交通事故で検察庁から呼び出し!刑事処分で不起訴になるために

交通事故の加害者は、警察での取り調べが終わった後に、検察庁から呼び出されます。ここが、起訴されるかされないかの大きな分岐点となります。ご存知の方も多いでしょうが、起訴されてしまい裁判となった場合は、99.9%の確率で有罪となってしまいます。

しかし、その前にできることがあります。交通事故の刑事処分で裁判にかけられないためには、どのようなことが必要か。今回は、刑事処分で不起訴になるためにできることについて解説します。

1.検察庁からの呼び出しは何のためか?

交通事故事件の被疑者(※1)は、事故の現場で警察に事故の状況を詳しく説明し、その後、何度も警察署に出頭して取り調べを受け、供述調書に署名と指印をとられます。

あとは処分を待つだけかと思っていると、今度は、検察庁から出頭するようにと連絡を受けます。

警察でさんざん取り調べを受けて調書も作ったのに、また検察庁に呼び出されるのは何故なのでしょう。

それは、警察と検察の役割が違うからです。

警察は、交通事故などの犯罪を捜査し、刑事裁判で有罪とするための証拠を集めることが主な役割です。

検察は、警察が集めた証拠を吟味して、裁判にかけるかどうかを決めることが主な役割です。裁判にかけることを「起訴」、裁判にかけないことを「不起訴」と言います。

検察官は、本人の話を聞いて、警察の集めた証拠に間違いがないかどうかを確認し、起訴・不起訴を判断するための諸事情を聴取する必要があるのです。

このために検察庁でも、警察と同じように取り調べが行われ、本人の話を録取した検察官調書が作成されて、署名と指印を求められるのです。

※1「被疑者」:犯罪の嫌疑をかけられている者です。交通事故の加害者がこれにあたります。

2.起訴された場合の刑罰

交通事故で起訴された場合の刑罰はどのような内容でしょうか。

たとえば、過失運転致死傷罪は、7年以下の懲役又は禁固もしくは100万円以下の罰金です。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 5条

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。

交通事故では、多くの場合は罰金刑となりますが、罰金刑でも有罪判決であって、前科である点では懲役刑と同じです。起訴されないようにすることが大切なのです。

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3.交通事故の起訴・不起訴決定で考慮される事情

検察官が起訴・不起訴を決めるにあたって考慮する諸事情は、次のとおり多岐にわたります。

刑事訴訟法 248条

犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

では、具体的に交通事故の場合に重視される事情を見てみましょう。

事故の内容について

・過失の内容:注意義務違反の程度が著しいかどうか
・悪質性の有無:飲酒、無免許など
・被害の内容:被害者の人数、死亡者の有無、負傷の程度

 

被疑者について

・前科、前歴の有無と内容

前科とは過去に犯罪で有罪判決を受けたことがあること、前歴とは過去に捜査の対象となったことがあることです(逮捕された場合に限りません)。

同種前科、すなわち過去に交通事故で刑事処分を受けたことがある場合は起訴される可能性が高くなります。

・交通違反歴の有無と内容

シートベルトの不着用や駐車違反などの細かい違反も含めて、過去の全ての違反データーが参照されます。

ひとつひとつは小さな違反でも、その回数が多い、反復しているなどの場合は、交通法規の遵法意識がないものと判断されて起訴される可能性があります。

事故後の状況

・被害者の処罰感情 被害者が被疑者の処罰を望んでいるか否か
・被害の回復 損害賠償によって金銭的に被害が回復しているか否か
・反省の状況 被疑者が反省しているか否か

4.示談の成立が重要

(1)示談の成立が重要となる理由

このうちの事故後の状況で決定的に重要なことは示談の成立です。

通常、交通事故の示談は次の内容を含みます。

・被疑者が被害者に損害賠償金を支払う
・被疑者が事故について被害者に謝罪する
・被害者が被疑者を宥恕(ゆうじょ)する(※2)

この3つの要素が示談書に記載されていれば、事故後の状況に関する3つの判断要素(処罰感情、被害の回復、反省の状況)が、被疑者に有利にクリアーされていることになり、不起訴の可能性が高くなります

