無保険事故は怖い!任意保険の未加入事故被害に遭った問題と対処方法
無保険事故に遭った場合に取るべき対処法をご説明していきます。交通事故の相手が保険に加入していなければ、当然、保険会社…[続きを読む]
この記事では、トラック事故被害に遭うと想像以上に面倒と言われる理由を明らかにし、トラック事故の被害者の対応方法を解説します。
トラックを相手とする交通事故は死亡事故など重大な結果につながりやすいものです。
しかも、トラックを相手とした事故は示談交渉が難しく、訴訟でも紛糾して解決に時間がかかるケースが多いと言われ、面倒な事件として敬遠する弁護士もいるほどです。
何故、トラック事故が面倒なのでしょうか?また、これにどうのように対処したら良いのでしょう?
目次
トラックの事故を主な原因別にみると次のとおりです。
安全不確認(※1) | 28.0% |
---|---|
脇見運転 | 19.3% |
動静不注視(※3) | 14.1% |
漫然運転(※4) | 10.1% |
【出典】自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(平成30年度)|国土交通省自動車局
※1 安全不確認:十分な安全確認を怠った運転です。
※3 動静不注視:「相手が避けてくれるだろう」と期待して運転することです。
※4 漫然運転:運転以外のことを考えるなど他のことに気を取られて運転していてることです。
自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書の平成30年度版によれば、トラックの事故は、他車との事故が、約90%、そのうち約50%が追突事故となっています(※)。
死亡事故の割合も、やはり追突事故が多く、死亡事故全体の3割になります。
また、同報告書によれば、「平成 29 年中に発生したトラックによる人身事故 17,985 件のうち、追突事故が最も多く全体の 47.0%(8,452 件)」を占めているということです。
【出典】自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(平成30年度)|国土交通省自動車局
トラック事故が「面倒」と言われる理由のひとつが「トラック共済」です。
トラック事業者の場合、任意保険には加入せず「トラック共済」に加入しているケースが多いのです。
トラック運送業者は、各事業者が会員となって事業協同組合という相互扶助のための団体組織をつくることができます(中小企業等協同組合法第1条、第3条1号)。
その事業協同組合は、組合員である各業者のための福利厚生事業のひとつとして「共済事業」を行うことができます(同法第9条の2第1項3号、同条第7項)。
この共済事業とは、組合員である各業者から掛金の支払を受け、事故の発生に対して共済金を交付する事業であり、大雑把にいえば、トラック運送業者が運営する保険です。
全国には、次の15のトラック共済と再共済団体としての連合会が存在します。
トラック事業者が損保会社の任意保険ではなく、トラック共済を選択する理由は、その方が掛け金が安く、経費節減となるからです。
トラック事業者は車両単位の走行距離が長いため事故発生率も高くなり、任意保険では、一般車よりも保険料が割高となります。
しかも、損保会社の任意保険では、支払われる掛け金(保険料)のかなりの部分が、その保険会社の人件費や宣伝費に消費されてしまいます。テレビやネットでの自動車保険の膨大な宣伝を見れば容易に想像がつくでしょう。
これに対し、トラック共済であれば、宣伝費や大量の人員は不要ですから、その運営費を抑えることで掛け金も安くあげることが可能となるのです。
「相手がトラック共済でも、ちゃんと示談交渉ができて賠償金を払ってもらえるなら、いいんじゃないの?」と思った人がいるかもしれません。
しかし、そういうわけにもいかないのです。トラック共済が示談交渉の相手となると非常に手強い相手となるからです。
トラック共済が示談交渉相手となると手強い理由は次のとおりです。
トラック共済はトラック事業者のための福利厚生事業であり、トラック事業者の利益を図ることが第一義です。
もっとも、損保会社の損害保険も、保険契約者の利益を図ることが第一義なので、この点は同じです。
損保会社が金融庁の監督を受けるのと同様に、トラック共済は主務官庁である国土交通省の監督を受けており、決して野放しではありません。
したがって、トラック共済が手強い理由として事業者のための存在であることを強調することは間違いです。むしろ手強い理由は、次の2つにあります。
トラック共済を実施する共済組合は、大手損保会社のように大規模組織で契約者を大量に抱える存在ではありませんから、賠償金に充てる資金も限りがあります。態度が厳しいのは当然です。
損保会社は、次々に一般顧客を獲得していかなければ経営が成り立ちません。顧客である保険契約者がもっとも嫌がるのは、被害者から訴訟を起こされることです。
