乱暴な自転車運転が原因で車と事故!車の修理代全額請求どうしたらよい?

自転車と自動車の交通事故で、被害を受けるのは自転車側ばかりとは限りません。

  • 車を運転中に信号待ちで停止していたら、左側をすり抜けようとした自転車が、左ドアミラーにぶつかり、破損してしまった
  • 車の走行中、信号無視して道路を横断しようと飛び出した自転車を避けるため、急ハンドルを切ったら、自転車には衝突しなかったものの、車は電柱に衝突してしまい、大破してしまった

さて、このような場合、ぶつけた自転車側は、車の修理代金や慰謝料を支払わなくてはならないのでしょうか?

自転車運転者の義務と責任

自転車で接触事故を起こせば、不法行為責任を負う

他人の権利や法的保護に値する利益を過失で侵害した者は、損害を賠償する義務があります。

これが民法709条が定める「不法行為」制度です。

自転車対自動車の接触事故でも、自転車側に過失があれば、自動車に生じた損害を賠償しなくてはなりません。

自転車で安全運転義務に反すれば、過失行為となる

例えば、冒頭の「車を運転中に信号待ちで停止していたら、左側をすり抜けようとした自転車が、左ドアミラーにぶつかり、破損してしまった」という接触事故の場合を考えましょう。

自転車は道路交通法の「軽車両」であり(同法第2条1項8号及び11号)、自転車の運転者には、自動車の運転者と同様に、他人に危害を及ぼさない速度と方法で運転する安全運転義務が課されています(同法第70条)。

そこで、自転車が停車中の車の横を通る際には、車体を接触させないハンドル操作が求められており、「これを怠って走行することは過失行為」と評価されます。

この過失行為によって、ドアミラーの破損という損害を生じさせたのですから、被害者である自動車の所有者に対して修理代等を賠償する義務が自転車運転者に発生するわけです。

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警察に通報して必ず記録に残す

怪我の有無や事故の大小に関わらず、運転者(自転車の運転者も含む)は、警察に通報することが道路交通法第712条で定められています。

ところが、事故の当事者同士に怪我がないと、時間がとられる、違反点数の加算や、免許停止などという汚点が残ってしまうのが嫌だといったことから、警察に通報せずに示談して済ませてしまおうという心理が働きかねません。

当事者同士で、示談してしまうと後から問題になることが多いです。まず警察を呼ぶことが重要です。

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自転車が自動車に物損を生じさせたときの賠償額

さて、自転車の運転者が賠償義務を負担するとして、「事故といっても、あくまでも自転車に過ぎないのだから、自動車による接触事故よりも、安い金額で済むのではないか?」と、そんな気がする方も多いかもしれません。

しかし、それは間違いです。例えば、冒頭の2例目を見てみましょう。

「車の走行中、赤信号を無視して道路を横断しようと飛び出した自転車を避けるため、急ハンドルを切ったら、自転車には衝突しなかったものの、車は電柱に衝突してしまい、大破してしまった」

上記のように車が大破した場合、通常は車の運転者に怪我による人損が生じることが普通ですが、ここではぶつかったのに奇跡的に「怪我がなかった」としましょう。

つまり、ここで賠償するべき損害は「自動車の大破による損害」ということになります。

自転車がぶつけても、変わらない損害賠償額

自動車が大破し、物理的に修理ができないときや、修理代よりも同じ車を中古市場から購入する方が安いケースがあります。

この場合は「全損」として、車の中古市場価格からスクラップ代を差し引いた買替差額」と、それに加えて廃車手続や次の車に買い替える際にかかる「買替諸費用」合計した金額を賠償することになります。

損害賠償で全損とされる場合

1. 車が大破し、物理的に修理ができない
2. 修理代より同じ車を中古市場で購入するほうが安い

賠償額中古車市場価格スクラップ代 + 買替諸費用(登録手数料など

大破した車が、中古市場価格10万円の国産車であれば、たいした金額にはなりませんが、もしも、中古市場価格1000万円のポルシェだった場合は、当然、1000万円からスクラップ代(数万円)を差し引いて、諸費用を加算した金額(1000万円+α)を賠償しなければなりません。

「そんな高額な車は、車両保険に入っているから、保険会社からお金が出るのでは?」と考えるかもしれません。

そのとおりですが、車の所有者に約1000万円を支払った保険会社は、加害者である自転車運転者の責任を肩代わりしたのですから、当然に、自転車運転者に約1000万円を請求することができます(これを求償と言います)。

したがって、自転車での事故に過ぎないから賠償額は低額で済むというのは、まったく間違った思い込みに過ぎません。

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自転車による物損と過失相殺

冒頭の2例では、あきらかに自動車側には何の過失もないので、損害は100%自転車側が負担することになります。

しかし、自動車側に何らかの落ち度があれば「過失相殺」によって、自転車側に請求する賠償額が減額されます。

減額の割合を決めるのが「過失割合」です。自転車と自動車の事故についての過失割合は、いわゆる「緑本」や「赤い本」に記載されています(※)。

※緑本:別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5判)
赤い本:民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準

