物損事故の損害賠償の範囲!慰謝料は支払われるのか?

物損事故で損害を受けたとき、加害者に対してどのような損害賠償請求をできるかご存知でしょうか?

「車の修理費くらいじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は修理費以外にもいろいろな費用を請求できます。

今回は、物損事故で請求できるもの、請求できないものといった損害賠償の範囲についてと、物損事故で慰謝料はもらえるのか、計算方法や金額相場はあるのか等を解説していきます。

修理費

修理費用は当然に損害ですが、どのような修理内容、修理費用でも認められるわけではありません。

物損事故を機会として、不必要な修理、過剰な修理、事故と無関係な修理(「ついでに、ここも直しておいてくれ」)が行われ、見積もりが高くなってしまう事例も多いからです。

過剰な修理を認めなかった次のような裁判例があります。

全塗装の必要性を否定した裁判例 東京地裁平成7年2月14日判決

被害者が全塗装による修理代を請求したところ、裁判所は、部分塗装でも外観に重大な影響は与えないなどとして、部分塗装の修理費用だけを認めました。

(交通事故民事裁判例集28巻1号188頁)

「適正修理」に必要な4原則

修理内容が損害賠償として認められるためには、次の4原則を充たす「適正修理」である必要があり、これにかかる「適正修理相当額」が損害額として認められるとされます。

  1. 性能(構造・機能)の回復
  2. 安全性の確保
  3. 耐久性の確保
  4. 美観の回復

もっとも、具体的に、その被害車両についてどのような修理が、この4原則を充たすかの判断は、現実にはなかなか難しいところです。

被害者はできるだけ費用をかけた十分な修理を希望し、依頼された修理工場も工賃の高い作業を歓迎しますが、加害者側の保険会社は可能な限り修理費用を抑えようとするので、費用をめぐって対立し易いのです。

修理内容の査定をする保険会社の「アジャスター」

そこで、保険会社の「アジャスター」(※)と呼ばれる専門家が事故内容、修理内容などの調査を担当するケースがあります。アジャスターと修理工場が協議した上で修理代の金額を決め、被害者が同意すれば、それが修理金額となります。

※アジャスター とは、一般社団法人日本損害保険協会の認定試験に合格して登録を受けた者で、損害保険会社から委嘱を受けて、物損事故の調査業務を行います。詳細は「全国技術アジャスター協会」のサイトを参照してください。

アジャスターの査定が争いとなったケース

被害者が同意せず、修理内容、修理費用が争いとなり訴訟で争いとなるケースもあります。

訴訟では、アジャスターの査定があるからと言って、常にその査定内容が妥当として採用されるわけではなく、アジャスターの査定内容もひとつの資料としながら、裁判所が相当と認める金額を判断することになります。

アジャスターの査定額を採用しなかった裁判例 大阪地裁平成6年9月20日判決

ベンツが被害車両となった物損事故で、被害者は約714万円の修理費用を主張したのに対し、アジャスター査定額は約383万円でした。裁判所は、約476万円を認定しました。

(交通事故民事裁判例集27巻5号1284頁)

なお、被害者が保険会社から修理費用を受け取っても、実際に修理に出すかどうかは被害者の自由です。外観だけの問題であれば、お金だけもらって修理せずそのまま乗っていてもかまいません。しかし、走行性能、安全性にかかわる部分について修理をしないままですと、次の危険があるので、絶対にお勧めできません。

  • 修理費用について争いながら、実際には修理せずに乗車を継続していると、「修理の必要性・相当性がない証拠だ」と主張されてしまう危険
  • 次に事故が起きた際に、整備不良が事故に影響したとして、過失割合が重くなる危険

では、修理費以外に認められるものには、どんなものがあるのでしょうか?

