交通事故の損害賠償請求|少額訴訟にするべきケースとは?

「交通事故の相手に車の修理代を請求したが支払ってくれない。」

「裁判を起こしたいけれど、裁判には時間がかかるというし、弁護士費用もかかる。そもそも、多くのコストをかけるほどの金額でもない。どうしよう?」

そんな場合に、簡易裁判所の「少額訴訟」という制度を利用することが考えられます。この記事では、少額訴訟という制度の内容について説明し、少額訴訟を利用するに適した交通事故事件とは何かを明らかにします。

少額訴訟とは何か?

少額訴訟手続とは、「60万円以下」の「金銭の支払を求める訴え」に限定して、原則1回限りで審理を終わらせ、その日すぐに判決が出される、簡易裁判所の特別な裁判手続です。

通常の民事裁判では、複数回にわたって裁判が進行しますが、比較的金額の小さな紛争にもかかわらず、常にそのような時間とコストがかかるのでは、国民は裁判を利用することに二の足を踏んでしまいます。

そこで、一定の条件を満たす小さな法的紛争については、少額訴訟手続というスピーディーに決着がつく制度を設けたのです。

少額訴訟の提起が認められる条件とは?

少額訴訟は、特別な手続なので、この制度を利用するには一定の条件を満たすことが要求されます。

60万円以下の金銭請求であること

60万円以下の金銭の支払いを請求する目的の訴えであることが必要です(民事訴訟法第368条1項本文)。

少額訴訟の制度趣旨から、金銭の支払いという比較的単純な請求で、かつ、60万円以下という少額の紛争に限定したものです。

ですから、例えば、物品の引渡しを請求したり、名誉毀損に対する謝罪広告を請求したりする場合には、少額訴訟は利用できません。

回数制限に違反しないこと

同じ人が同じ簡易裁判所で少額訴訟を利用できる回数には年10回という制限があるので、これを超えないことが必要です(民訴法368条1項但書、民事訴訟規則第223条)。

回数制限を設けたのは、貸金業者などに簡易な督促手段として制度を多用され、事件処理が渋滞して簡易迅速な紛争処理が阻害されることを防止するためです。一般の皆さんが多数回利用することは考え難いので無関係と考えてかまいません。

被告が通常の訴訟手続への移行を積極的に望まないこと

訴えられた被告は通常の訴訟手続きへ移行可能

少額訴訟が提起されても、訴えられた被告が、通常の訴訟手続への移行を希望し、その旨を裁判所に申述すると、原告の意向に関係なく、自動的に通常の訴訟手続となります(民訴法373条1項本文、2項)。

訴える側(原告)は、提訴の際に、少額訴訟手続と通常の訴訟手続のどちらかを選択できるので、これに対応して、訴えられた側(被告)にも、少額訴訟手続と通常の訴訟手続のどちらかを選ぶ権利を保障してあげているわけです。

少額訴訟から通常の訴訟手続きへ移行できる申述期間

但し、選択する権利を行使する期限は設けられています。被告の通常の訴訟手続を望むという申述は、以下の期間内に行わなくてはなりません(民訴法373条1項但書)(※)。

  1. 最初の口頭弁論期日で弁論する前まで、または
  2. 最初の口頭弁論期日が終了する前まで

※コラム 通常訴訟への移行を求める被告の申述期限

また、裁判の当日に、被告が何も自分の主張をしない場合でも、その期日が終了してしまえば、同様にもはや通常の訴訟手続を求めることはできなくなります。

少額訴訟は一回で終わりが原則ですが、例外的に特別な事情があれば期日の続行も認められます(民訴法370条)。その場合でも1回目が終わってしまえば、もう通常の訴訟手続を求めることはできないということです。

裁判所が少額訴訟で取り扱うには不相当な事案と判断しないこと

少額訴訟として提訴された場合でも、事案や争点が複雑で簡易迅速な手続になじまず、裁判所が少額訴訟で扱うのは相当でないと判断したときには、通常の訴訟手続として取り扱う決定がなされます(民訴法373条3項4号)。この決定に対しては当事者は不服を申立てることはできません(同条4項)。

