交通事故の被害者が嘆願書を求められたときの対処法

嘆願書
  • 嘆願書とは何か?どのような書類なのでしょうか?
  • 加害者から嘆願書の作成を頼まれたときに被害者は、どのように対応すればよいのでしょうか。

交通事故の被害にあった後、加害者から「嘆願書」の作成を頼まれることがあります。

「嘆願書」という言葉は聞いたことがあると思いますが、「応じるべきものなのか」、「何を書けばいいのか」迷う方は多いでしょう。

この記事では、交通事故の被害者が嘆願書を求められたときの対処法について説明します。

嘆願書とは

嘆願書とは、犯罪の被害者が、裁判官又は検察官に対して、加害者に刑事処分を課さないでほしい、または、刑事処分を軽くしてあげてほしいという希望を伝える書面です。

加害者に対して、どのような処分を希望するか、また、その希望を表明するかどうかは被害者の自由ですから、嘆願書を作成するかどうかも、被害者の自由です。

しかし、後述するように嘆願書は、起訴・不起訴の選択、刑罰の内容に少なからぬ影響を与えます。加害者側も、それを期待して、嘆願書の作成を依頼しているのです。嘆願書の影響力をよく理解したうえで、依頼に応じるかどうかを判断しましょう。

刑事処分では被害者の処罰感情が重視されのか?

交通事故事件を含む刑事事件において、加害者の刑事処分の内容、程度を決めるにあたって重視される要素のひとつに被害者の処罰感情があります。

もともと刑事処分は、国家が被害者に代わって加害者に制裁を加えるものですので、被害者が、どのような処罰を望んでいるかを無視することはできないのです。

加害者(被疑者)を刑事裁判にかけるか否か、すなわち起訴するか不起訴とするかは、検察官によって決められます(刑事訴訟法248条)。その判断の際に、被害者の処罰感情の有無と程度が考慮されます

被害者の処罰感情が乏しい、処罰を望んでいないという場合は、不起訴となったり、起訴されたとしても罰金刑が前提となる簡易な裁判手続き(略式起訴)となる公算が高まります。

起訴された場合、加害者(被告人)にどのような刑罰を課すかは、刑事裁判の裁判官によって決められます。その際にも、量刑事情のひとつとして、被害者の処罰感情の有無と程度が考慮されます。

被害者の処罰感情が強くなければ、罰金刑や執行猶予付きの禁錮刑・懲役刑となる可能性が高くなります。

供述調書と内容の異なる嘆願書も可能

供述調書について

交通事故の被害者は、警察書での事情聴取、検察庁での事情聴取のそれぞれにおいて、加害者に対してどのような処罰を与えてほしいかを質問されます。

厳しい処罰を希望すれば、供述調書には、「できるだけ厳しい処罰をお願いします」などと記載されます。あまり厳しくしないでやってほしいと言えば、「寛大な処分をお願いします」などと記載されます。

このような内容が供述調書に記載されるのも、被害者の処罰感情を裁判官、検察官に伝えるためです。

供述調書と異なる内容の嘆願書

ところで、被害者が事情聴取において厳しい処分を望み、それを内容とする供述調書が作成された後に、加害者から依頼されて、加害者に有利な内容(寛大な処分を望むなど)の嘆願書を作成して提出することは許されるのでしょうか?

厳しい処分を望んだ意見を変えることとなって、許されないのではないかと不安になる方もいるでしょう。

しかし、気持ちが変わることはおかしなことではありません。供述調書と異なる内容の嘆願書を提出したからといって、警察や検察から叱られることもありませんし、彼らの了解を取ることも不要です。

ただ供述調書では厳罰を望んでいたのに、嘆願書では寛大な処分を望むとしか記載していないと、その嘆願書を受け取った検察官や裁判官としては、理由がわからず首をひねることになります。

ですから、必ず、心境が変化した理由も記載しておくべきです。理由としては、「示談が成立したので」とか「真摯に反省していることがわかったので」などがあげられます。

すでに示談書を作成している場合

すでに加害者との示談が成立し、示談書の中に宥恕(ゆうじょ)する」(※)、「寛大な処分を望む」などの文言を記載しているときは、被害者が処罰を望まなくなったことは表明済みです。

しかし、その場合でも加害者側から、重ねて嘆願書の作成を依頼されることがあります。加害者は処分を軽くするために、ワラにもすがる思いですので、実質的に同じ内容だとしても、何枚でも書類を提出したいものです。

実際には、実質的に同じ内容の書面を何枚出しても効果は同じなので意味はありませんが、加害者の気持ちに応じてあげるかどうかも被害者の自由です。

もしも重ねて依頼されて、できるだけ加害者に有利になるようにしてやりたいと思うなら、何故、示談書とは別に嘆願書も作成したのか、その理由を嘆願書に記載してあげると良いでしょう。

たとえば、次のような文書が考えられます。

「示談書にも記載したとおり寛大な処分を望む気持ちに変わりはありません。

ただ、私との間では問題は済んだにもかかわらず、加害者はその後も私の身体を気遣う連絡を頻繁に寄越してくれており、反省の気持ちもひしひしと伝わってきます。

このようなことから、改めて、この嘆願書で、加害者の処罰を軽くしていただけるようお願いする次第です。」

※宥恕:寛大な気持ちで許す

嘆願書の提出先

嘆願書の提出先は、起訴前であれば検察庁、起訴後であれば裁判所ですから、書面の記載上の宛先は、検察庁又は裁判所と記載することになります。

ただ、実際に嘆願書の作成を依頼してくるのは、加害者の弁護人となった弁護士ですから、書類は弁護士に渡せば良いです。弁護士がしかるべき時期に、検察や裁判所に提出します。

加害者の弁護士から嘆願書が提出されると、検察官から、本当に嘆願書を作成したのかを確認する電話があります。裁判所に提出する場合も、検察官から確認の電話があります。特に内容に不審な点がある場合を除いて、間違いがないかどうかだけを確認するだけですので、何も心配はありません。

嘆願書の書き方

嘆願書の書式にきまったものはなく、決まった書き方もありませんが、ご参考に一例をあげておきます。

嘆願書

東京地方裁判所 御中

平成30年1月20日

東京都○○区○○町1丁目2番3号
甲野A子

結論

被告人乙野B夫に対する「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」違反被告事件につき、被告人に対して寛大な処分をお願い申しあげます。

理由

私は、上記事件の被害者です。

被告人との間で、いまだ示談は成立しておりませんが、これは私のケガの治療が当初の予想よりも長引いており、症状固定に至らず、損害賠償金の金額が確定しないためにすぎません。

被告人は、事故直後から自分の非を認めて私に謝罪し、入院中はもとより、退院後も何度も見舞いに訪れてくれており、自身の裁判の様子なども手紙で報告してくれています。

事故の加害者とはいえ、被告人の誠実な人柄と真摯に反省している態度には、胸を打たれるものがあり、私は、被告人に対する処罰を望みません。

裁判所におかれましては、被害者の心情もお酌み取りいただき、寛大な処分をお願い申しあげます。

以上

まとめ

嘆願書は、被害者であるあなたの気持ちを伝えるための書類です。嘆願書を書くかどうかも、どのような内容にするかも全くあなたの自由です。

もしも、嘆願書について迷ったときは、弁護士にご相談ください。

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