買替差額

買替差額が認められるのは「物理的全損」か「経済的全損」

激しい交通事故の場合には、車が大破して修理が不可能になるケースがあります。

また古い車の場合などには車の価値が低くなっており、修理すると車の時価より高くつくケースもあるでしょう。

それらの場合には車を「全損」扱いとして、修理費用ではなく「買替差額」を払ってもらいます。前者を「物理的全損」、後者を「経済的全損」と呼びます。

  • 物理的全損:車が大破して修理が不可能なケース
  • 経済的全損:修理すると車の時価より高くつくケース

買替差額の算定方法

買替差額とは、「車の時価(中古市場価格)」から廃車のスクラップ代金を差し引いた金額です。

買替差額を算定するときには、中古車の専門書である「レッドブック」等を参照して事故車と同車種、同グレード、同走行距離の車を探し、その価額を基準に決定します。

一方、レッドブックに記載がなく、そもそも中古車市場での流通性が失われている古い車の場合は、新車価格の10分の1程度として評価されるケースが多数です。中古市場の商品価値はゼロですが、事故までは乗車していたという使用価値を1割とみるのです。

買替差額をもらった後、実際に車を買い替えるかどうかは受け取った被害者の自由です。車が要らないなら、お金だけもらっておいてもかまいません。

一方、買替差額より高額な車を購入したい場合、差額は被害者の自腹となります。

買替諸費用

車を買い替えるときには、車両の代金だけではなく車庫証明の費用や登録費用などさまざまな諸費用がかかります。これらの買替諸費用には、相手に請求可能な損害に含まれるものと含まれないものがあります。

損害に含まれる諸費用

  • 登録費用(含む代行手数料)
  • 車庫証明費用(含む代行手数料)
  • 納車費用
  • ナンバープレート代
  • 廃車費用(含む代行手数料)
  • リサイクル料金(リサイクル法に基づくもの)
  • 消費税(但し、同等車両を購入した場合の金額に相当する金額)
  • 自動車重量税(未経過の期間分が支払われます。但し、「使用済自動車の再資源化等に関する法律」により適正に解体され、永久登録抹消されて還付された分は除く)

上記のうち、代行手数料や納車費用は、担当するディーラー等の業者の報酬として相当な額(相場の金額)に制限されます。相場を超えて高額な手数料を払った場合、超過部分は賠償を受けることはできません。

損害に含まれない諸費用

  • 事故車両の自賠責保険料(未経過分の還付があるため )
  • 買替後の車両の自賠責保険料(事故車両の自賠責保険料が未経過分を還付され、自賠責保険料を二重払いすることにはならないので、損害ではありません)
  • 事故車両の自動車税(未経過分の還付があるため )
  • 買替後の車両の自動車税(事故車両の自動車税が未経過分を還付され、自動車税を二重払いすることにはならないので、損害ではありません)
  • 購入した車両の自動車重量税

代車費用

物損事故で車を修理に出している間や買い替える車を探している間、代車が必要になることもあります。

その場合には「レンタカー代」を基準として代車費用を請求できます。代車については、実際に代車を利用したことが前提であり「使う予定がある」という理由での請求は不可能です。

請求には代車使用の必要性が求められる

また、代車を使用する「必要性」が求められます。車を営業で使っていた場合や毎日の通勤・通学に使用してきた事実があるときは原則として大丈夫です。

代車として認められるのは、事故車両の利用目的、利用状況に照らして相当と評価できる車種・グレードのものです。通常は、一般の小型車基準とされることが多く、合理的な理由もなく高級車を利用したときは、差額は自己負担となります。

また、事故車両が高級外車の場合、国産高級車のレンタル費用を限度とするのが裁判例の大勢です。

裁判例 神戸地裁平成25年3月28日判決

ベンツが被害車両の物損事故で、被害者がBMWを代車として利用し、その使用料115万円を請求したところ、裁判所は国内高級車であるトヨタ・レクサスのクラスが相当であるとして約48万円を限度として認めました。

(交通事故民事裁判例集46巻2号529頁)