もちろん、訴訟となっても、保険会社の弁護士が対応しますし、賠償金を支払うのは保険会社です。
しかし、被告として訴えられ、裁判所からの呼出状が届くのは顧客の自宅であり、法廷で本人尋問を受けるのも顧客なのです。顧客としては、保険会社に任せた以上、話し合いで無難に終わることを期待するのは当然です。
したがって、保険会社としては、賠償金の支払を節約するために、ダメ元で無理筋の主張を試してみることはできません。無理な主張で紛争をこじらせて訴訟が頻発すれば顧客からの苦情で評判が落ち、契約をとれなくなってしまうからです。
ところが、トラック共済は、自動車保険とは違い、顧客からの評判を気にする必要はありません。むしろ、事故で請求された損害賠償に対して、できる限りトラック事業者側の主張を貫くことが重視され、その結果、訴訟で争う結果となることを厭いません。
このため、示談交渉においても、なかなか譲歩することはありませんし、被害者側からするとダメ元としか思えない強引な主張をしてくることも珍しくはないのです。
トラック事業者が、どのような無理筋な主張をしてくるか、以下に例をあげ、これに対する対処法を説明しましょう。
トラックに一方的にぶつけられたとしても、事故自体を否定するケースです。物損事故や人身事故でも被害がむち打ち症など一見して怪我が明らかではない場合、「お互いに点数が減ったり、保険料が高くなるのは損だから、内々に話し合いましょう」などとその場で警察へ通報しないよう持ちかけられる場合があります。
安易にこれに応じてしまうと、後で、相手側の運送会社に連絡をしても、事故そのものを否定する悪質な対応をされる危険があります。
たとえ、トラックとの軽微な接触事故であっても、警察へ届出ないことは道路交通法違反(第72条1項、119条1項10号)となります。そのうえ、自動車安全運転センターから交通事故証明書を発行してもらうことができないので、交通事故の被害にあった事実を証明する手段が何もないことになり、何らの賠償も受けられないことになりかねません。
相手が通報を嫌がるなら、必ず、あなたが通報するべきです。
事故の事実を否定しないまでも、ケガの原因が事故であることは認めないという対応です。
しかし、警察に届け出ることにより交通事故証明書が発行されており、しかも、事故後、時間をおかずに病院を受診して、交通事故によって受傷したとの診断書を発行してもらっていれば、通常は、事故とケガの因果関係の立証に困難はありません。
ただし、事故から日数をおいてから病院を初受診した場合は、受診が遅くなった合理的な理由が説明できない限り、事故とケガの因果関係を認めてもらえない危険があります。
したがって、事故後、できるだけ早い受診をお勧めします。
過剰診療、高額診療だとの主張です。たしかに健康保険を使わない自由診療の場合、医療機関によっては診療報酬単価を高額に設定しているケースや不要な検査・治療を施すケースがないわけではありません。
しかし、いずれもレアケースに過ぎず、治療費は「必要かつ相当な範囲」で実費を賠償請求できるとするのが裁判所基準です。
ただし、裁判所基準でも、整体院・整骨院など、医療機関ではない施術施設を医師の指示・同意なく受診した場合の施術費用は賠償請求が認められませんから、必ず医師の指示を仰いでください。
トラック側が、合理的な根拠もなければ、過失割合の交渉もなしに無過失を主張する場合です。
しかし、人身事故では、トラック運転者や運送会社に対する損害賠償請求の根拠となる運行供用者責任(自賠法3条)では、被害者側がトラック側の過失を立証する必要はありません。
逆に、トラック側が、「自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」などの免責要件を立証しない限り責任を免れることはできません。
法的には、トラック側が免責されることは困難ですので、任意に支払わないのであれば、訴訟を検討するべきです。
物損事故でゼロゼロの和解という例はなくはありません。
しかし、それは互いに被った損害額を前提として、互いの過失割合に基づく負担額を計算し、それが均衡しているか、大きな差違がない場合であって、はじめて成り立つ和解です。
互いに損傷があったというだけで、そのような条件が満たされる筈はありません。このような提案には応じないようにしましょう。
このように、相手がトラック共済だと、示談交渉はスムーズには進めにくく、適切な賠償金の支払いを受けるためには多くのケースで訴訟が必要になります。
トラック事故に遭い、相手がトラック共済に加入しているなら、被害者は弁護士に対応を依頼することがほぼ必須となるでしょう。
トラック共済よりもさらに手強いのが自家保険です。「自家保険」とは言っても、実は保険ではありません。
これは、トラック事業者が、事故に備えて自社内で行っている積立金のことです。
経費節減のため任意保険にも共済保険にも入らずに自社内で資金をプールしておいて、事故が起こった時に、その都度そこから支払をした方が経済的だという判断なのです。
