交通事故で外傷性てんかんになった場合の症状と後遺障害は?

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交通事故で頭部に外傷を受けると、その後、突発的に意識を失ったり、手足が硬直して体が震えるなどの「てんかん症状」の発作を起こすことがあります。

これが交通事故による「外傷性てんかん」です。

ここでは、外傷性てんかんの症状、認められる可能性のある後遺障害等級、その認定基準、後遺障害慰謝料や逸失利益の賠償金の相場、実際に訴訟で問題となったケース、適正な賠償金を受け取るためのポイントについて説明します。

交通事故でも発症する外傷性てんかんとは

外傷性てんかんの症状

「てんかん」とは、脳の神経細胞が突然に電気的な興奮状態となり、様々な発作が引き起こされる病気です。

てんかんの原因も様々ですが、そのうち頭部に外傷を受けたことを原因とするのが、外傷性てんかんです。

てんかんの症状は、電気的興奮が生じる箇所や範囲によって様々ですが、主な症状は次のように分類されています。

全般発作|脳全体が一気に興奮して始まる発作

強直間代発作意識を失い、手足をつっぱらせてガクガクとなる全身の痙攣が現れる発作です。白目を向いて泡をふきます。
つっぱりを「強直(きょうちょく)」、ガクガクを「間代(かんだい)」といい、通常は数分で終了します。
脱力発作身体全体の筋肉から緊張が減退、失われて、倒れてしまう発作です。発作の時間は数秒程度です。
欠神発作突然にボーッとした状態となって動作や反応が停止してしまう発作です。数十秒程度でもとにもどります。
ミオクロニー発作身体の筋肉が一瞬ピクッと収縮する発作です。
ごく瞬間的なので自覚することができませんが、この発作で持っていたモノを取り落としてしまったり、転んでしまうことがあります。

部分発作|脳の一部から興奮が始まる発作

単純部分発作電気的興奮を起こした脳の部位により、手足顔がつっぱる、けいれんする、目がピカピカする、音が響いて聞こえる、聞こえにくくなる、頭痛、吐き気等など様々な症状を引き起こします。
意識を失わない発作なので、患者は発作の始まりから終わりまで症状があることを意識できます。
複雑部分発作だんだんと意識が遠くなってゆく発作で、ボーッとしたり、フラフラしたり、意味もなく手をたたく、口をもぐもぐ動かすなどの動作をする発作です。
患者は、意識を失わないものの、発作中の記憶はありません。

参考外部サイト:日本神経学会「脳神経内科の主な病気」、厚生労働省「みんなのメンタルヘルス

外傷性てんかんか否かの診断基準

外傷性てんかんの診断基準として広く用いられているものにWalkerの6項目という基準があります(※)。

  1. 発作は、まさしくてんかん発作である
  2. 受傷前に、てんかん発作がなかった
  3. 外傷は脳損傷を起こすのに十分な程度の強さであった
  4. てんかん発作の初発が、外傷後あまり経過していない時期に起こった(閉鎖性外傷で2年、開放性外傷で10年、2年以内に80%以上が発作を発症)
  5. 他に、てんかん発作を起こすような脳疾患や全身疾患を有していない
  6. てんかんの発作型、脳波所見が脳損傷部位と一致している

このような基準とMRI、CT等の画像診断から、外傷性てんかんと診断されると、次は、その内容・程度に応じた後遺障害等級認定の問題となります。

※「後遺障害等級認定と裁判実務ー訴訟上の争点と実務の視点」弁護士高橋真人編著新日本法規発行」156頁

外傷性てんかんで認められる後遺障害等級

認定の可能性がある後遺障害の種類と等級

外傷性てんかんで自賠責保険に認められる可能性のある後遺障害等級は次のとおりです(※)。

等級後遺障害の内容
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することが出来ないもの
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することが出来ないもの
9級10号神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの

