追突事故で頚椎椎間板ヘルニア!損害賠償請求に条件があるの?

「追突事故後、首、肩、腕がしびれたり、痛んだりする症状がある。」もしかしたら、その原因は「頸椎の椎間板ヘルニア」かもしれません。

治療をしても、しびれや痛みが治らないときは、後遺障害として損害賠償を請求することができます。

しかし、交通事故の後に頚椎椎間板ヘルニアの症状があらわれたからといって、そのすべてが損害賠償の対象となるわけではありません。では損害賠償を請求できるための条件とは何でしょうか?

今回は、頸椎椎間板ヘルニアの後遺障害と損害賠償について解説します。

1.頚椎椎間板ヘルニアの症状とは?その原因は?

まず頚椎椎間板ヘルニアとはどんな疾患なのか説明しましょう。

「頚椎」とは首の骨です。ここには7個の椎骨(脊椎を構成しているひとつひとつのブロックとなる骨)が並んでいます。椎骨と椎骨の間には弾力のある軟骨がはさまってクッションの役目をしています。このクッションが椎間板です。

本来は椎骨と椎骨の間にあるはずの椎間板が、何らかの原因で、後方に飛び出してしまい「神経根」を圧迫することで、しびれや痛みの症状が出るのです。
これが頚椎椎間板ヘルニアです。

主な原因は「加齢」によるものか、「外傷」によるものです。追突事故の場合、身体に衝撃を受けることで、椎間板が後方に飛び出して神経根を圧迫してしまう場合があるのです。

2.頸椎椎間板ヘルニアの後遺障害等級は?

頸椎椎間板ヘルニアで、首、肩、腕の痛みやしびれの症状が出て、治療をしたけれど症状が残ってしまったという場合、その程度に応じて、後遺障害として損害賠償請求の対象となります。

頸椎椎間板ヘルニアで、首、肩、腕の痛みやしびれの症状が残った場合は、次の後遺障害等級に該当する可能性があります。

後遺障害等級後遺障害の内容後遺障害慰謝料
(弁護士基準)
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの110万円

どのような場合が、これらに該当するのかについては、この記事の後半で詳しく解説します。

3.頚椎椎間板ヘルニアの後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益

それでは、頚椎椎間板ヘルニアで後遺障害が残った場合の損害賠償の内容について説明しましょう。

3-1.後遺障害等級12級の後遺障害慰謝料と逸失利益について

3-1-1.後遺障害慰謝料

12級の後遺障害に対する慰謝料の相場は、290万円(弁護士基準)です。

なお、自賠責保険では93万円とされています。93万円までは自賠責保険が負担する部分ということで、これを超える金額の部分は、加害者とその任意保険会社が負担することになります。

3-1-2.後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害のために得ることができなくなった将来の収入です。後遺障害によって働く力が失われたと考え、それに相当する収入を損害と評価します。働く力が失われた割合を労働能力喪失率といい、後遺障害等級ごとに喪失率が定められています。12級の場合は、労働能力喪失率14%です。

逸失利益は、以下の計算方法で求めることができます。

逸失利益=年収額×労働能力喪失率×被害者の年齢に応じたライプニッツ係数

被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」の一覧表は、国土交通省のサイトを参照ください。

3-1-3.後遺障害慰謝料と逸失利益の計算例

上記の計算式、労働能力喪失率、後遺障害慰謝料の弁護士基準を使って後遺障害の賠償額を計算してみましょう。

被害者が年収600万円、年齢35歳とします。35歳の場合、前述した一覧表によると、ライプニッツ係数は15.803です。後遺障害等級12級(喪失率14%)とします。

逸失利益=600万円×14%×15.803=1327万4520円(A)
後遺障害慰謝料290万円(B)
(A)+(B)=1617万4520円

これが後遺障害の賠償額となります。
ただし、交通事故の損害賠償はこれだけにとどまりません。これ以外にも

  • 治療費
  • 入通院慰謝料
  • 入通院交通費
  • 休業損害

などの損害賠償も請求できます。

3-2.後遺障害等級14級の後遺障害慰謝料と逸失利益について

14級の後遺症害慰謝料の相場は110万円です(弁護士基準)。自賠責保険が負担する金額は32万円です。

14級の労働能力喪失率は5%です。

前述した例と同じ前提で計算してみましょう。

年収600万円、年齢35歳、対応するライプニッツ係数15.803、後遺障害等級14級(喪失率5%)

逸失利益=600万円×5%×15.803=474万0900円(A)
後遺障害慰謝料32万円(B)
(A)+(B)=506万0900円

4.頚椎椎間板ヘルニアが12級ないし14級と認定されるための条件

頚椎椎間板ヘルニアによる痛み、しびれが残ったときに、自賠責保険によって等級認定されるためには、どのような条件が必要でしょうか。問題は、次のようにわけることができます。

