバー入りの写真)
  • 3. 運転免許証
  • 4. 車検証と自動車損害賠償責任保険証明書(通称 自賠責)
  • 5. 印鑑(※シャチハタ、ゴム印は不可)

特に「医師の診断書」についてですが、事故との因果関係、事故日、初診日、並びに治療期間について必ず記載してもらいましょう。

万が一、記載内容に間違いがあると医師の訂正印が必要になり、警察に再度出向く必要があるため注意してください。

また、事故当時の状況を詳しく確認するために、事故車両本体が必要になりますが、もしも修理中や走行不能な状況の場合は、必ず「破損した部分が分かるように写真撮影」をしてその画像を印刷して持参しましょう。

なお、写真を撮影する際は、必ず車のナンバーが分かるようにしましょう。

まとめ

今回は、TwiiterなどのSNSやYahoo!知恵袋でも話題になりがちな、人身と物損のどっちがいいか、交通事故の物損事故と人身事故の違い及び被害者にとってのメリット・デメリット、人身を誰が決めるか、いったん物損事故として届け出てしまった後で人身事故に切り替える方法、3ヶ月でも問題ないことについて解説しました。

実際には怪我をしているのに物損事故として届出しまうと、賠償金の金額が大きく減って被害者は泣き寝入りを強いられることになります。

追突事故などの後にむちうちに似た痛みが出てきたケースなどでは、早めに病院を受診して、警察に連絡し予約をとって、人身事故への切り替え請求をすることが重要です。

交通事故で物損事故から人身事故に変更をしたい場合、被害者が自分1人で対応することに限界があることも多いです。

今、物損事故扱いになっているけれども、実は怪我をしていて人身事故に切り替えたい…と考えている方がいれば、お早めに弁護士に相談にいくことをおすすめします。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は交通事故弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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