※ 自動車損害賠償保障法施行令別表第二から抜粋

認定基準

上の各後遺障害の認定基準は次のとおりです(「労災補償障害認定必携」より)。

てんかんの等級認定は、「発作の型」と「発作の回数」等に着目します。

まず、「発作の型」を次のように分けます(※)。

A型意識障害の有無を問わず転倒する発作
例1強直間代発作
例2脱力発作のうち意識は通常あるものの、筋緊張が消失して倒れてしまうもの
B型意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
例1意識混濁を呈するとともに、うろうろ歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないもの

※上記認定基準のA型・B型の名称は、基準をわかりやすくするために執筆者がつけた名称です。

次に「発作の回数」等により、次のように振り分けます。

等級発作の型発作の回数等
5級2号A型またはB型1か月に1回以上あるもの
7級4号A型またはB型数か月に1回以上あるもの
7級4号A型、B型以外の発作1か月に1回以上あるもの
9級10号A型、B型以外の発作数か月に1回以上あるもの
9級10号服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
12級13号発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波(※)を認めるもの

※てんかん性棘波(きょくは)とは、脳波検査で記録される棘(トゲ)のようにとがった特徴ある異常な波形です。正常な脳波は、小さなさざ波のような形状となります。

また「1か月に2回以上の発作がある場合」には、医学経験則上、てんかん発作のみが単独で残存することは想定し難いので、通常は脳挫傷があり、高度な高次脳機能障害を残す状態でてんかん発作を伴っているケースが考えられます。

そこで、1か月に2回以上の発作がある場合には、通常、高度の高次脳機能障害を伴っているので、脳の高次脳機能障害にかかる第3級以上の認定基準により障害等級を認定することとされています。

外傷性てんかんの後遺障害慰謝料と逸失利益

後遺障害慰謝料

外傷性てんかんの後遺障害慰謝料の相場は次のとおりです。

等級自賠責基準任意保険基準弁護士・裁判基準
5級599万円700万円1400万円
7級409万円500万円1000万円
9級245万円300万円690万円
12級93万円100万円290万円

自賠責基準とは、公的に定められた最低限の賠償額であり、任意保険基準とは、各保険会社が独自に定めた損害賠償額の基準です。保険会社は、賠償額の基準を公にしていないので、上記の数次は、旧任意保険統一支払基準を基に記載しています。

弁護士基準は、裁判所でも用いられることから裁判基準とも呼ばれる法的に妥当な基準です。ご覧の通り、3つの基準のうち最も高額でもあり、被害者はこの基準をもって交渉すべきです。

ただし、これらはあくまでも相場に過ぎず、個別の事情によって増減されます。例えば、次の裁判例を見てください。

裁判例1

鹿児島地裁平成14年3月8日

外傷性てんかん(9級10号)と仮面うつ病(9級10号)で併合8級と認定された被害者(女子大学生・21歳)につき、被害者本人分の後遺障害慰謝料770万円に加えて、母親への慰謝料100万円の合計870万円を認めました(8級の弁護士基準は830万円)。

被害者以外に近親者の慰謝料を認めるのは、通常、1級、2級などの重い後遺障害の場合ですが、本裁判例は次のとおり、母親の事情を丁寧に認定して母親の慰謝料を認めたものです。

  • 母親は、海外で働くことを夢見て鹿児島から名古屋の大学に進学した被害者を経済的に援助して将来に大きな期待を寄せていた
  • 事故後は、母が地元鹿児島から再三入院先に駆けつけて介護にあたった
  • 被害者が浴室で意識を消失し溺れかけたときには、母は渾身の力で救助して腰椎圧迫骨折となってしまった
  • 母の介護にもかかわらず、被害者本人は、事故後8年経ても就業が困難で母親の無念さ悔しさは察するに余りある
  • 長年の介護で母も体調がすぐれない(自保ジャーナル1444号2頁)

