交通事故で胸郭出口症候群!より高い後遺障害等級認定を受ける方法

交通事故にあった後、腕を上にあげると痛みやしびれを感じたり、握力が低下してきたなどという症状が出ていませんか?

それは「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」かもしれません。聞き慣れない病名ですが、交通事故で胸郭出口症候群となり、その症状が治らずに残ってしまうケースは多いと言われます。

そこで、後遺障害認定を受けられるか受けられないかは大きな違いとなってきます。

今回は、胸郭出口症候群で請求することができる慰謝料と逸失利益について触れながら、より高い等級を獲得するための留意点について解説します。

1.胸郭出口症候群の症状と原因

1-1.胸郭出口とは

「胸郭」とは、胸をとりまく骨格のことです。「胸郭出口」とは、鎖骨と第一肋骨(一番上にある肋骨)の間にある狭い隙間です。これは体の左右にそれぞれあり、神経のたばや血管(動脈、静脈)が、この隙間を通って、頭や腕の神経、血管につながってゆきます。

胸の骨格から神経と血管が出てゆく隙間なので、胸郭出口と呼ぶわけです。

1-2.胸郭出口症候群とは

この胸郭出口を通る神経や血管が、何らかの原因で圧迫されたり、引き伸ばされたりすることによって生じる疾患が胸郭出口症候群です。

その代表的な症状は、次のような内容です。

  • 上肢(肩から指先まで)の痛み、しびれ、だるさ
  • 肩甲骨周囲の痛み
  • ひじから手首までの内側(小指側)にうずくような痛み、刺すような痛み。しびれ感、ビリビリ感
  • 握力の低下、手先の細かい動作がしにくい

1-3.胸郭出口症候群の原因

胸郭出口症候群の原因は、以下に分けられます。

  • 非外傷性のもの
  • 外傷性のもの

1-3-1.非外傷性の胸郭出口症候群

非外傷性のものには、骨や筋肉の異常などが原因の場合があります。

例えば、そのひとつが「頸肋(けいろく)」です。これは、胎児の時に胸郭出口近くの頸椎から出ている肋骨なのです。通常は成長によって消失するのですが、人によっては消失しないで残ってしまい、神経や血管を圧迫する原因となるのです。

また、胸郭出口症候群は、撫で肩の女性や重いものを持ち運ぶ労働者にみられるような筋肉質の男性に多い疾患とされてきました。撫で肩の女性は肩甲骨が下がりやすく、神経や血管が下方向に引っ張られることが原因となり、筋肉質の男性は発達した筋肉が神経や血管を圧迫することが原因となるとされています。

1-3-2.外傷性の胸郭出口症候群

交通事故との関係では、外傷性胸郭出口症候群がより重要です。

外傷性胸郭出口症候群は、「何らかの外力により引き起こされるものであり、追突事故による鞭打ち損傷やスポーツ外傷などの比較的強い一撃的な外力による場合」があるとされています(※1)。

そのメカニズムについては、次のように説明されています。

外力によって斜角筋(頸椎と第一肋骨をつないでいる細い筋肉)が過度に引き伸ばされたことで、その筋肉に微少な出血を生じ、それが自然に修復され、治癒される過程で、筋肉の柔軟性が低下してしまい、神経との間に摩擦を生じやすくなって神経過敏状態を引き起こし、外傷性胸郭出口症候群が発症するのです(※2)。

胸郭出口症候群

※1、※2:さいたま地方裁判所平成20年3月28日判決

2.胸郭出口症候群の後遺障害等級について

外傷性の胸郭出口症候群と診断され、治療をしても痛みやしびれなどの症状が残ってしまった場合、後遺障害として、その程度に応じて後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益という損害賠償請求の対象となる可能性があります。

後遺障害は、まず自賠責保険による補償の有無及び金額を決めるために、損害保険料率算出機構によって、1級から14級までの段階に分かれた後遺障害等級に該当するか否かを審査されます(等級認定)。

胸郭出口症候群の等級認定には、次の3種類の可能性があります。

後遺障害等級後遺障害の内容
第12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級9号局部に神経症状を残すもの
非該当自賠責保険による補償の対象となる後遺障害とは認められないもの

どのような基準(条件)で、この3種類に分かれるのかについては、後ほど、詳しく説明します。

3.胸郭出口症候群の慰謝料と逸失利益について

胸郭出口症候群が後遺障害と認定されたときの損害賠償額について説明します。
後遺障害の損害賠償には、

後遺障害慰謝料
後遺障害逸失利益

があります。

後遺障害慰謝料と逸失利益の労働能力喪失率は以下の通りですが、それぞれ12級の場合と14級の場合にわけて詳しく見てみましょう。

後遺障害慰謝料

(弁護士基準)

