後遺障害の逸失利益!職業別の早見表・対応方法も解説

後遺障害の逸失利益の計算式

交通事故によってむち打ちなどの神経障害など後遺症が残った場合に、加害者に対して「逸失利益の請求」ができるケースがあります。

逸失利益とは「本来交通事故に遭わなければ得る事ができたであろう収入に対する損害賠償」のことを言います。

逸失利益は計算が少し複雑で、また職業や属性によって、対応方法が異なります。

そこで今回は、会社員や主婦、無職者などタイプ別の早見表について解説したいと思います。

交通事故の逸失利益の計算式

まず交通事故の逸失利益の基本的な計算方法を示します。

逸失利益の計算式と計算例

すべてのタイプを通じて、逸失利益の基本的な計算方法は以下の通りです。

逸失利益=基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に応じたライプニッツ係数

たとえば、以下のような条件で逸失利益を計算すると、次のようになります。

  • 被害者の状況
  • 年収:550万円→基礎収入額
  • 年齢:43歳→年齢はライプニッツ係数を求めることに利用します
  • 後遺障害等級:14級→等級は労働能力喪失率を計算する際に利用します
  • 計算方法
  • 43歳のライプニッツ係数:16.936
  • 14級の労働能力喪失率:5%
  • 計算式:550万円 × 5% × 16.936 = 4,657,400‬円

【参考外部サイト】就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省

関連記事
交通事故の逸失利益の自動計算ツール・計算式や方法を解説!
交通事故の逸失利益の自動計算ツールと実際の計算方法を知りたい方がいらっしゃることでしょう。 事故によって受けたけがや…[続きを読む]

逸失利益は計算式通りに請求できないことも

上述した計算方法で逸失利益の算出できます。しかし、現実はそう単純ではなく、この金額をそのまま受け取れるとは限りません。

基礎収入」と「労働能力喪失率」が示談交渉や裁判において争いになるからです。

基礎収入と労働能力喪失率は、以下2つの要素に大きく関係しています。

1:後遺症が「仕事」にどのような影響を与えているのか
2:それによって実際にどの程度の「減収」が発生しているのか

職業別の早見表

逸失利益は、職業や属性によって対応方法が異なります。下記の早見表から、ご自身とマッチする記事を御覧ください。

属性 記事名
主婦
子供・学生
自営業・個人事業主
公務員
無職・ニート
会社員 *会社員の場合は以下、簡単に解説。または、交通事故と逸失利益|もらえる場合・もらえない原因等わかりやすく解説!

会社員・サラリーマンは仕事への影響も考慮してもらえる

会社員・サラリーマンの場合は、事故前の「基本給」「歩合給」「各種手当」「賞与」などが基礎収入の対象となります。

そして、会社員・サラリーマンの逸失利益は、後遺障害の内容によっては大きく仕事に影響するため、労働能力喪失率が基準よりも高く判定されることがあります。

また、後遺障害を原因として下記のような事が生じたことを主張するのが逸失利益の増額を要求するポイントといえます。

  • 配置転換により減収が生じた
  • 将来の出世レースから除外された

また、会社員でも実際の給与が「賃金センサスの平均賃金よりも低い場合」は、賃金センサスの平均賃金を基礎として算定できる場合があります。

賃金センサスは逸失利益を計算する際に、利用することが多いので、下記記事などを参考にしてください。

関連記事
厚生労働省
賃金センサスとは?賃金センサスの読み方と交通事故での利用方法を解説!
交通事故では、賠償額の算定にあたり、「賃金センサス」の数字を利用する機会が数多くあります。この記事では、賃金センサス…[続きを読む]

自営業者は、基礎収入の客観的証拠が必要

自営業者の場合も、後遺障害が実際の仕事にどれだけ影響しているのかを適切に主張することが、逸失利益を算定するうえでとても重要になります。

例えば、店舗を経営している方などは、事故が原因で「店を閉める」ことになれば、多額の逸失利益が認められる可能性があります。

なお、自営業者の基礎収入は、前年度の「確定申告書に記載がある所得額」を基に計算します

そのため、確定申告をしていなければ、仮に多くの収入があったとしても、公に証明することができないので、基礎収入を「賃金センサス」を参考に計算するケースもあります。

関連記事
自営業者の後遺障害逸失利益
自営業者の後遺障害逸失利益はいくら?計算方法や裁判例を使って解説
逸失利益は、事故前の収入実績をもとに算定します。被害者が、サラリーマンであれば、収入実績を証明することは容易ですが、…[続きを読む]

公務員は減収がないと逸失利益を認められ難い

公務員の場合も基本的な考え方は会社員と同じで前年の給与収入がベースとなります。

ただ、公務員の場合は民間企業よりも事故の影響で減収を招くような配置転換は起りにくく、職場からの配慮が受けやすい環境にあるため、「実質的な減収が発生しにくい」という特徴があります。

そのため、実際の労働能力喪失率よりも「制限」されるケースがあります

ただし、近年では、被害者保護から公務員にも逸失利益を認めた裁判例が多くみられるようになってきています。

関連記事
公務員の後遺障害逸失利益
公務員の後遺障害逸失利益はどうなる?計算方法や裁判例を詳しく解説
被害者の中には、後遺障害が残ったものの、事故前と同じ仕事を継続し、収入に変化のない方もいます。この場合、事故の前後で…[続きを読む]

