後遺障害9級の慰謝料金額事例と逸失利益計算を徹底解説

後遺障害9級の慰謝料相場

交通事故で負傷し後遺症が残り、その後、自賠責の後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益などについても示談金・損害賠償請求をすることが可能になります。

後遺障害9級1号~17号の場合、労働能力喪失率は35%ですが、外貌の醜状(9級16号)等、高次脳機能障害(9級10号)など、社会生活に復帰することが難しい症状が含まれます。

適切な補償を受けるためには、どうすれば適正な等級に認定されることができるのか、損害賠償金の相場や慰謝料を増額するにはどうすればいいのかなど、知っておくべきことがあります。

今回は、自賠責の後遺障害9級1号~17号や併合9級の慰謝料・示談金の金額相場と適正な後遺障害等級認定や慰謝料、逸失利益増額のためにすべきポイント、事例、障害者手帳について解説します。

自賠責の後遺障害等級9級の代表的な症状と慰謝料

示談金の前に、自賠責保険の後遺障害9級1号~17号の認定を受けることができる主な症状は以下の通りです。

後遺障害9級が認められる症状

等級 症状
9級1号 両眼の視力が0.6以下になったもの
9級2号 1眼の視力が0.06以下になったもの
9級3号 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
9級4号 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
9級5号 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
9級6号 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
9級7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級8号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
9級9号 1耳の聴力を全く失ったもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級12号 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
9級13号 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
9級14号 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
9級15号 1足の足指の全部の用を廃したもの
9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
9級17号 生殖器に著しい障害を残すもの

9級は特に、目や鼻、高次脳機能障害(9級10号)や、外貌の醜状(9級16号)等が規定されているのが特徴です。

なお、同じ障害でも症状の軽重によって等級は変わり、たとえば、高次脳機能障害の場合、9級が最低の等級で、7級、5級、もっと重い症状の場合は、3~1級までに該当します。

後遺障害9級に認定されると、障害者手帳が交付されるか

9級1号~17号の症状は上記の通りですが、果たして、障害者手帳は交付されるのでしょうか。

もちろん、重い症状の場合、交付される可能性はあります。

ただし、身体障害者手帳は「身体障害者福祉法」で定められており、そもそも自賠責の後遺障害認定とは基準も窓口も異なります。

そのため、ご自身の症状が該当するかどうか、厚生労働省のサイト内の「身体障害者障害程度等級表」で必ず該当するかご確認ください。

後遺障害9級の後遺障害慰謝料金額相場

後遺障害9級1号~17号の後遺障害慰謝料の金額相場は、以下の通りです。

下表からお分かりいただける通り、自賠責基準と弁護士・裁判基準の後遺障害慰謝料の相場には、3倍近くの差があります。

後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料金額相場
自賠責基準金額 任意保険基準金額(※) 弁護士・裁判基準金額
249万円程度 300万円程度 690万円程度

※任意保険基準は現在公開されていません。数値は旧任意保険の統一支払基準を参考にしております。

3つの基準の中でも弁護士・裁判基準で交渉すべき

上表のとおり、後遺障害慰謝料の金額を計算するには、3つの基準があり、下記の順番で高額になります。

自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準

弁護士基準は、法的に妥当な基準であり、本来受け取るべき適切な慰謝料であるとも言えます。

しかし、被害者本人が弁護士・裁判基準の示談金金額相場を主張したとしても、保険会社が認めてくれるとは限りません。

後遺障害慰謝料を弁護士・裁判基準で計算して示談金を取得するには弁護士に依頼するのが最も近道です。

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後遺障害9級の逸失利益の計算例

後遺障害逸失利益は、後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入です。

逸失利益の金額は、以下の計算式で求めることが可能です。ちなみに、後遺障害9級の労働能力喪失率は、35%です。

逸失利益 = 年収額 × 労働能力喪失率 × 被害者の年齢に応じたライプニッツ係数*

*被害者の年齢に応じたライプニッツ係数は、国土交通省のサイトで調べることが出来ます「就労可能年数とライプニッツ係数表

後遺障害等級9級10号の逸失利益の計算|高次脳機能障害

次の事例で実際に逸失利益の金額を計算してみましょう。

事例

被害者の年齢・性別:33歳女性
被害者の年収:480万円
被害者の後遺障害等級:9級10号

480万円(年収)×35%(労働能力喪失率)×21.132(年齢33歳のライプニッツ係数※)=35,501,760

※ 2020年3月31日以前に発生した事故の場合は、ライプニッツ係数を16.193で計算

この事例で高次脳機能障害の被害者が受け取ることができる逸失利益は、約3500万円であることが分かります。

この被害者が同じ条件で、もし7級の認定を受けることができたとすると、7級の労働能力喪失率が56%なので、逸失利益は56,802,816円です。逸失利益だけで、2100万円以上の差がついてしまうことも分かります。

なお、当サイトの慰謝料・示談金の自動計算機も併せてご利用ください。入通院期間や後遺障害等級、年齢などを入力すると、慰謝料の金額相場を弁護士基準で計算することができます。