①12級と14級の区別
②14級と「非該当」の区別

自賠責保険の実務で用いられている基準は、次のとおりです(※1)。

12級「障害の存在が医学的に証明できるもの」
14級「障害の存在が医学的に説明可能なもの」

※1 交通事故相談ニュース37号「日弁連交通事故相談センター東京支部主催 相談担当者研修会報告 後遺障害等級について」弁護士横田高人

4-1.頚椎椎間板ヘルニアが12級と評価されるための条件

12級の「医学的に証明できる」とは「他覚所見」があることです。他覚所見とは、医師が医学的な知識をもって症状の存在を認識したということです。これに対し患者本人にしか認識できない症状が自覚症状です。

他覚所見とはレントゲン、CT、MRIなどの画像診断で異常を確認できること(画像所見)を意味しており、保険会社は、画像上、異常が認められない場合は他覚所見がないことになるから12級には該当しないと主張することがあります。

しかし、これは間違った不当な主張です。もちろん、レントゲン、CT、MRIなどの画像診断で異常が認められれば、それは他覚所見です。しかし、画像上は明白な異常がなくても、筋力検査、知覚検査、反射検査といった、医師が実施する神経障害を確認するための各種の検査(これを「神経学的検査」といいます)によって、症状の存在を医学的に判断できていれば、それは他覚所見と言えるのです。これを神経学的所見といいます。

他方、画像による他覚所見があれば、必ず障害の存在が医学的に証明できるとまでは言えません。画像で神経の圧迫が認められても、圧迫されている神経が支配しているはずの身体領域には神経学的な異常がないとか、別の神経が支配しているはずの身体領域に神経学的な異常が生じているという場合は、画像上の所見と神経学的異常が整合しておらず、医学的な証明ができていないことになります(※2)。

このように、12級となる条件は次のとおりにまとめることができます。

12級と評価される条件
画像所見があること
画像所見と他の神経学的所見が整合すること
画像所見がない場合は、神経学的所見があること

そこで頚椎椎間板ヘルニアで12級の認定を得るためには、担当医師に依頼して、必ず画像撮影をすること、神経学的諸検査を実施してもらうこと、画像と整合する検査結果を後遺障害診断書に詳細に記載してもらうことが必要です。

※2「後遺障害入門 認定から訴訟まで」弁護士小松初男外編 青林書院発行170頁以下・「後遺症害等級認定と裁判実務」弁護士高野真人編著 新日本法規243頁以下

4-2.頚椎椎間板ヘルニアが14級と評価されるための条件

次に14級です。

自覚症状しかなくとも、医学的に障害の存在が「説明可能」であれば14級となります。逆に、医学的に説明不可能であれば「非該当」となってしまいます。

医学的に説明可能といえるためには、治療の経過から症状に連続性、一貫性が認められることが必要です。

交通事故の障害は、事故後に発症した時点が最も症状が重く、治療を進めるにしたがって症状が軽くなってゆくことが通常です。したがって、この普通の経過とは異なった治療の経過、症状の経過は、医学的に説明ができない症状、故意に誇張した自覚症状と判断されます。

例えば、次のようなケースです。

  • 事故後、相当期間を経過してから、病院を初受診した
  • 治療の途中で、症状が悪化した
  • 診療の途中から、当初はなかった新たな症状が現れた
  • 治療に中断期間があり、中断してから再度治療を始めた

これらのケースは、いずれも上記の通常の場合とは違う経過をたどっています。治療経過から推察される当初の症状とその後の症状に連続性、一貫性がないのです。

もちろん、そのような通常と異なる事態となった合理的な理由があるならば問題はありません。しかし、合理的な理由があると判断されなければ、当初から症状が存在していたとは認められず、仮に現時点で痛みやしびれが存在していたとしても、それは医学的には説明がつかないと評価され、非該当とされてしまいます。

代表的な例を下表にまとめておきます。

合理的な理由と認められるケース合理的な理由と認められないケース
事故直後から、痛みを自覚していたけれど、余人に代えがたい重大な仕事のために初診が遅れた。

事故によりもっと重大な傷害(骨折や臓器損傷など)があり、頚椎椎間板ヘルニアの診療は後回しになった。

単に痛みを我慢していたので初診が遅くなった。

したがって、頚椎椎間板ヘルニアで14級の認定を得るためには、事故から時間を置かずに診察を受けて、定期的に通院することが必要です。治療を途中でやめたり、一度中断してから再開したりすることはおすすめできません。

5.交通事故と頚椎椎間板ヘルニアの因果関係の問題

5-1.因果関係とは

後遺障害の損害賠償が認められるためには、事故と後遺障害の症状との間に、因果関係があることが必要です。因果関係とは「AがなければBはない」という関係にあることで、要するに事故がなければ痛みやしびれの症状もなかったと言えることが必要です。

交通事故による頚椎椎間板ヘルニアでは保険会社が、この因果関係を認めずに争いとなることが多いのです。

因果関係の問題をわかりやすくするために、ここでは交通事故から頚椎椎間板ヘルニアの症状が生ずる経過を2つのパターンに分けたいと思います。それぞれ「外傷型」と「既往型」と名づけることにします。

5-2.外傷型で争いとなる問題点とは?

