物損事故の損害賠償の範囲!慰謝料は支払われるのか?
物損事故で請求できるもの、請求できないものといった損害賠償の範囲についてと、物損事故で慰謝料はもらえるのか、計算方法…[続きを読む]
交通事故の被害に遭った被害者の方は、加害者から慰謝料などの支払いを受けることができます。しかし、慰謝料は、必ず支払われるものではなく、場合によっては、慰謝料をもらうことができない場合や少ない慰謝料しかもらうことができない場合もあります。
交通事故の被害者は、交通事故によって多大な精神的苦痛を被ることになりますので、慰謝料についてきちんと理解したうえで、適切な金額を請求していくことが大切です。
今回は、交通事故で慰謝料がもらえない、支払われないケースやもらえる慰謝料が少ないケースについて解説します。
交通事故に遭ったとしても、慰謝料をもらうことができない・支払われないケースとしては、以下のものが挙げられます。
交通事故には、「人身事故」と「物損事故」の2種類の事故があります。人身事故とは、交通事故によって被害者が怪我をした場合の事故のことをいい、物損事故とは、怪我人がおらず車などの物が傷ついたり壊れたりした場合の事故をいいます。
交通事故が生じた場合に、慰謝料の請求が認められるのは、原則として「人身事故」に限られます。
そのため、交通事故の類型が物損事故であった場合には、車や所持品が損傷したとしても慰謝料を請求することはできません。
追突事故やセンターラインオーバーによる事故など一方的な過失によって生じた事故に関しては、過失割合は100:0とされます。
過失割合が0とされる側を「被害者」、過失割合が100とされる側を「加害者」とすると、過失割合が0である被害者には、事故に対する賠償責任はありませんので、このような事故では、加害者側に怪我や後遺障害が生じたとしてもそれを被害者に対して請求することはできません。
交通事故によって損害を被った被害者としては、基本的には、加害者側の保険会社と交渉を行い、加害者側の保険会社から慰謝料などの賠償金の支払いを受けることになります。
しかし、加害者が自動車保険や自賠責保険に加入していない場合には、保険会社から慰謝料の支払いを受けることはできません。この場合には、加害者本人に対して慰謝料を請求していくことになりますが、加害者に慰謝料を支払うだけの資力がなければ慰謝料を請求したとしても慰謝料をもらうことができません。
被害者に後遺症が生じたとしても、後遺障害等級認定を受けなければ「後遺障害慰謝料」をもらうことができません。
ただし、後遺障害等級認定を受けることができなかったとしても別途、傷害慰謝料をもらうことはできます。
交通事故によって生じた損害賠償請求権については、時効がありますので、一定期間が経過すると時効によって損害賠償請求権が消滅してしまいます。
交通事故による損害賠償請求権の時効期間は、損害および加害者を知ったときから5年とされています。
ただし、令和2年3月31日以前に発生した事故については、3年が時効期間になりますので注意が必要です。
交通事故に遭ったとしても、もらうことができる・支払われる慰謝料が少なくなるケースがあります。そのようなケースとしては、以下のものが挙げられます。
交通事故の慰謝料の算定基準については、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準という3種類の基準が存在します。自賠責基準とは、法令で定められた最低限の補償であり、3つの基準の中で最も低い基準となります。
一方、任意保険基準とは、任意保険会社が独自に定めた慰謝料の算定基準であり、自賠責基準と同等か若干上乗せした基準となります。また、裁判基準とは、弁護士が交渉や裁判を行うときに用いる基準であり、3つの基準の中で最も高い基準となります。
交通事故の示談交渉では、加害者側の保険会社から示談金額が提示されることになりますが、保険会社からの提示額をそのまま受け入れて示談をしてしまうと十分な慰謝料をもらうことができません。保険会社から提示される慰謝料の額は、任意保険基準に従って算定されたものですので、裁判基準で計算することによって、より高額な慰謝料をもらえる可能性があります。
傷害慰謝料は、入通院の期間および日数を基準として計算することになります。そのため、通院が面倒だからという理由で通院を途中で中断してしまった場合や時間が取れないという理由で通院頻度が低かった場合には、もらうことができる慰謝料が減ってしまう可能性があります。
通院日数や頻度は、傷害慰謝料の金額に大きく影響してきますので、医師の指示に従ってきちんと通院を継続するようにしましょう。
交通事故の発生に関して被害者側にも過失がある場合には、過失相殺によって慰謝料額が減額されてしまう可能性があります。
交通事故の過失割合については、過去の裁判例をもとにして類型化されていますので、実際の事故をあてはめることによって過失割合を知ることができます。ただし、あくまでも類型化された事故態様ですので、個別具体的な事案に応じて修正していく必要があります。
