家族の「お見舞い交通費」は加害者に損害賠償請求できるのか?

飛行機

交通事故で被害者が入院すれば、家族など近親者がお見舞いのために病室での面会を希望するのは普通のことです。

また事故で救急搬送されたと知れば、家族はたとえ遠く離れていても、ともかくも搬送先に駆けつけます。

では、このような近親者のお見舞いや駆けつけのための「交通費」は、加害者側に損害賠償請求できるのでしょうか?

交通事故と付添交通費

近親者の「お見舞い交通費」の問題を考える前に、近親者が付添看護のために病院へ通った「付添交通費」が賠償請求の対象となるかどうかを見ておきます。

もちろん「お見舞い」と「付添」は違いますが、両者に関する裁判所の考え方は似ており、「付添交通費」の取り扱いを理解することが参考となるからです。

では、付添交通費について、自賠責保険の場合と裁判所基準(弁護士基準)の場合とに分けて説明しましょう。

自賠責保険における付添交通費

自賠責保険では、付添交通費は認められていません。

自賠責保険では、入院中の看護料については、原則として12歳以下の子どもの近親者が付き添った場合に1日につき4200円と定めており、その中に付添交通費も含めていると考えられます。

※「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」平成13年金融庁・国土交通省告示第1号

裁判基準(弁護士規準)における付添交通費

では、弁護士と保険会社との示談交渉や裁判所での訴訟に用いられる裁判基準(弁護士基準)での付添交通費の取り扱いはどうなっているでしょう。

この点、付添人の交通費は原則として「付添費」に含まれているとして、これを認めない裁判例もあります(※1)。

しかし、裁判例の大勢は、「看護のための近親者の交通費も被害者本人の損害として認められる」という立場です(※2)。

最高裁も、古くからこれを認め、たとえ海外からの高額の交通費であっても損害として請求できるとしています。(※3)

この判例の事案は、被害者の娘さんがウィーンに留学するべく横浜から出航したところ、その2日後に被害者が事故に遭ったというものです。

被害者は、脳挫傷、右大腿挫創など瀕死の重傷を負って危篤状態のまま1週間にわたり意識が混濁した状態となりました。

娘さんは、途中のモスクワで事故の知らせを受け、急遽、帰国して付添看護をしたという事案です。

このケースで最高裁は、近親者が看護等のため被害者のもとに赴くことが、傷害の程度、看護の必要性等の諸般の事情から社会通念上相当であり、被害者が近親者に旅費を返還・償還すべきときには、通常利用される交通機関の普通運賃の限度内では、損害賠償の対象となると判断しています。

※1:「交通賠償のチェックポイント」(弁護士高中正彦他編著・弘文堂)77頁「交通事故損害額算定基準」(日弁連交通事故相談センター本部)2018年版36頁
※2:「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部編集発行)2019年版上巻41頁
※3:最高裁昭和49年4月25日判決

このように高額の付添交通費を認めた裁判例は珍しくはありません。

裁判例(付添交通費を約478万円認めた例)

被害者は女子小学生で、頭蓋骨骨折などで1840日(5年以上・約61ヶ月)もの入院を余儀なくされました。

裁判所は、次の付添交通費を認めました。

母親 月額4万5000円×51ヶ月分=229万5000円
叔母 月額1万7400円×60ヶ月分=104万4000円
祖母 月額2万4000円×60ヶ月文=144万0000円
合計約478万円
(札幌高裁平成13年5月30日判決・交通事故民事裁判例集34巻6号1786頁)

交通事故とお見舞い交通費

では、付添ではなく、「お見舞い」のための交通費の取扱いはどのようになっているでしょうか?

自賠責保険におけるお見舞い交通費

自賠責保険では、お見舞い交通費に関する規程は存在しないので、認められません

もちろん、これは「自賠責保険からは出ない」というだけですので、加害者側(任意保険会社を含めて)に請求することができるかどうかとは別問題です。

加害者側に請求することができるかどうかは、裁判基準(弁護士規準)における取扱いによって決まります。

裁判基準(弁護士規準)におけるお見舞い交通費

ケースバイケースですが、認められる場合があります。

先に、裁判基準(弁護士規準)における付添人交通費について、最高裁が、傷害の程度、看護の必要性等の諸般の事情から社会通念上相当であり、被害者が近親者に旅費を返還・償還すべきときには、通常利用される交通機関の普通運賃の限度内では、損害賠償の対象となると判断したことを紹介しました。