このように、後遺障害慰謝料は基準化されているとは言っても、個々の事案における具体的事情が考慮されます。

上の裁判例は、被害者側が、本人のみならず、母親の事情・心情も丁寧に主張し、証拠をもって裏付けて裁判官を説得したことが功を奏したものと言えるでしょう。

後遺障害逸失利益

外傷性てんかんの後遺障害について、等級に応じた労働能力喪失率は次のとおりです。

等級労働能力喪失率
5級79%
7級56%
9級35%
12級14%

逸失利益は以下の計算式により求めます。

逸失利益=基礎収入 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に応じたライプニッツ係数

「就労可能年数に応じたライプニッツ係数」は、以下の国土交通省のサイトで調べることができます。

参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表

では、実際にどのような賠償額となるか具体例の数字から計算してみましょう。

裁判例2

大阪地裁平成15年6月27日

被害者の男性(タクシー運転手・症状固定時59歳)は、外傷性てんかんを訴えましたが、自賠責保険からは事故との因果関係を否定されて後遺障害非該当とされてしまい、裁判所に提訴しました。

裁判所は、交通事故による外傷性てんかんであることを認定し、就労可能年数11年間にわたる労働能力喪失率35%を認めました。

(交通事故民事裁判例集36巻3号893頁)

仮に、この被害者の基礎収入が年収500万円であったとすると、逸失利益は次のとおりとなります。

500万円 × 35% × 8.306(※)= 1453万5500円

※就労可能年数11年間のライプニッツ係数

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交通事故による外傷性てんかんの裁判で問題となりやすい点

外傷性てんかんでは、保険会社が交通事故との因果関係を否定して争うケースが多いとされています。

例えば、上に紹介した裁判例2(大阪地裁平成15年6月27日)では、自賠責保険が事故との因果関係を否定し、後遺障害に該当しないと認定していた事案です。

問題は、以下のような点にあり、前述のWalkerの6項目という診断基準にあてはまらないというのです。

  1. 被害者に脳波異常が認められない
  2. 脳に損傷を起こすような強さの頭部外傷を受けていない

しかし、裁判所は、1.について、発作間欠期(発作のないとき)には、脳波に異常がない場合も少なくないこと、2.について、軽微な頭部損傷でもてんかんが発生する可能性があることを指摘したうえで、次の諸点から事故と外傷性てんかんの因果関係を認めました。

  • 被害者は事故による頭部打撲をきっかけとして変調を訴え始めたこと
  • 事故の5か月後からたびたび意識を喪失する発作を起こしていること
  • 抗てんかん薬の服用を開始してからは発作が減少していること
  • 主治医は外傷性てんかんと診断して、抗てんかん薬の投与を継続していること

先に述べたように、この被害者には、11年間、35%の労働能力喪失が認められて、逸失利益の賠償金も認められましたが、自賠責保険に後遺障害を否定された段階であきらめてしまえば、後遺障害慰謝料も逸失利益も0円となるところでした。

被害者側が粘り強く戦ったことが、正当な賠償金を受け取ることにつながったと言えましょう。

外傷性てんかんの後遺障害で適正な賠償金を受けるために

外傷性てんかんは、発作の内容と頻度に応じて等級が決まるので、後遺障害等級の高低を巡って争いになるケースはあまりないとされています。

しかし、そもそも事故との因果関係を否定されてしまえば、後遺障害の存在自体を認めてもらえません。

また、上の裁判例2のように、事故後、相当な期間を経てから発症する場合もあること、てんかん発作で病院を受診する患者の中には、実はてんかん発作ではなく、その他の原因(脳虚血性発作、心因性発作、偏頭痛など)と診断される場合が相当数あると言われていることからも、てんかん症状と認めてもらうこと自体に関門があるケースもあり得ます。

したがって、適正な賠償金を受け取るためには、外傷性てんかんを含む、交通事故の後遺障害に関する医学的知識も十分備えている交通事故に強い弁護士から助言を受け、対応を考えることが必要となります。

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