保険会社から提示された過失割合に納得ができない場合には、しっかりと争うことによって、過失相殺による慰謝料の減額を少なくすることができる場合もあります。
素因減額とは、交通事故前から有していた被害者の身体的または精神的要因が損害拡大に寄与した場合に、その程度に応じて損害額を減額することをいいます。
身体的素因による減額については、被害者が疾患にあたらないような身体的特徴を有していたとしてもそのことを理由として素因減額することは原則として認められません。
また、心因的素因による減額については、交通事故によって通常発生する程度および範囲を超える損害であって、その損害拡大に被害者の心因的要因が寄与しているときに素因減額が認められます。
交通事故の慰謝料を請求する場合には、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。
既に説明したとおり、交通事故の慰謝料の算定基準には、3つの基準があり、裁判基準が最も高額な算定基準となります。交通事故の被害者としては、当然裁判基準に基づいて慰謝料を計算して欲しいと考えますが、被害者自身で交渉しても保険会社が応じてくれることはありません。
裁判基準を用いて慰謝料を計算し、請求することができるのは、被害者から依頼を受けた弁護士が交渉する場合に限られています。そのため、保険会社から示談金の提示があった場合には、すぐに示談に応じるのではなく、弁護士に交渉を依頼することによって、保険会社から提示された慰謝料額を増額することができる可能性があります。
怪我の治療を継続しても完治せず、後遺症が生じてしまった場合には、後遺障害等級認定の手続きを行うことになります。後遺障害等級認定を受けると後遺障害慰謝料および逸失利益を請求することができますので、認定を受けることができるかどうかで最終的に獲得することができる損害額は大きく異なってきます。
後遺障害等級認定は、被害者請求という方法をとることによって、適切な等級認定を獲得することができる可能性が高くなります。
被害者請求とは、被害者自身が有利な証拠を収集して、後遺障害等級認認定の申請をする方法のことをいいます。必要書類の準備をすべて被害者自身が準備しなければならないという手間はありますが、弁護士に依頼をすることによって、面倒な書類の収集から申請手続きまですべて行ってもらうことができます。
交通事故の示談交渉は、被害者自身が加害者の保険会社の担当者と行うことになります。加害者側の保険会社の担当者は、あくまでも加害者の立場に立って示談交渉を行いますので、提示される示談の内容は、被害者にとって十分な金額とはいえないことが多いです。金額に納得ができないと言っても保険会社の担当者は日常的に示談交渉を行っているプロフェッショナルですので、不慣れな被害者ではうまく言いくるめられてしまう可能性もあります。
被害者は、交通事故によって肉体的にも精神的にも多大な負担を負っていますので、不慣れな示談交渉については、弁護士に任せてしまうのが安心です。弁護士であれば、被害者の代理人として被害者の賠償額が適切なものになるように交渉を進めてくれます。
上記のケースは、交通事故で慰謝料をもらうことはできません。
以上、3点が弁護士に相談するメリットです。
交通事故に遭った場合に支払われる慰謝料には、「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」という3種類の慰謝料があります。
傷害慰謝料とは、交通事故で怪我をしたことにより生じた精神的苦痛への賠償金です。
交通事故の被害者は、怪我の治療のために入通院を余儀なくされるなどして、精神的苦痛を被ることから「入通院慰謝料」とも呼ばれます。
精神的苦痛の程度については、人それぞれですので具体的な金額にするのは難しいですが、交通事故実務では、傷害慰謝料は、入通院期間や日数に応じて計算されることになります。
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺障害が生じたことに対する精神的苦痛への賠償金です。
交通事故被害にあうと、治療を継続したとしても完治せず、後遺症が生じてしまう場合もあります。
このような場合には、後遺障害等級認定を受けることによって、第1級から第14級までの等級に応じた慰謝料が支払われることになります。
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡してしまったことに対する精神的苦痛への賠償金です。
また、被害者本人の死亡慰謝料の他にも近親者固有の慰謝料も認められます。
なお、死亡慰謝料の金額については、死亡した被害者の立場に応じて基準化されています。
交通事故の被害に遭った場合には、加害者に対して慰謝料を請求することができますが、今回解説したようなケースでは慰謝料を支払われず、もらうことができなかったり、慰謝料の金額が少なくなってしまう可能性があります。
適切な慰謝料額を獲得するためにも交通事故の被害に遭った場合には、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。