交通事故で椎間板ヘルニアになった場合の後遺障害等級と損害賠償金額

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「追突事故後、首、肩、腕がしびれたり、痛んだりする症状がある。」「交通事故に遭った後、腰に痛みや足のしびれがある。」もしかしたら、その原因は「椎間板ヘルニア」かもしれません。

治療をしても、しびれや痛みが治らないときは、後遺障害として損害賠償を請求することができます。

しかし、交通事故の後に頚椎椎間板ヘルニアの症状があらわれたからといって、そのすべてが損害賠償の対象となるわけではありません。では損害賠償を請求できるための条件とは何でしょうか?

今回は、椎間板ヘルニアの後遺障害と損害賠償について解説します。

椎間板ヘルニアとは

背中の中央を縦にまっすぐ走っている、身体を支えている1本の骨を「脊椎(せきつい)」と言います。

一般的な言葉で言えば「背骨」です。脊椎(せきつい)は24個の小さな骨が連なって構成されていることはよく知られていますが、その骨と骨をつなぎ合わせるクッションの役目を果たすのが「椎間板(ついかんばん)」です。

これがもともとあった場所から飛び出してしまうのを「ヘルニア」と呼びます。

椎間板ヘルニアは、椎間板が変形してしまい、それが神経に圧迫を加えることで痛みやしびれなどの症状が生じます。

特に交通事故で発生しやすいのは

  • 頚椎椎間板ヘルニア
  • 腰椎椎間板ヘルニア

です。

頸椎椎間板ヘルニアは追突されて首に初期症状が出る

まず、頚椎椎間板ヘルニアとはどんな疾患なのか説明しましょう。

人の「脊椎(せきつい)」と呼ばれる背骨の中でも特に首のあたりに「頚椎(けいつい)」と呼ばれる骨が7個連なって存在します。

頸椎椎間板ヘルニアは、頚部(首の部分)に圧力が加わることによって、頚部(首)にある椎間板が飛び出して神経を圧迫することで起こります。

特に、後ろからの追突事故などのケースで首が大きく前後に揺さぶられた場合などに頸椎椎間板ヘルニアになりやすいです。

腰椎椎間板ヘルニアは腰に痛みや足のしびれが出る

「腰椎」は言葉どおりですが、「脊椎」のうちの一部で、「腰」のあたりにあり5個の骨で連なって構成されています。

また腰椎椎間板ヘルニアの症状は、腰の部分にある椎間板が事故の衝撃によって本来の場所から飛び出して、神経を圧迫することにより起こります。

交通事故で腰を大きくひねった際などに、腰の軟骨に無理な圧力がかかることによって腰椎椎間板ヘルニアになることがあり、坐骨神経痛の原因の一つともされています。

このように、交通事故によって首や腰に衝撃が加わった場合、その後に椎間板ヘルニアの症状が出る可能性があるので、充分に注意する必要があります。

椎間板ヘルニアで認められる後遺障害等級

椎間板ヘルニアで、首、肩、腕の痛みやしびれの症状が出て、治療をしたけれど症状が残ってしまったという場合、12級13号または14級9号の後遺障害等級に該当する可能性があります。

12級と14級の違いは医学的に証明できるかどうか

では、頚椎椎間板ヘルニアによる痛み、しびれが残ったときに、自賠責保険によって後遺障害等級が認定されるためには、どのような条件が必要でしょうか。

後遺障害12級に認定される条件

後遺障害12級の認定には「他覚的所見」が必要

後遺障害12級の「医学的に証明できる」とは「他覚的所見」があることです。他覚的所見とは、医師が医学的な知識をもって症状の存在を認識したということです。

他覚的所見とはレントゲン、CT、MRIなどの画像診断で異常を確認できること(画像所見)を意味しており、保険会社は、画像上、異常が認められない場合、12級には該当しないと主張することがあります。

しかし、これは間違いです。画像上は明白な異常がなくても、筋力検査、知覚検査、反射検査といった、医師が実施する神経障害を確認するための検査(神経学的検査)によって、症状の存在を医学的に判断できれば、他覚所見と言えるのです。これを神経学的所見といいます。

