盗難車で事故を起こされた!車の所有者の賠償責任はどうなる?

盗難車で事故を起こされた!車の所有者の賠償責任はどうなる?

大切にしていた愛車が他人に盗まれてしまい、しかもその車を盗んだ犯人が運転中に事故を起こした、というとても不運な話は稀に耳にします。

この記事では、こういった「車を盗まれ、さらにその車で事故があった場合」に、所有者や被害者が受けられる自動車保険の補償についてや、そもそも交通事故の被害者に対する損害賠償責任は誰が負うのかという点について説明をします。

1.盗難車による交通事故責任の所在

(1) 原則、事故を起こした運転者のみが賠償責任を負う

盗難車両で事故が発生した場合、基本的には加害者かつ車を窃盗した運転者が、事故の被害者が負った損害を賠償する責任を負います。そして、車の所有者は責任を負わないことになります。

民法709条により、故意または過失により他人の生命・身体・財産に損害を与えた者は、被害者にその損害賠償責任を負うことになります。この責任を不法行為責任といいます。

不注意な運転により被害者に怪我等をさせたのはあくまで運転者であり、車を盗難された方もある意味被害者であることを考えれば、これは当然のことでしょう。

(2) 例外として車の所有者の管理責任を問われる場合

上記のように、原則として車を盗まれた所有者には交通事故の損害賠償責任は発生しないのですが、例外的に、車の管理が著しくずさんだった場合、車の所有者の管理責任を問われ、賠償責任が発生することがあります。

車の管理責任による損害賠償責任はそう簡単には認められるものではなく、以下のような不注意を認められる要素がいくつも重なった場合に例外的に認められます。

  • エンジンやキーをつけたまま放置し、ドアロックをしていなかった
  • 第三者が簡単に乗り込めるような路上などに長時間放置した
  • 盗難してすぐに事故が発生した
  • 車の盗難に気づいた後も、しばらく盗難届けを出さずに放置した

管理責任は、このような各要素や個別の事情を総合して判断されることとなります。

また、少し古い判例では、車の所有者がエンジンキーを差し込み、運転席側のドアをあけて放置していた場合に、第三者が簡単に乗り込んで盗むことができた状態であるため、管理責任に問題がありとして所有者に賠償責任が認められた判例があります。

ところで、仮に不注意な状態であって盗難された場合でも、気づいたらすぐに警察に盗難届けを提出しておくことが非常に大切です。車を盗まれた後すぐに警察へ盗難届を提出していて、その4~5日後に盗難車で事故を起こされた場合に、車のオーナーの管理責任が否定された判例もあります。

もし盗難に気づいたら、必ず最寄りの交番などに提出しておきましょう。

2.車の管理責任を問われてしまった場合の補償

以上のように、所有者の管理責任を問われてしまった場合、所有者に損害賠償責任が発生します。

このような場合、多くは所有者の加入している保険によりカバーされることにもなりますが、自動車保険の等級は下がり、手続きも煩雑になります。

そして何より、盗難された被害者であるのに、加害者として法的な責任を負うという事実は心情的につらいものです。

車を盗まれないように日ごろから自衛手段を講じておきましょう。

(1) 損傷・故障した車に対する補償

交通事故の場合、盗まれた車の側にも、損傷や故障などがある場合が多いです。

この場合は、車の所有者が加入している自賠責保険や任意保険のうち、車両保険から修理金が支払われることになります。

盗難中の車両保険についての損傷は、車両保険のほとんどのプランでカバーをされています。保険証券を確認してみてください。

(2) 交通事故の被害者に対する補償

万が一、自分の車を適切に管理していなかったと判断されてしまった場合は、所有者も交通事故の被害者に対する損害賠償を支払うことになります。

損害賠償金は、強制保険である自賠責保険、またはご自身が加入している任意保険の対人賠償保険や対物賠償保険金の対象となります。自賠責保険や任意保険には、対人賠償保険と対物賠償保険がありますので、これにより被害者への補償を支払うことになります。

なお、運転者が怪我をしていても、所有者の人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険はおりません。これらは、運転者が保険加入車両の使用について正当な権利を有する人の承諾を得ている場合が適用されるための条件となっています。
盗難者にとっては自業自得であり、無許諾で他人の車を運転することがいかに危険なことかお分かりいただけると思います。

3.所有者に管理責任違反がない場合の被害者救済

(1) 盗難車両の保険は適用外

車の所有者の管理方法が問題ないと判断された場合、車の所有者に損害賠償義務は生じませんので、車を盗んだ犯人である運転者が損害賠償責任を負うことになります。

ここで問題となるのは、運転していた車両にかけられていた自賠責保険や任意保険では、車を盗んだ運転者の運転による事故が補償されないということです。

大きな事故であれば数千万単位の賠償金が発生しますので、盗難者に自費で支払う余力がないことがあります。この場合、被害者の救済はどうなるのでしょうか?

(2) 盗難車事故の被害者の救済制度

もし被害者自身が任意保険に加入をしていて自身の、人身傷害保険を付けていた場合、自分の任意保険から保険金を受けることができます。

また、任意保険に加入していなかったり、任意保険の範囲でカバーされないほどの損害を負ってしまったりする被害者を救済する最終手段として、「政府補償事業」という、国が補償している制度があります。

政府補償事業は、強制保険である自賠責保険からも補償が受けられない被害の国家補償制度で、日本政府から、自賠責保険の支払上限額と同額を上限とした補償の支払を受けることができます。
上限は、傷害について120万円、後遺障害について75万円から4,000万円、死亡については3,000万円です。

なお、人身事故のみが補償の対象となりますので、被害者の車などの物損については補償対象外となります。

ただし、任意保険の人身傷害保険からの保険金支払い部分は、政府補償事業から控除されますので、ダブルでもらえるというわけではありませんのでご注意ください。

4.まとめ

警視庁の調べによれば、車の盗難事故は毎年一万件以上発生していますので、決して他人事とはいえません。「ついキーをかけ忘れてしまう」などのミスは、誰にでも発生します。

愛車を守るためにも、また盗難車で事故をおこされるという最悪の事態を防ぐためにも、エンジンをかけたまま車から離れない、キーやロックを忘れない、イモビライザなどの盗難防止機器を利用するなど、車の盗難には十分に気をつけましょう。

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