台風で瓦が飛び隣家の車を傷つけた賠償責任は?保険は使えるか?

 

「台風が来て、強風で自宅の屋根の一部が飛び、隣宅の車に当たってしまい、持ち主から、修理費用の支払いを求められました。持ち主は車両保険をかけていないとのことで、100万単位の数字は軽く出るとのことです。また、謝罪にいくと、新車は1000万はする、高級外車だと言われました。車の持ち主からは、『弁償しろ』と怒鳴られてしまいました。台風の強風で飛んできたものの責任は誰にあるんでしょう?私はどうしたらよいでしょうか?」

台風などの自然災害で、自分の家の瓦などが飛んでしまい、隣家の車を傷付けてしまうということは、少なくありません。

特に、最近は、これまで予想しなかったような大きな規模の大雨や強風が発生するということも増えてきています。

  • 自然災害で隣宅の車を傷つけた場合、修理費などの損害を賠償する責任は誰にあるのでしょうか?
  • 車の持ち主から修理費を請求されたら、支払わなければならないのでしょうか?

この記事では、強風で飛んできたもの、台風・強風によって自分の家の瓦などが他人の物を傷付けてしまった際の賠償責任について、解説していきます。

強風で飛んできたものの責任・台風・強風の賠償責任の基本的な考え方

  • 予想できない程度の強風で飛んできたもの、自然災害が原因であれば、”不可抗力”によるものとして、基本的に、法律上の賠償責任は負わない。
  • 予想される程度の強風で飛んできたもの、周りの屋根には全然被害が出ていない場合には、瑕疵が認められ、賠償責任を負うこともある。

強風などの自然災害が原因でも、賠償責任を負うのか?

自然災害が原因であれば、”不可抗力”によるものとして、基本的に、法律上の賠償責任は負いません

強風の程度が予想できないほど激しく、そのせいで瓦が飛んでしまったというような場合には、責任は負いません。

他の家などでも、同様の被害が出たという場合には、責任を負わなくてよいといえます。

自然災害が原因でも法律上の賠償責任を負うとは?

通常、他人に生じた損害を賠償する責任を負うのは、故意や過失がある場合に限られます。交通事故などがその典型で、過失がある人が賠償責任を負います。

しかし、瓦などの建物の一部が原因で生じた損害の場合、所有者は、過失がなくても、賠償しなければならないことがあります。

民法においては、「土地の工作物」(建物や建物の一部などのこと。瓦も含まれます。)の「設置または保存」に「瑕疵」があることによって他人に損害が生じたときに、所有者がその損害を賠償する責任を負う旨規定されています(民法717条1項)。

これを、工作物責任と呼んでいます。

工作物責任を負うのは、設置又は保存に瑕疵がある場合です。

設置または保存の瑕疵とは、土地の工作物が本来備えているべき安全性を欠く状態をいいます。

瓦が飛んで他人に損害が生じた場合、瓦の設置又は保存に瑕疵が認められれば、所有者は、過失がなくてもその損害を賠償する義務を負うのです。

瑕疵の判断基準|屋根・瓦が飛んで隣の車に傷をつけたら

瑕疵の判断基準についてです。

これは、その地域における過去の台風の規模や、周りの建物の屋根の被害状況との比較から、備えができていたかどうかを判断していくことになります。

屋根の瓦の場合は、予想される程度の強風がふいても瓦が飛ばないように、瓦を固定するなどの備えをしておく責任があります。

つまり、予想される程度の強風で被害が出てしまった場合「瑕疵が認められる」こともあります

例えば、頻繁に大きな台風が来る地域であれば、相応の備えが必要となるでしょう。

また、周りの屋根には全然被害が出ていない場合には、被害が出た家だけ備えが不十分だったと判断されてしまうこともあります。

台風で家の瓦が飛んでいった!他人の車を傷付けた場合に使える保険

自然災害の場合、自分の保険は使えないことが多い

法律上の賠償責任が発生しない場合、そもそも、相手に支払うべきものはありませんので、保険を利用する必要はなく、また、利用することもできないのが通常です

ですから、よく確認することもなく、安易に「保険で払います。」などと相手に伝えてしまうと、のちのちトラブルになってしまうこともありますので、注意が必要です。

自分に責任が生じる場合に使える保険とは

一方、賠償責任が発生してしまうケースについては、個人賠償責任保険(名称は、各保険会社によって異なる場合もあります。)に加入していれば、その保険を利用できることがあります。

個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険などに特約としてつけられるのが一般的です。

場合によっては、クレジットカードに付帯していることもあります。自分が加入しているかどうか一度確認しておくことをおすすめします。

相手の車両保険

自動車保険に車両保険をセットしていれば、通常、補償対象となります。

もっとも、台風などの自然災害でも、車両保険を使用すれば、翌年の等級は下がってしまうことになります。

相手が車両保険を使用できたとしても、翌年からの保険料が高くなるという不利益はあります

ですから、法律上の賠償責任はなくても、自分の家の瓦が原因になっていることは確かである以上、お隣さんとの関係では、お見舞い金などの支払いを申し出る方がよい場合もあるでしょう。

まとめ

台風によって自宅の瓦が飛んで他人の車に当たるなどの場合、多くのケースで不可抗力と見なされ賠償責任を問われないこともあります。しかし、法律的には必ずしもその通りでない場合もあります。

そのため、最初の相談例のように、相手が賠償を要求してきて紛争になる可能性も考慮する必要があります。

賠償責任がどのような状況で発生するのかは、専門的な法律知識や経験がないと判断が難しいこともあります。

このような事態に遭遇した場合、自分が加入している保険会社に確認して、賠償責任があるかどうか、また保険が適用されるかどうかを調査することをお勧めします。

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