無職でも逸失利益が認められる可能性

被害者が無職であっても「労働意欲があり、就労する蓋然性」が高ければ、逸失利益が認められる可能性があります。

裏を返せば、ニート・引きこもり等の状況にあり、全く求職していなければ、逸失利益が認められない可能性が高いです。

特に、被害者が高齢者であれば、就労可能性が相対的に低いため、逸失利益の請求は難しくなります。

なお、無職者の基礎収入は、「賃金センサス」「失業前の収入」を基準に計算することが一般的です。

事故前に、就職が決まっていた場合などは「内定先の給与」なども考慮されます。

関連記事
自営業者の後遺障害逸失利益
自営業者の後遺障害逸失利益はいくら?計算方法や裁判例を使って解説
逸失利益は、事故前の収入実績をもとに算定します。被害者が、サラリーマンであれば、収入実績を証明することは容易ですが、…[続きを読む]

社長や会社役員は、逸失利益を認められ難い

社長や会社役員の場合は、現場で直接仕事をするというよりは、デスクに座って指示を出すことが多いため、むち打ち症程度の後遺障害では仕事にほとんど影響はないでしょう。

したがって、実質的に減収が生じていなければ、後遺障害逸失利益が認められないことになります。

なお、会社役員の基礎収入は、原則として「労務対価部分」のみを指しています。

専業主婦・パート主婦でも逸失利益の請求が可能

主婦自体は金銭を稼ぎ出す労働ではないため、一見すると逸失利益はないようにも感じますが、たとえ専業主婦の場合でも家事労働を労働力と考えて逸失利益を請求する事ができます

この際の基礎収入は「賃金センサス女子労働者全年齢」または「年齢別平均」の金額をベースにして計算をします。

なお、パート収入のある主婦の場合については、パート収入を基礎収入として計算することもあります。

ただ、パート収入が「賃金センサス女子労働者」の金額より低い場合は、「賃金センサス女子労働者」の金額をベースに計算します。

関連記事
主婦の後遺障害逸失利益
主婦の後遺障害逸失利益を計算|後遺障害14級・12級の場合など解説
交通事故で後遺障害が残ってしまったケースで損害賠償金の大きな部分を占めるのが後遺障害逸失利益です。ただ、逸失利益は、…[続きを読む]

子供・学生は、賃金センサスが基礎収入のベース

18歳未満の子供や学生の場合は、就業可能年数を18〜67歳までを就労可能とみなして「49年間を就労可能年数」として計算することがポイントです。

基礎収入は原則として「賃金センサス男女別全年齢平均賃金」をベースに計算し、進学が確実な高校生や18歳以上の大学生の場合は「賃金センサス男女別学歴別平均賃金」をベースに計算します。

関連記事
子ども・学生の後遺障害逸失利益は
子ども・学生の後遺障害逸失利益|学歴等に注意して計算!
逸失利益は、被害者が事故前に得ていた収入の実績から算定します。これを基礎収入と言います。しかし、まだ働いたことのない…[続きを読む]

適切な逸失利益を得るためには弁護士に相談

後遺障害の逸失利益の計算式や計算方法、職業別の早見表、逸失利益の自動計算機などを解説致しました。

適切な逸失利益を請求するにはどうすればよい?

交通事故に遭うと「慰謝料」という損害賠償の一部に目が行きがちですが、後遺障害が認定されるような怪我をした場合、逸失利益も加害者側に請求する必要があります。

適切な逸失利益を請求するには、交通事故に強い弁護士に相談するのが一番です。

特に「減収が発生はしていないが、特段の事情で仕事に悪影響」が出ている方は、交通事故の逸失利益に強い弁護士に一度相談してみるといいでしょう。

交通事故に強い弁護士の探し方は?

本サイトには全国の交通事故に強い弁護士を掲載しております。お近くの弁護士を探して、無料相談してみましょう。

交通事故に強い弁護士に無料相談できます

  1. 保険会社が提示した示談金・慰謝料に不満だ
  2. 事故の加害者・保険会社との示談交渉が進まない
  3. 適正な後遺障害等級認定を受けたい

弁護士に相談することで、これらの問題の解決が望めます。
保険会社任せの示談で後悔しないためにも、1人で悩まず、今すぐ弁護士に相談しましょう。

交通事故の無料相談ができる事務所
【東京都・港区・六本木】
ベリーベスト法律事務所
  • 初回無料相談
  • 土日対応可能
  • 慰謝料無料診断
全国対応の「交通事故専門チーム」によるサポートが特徴の法律事務所です。まずは、交通事故専門チームによる「慰謝料無料診断」をご利用下さい。
交通事故でお悩みなら今すぐ弁護士相談
050-5267-6329
[電話受付]平日 9:30~21:00 土日祝 9:30~18:00
都道府県から交通事故に強い弁護士を探す
監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は交通事故弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
この監修者の記事一覧

あなたへおすすめの記事

この記事が役に立ったらシェアしてください!