裁判例の趨勢は、近親者のお見舞い交通費も、この付添人交通費と同様の考え方で判断される傾向にあります

総じて、遠隔地の場合で、見舞いが必要で相当なときに認められ、とりわけ被害者が危篤状態の場合などには、親族が外国にいた場合の帰国費用など相当高額なものも認められやすいとされています(※)

※「交通事故損害額算定基準」(日弁連交通事故相談センター本部)2018年版36頁

親族のお見舞いの重要性

ちょっと考えると、付添は入院治療のために必要だけれど、お見舞いは必須のものではないという違いがあり、同じに考えることはおかしいのでは?とも思われるかもしれません。

たしかに、付添は被害者本人の世話を焼くという行為ですが、お見舞いは、いわば挨拶、様子伺いです。

しかし、家族等が交通事故でケガをして入院したときに、たとえ遠隔地であっても、一刻も早く会いたい、自分の目で様子を確認したい、回復に向かっているところをみたい、会話をしたいというのは、人間として当然の心情です。

また、お見舞いが、被害者本人を励まし、精神的支えとなることも否定できません。

お見舞いのこのような側面は、傷害の程度が著しい場合ほど重視されることも論を待ちません。

この観点から、先に述べたとおり、遠隔地で見舞いが必要で相当なときに認められ、とりわけ被害者が危篤状態の場合などには、親族が外国にいた場合の帰国費用など相当高額なものも認められやすいという傾向になるのです。

裁判例(お見舞い交通費の全部を認めた例)

被害者は66歳女性で、脳挫傷、くも膜下出血などで266日(約38週間)入院しました。

被害者の長男は、見舞いのために、週1回を超える回数(78回)にわたり単身赴任先から帰宅しました。

裁判所は、長男の多数回の帰宅も、被害者の症状からは、この程度の回数の見舞いをすることは、親を思う心情からは当然であるとして、78回分×7800円=約61万円のお見舞い交通費を認めました(札幌地裁平成13年12月5日・自保ジャーナル1443号15頁)。

裁判例(お見舞い交通費の一部を認めた例)

被害者は男子高校生で、頭蓋底骨骨折等で入院しました。入院中、両親は少なくとも120回にわたり自動車でお見舞いに訪れました。

裁判所は、120回分のガソリン代と高速道路通行料金の請求に対し、両親が見舞いのために病院を訪れることは心情として理解できるとして、その40日分である約24万円を認めました
(東京地裁平成10年1月30日判決・交通事故民事裁判例集31巻1号148頁)。

裁判例(駆けつけのための交通費を認めた例)

5歳男子が死亡した事故で、事故を知って駆けつけた祖父母4名の「駆けつけ費用」として、飛行機代合計約17万円を認めました(東京地裁平成24年7月18日・自保ジャーナル1882号74頁)。

厳密には、お見舞いではないとも言えますが、祖父母が愛する孫の不幸に駆けつけることは社会的に相当と言えるでしょう。

同様に、危篤状態の被害者(22歳男子大学生)のもとに祖母や親しい伯父、叔母らが搬送先病院にかけつけた交通費5万円を認めた裁判例もあります。
(京都地裁平成29年7月28日・交通事故民事裁判例集50巻4号1001頁)

お見舞い交通費の請求は弁護士にまかせることがベスト

このように、お見舞い交通費や駆けつけ交通費も、社会的に相当で通常の交通費の範囲内であれば、賠償請求が認められます。

もっとも、それでは、どの範囲までが認められる近親者なのか?友人、上司、恩師ではダメなのか?どの程度の重傷なら認められるのか?

このような、お見舞い交通費が認められるか否かのハッキリした基準があるわけではなく、最終的には裁判官の裁量となります。

そこで、お見舞い交通費の請求を認めさせるには、

  • お見舞いに訪れた者と被害者の間に、どのように親密な人間関係があるのか
  • その交通費が通常利用される交通手段の費用範囲であること
  • 傷害の程度や被害者との関係から、お見舞い回数が相当なものであること

これらの具体的な諸事情を丁寧に主張し、証拠をもって立証して裁判官を説得することが必要です。その訴訟活動を行うことが弁護士の仕事です。

保険会社との示談交渉の段階でも、弁護士を代理人として交渉すれば、お見舞い交通費を支払うとの保険会社の譲歩を勝ち取ることが期待できます。

お見舞い交通費の問題ひとつをとっても、交通事故の賠償問題については、専門家である弁護士に相談されることがベストなのです。

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