したがって、このような完全な形の示談を成立させ、示談書を検察官に提出することが非常に重要です。

※2宥恕:寛大な気持ちで許すという意味。「宥恕する」、「寛大な処分を望む」、「刑事処分を望まない」は同じ意味と考えていただいてかまいません。

(2)示談書の記載例

示談書の書式や書き方は特に決まっていませんが、少なくとも上の3つの要素(処罰感情、被害の回復、反省の状況)を書き漏らさないことが大切です。

例:被疑者(加害者)を甲、被害者を乙とします。

示談書

甲と乙は、本日、下記のとおり合意した。

  1. 甲は、平成30年1月1日、東京都港区赤坂○丁目1番1号先路上において、前方不注意のために、その運転する車両を乙に衝突させて、 全治6ヶ月の右大腿骨骨折等の傷害を与えた交通事故(以下「本件交通事故」という)につき、乙に対し深く謝罪をし、乙は甲の謝罪を受け入れる。
  2. 甲は、本件事故の損害賠償金として、乙に対し金1000万円の支払義務があることを認め、平成30年9月1日限り、同金員を乙に支払う。
  3. 甲は、乙を宥恕する。
  4. 甲と乙の間には、本示談書に記載した事項以外、何らの債権債務も存在しないことを相互に確認する。

なお、示談書で損害賠償金を支払う約束をした場合、検察官が被害者に賠償金を受け取ったかどうかを確認しますが、被疑者側からも、実際に支払いが完了したことを証明する書類を提出しておきましょう。振込明細書や保険会社からの報告書で足ります。

(3)被害者が宥恕してくれない場合

被害者の処罰感情が強い場合は、「宥恕する」の記載や、「(甲が)乙に対し深く謝罪をし、乙は甲の謝罪を受け入れる。」の記載に同意してくれない場合があります。

そのような場合でも、これらの記載のない示談書を作成して署名、押印してもらい、検察官に提出するべきです。その場合の内容は、以下を明記することが大切です。

①賠償金を支払うこと

②その賠償金の支払い以外に債権債務がないこと(上の記載例の2項と4項)

これによって、少なくとも損害の金銭的な回復が終了していることが明らかとなるからです。

(4)被害者が示談書の作成に応じてくれない場合

被疑者側が誠意を尽くしているにもかかわらず、被害者が示談書に署名押印してくれないケースもあります。

そのような場合は、被害者が応じてくれない理由を記載した報告書を作成して検察官に提出するべきです。

たとえば、被疑者側が相場の賠償額を提示しているのに、被害者が過大な賠償金を請求しているために示談がまとまらないならば、その事実を報告します。

真実であることを示すために、これまでの被害者側とのやり取りを時系列にまとめるべきです。任意保険会社の示談代行を利用しているなら、担当者にまとめてもらうことも必要でしょう。

金銭的な問題ではなく、被害者が感情的に示談に応じてくれない場合、被疑者としては最大限の誠意を示している事実を報告します。

被害者を見舞って謝罪をした日にちや、その際のやり取りなどを、やはり時系列でまとめます。被害者に送付した謝罪文のコピーなども添付するべきです。相場の賠償金を提示済み、あるいは支払い済みであることも報告しましょう。

5.被害者との示談交渉は弁護士に依頼するべき

刑事処分の可能性を念頭においた場合、被害者と示談するための示談交渉は、保険会社の示談代行に任せるのではなく、弁護士に依頼をするべきです。

保険会社の示談代行は、あくまでも民事上の損害賠償問題を解決するために行われるもので、刑事処分を考慮したものではありません。保険会社は、賠償問題には対応できますが、刑事事件に対応できる能力や資格はないのです。

様々な理由で、被害者が示談書の作成に応じてくれない場合、保険会社にできることは賠償金の増額を検討することだけで、それも限度があります。

しかし、弁護士が担当していれば、前述のように起訴を避けるための次善の対策を迅速にとることが可能です。弁護士は刑事事件の専門家でもあり、刑事裁判の制度や運用に精通する唯一の職業だからです。

起訴を避けるために十分な対策をとるには、被害者との示談交渉の最初から弁護士に依頼しておくことがベストですが、保険会社による示談交渉がこじれてしまった段階でも、まだ遅すぎはしません。その段階からでも、弁護士の力を借りるべきでしょう。

まとめ

交通事故で検察庁から呼び出されたら、すぐに弁護士に相談しましょう。

でも、呼び出されてからでは、出頭の期日までに有利な示談書の作成が間に合わないとお思いですか?

いいえ、弁護士がついていれば、弁護士が代理人となったので、近々に示談書を提出できる見込みであると報告し、検察官に起訴・不起訴の結論を待ってもらうことも可能なのです。

ですから弁護士に依頼することが遅すぎるということはありません。是非、弁護士に相談してください。

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