12級290万円
14級110万円
労働能力喪失率12級14%
14級5%

3-1.後遺障害等級12級の後遺障害慰謝料と逸失利益について

3-1-1.12級の後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害によって被害者が受ける精神的、肉体的な苦痛に対する補償です。その金額は、後遺障害の程度に応じて目安が基準化されています。

第12級13号の後遺障害慰謝料額は、290万円が目安です。

この金額は、弁護士基準(又は裁判所基準)による金額です。弁護士基準は、弁護士が保険会社と示談交渉を行なったり、訴訟を行なったりする場合に用いる基準です。

これに対して保険会社が示談交渉において提示してくる賠償額は、その保険会社の内部基準(保険会社基準)に基づく金額であり、保険会社の利益を確保するなどの動機から、弁護士基準よりも遙かに低い金額となっています。

弁護士基準は、過去の裁判例や裁判所交通部の運用などを弁護士団体がまとめて公表したもので、裁判実務において事実上のスタンダードとなっています。

3-1-2.12級の後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は、後遺障害によって失われた将来の収入です。後遺障害が残ってしまったことで、労働する能力が一定割合失われてしまったものとして、これに対応する収入を補償するのです。失われた労働能力の程度は、政令通達によって、後遺障害等級に応じて労働能力喪失率として基準化されています(※3)。

12級の労働能力喪失率は14%です。健康な状態を100%として、14%の働く力が失われたと考えます。

後遺障害逸失利益の計算方法について詳しくは別稿に譲りますが、計算式をあげておきます。

逸失利益=年収額×労働能力喪失率×被害者の年齢に応じたライプニッツ係数

被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」とは、国土交通省の下記サイトでダウンロードできる一覧表で調べることができます。

※3:「自動車損害賠償保障法施行令」及び「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号・平成14年4月1日施行)」

3-1-3.12級の後遺障害慰謝料と逸失利益の計算例

上記の計算式、労働能力喪失率、後遺障害慰謝料の弁護士基準から、12級の後遺障害の賠償額を計算してみましょう。

被害者が年収500万円、年齢55歳とします。

55歳の場合、ライプニッツ係数は9.899です。後遺障害等級12級(喪失率14%)とします。

逸失利益=500万円×14%×9.899=692万9300円(A)

後遺障害慰謝料290万円(B)

(A)+(B)=982万9300円

これが後遺障害の賠償額です。
もちろん、交通事故の損害賠償はこれだけではありません。治療費、入通院慰謝料、入通院交通費、休業損害などの損害賠償も請求が可能です。

3-2.後遺障害等級14級の後遺障害慰謝料と逸失利益について

次に14級の場合を見てみましょう。

14級の後遺症害慰謝料の目安は110万円です(弁護士基準)。

14級の労働能力喪失率は5%です。

前述した例と同じ前提で計算してみましょう。

年収500万円、年齢55歳、対応するライプニッツ係数9.899、後遺障害等級14級(喪失率5%)の場合

 

逸失利益=500万円×5%×9.899=247万4750円(A)

後遺症害慰謝料(弁護士基準)110万円(B)

(A)+(B)=357万4750円

4.後遺障害認定でより高い等級を得るための留意点

4-1.後遺障害等級12級、14級、非該当はどこで区別されるか?

さて、後遺障害等級の12級、14級、非該当の区別について説明します。

4-1-1.12級と14級の区別 他覚的所見の有無

自賠責保険の実務においては、次の基準を用いています。

12級:「障害の存在が医学的に証明できるもの
14級:「障害の存在が医学的に説明可能なもの

12級の「医学的に証明できるもの」とは、他覚的所見があることです。これは、医師が医学的知識に基づいて、末梢神経障害の症状の存在を認識できたことを意味します。これに対し、患者本人にしか認識できない症状が自覚症状です。

他覚的所見は、レントゲン、MRI、CTといった画像によって異常を確認できる場合が代表的なものですが、画像による確認(画像所見)が絶対に必要なわけではありません。画像以外にも、末梢神経の異常を確認するための神経学的検査方法が各種あり、それらによって異常が認められれば他覚的所見があると言えます。

胸郭出口症候群の画像所見としては、レントゲン撮影による鎖骨や第一肋骨の変形などの異常の確認、血管造影撮影検査による血管の異常の確認、神経叢造影撮影検査による神経叢(※5)の異常の確認などが考えられます(※6)。

胸郭出口症候群の神経学的検査方法としては、「アドソンテスト」、「ライトテスト」、「エデンテスト」、「モレーテスト」、「ルースーテスト」等という名称の各種テストがあります。

例えば、わかりやすいところでは、「エデンテスト」とは、患者に胸を張らせ、両肩を後下方に引いた状態で、橈骨(とうこつ)の動脈の脈拍を調べるものです。脈拍が減弱あるいは停止したときは胸郭出口での動脈の圧迫が考えられるとされます(※7)。橈骨(とうこつ)とは、肘から手首までの2本の骨のうち親指側の骨です。