代車費用が請求できる期間に注意

また代車費用を払ってもらえる「期間」にも注意が必要です。

修理や中古車への買替えの場合には、だいたい2週間程度となります。

買い替える際には納車まで時間がかかるので、1か月くらいみてもらえます。

ただし修理のケースでも、例えば、保険会社との意見の対立で修理開始まで時間がかかったなどの場合、2週間以上の期間をみてもらえることがあります。買替えのケースでも「どうしても車が必要な事情」を丁寧に説明すれば、2週間を超えて代車費用を認めてくれるケースもあるので、丁寧に交渉してみましょう。ただし、後の紛争を避けるため、事前に事情を説明する配慮を忘れないようにしましょう。

さらに、代車を利用せずに公共交通機関を利用した場合、その費用を払ってもらえるケースもありますし、必要に応じてタクシー利用料金が認められることもあります。

交通事故後、車がなくてさまざまな乗り物を利用した場合、すべて領収証をとっておきましょう。

評価損

修理可能であっても、車の価値が低下してしまう場合があり、これを「評価損」(格落ち損)と言います。

車の評価損には、次の2つがあります。

  1. 技術上の評価損
    技術的な限界から、「車の走行安全性能にかかわる部分以外の機能」や「外観」に何らかの欠陥が残ってしまうもの
  2. 取引上の評価損
    事故歴があるという理由で買い手に敬遠されて市場価格が下がってしまうもの

評価損は、修理費などと違って必ず認められるとは限りません

特に保険会社は、評価損を認めないのが原則的な態度です。

他方、訴訟では、評価損が認められるか否かは、個別の事情によります。

訴訟における評価損の判断に考慮される要素

  1. 車種:高級車ほど認められやすく、大衆車・業務用車両は否定されやすい
  2. 走行距離:少ないほど認められやすい
  3. 年式:低年式ほど認められやすい
  4. 損傷の部位・程度:車体骨格部分ほど認められやすい
  5. 修理の内容・程度:大規模、広範囲ほど認められやすい

裁判例では、次のような場合に、評価損が認められにくいと分析されています(※)。

初年度登録から走行距離
外車・国産高級車5年以上のもの6万キロ以上のもの
国産車3年以上のもの4万キロ以上のもの

※ 東京地裁民事交通部・景浦直人裁判官講演録「評価損をめぐる問題」(「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」平成14年版・下巻295頁)

評価損の計算方法

評価損が認められる場合でも、「いったい、いくら評価が下がったのか?」を客観的に判断することは実際には不可能です。

そこで、裁判例では、以下の方法などを採用しており、様々です。

  1. 修理費用の一定割合を評価損とする算定方法
    (5%~30%程度が多いと言われています)
  2. 「車両時価」の一定割合とする算定方法
    など

実際にどのくらい価値が低下したのか、専門の評価機関(一般財団法人自動車検査査定協会)を利用して立証を試みる被害者は多いのですが、査定者の主観が入る余地が大きく、厳密な客観性は乏しいので、裁判官は簡単には受け入れません。したがって、費用と時間をかけても徒労に終わるケースが多いので注意が必要です。

前述のとおり、保険会社との示談交渉の段階では、ほとんどのケースで評価損の支払いを拒絶されます。請求したい場合には裁判が必要になるでしょう。

積荷の損害

高額な積荷を載せているトラックなどが交通事故に遭うと、積荷が損傷して大きな被害が出ることがあります。その場合には積荷の損害も相手に賠償請求できます。

あまりに積荷が高額だった場合には、加害者がそのことを予見することができなかったから賠償責任がないと主張する場合があります(法的には、加害者が予見できない特別な損害であり、因果関係がないという主張です)。

しかし、自動車に高額な積荷を乗せるケースは決して珍しい事態ではありませんから、裁判所に受け入れられる可能性は低いと言わざる得ません。

高額な積荷を予見可能とした裁判例 大阪地裁平成23年12月7日判決

大型貨物トレーラーが被害車両の追突事故で、積荷のおむつ製造機械2台(新規価格約1億1679万円)が損傷した事案で、裁判所は、トレーラーの荷台に1億円を超える大型の機械設備などが積載されていることは一般人の社会通念から通常予見できないものではないとして、賠償責任を認めました。