これらは、いずれも「自転車側が被害者となった人身事故」を想定していますので、自転車が加害者となって自動車に物損を生じさせた場合に、そのままストレートに適用することはできませんが、過失割合を考える参考にはなります。

過失相殺の考え方

例えば、交差点で先行する自動車が左折したところ、後方左側から来た自転車が前方不注意で衝突し、自動車の左側ドアが凹んだという事故を考えてみましょう。

緑本では、このような態様での人身事故の場合、過失割合は、自転車10:自動車90が原則です(※)。

※「同一方向の直進自転車と左折四輪車との事故」のうち「直進自転車と先行左折四輪車」前出緑本431頁

そこで、幸運にも、自動車の左側ドアが凹んだだけで、自転車運転者にも、自動車運転者にも怪我がなかったという場合、人身事故における過失割合を参考にすれば、左側ドアの修理代等の損害を自転車10:自動車90の過失割合で分担することになります。

修理費用など損害額が10万円だったならば、自動車側が請求できる金額は「1万円」のみになります。

なお、この場合、自転車の前輪が曲がってしまうなど、自転車も破損し、修理代がかかる場合は、その90%を自動車側が負担することになります。

また、自転車事故の過失割合については、下記ページも詳しいので併せてご参照ください。

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雇い主や保護者が賠償義務を負担する場合も

もっとも、自転車側の賠償義務の根拠となる法律は、民法709条だけではありません。

たとえば会社の営業マンが得意先回りのために自転車で走行中に物損事故を起こしたケースでは、その営業マンが民法709条に基づく賠償責任を負うと同時に、会社も使用者責任(民法715条)に基づき賠償義務を負担します。

また、たとえば自転車運転者が民事責任能力を欠く未成年者の場合、運転者本人に民事責任を問うことはできませんが、親権者などが監督義務者責任(民法714条)を負担することがあります。

なお、自動車やバイクによる人身事故での損害賠償責任は、ほとんどの場合、自動車損害賠償保障法第3条の「運行供用者責任」が根拠になりますが、これは物損や自転車運転者の責任には適用されません。

自転車が車にぶつかってきた場合の賠償内容

さて、自転車が車にぶつかってきた場合、自転車運転者が自動車側に負担する賠償の内容は、上に説明した買替差額、買替諸費用だけではありません。

その内容を一覧表にしました。

全損事故で生じる物損の損害賠償
買替差額事故車の中古市場価格からスクラップ代を差し引いた金額
買替諸費用事故車を買い替える際にかかる諸費用
全損事故以外で生じる物損の損害賠償
修理代事故車の修理費用
評価損修理してもまかなえない、事故車の市場価格の下落
全損事故か否かを問わず生じる物損の損害賠償
代車費用修理・買替期間中に代車を使用したレンタル料
休車損害修理・買替期間中に営業車両で営業ができなかった損害
積荷の損害積載物の破損などで生じた損害
建物や施設の破損事故で損壊した建物などの損害
慰謝料物損被害者の精神的な損害(但し、特別な事情のある場合)

車が大破した冒頭2例めのような事故では、上の①~⑨のすべてが問題となる余地がありますが、実際の事例としてはあまり多くないと思われます。

他方、自転車が加害者となる物損事故では、冒頭1例めのような、「サイドミラーが壊れた」、「外装が凹んだ」、「車に傷がついた」程度の事故が多いと思われます。

このパターンでは、①買替差額、②買替諸費用、⑦積荷の損害、⑧建物や施設の破損は問題となることはなく、これらを除いた次の5つの損害が問題となりやすいと言えます。

  • 修理費
  • 評価損
  • 代車費用
  • 休車損害
  • 慰謝料

そこで、以下では、これらの損害について解説します。

なお、その他の問題については、物損事故の損害賠償の範囲に関する次の記事を御参照ください。

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車の傷の修理代

請求できるのは「適正修理」の費用

交通事故による自動車の修理代は、「適正修理相当額」の賠償が必要とされています。

「適正修理」とは、次の4原則を充たす修理です。

  1. 性能(構造・機能)の回復
  2. 安全性の確保
  3. 耐久性の確保
  4. 美観の回復

自転車が加害者となった事故で多く問題となるのは、「4.美観の回復」にかかる修理費用の相当性でしょう。

ただ外装の傷や凹みをもとどおりに回復すると言っても、塗装の範囲、板金修理か部品交換かといった修理方法によって金額は異なりますし、同じ修理方法であっても修理業者によって工賃が異なりますから、いくらが適正な金額なのかは簡単に判断できることではありません。

自研センター方式

そこで自動車事故では、「株式会社自研センター(※)」が作成した「指数」を用いることがよく行われます。これは、工賃の合理的な算定を目的に、脱着・取替・板金・塗装の標準的な修理作業時間を示す指数で、これを用いた算定を「自研センター方式」と呼びます。