ひとつめの「外傷型」とは、事故がヘルニアを引き起こし、そのヘルニアから痛み等の症状が生じたというパターンです。

ここでは

第1の因果:「事故→ヘルニア」

第2の因果:「ヘルニア→痛み、しびれ」

が必要です。

ここで最も争いになるのは、「事故→ヘルニア」という第1の因果関係の存否です。ヘルニアの存在が確認できても、事故による外傷性のヘルニアではないとすれば、損害賠償請求はできなくなります。

保険会社が外傷性のヘルニアではないと主張するケースは、典型的には次の2とおりです。

1.事故が非常に軽微で、その事故態様からして、ヘルニアを発症するような衝撃を身体に受けたとは考えられないケース

 

2.ヘルニアの発症部位に加齢による変性(異常)が発見されたケース

2.の変性の例としては、「骨棘」(こっきょく)があります。これは加齢などが原因で骨の先端部が棘状(とげじょう)に変形したものです。このような変化は短期間で生じるものではありません。そこで、このような変性が発見された場合、保険会社は被害者の頚椎には事故前から加齢による変化が生じていたのであって、問題のヘルニアも加齢が原因の既往のものであると主張するのです。

自賠責保険の等級認定の審査においても、このような理由から、事故と後遺障害の因果関係を否定されて、後遺障害に「非該当」とされてしまった例が存在します。

このようなケースでは、どのような対応をすればよいのでしょう?

交通事故に強い弁護士が被害者側の代理人となったときは、「外傷型」でないとすれば、もうひとつのパターン「既往型」の後遺障害だと主張して戦うでしょう。

5-3.既往型とは?

たとえヘルニアが事故によって生じたものでなく、事故前に存在していた(既往)だったとしても、事故の前は痛みやしびれはなかったのであり、事故による衝撃などがきっかけ(原因)となって、すでにあったヘルニアから痛みやしびれの症状が発症してしまったのだと主張するのです。

事故が既往のヘルニアを刺激して痛み等が生じたと言えれば、事故と後遺障害の間の因果関係がつながるわけです。この場合、事故がヘルニアを刺激して痛み等を生じる厳密なプロセスを立証することまでは求めず、事故前は症状がなかった事実、事故の態様、ヘルニアの状態、受診経過などの諸事情を総合的に考慮して因果関係を認定する裁判例が多いとされています。

自賠責保険において外傷性のヘルニアではないとされ事故と後遺障害の因果関係が否定された場合でも、弁護士が訴訟を提起して既往型として争うことで裁判所に後遺障害を認めさせたケースは決して珍しくないのです。

5-4.既往型の弱点とは?

さて既往型でも損害賠償を認めてもらえるのならば、外傷型であると主張する必要はなく、最初から既往型であると主張すれば良いでなないかと思われそうです。たしかに、その方が事故とヘルニア発生の因果関係を立証する必要がないので被害者に有利なようです。

しかし、既往型の主張には被害者に不利を及ぼす難点があります。それは既往型では、裁判所によって「素因減額」をされてしまう可能性があるからです。

素因減額とは、後遺障害という被害の発生や拡大に被害者側の精神的、肉体的な要素(素因)も寄与していると認められて、損害賠償額を一定割合減額されてしまうことです。既往型の場合、交通事故と既往のヘルニアという両方がなければ後遺障害とはならなかったのですから一定割合減額することが公平と判断されるのです。減額の割合は事案によって5%から80%以上まで様々です。

素因減額は、過失相殺と同様に損害賠償の総額に対して一定割合を減額するので、全体の賠償額に大きな影響を与えます。したがって弁護士としては、やはり、まず外傷型として主張、立証を行うことを選択するのです。

このように、後遺障害による損害賠償を請求する場合でも、被害者に有利な賠償を受け取るために、どのように主張を組み立てることが最善かは、交通事故に関する法的知識と裁判実務経験に基づいて判断する必要があるのです。

まとめ

このように、頚椎椎間板ヘルニアで適正な後遺障害等級認定を受け、正しい賠償金を受けるためには、様々なポイントがあり、なかなか被害者お一人で解決できる問題ではありません。ましてや、相手は交渉に長けた保険会社です。

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