被告の居場所が不明で、公示送達でしか呼び出しできない場合でないこと

裁判を開くには、被告に呼出状等を送り、受け取らせなくてはなりません。これを「送達」と言います。どうしても被告の居場所がわからない場合は、最終的に「公示送達」という方法をとることになります。

「公示送達」とは、裁判所の外にある掲示板に「○○さん、あなたに受け取ってもらう書類がありますから受け取ってください。何月何日までに受け取らないときは、法律上、受け取ったという扱いにしてしまいます。わかりましたね。」と広告を一定期間掲示し、それで「呼び出した」ことにする手続です(民訴法第110条、111条)。

実際には、そんな掲示は誰も読みはしませんが、そうでもしなければ、手続が進められないので、苦肉の策として認められているのです。

ただ、このような例外的な呼出方法で、一回で裁判が終わってしまう少額訴訟を認めると、被告の権利保護に欠ける危険があります。そこで、公示送達を利用せざるをない場合は、通常の訴訟手続によることとされているのです(民訴法373条3項3号)。

では、少額訴訟はどのように提起すればいいのでしょうか?次に、少額訴訟のやり方・手続きの流れについて解説します。

少額訴訟のやり方・手続き

少額訴訟の訴状など必要書類を簡易裁判所に提出

原告が少額訴訟を希望する場合は、訴状にその旨を記載して裁判所に提出します(民訴法368条2項)。実際には、裁判所が用意した定型の書式(※)に少額訴訟を求める場合のチェックボックスがありますので、チェックの印を入れるだけです。

裁判所「損害賠償(交通事故による物損)請求」書式、記載例|裁判所HP

訴状と同時に、次のものも提出しなければなりません。

  • 原告の主張を裏付ける証拠書類のコピー
  • 手数料分の収入印紙、
  • 予納郵券(切手)

収入印紙、予納郵券の内容は請求する金額、担当裁判所によって異なりますでの、必ず事前に簡易裁判所に電話をして確認してください。

少額訴訟の管轄

なお、交通事故による損害賠償を求める少額訴訟は、以下ののいずれかを管轄する簡易裁判所であれば、どこでも提起できます(民訴法4条1項、2項、5条1号、9号、民法484条)。

  1. 原告の住所地
  2. 被告の住所地
  3. 事故現場(不法行為地)

受け付けられると被告に呼出状などが郵送される

提訴が受け付けられると、裁判所から被告に呼出状、訴状、原告の証拠書類コピーが送付されます。

被告は、裁判所に指定された裁判の期日前に答弁書(原告の請求を認めるか否か、反論の内容などを記載した書面)と被告の証拠書類コピーを裁判所に提出します。

裁判が行われる

こうして迎えた裁判の日には、原告・被告双方が出廷します。少額訴訟の場合、通常の裁判のように裁判官が高い位置から見下ろすのではなく、丸くて広いラウンドテーブルに、裁判官・書記官・原告・被告が座って手続きを進行させます。「裁判」というより、「会議」のイメージに近いものです。

原告・被告に対する質問や証人への尋問も、このラウンドテーブルで行いますので、担当裁判官によっても違いますが、おおむね「尋問」というより「会話」に近い和やかなイメージです。

証拠、証人には制限がある

少額訴訟は一回の裁判での解決をめざす制度ですので、裁判の進め方にも特別な制約があります。

まず、原告も被告も、主張したい内容や証拠は、裁判期日の前か、遅くとも裁判当日に裁判所に主張・提出しなくてはならないことが原則です(民訴法370条2項)。

しかも、証拠は、その裁判当日に取り調べられるものでなくてはいけません(同371条)。

通常の訴訟では、証人の候補者を申請し、裁判所が採用を決定してから、その証人尋問を行う期日を決めるという順序になりますが、少額訴訟では、証人となる者は当日に同行しなくてはならないわけです。

また通常の訴訟では、例えば、交通事故現場を裁判官の目で直接に確認してもらう必要がある場合、検証の申請をして裁判所が認めれば、裁判官が現場におもむく期日を調整することになりますが、少額訴訟では、そのような申請は認められないことが原則なのです。