トラック事業をおこなうには、国土交通大臣の許可が必要であり、その許可を与える際には、事業遂行の経済的基盤のひとつとして「損害賠償の支払能力」も審査されます(貨物自動車運送事業法第3条、第6条3号、同施行規則第3条の6第3号)。
しかし、許可を得た後に、任意保険や共済保険を解約してしまい、自家保険で対応しようとする業者もいるのです。
そして、こうした自家保険しか講じていないトラック事業者を相手にした事故では、示談交渉の相手はトラック事業者自体です。
保険会社や共済組合が示談交渉の相手となれば、それなりにワンクッション置けますが、トラック事業者そのもの、つまり加害者そのものとの直接の交渉となってしまいますので、なかなか冷静な話し合いは難しくなります。
しかも、自家保険を採用している事業者は、人損では自賠責保険の限度額を超えた部分、物損では全額が、自己負担となるので、必死で抵抗します。賠償額によっては会社の存続自体が危機に瀕するからです。
前述したトラック共済の場合にもまして、強引なものも含めて様々な主張がなされ、示談が難航するケースが多いのです。
このような場合、トラック事業者としても排水の陣で臨んでくるので、弁護士を代理人として交渉しても埒があかないことが珍しくなく、訴訟で対応するしかないのが実情です。
トラックが相手の事故の注意点を以下で確認しましょう。
普通車が相手の交通事故で損害を被った場合、多くのケースで相手の保険会社から賠償金を支払ってもらうことができます。これは、ドライバーが、自動車保険の任意保険に加入しているためです。
ところが、トラックの場合、先の自家保険にみるように、経費節減のために任意保険や共済保険に加入していないことが多いのです。
死亡などの重大な結果が発生することが多いにもかかわらず、被害者が十分な支払いを受けられないという事態が発生しやすいのです。
では、交通事故の相手が任意保険に加入していないと、どのような問題があるのでしょうか?
交通事故の相手が任意保険に加入している場合、相手の任意保険会社が示談代行を担当します。
しかし、相手が任意保険に未加入の場合、本人と交渉をする必要があります。
ところが、相手によっては、そもそも交渉に応じません。連絡を入れても無視したり、夜逃げしたりで行き先がわからなくなるケースもあります。
これは相手がトラック業者の場合も同じです。会社が倒産してしまったり、個人営業主が夜逃げや自己破産してしまえば、人損の自賠責保険負担分を除き、賠償金を受け取ることはできなくなります。
相手が任意保険に未加入の場合、たとえ交渉には応じたとしても、スムーズに進まないことは珍しくありません。
保険会社の示談代行担当者と異なり、一般の方は、損害賠償に関する法的知識もノウハウもないから仕方ありません。
トラック業者と言っても、損害賠償の分野では一般の素人と同程度の知識・経験しかない者も少なくありません。
むしろ、業界仲間から誤った情報を仕入れて交渉に臨んだり、違法な事件屋あがりの人物を事件処理担当者に据えていたりすることも多く、強硬な姿勢と恫喝だけで問題を解決できると勘違いしている輩もよくみるのです。
相手が任意保険に加入している場合は、示談や調停の成立、訴訟の判決によって、相手の支払義務が確定すれば、必ず賠償金の支払いを受けることができます。これは共済保険の場合も同じです。
しかし、保険に未加入であれば、賠償責任が確定したとしても、実際に支払えるかどうかは別です。自家保険といっても、現実に積立金があるのかどうかも、外部からはわかりません。
トラック業者が任意に支払いをしない場合は、強制執行をするしかありません。
訴訟の確定判決、調停調書、強制執行認諾文のある公正証書による示談書があるなら、これに基づいて直ちに強制執行が可能ですが、当事者間で作成した示談書しかないなら、それを証拠として訴訟を提起して確定判決をとる必要があります。
しかし、相手に資産がなければ、強制執行をかけても空振りになるだけです。
トラック業者には、トラック車両という資産がありますが、通常は、車両代金は融資でまかなっており、車両を担保とするために、その所有権が売主に留保されていますから、トラックを差し押さえても、ほとんどの場合、売主から第三者異議の訴え(民事執行法38条1項)を起こされてしまい、強制執行は停止され、最終的に取り消されてしまいます。
強制執行を行うには、事前に相手の資産調査を綿密に行う必要があり、これをも含めて弁護士に依頼するべきでしょう。
トラック事故で追突事故が多い理由は、車体が重いためにブレーキを踏んでから停止するまでの制動距離が長いことが考えられます。荷物を積み過ぎた過積載のトラックも多く、危険な存在です。
の3つが挙げられます。
トラック事業者に共済保険加入業者や保険未加入者がおり、示談交渉で決着をつけることが困難な場合や最終的に賠償金を取り立てることが困難なケースがあることを説明しました。
このような相手との交通事故で悩んでおられる方は、是非、交通事故問題に強い弁護士に御相談されることをお勧めします。