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後遺症認定9級10号・併合9級の示談金増額の裁判事例

後遺障害9級で慰謝料や示談金の金額がどれくらいまで上昇するかを知るために、併合9級・9級10号の裁判の事例を2つご覧いただきましょう。

裁判例1

大阪地裁平成27年7月17日判決

被害者は男性会社員(事故時37歳)。

顔面挫創などの傷害で、鼻翼部から唇の上にかけて5センチ以上の人目につく線状痕が残り、自賠責保険から外貌醜状9級16号に認定されました。

裁判所は次のように述べています。

  • 取引先と面談して打ち合わせをすることも被害者の仕事である
  • 線状痕は傷口に入ってしまった異物が色素沈着を起こしたもので、いわば外傷性の刺青(傷跡が青色で入れ墨に見え、相手に嫌悪感を与えると被害者は主張)
  • もっとも、入院せずに外来の手術と通院により目立たなくできるから、労働能力を喪失させるものとは評価できない
  • しかし、就労に多少なりとも不利な影響を及ぼす以上は、慰謝料の算定において斟酌するべきである

こうして入通院慰謝料80万円に加えて、後遺障害慰謝料900万円を認めました。

参考文献:自保ジャーナル1956号60頁

裁判例2

仙台地裁平成24年3月27日判決

加害者はスピード超過でカーブを曲がりきれず、対向車線にはみ出し、被害者である新婚夫婦の車に衝突しました。妻が死亡、夫の会社員(事故時24歳)には、次のとおり、多くの後遺障害が残りました。

・右手指の関節機能障害(11級9号)
・左肘関節機能障害(12級6号)
・左手のしびれ等(14級10号)
・右足関節の機能障害(12級7号)
・右足指関節の機能障害(11級10号)
・右下肢短縮障害(13級9号)
・右下肢醜状障害(12級相当)
・左下肢醜状障害(14級5号)

このように、被害者は両手、両足に後遺障害が残ってしまいました。

しかも、慢性的な抑うつ気分、不眠、易怒性(※)が生じ、精神科に通院してPTSD(14級)の後遺障害も認定されました。

これら多くの後遺障害があっても、自賠責保険では併合9級としか評価されません。

しかし、裁判所は、四肢に後遺症があるのに、例えば右下肢のみに9級の後遺障害が残った場合と同じに評価するのでは不当であって、全ての後遺障害を総合考慮しなくてはならないとし、入通院慰謝料570万円に加え、後遺障害慰謝料830万円を認めました。

参考文献:自保ジャーナル1883号59頁

※「易怒性」(いどせい):容易に興奮状態になる、怒りを発し易い症状

後遺障害9級の弁護士・裁判基準の後遺障害慰謝料の金額「相場」は、690万円です。

対して裁判所は、自賠責保険で9級と認定された被害者に対して、裁判例1で900万円、裁判例2で830万円の後遺障害慰謝料を認めました。

裁判では、被害者のあらゆる事情を顧慮したうえで判断するので、上記のような事例で示談金相場を大幅に超える判決もあり得うるのです。

なお、外貌醜状の裁判例(9級16号)については、下記のページが詳しいので併せてご参考ください。

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後遺障害9級1号~17号認定のためにすべきこと

被害者請求

後遺障害認定の請求手続きは、被害者請求ですることをお勧めします。被害者請求とは、文字通り被害者自身が手続きを行うことですが、後遺障害認定の請求手続きにはこれ以外に、相手側の保険会社に手続きを任せる事前認定という方法があります。

事前認定では、手続きの透明性が確保されず、期待した等級の認定がなされない可能性が上がります。そのため、手続きを被害者請求に切り替える必要があります。

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後遺障害診断書

提出する書類の中では、後遺障害診断書が大切です。認定は、書面審査で行われるので、後遺障害診断書が審査に大きく影響するのです。

しかし、気をつけなければならないのは、医師がみな後遺障害診断書の作成に慣れているわけではないということです。

弁護士に依頼すれば、被害者請求の必要書類から作成後の後遺障害診断書のチェックまでアドバイスを受けることが可能です。

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異議申し立て・裁判は弁護士に依頼

弁護士に依頼すると、後遺障害認定や慰謝料金額の増額以外にもメリットがあります。

特に認定に不服があった場合の異議申し立て、また裁判などで力を発揮してくれます。

弁護士に依頼する際の主なメリットは下記の3つです。

弁護士に依頼するのなら、交通事故の示談交渉や後遺障害認定の経験・知識が豊富な弁護士を選ぶことが重要になります。

あなたの損害賠償請求は、すべてどのような弁護士を選任するかにかかっています。

よくある質問

後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料金額相場は?

後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で249万円~、弁護士・裁判基準で690万円ほどです。

後遺障害等級9級に認定されたらどうなるの?

後遺障害等級9級が認定されたら、「後遺症部分の損害」を相手方に請求できます。

後遺障害等級9級の自賠責基準で249万円であり、被害者請求により先取りできます。 そして、不足している損害額を相手方に請求することになります。

まとめ

今回は交通事故で後遺症が残った場合で、後遺障害等級9級1号~17号の後遺障害慰謝料・逸失利益の金額相場、裁判の事例、認定を受ける際のポイントなどを解説しました。

後遺障害9級に認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益をはじめとした損害賠償金の請求ができますが、なるべく高額な金額の請求をするためには、交通事故に強い専門の弁護士に被害者請求の手続を相談し、示談を依頼して、慰謝料を弁護士・裁判基準で請求してもらうことが大切です。

適切な等級認定を受けて、正当な金額の補償を受けられるように、是非、交通事故の示談交渉や後遺障害認定の経験・知識が豊富な弁護士に相談してください。

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