(自保ジャーナル1866号37頁)

営業損害(休車損害)

タクシー会社やバス会社、運送会社などが交通事故に遭ったときには、その車を使って営業できなくなるので営業損害(休車損害)が発生します。

そこで相手に対し、休車期間分の営業損害を請求できます。損害額は、その車によるこれまでの平均売上額から平均経費額を引いて算出します。

ただし事故車以外に遊休車があり、それを使って営業できたため損失が発生しなかった場合には、営業損害は請求できません。

建物や施設の破損

物損事故で被害を受けるのは、事故の当事者とは限りません。建物や施設が壊れることもありますし、第三者の所有物が車両同士の衝突に巻き込まれるケースもあります。

たとえば建物や施設、ガードレールなどが壊れた場合、そういった損害についても加害者に賠償請求できます。

建物などの場合、車の修理費用とは異なり相当高額な賠償金額となるケースも多いので注意が必要です。

事故に備えて対物賠償責任保険に必ず入り、限度額についても十分な金額に設定しておくべきです。

裁判例 東京地裁平成7年12月19日判決

レストランに衝突した事案で、建物修理費用285万円、厨房器具費用約250万円、食器等購入費用約62万円、休業損害約60万円などの合計約969万円が損害と認められました。

(交通事故民事裁判例集28巻6号1779頁)

物損事故の慰謝料

物損事故では、基本的に慰謝料が発生しません。つまり、物損事故特有の慰謝料計算方法も金額相場もありません。

物が壊れた場合には、その物の経済的価値(財産的損害)さえ補償されれば、特別な事情がない限り、精神面の損害も補てんされると評価するのが実務の考え方です。

ただし以下のような特殊なケースでは慰謝料が認められることがあります。

  • 建物に突っ込まれて命の危険にさらされたケース
    車が建物の玄関に突っ込んできて居宅にいた被害者が命の危険にさらされ、その後も家の修繕の間不便を余儀なくされた場合などです。この場合、物損の慰謝料というよりも、むしろ、命の危険という恐怖に対する慰謝料、生活の不便に対する慰謝料という捉え方をすべきでしょう。
  • 墓石を壊されて骨壺が露出したケース
    車が墓石に激突して墓石が倒れ、下にあった骨壺が露出した場合などには、裁判でも慰謝料が認められています。墓はたんなる石ではなく、追慕や信仰の対象ですから、経済的損失の補償だけでは補てんできない特別な損害があったと評価できます。
  • 大切なペットが死亡、重度の後遺障害が残ったケース
    事故でペットに重度の後遺障害が残った事案や死亡した事案では慰謝料が認められている裁判例があります。

事故でペットに重度の後遺障害残った事案について、名古屋高等裁判所は、次のように判事しています。

ペットの後遺障害につき、飼主夫婦に慰謝料合計40万円を認めた裁判例

「近時、犬などの愛玩動物は、飼い主との間の交流を通じて、家族の一員であるかのように、飼い主にとってかけがえのない存在になっている」、「そのような動物が不法行為により重い傷害を負ったことにより、死亡した場合に近い精神的苦痛を飼い主が受けたときには、飼い主のかかる精神的苦痛は、主観的な感情にとどまらず、社会通念上、合理的な一般人の被る精神的な損害である」、「このような場合には、財産的損害の賠償によっては慰謝されることのできない精神的苦痛があるものと見るべきであるから、財産的損害に対する損害賠償のほかに、慰謝料を請求することができる」。(※)

名古屋高裁平成20年9月30日判決

物損事故でも、上記のように、さまざまな賠償金が発生する可能性があります。自分では適正な算定ができないことも多いでしょうから、損をしないためには弁護士に相談してみると良いでしょう。



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