被告の反訴は禁止される

通常の訴訟手続では、訴えられた被告が逆に原告を訴え返す「反訴」を提起して、同一手続内で審理することが可能です(民訴法146条)。

しかし、これを認めると手続が複雑になり、一回解決になじまないので、少額訴訟では反訴は禁止されています(同法369条)。被告が反訴を望むなら、通常の訴訟手続への移行を申述してから、反訴を提起すれば良いのです。

裁判は一回で終わり、その直後に判決が出される

裁判は、1回の期日で審理を終えることが原則です(民訴法第370条第1項)。

そして、審理を終えた後、直ちに判決の言い渡しがあることが原則です(同法第374条第1項)。

審理のすぐ後の判決で、裁判官が判決書を書く時間はありませんから、裁判官が結論と要旨を述べて、書記官が調書に記録することになります(同法374条2項、254条2項)。

裁判官は、判決に特別の定めをもうけることができる

少額訴訟の判決では、原告の請求を認める場合、裁判官の裁量で、被告側に有利な支払条件をつけることができます(民訴法375条)。

金銭の支払を請求する通常の訴訟では、原告の請求が「○○円を支払え」という内容で、その言い分が認められるなら、裁判所も「被告は原告に○○円を支払え」という原告の請求どおりの判決しか下せません。裁判所には、勝手に期限や条件を付け加える権限はないのです。

裁判官が付すことができる特別の定め

しかし、少額訴訟では、裁判官は、被告の支払能力などの事情を考慮したうえで、特に必要があれば、判決に次の定めを付け加えることができます。

1.3年を超えない範囲で、支払時期の猶予を定めること

2.3年を超えない範囲での分割払いとすること

3-1.被告が、上記1.または2.の条件に違反し、期限の利益を喪失したときには、その時点からの遅延損害金を支払うこと

3-2.被告が、上記1.または2.の条件どおりの支払を完了すれば、訴え提起後の遅延損害金は免除すること

裁判官に、このような特別な裁量を認めたのは、次の理由によります。

被告が判決に従わない場合、少額訴訟の判決によって強制執行が可能です。しかし、60万円以下の金額を取り立てるために時間も費用もかかる強制執行手続を利用することは現実的ではありません。

そこで、むしろ裁判官が、判決に被告の任意の履行をうながす条件を盛り込めることにして、判決の実効性を確保しようとしているのです。

裁判官が判決内容に、これらの定めを加えた場合は、原告も被告も、その定めの内容に不服を申し立てることはできません(同375条3項)。

少額訴訟の判決に不服があるときはどうするのか?

通常の訴訟では、簡易裁判所の判決に不服があるときは、控訴することで、地方裁判所の控訴審において、引き続き裁判を続けてもらうことが可能です。

しかし、短期間での事件解決をめざす少額訴訟では、控訴は認められません(民訴法377条)。

判決に不服がある場合は異議申立てができる

ただし、判決を争う方法がまったくないのではありません。少額訴訟では控訴ではなく、判決に対する「異議申立て」という特別な制度が設けられているのです(民訴法378条)。

裁判所から送付される判決内容を記載した調書を受領した日の翌日から2週間のうちに、同じ簡易裁判所に対して異議申立てを行います

異議申立てを受けると、同じ裁判所で裁判が再開され、判決前の段階にもどり、以後は通常の訴訟手続として裁判を進行することになります(民訴法379条)。

例えば、被告が新たな証人が見つかったから証人尋問を実施したいと申請すれば、採用される可能性がありますし、新たな証拠書類を提出することもできます。

このように異議申立て以後は、通常の訴訟手続として進行し、最終的に通常の訴訟としての判決が下されることになります。

異議申立てで判決が変わる可能性は低い

ただし、控訴審と異なり、同じ簡易裁判所で、同じ裁判官が担当することが通常ですので、よほど重要な新しい証拠や証人でない限り、最終的な判決の結論が変わる可能性は薄いでしょう。

そして、この異議申立てを経た判決に対して不服があっても、やはり地方裁判所への控訴は認められません(民訴法380条)。

したがって、原告も被告も、少額訴訟を利用することにした以上は、「一発勝負」を覚悟することになります。

少額訴訟に適した交通事故事件とは?