そこで胸郭出口症候群で12級の認定を得るためには、担当医師に依頼して、

  • 画像撮影をすること
  • 神経学的検査を実施してもらうこと

が必要です。

※5「神経叢(しんけいそう)」:末梢神経が集まったり、枝分かれしたりして、網目状となった箇所。「叢(そう)」とは草むらの意味。
※6:神経叢造影撮影検査については、「胸郭出口症候群に対する腕神経叢造影と腕神経叢ブロックについて」(福岡大学整形外科 竹下満外 「整形外科と災害外科」第33巻第1号1984、130頁以下)
※7:「後遺障害等級認定と裁判実務」弁護士高橋真人編著、新日本法規246頁

4-1-2.14級と非該当の区別 医学的に説明がつくかどうか

次に14級と非該当の区別基準について説明します。

自覚症状だけであっても、障害の存在を医学的に説明が可能であれば14級となり、説明不可能であれば非該当です。

医学的に説明可能と評価されるためには、症状に「連続性、一貫性」が認められることが必要です。連続性、一貫性といっても、難しい話ではありません。普通の治療経過かどうかの問題です。

事故の傷害は、事故後に発症した時がもっとも症状が重く、治療が進展すれば、だんだん症状が軽くなってゆきます。これが普通の経過です。これと違う経過は、特別な理由のない限りは、医学的に説明ができない症状と判断されます。

普通とは違う経過とは、次のような場合です。

後遺障害認定上問題となる治療経過問題となる理由
事故から長期間経過してからの初受診そんなに長く時間が経ってから痛くなるのはおかしい
治療途中から症状が悪化、新たな症状が出現事故直後よりも悪くなったり、事故後には無かった症状が出てくることはおかしい
治療を中断して、その後再開理由の無い限り、治療を中断したのは治ったからであって、その後にまた症状が出て治療することはおかしい

もちろん、どれも合理的な理由を証明できれば問題ありません。

例えば、治療途中なのに、仕事が忙しくなり無理をしたため治療を中断せざるを得なかった場合、仕事が非常に忙しかったという事実を証拠をもって立証すれば良いのです。スケジュール表、勤務表、タイムカード、上司など職場の方の陳述書や証言などが考えられます。そのような証拠を示すことができず、ただ「忙しかった」だけでは無理です。

したがって、胸郭出口症候群で14級の認定を受けるには、事故から時間を置かずに診察を受け、定期的な通院を心がける必要があります。

4-2.事故との因果関係の問題

4-2-1.胸郭出口症候群の既往症がある場合

胸郭出口症候群の後遺障害については、保険会社が交通事故との因果関係を否定して争うケースが多いとされています。

典型的には、被害者に事故前から胸郭出口症候群の既往症があり、事故とは無関係であるとの主張です。

裁判例では、このような場合、

  • 事故前には胸郭出口症候群の症状は出ていなかったこと
  • 事故によって症状が出現したことを主張・立証すること

によって、事故との因果関係が認められる傾向にあります。

例えば、事故により頸椎捻挫等の傷害を負った結果、痛みなどにより肩甲帯(肩を構成する各関節の総称)を動かさなくなり、その周囲の筋力が低下して肩甲帯が下がり、腕神経叢の牽引、圧迫が「増長されて」、胸郭出口症候群が発症したと12級を認定した裁判例があります(※8)。

※8:名古屋地方裁判所平成17年8月30日判決(前出「後遺障害等級認定と裁判実務」277頁)

4-2-2.胸郭出口症候群の既往症による素因減額

ただ、このように既往症が存在した場合は、被害者側にも後遺障害を生じる要因(素因)があったものとして、過失相殺の考え方と同様に公平の観点から、損害賠償額の一定割合を減額されることがあります。これを「素因減額」と言います。減額される割合は事案によって様々であり、数%にとどまる場合から80%~90%も減額される場合もあります。

なお、例えば被害者が、胸郭出口症候群を発症し易い、撫で肩の女性であったというだけで、実際に胸郭出口症候群の既往症が存在していたと認められない場合は、素因減額されることはありません。素因減額にあたって考慮されるのは、あくまでも「疾患」の存在であって、被害者の体格や体質といった身体的特徴ではないからです(※9)。

※9:最高裁平成8年10月29日判決

まとめ

胸郭出口症候群と診断されても、それだけで無条件に後遺障害を認定してもらえるわけではなく、認定されるには条件があることをおわかりいただけたと思います。交通事故での胸郭出口症候群については、交通事故を得意分野とし、後遺障害の医学的知識にも詳しい弁護士に相談されることが最適です。

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