※「指数事業」|株式会社自研センター

ただ、あくまでも標準的な修理作業を前提とするものに過ぎず、唯一の基準でもありませんから、参考になる以上のものではありません。

自動車側の見積内容での請求を拒めないのが実務

自転車側としては、被害車両を複数の修理業者に見てもらい、相見積もりを出してもらいたいところですが、被害者がそのような要請に応じてくれることは期待できません。

そもそも、修理作業の内容とその料金は、担当する修理業者によって異なるのは当然ですから、自動車事故の物損で修理代金額が争いとなる場合でも、不必要な修理が行われたとか、社会通念に照らして不当に高額であるなどの特別な事情がない限り、加害者側が考えている金額よりも高いというだけで、被害者側の主張する金額の支払を拒むことはできないと理解されています(※)。

※東京高裁平成29年12月12日判決・「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2019年版下巻」17頁

ただ、実際に便乗修理(事故前から存在した傷もあわせて修理する)や過剰修理(必ずしも修理を必要としない部分まで修理する)が行われる例もありますから、自転車側が、どうしても金額に不満がある場合は、弁護士に相談するべきでしょう。

慰謝料

ぶつけられた自動車運転手は、愛車に強い思い入れがある人も多く、たとえ外装に傷がついただけでも、慰謝料を請求したいと考える人は珍しくありません。

しかし、「物損事故」では、その財産的損害が補償されれば、精神面の苦痛も慰謝されると評価されるので、例外的に特別な事情がある場合を除いて、慰謝料を請求することはできません

例外的に特別な事情がある場合とは、被害にあった物品が、被害者にとって特別に主観的・精神的な価値があり、そのような価値を認めることが社会的にも相当と言える場合とされています。

たとえば、可愛がっていたペット、先祖代々の墓石、代替性のない芸術品などです。

けれど、自動車それ自体の損害について、所有者本人にどれだけ愛着があったとしても、特別な事情とは認められていません。たとえ貴重なクラシックカーであったとしても同じです。

したがって、自転車によって、自動車の外装に傷や凹みが生じても、慰謝料を請求されることはありません。

評価損

自転車がぶつかって、外装が凹んだり、傷がついたりした場合に、「車の価値が低下したから、その分を賠償しろ」と請求されるケースがあります。

たしかに、車の損傷を修理できても、車の価値が下落してしまう場合があります。これを「評価損(格落ち損)」と呼びます。

評価損には、次の2種類があり、認められた場合には「修理費用の5%から30%の金額」とされる例が多いと言われます。

  • 技術上の評価損:修理の技術上の限界で「車の走行安全性能にかかわる部分以外の機能」や「外観」に何らかの欠陥が残ってしまったもの
  • 取引上の評価損:事故歴があるという理由で買い手に敬遠されて市場価格が下がってしまうもの

評価損が認められるか否かは、個別の事情次第です。

しかし、自転車との衝突で外装が凹んだり、傷がついた程度では、通常、外観に欠陥が残ることはあり得ませんし、事故を理由に市場で敬遠されることも考えられませんから、技術上の評価損も取引上の評価損も認められることは、まずありません。

代車費用

自転車との衝突で外装が傷つき修理する場合、当然、事故車両は何日間か使用できなくなりますから、被害者側が代車を使用し、その料金を自転車運転者に請求することは珍しくありません。

ただし、この代車費用の請求が認められるには、次の各条件を充たしていることが必要です。

  1. 車での通勤、通学など代車の必要性があること
    (事故前に実際に通勤・通学に使っていた実績が必要です)
  2. 現実に代車を使用したこと
  3. 国産小型車が標準
    (外国高級車の代車でも国産高級車が相当)
  4. レンタカー料金が基準
  5. 修理に必要な期間内の料金
    (通常は2週間程度)

これらの条件を充たさない請求であれば、自転車側は支払いを拒否することができます。

休車損害

被害車両がタクシーなどの営業車の場合、修理で車が稼働できなければ、営業損害が発生します。

これが「休車損害」です。算定方法は次のとおりです。

休車損害 = 休業した日数 ×(その車による平均売上日額 - 平均流動経費日額(※))

※平均流動経費:ガソリン代、高速道路代などの経費

ただし、タクシー会社のように、代替できる遊休車両があり、容易に利用可能な場合は、そちらで営業すれば良いので、休車損害は発生せず、自転車側も支払いは不要となります。

これに対し、個人タクシーの場合は、休車損害を請求されてもやむを得ないでしょう。

まとめ

自転車が車にぶつかってきた場合の接触事故で、自転車が自動車に物損を与えた場合でも、加害者である以上、損害を賠償しなくてはなりません。

ただし、自動車側が請求する内容が、常に正しいわけではありません。

慰謝料や評価損のように請求できない損害や、代車料のように細かい条件があるもの、修理代金のように通常は修理工場の見積りどおりで支払わざるを得ないものと、項目毎に扱いが異なっており、単純なものではありません。

自転車事故での物損を請求されている方は、弁護士に相談されることをお勧めします。

なお、自転車も道路交通法上軽車両であり、自動車にぶつけてしまった場合は、たとえ物損事故であってもドライバーと同様に警察への通報義務があります。その場では示談せず、損害賠償で大きな痛手を被らないようにしましょう。

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