少額訴訟を利用できる条件を整理すると次のとおりとなります。

  • 60万円以内の金銭支払を請求するものであること
  • 一回の裁判期日にすべての主張・証拠(証人を含め)を提出できること
  • 被告も少額訴訟で審理することに反対しないこと
  • 裁判官が少額事件手続では不相当と判断しないこと

人身事故や事故の過失割合などが争点となる事件には適さない

この観点から、少額訴訟に適する交通事故を考えると、まず賠償金額が大きくなる傾向がある人身事故は除外されるでしょう。

次に、事故の態様等について争いがあり、被告の過失責任の有無や、双方の過失割合が争点となっている事件では、被告側が通常の訴訟手続を希望することが多いでしょうし、さらに裁判官からも少額訴訟で審理することは不相当と判断される可能性も高いでしょう。

そのような事件では、原告としても、裁判当日に被告から予期せぬ主張や証拠を提出され、反論の機会がないまま、即日の判決に至ってしまうリスクもあります。

事実内容に争いがなく被告が請求に応じない場合は少額訴訟

したがって、物損事故で大きな争点がない事件、例えば、事実内容に争いがないが、被告が経済的事情から請求に応じないなどの場合が、少額訴訟に適した事件です。

そのような事件は、同じく簡易裁判所の民事調停での解決にもなじみますが、民事調停の場合は、両当事者が合意しない限り事件が解決しないのに対し、少額訴訟であれば合意がなくとも判決で決着をつけることが可能です。

また実際の裁判では、少額訴訟の審理を結審して同日の判決を宣告する前に、裁判所が間に入る形で、調停と同様に話合いが行われることが通常で、判決まで至らずに和解が成立するケースも珍しくありません。実は、ラウンドテーブルで和やかに進行する運用は、和解しやすい雰囲気づくりを狙ったものでもあるのです。

したがって、相手との和解をするためのひとつの手段として少額訴訟を利用することも、良い選択だと言えます。

少額訴訟は被害者が自分ででできる?

民事訴訟は、通常の訴訟も、少額訴訟も、本人だけで行うことが可能であり、必ず弁護士や司法書士(簡裁訴訟代理等関係業務の資格を有する者に限ります)に依頼しなくてはならないものではありません。

特に、少額事件を迅速に解決するための少額訴訟では、本人だけの利用を前提としているため、例えば、裁判所から被告に呼出状を郵送する際に、少額訴訟の手続の内容を説明した書面を同封することとされ(民事訴訟規則222条1項)、さらに裁判期日の冒頭には、裁判官から両当事者に手続の説明を行うこととされる(同条2項)など、本人に対する配慮がなされているのです。

少額訴訟には弁護士の無料相談を有効活用

また、現実問題として、金60万万円までの損害賠償請求をする裁判で、弁護士を依頼すると、たとえ全額を回収できたとしても、ほとんどが弁護士費用となってしまう可能性が高いのです。

したがって、金銭面の損得だけを考えると、少額訴訟の訴訟代理を弁護士に依頼することは得策とは言えません。

ただし、民事事件の中には、「損得の問題ではない」、「持ち出しとなってでも訴訟をしたい」というケースは珍しくありません。

交通事故の場合、加害者である被告の不誠実な態度などから、経済的な利益を度外視してでも、裁判を起こしたいと言われる方は多いのです。

そのような場合は、弁護士は、勝訴してもコストに見合わない可能性があることを説明し、それでも訴訟代理を希望するのであれば引き受けましょうということになります。

また、そこまでコストはかけたくないけれど、少額訴訟を本人で行うにあたって、弁護士のアドバイスを受けたいとお考えの方は、弁護士の法律相談を利用しましょう。書類の書き方や手続の進め方、当日の注意などについて、丁寧に教えてくれるはずです。

まとめ

少額訴訟は、紛争を迅速に解決するための制度であり、これを利用すれば時間とコストの節約が可能です。

その反面、利用条件や手続の進め方に制約も多く、意に反した結果となった場合の不服申立て手段も限定されています。

したがって、少額訴訟だからといって安易に考えず、裁判の専門家である弁護士に相談し、助言を受けることをお勧めします。

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