他方、画像で神経の圧迫が認められても、圧迫されている神経が支配しているはずの身体領域には神経学的な異常がないとか、別の神経が支配しているはずの身体領域に神経学的な異常が生じているという場合は、画像上の所見と神経学的異常が整合しておらず、医学的な証明ができていないことになります(※)。

だからこそ、裁判所では、神経学的検査を含めた医学的な所見を総合的に勘案し、後遺障害の判断をするのです。

※「後遺障害入門 認定から訴訟まで」弁護士小松初男外編 青林書院発行170頁以下・「後遺症害等級認定と裁判実務」弁護士高野真人編著 新日本法規243頁以下

後遺障害12級の認定を受けるには画像所見が重要

ただし、自賠責保険において、神経学的所見だけで12級の認定を受けることは難しいと言わざるを得ません。書類審査によって大量の案件を公平に審査する必要があるため、画像の存在を特にに重視しているからです。

このように、自賠責保険で12級となる条件は次のとおりにまとめることができます。

  • 画像所見があること
  • 画像所見と他の神経学的所見が整合すること

そこで頚椎椎間板ヘルニアで12級の認定を得るためには、担当医師に依頼して、必ず画像撮影をすること、神経学的諸検査を実施してもらうこと、画像と整合する検査結果を後遺障害診断書に詳細に記載してもらうことが必要です。

後遺障害14級に認定される条件

自覚症状だけでも後遺障害14級の認定は可能

14級の場合、自覚症状しかなくとも、医学的に障害の存在が「説明可能」であれば認定を受けることができます。

医学的に説明可能といえるためには、治療の経過から症状に連続性、一貫性が認められることが必要です。

交通事故の障害は、事故後に発症した時点が最も症状が重く、治療を進めるにしたがって症状が軽くなってゆくことが通常です。したがって、この普通の経過とは異なった治療の経過、症状の経過は、医学的に説明ができない症状、故意に誇張した自覚症状と判断されます。

問題となるのは症状の「連続性、一貫性」

医学的に説明ができない症状とは例えば、次のようなケースです。

  • 事故後、相当期間を経過してから、病院を初受診した
  • 治療の途中で、症状が悪化した
  • 診療の途中から、当初はなかった新たな症状が現れた
  • 治療に中断期間があり、中断してから再度治療を始めた

これらのケースは、いずれも上記の通常の場合とは違う経過をたどっており、症状の経過に連続性、一貫性がないとされます。

もちろん、そのような通常と異なる事態となった「合理的な理由(※)」があるなら問題はありません。しかし、合理的な理由があると判断されなければ、現時点で痛みやしびれが存在していたとしても、医学的には説明がつかないと評価され、非該当とされてしまいます。

したがって、頚椎椎間板ヘルニアで14級の認定を得るためには、事故から時間を置かずに診察を受けて、定期的に通院することが必要です。

※合理的な理由:事故直後から、痛みを自覚していたが、余人に代えがたい重大な仕事のために初診が遅れた場合や、事故によりもっと重大な傷害(骨折や臓器損傷など)があり、頚椎椎間板ヘルニアの診療は後回しになった場合など。

では、交通事故で椎間板ヘルニアとなってしまった場合、どのような損害賠償が受けられるのでしょうか?

椎間板ヘルニアの損害賠償

交通事故で椎間板ヘルニアになった場合に請求することができる損害賠償は、医師に「症状固定」と診断される前後で変わります。

交通事故の損害賠償(傷害部分と後遺障害部分)

傷害部分

事故発生から症状固定までは、治療費、治療に関わる交通費、休業損害や、入通院慰謝料などの請求をすることが可能です。

自賠責保険で気をつけなければならないのが、この傷害部分で請求できる総額の上限が120万円だということです。超過分は、加害者が任意保険に加入していれば任意保険会社に、加入していなければ加害者本人に請求していくことになります。

休業損害

休業損害とは、交通事故の怪我で仕事ができなかったために発生した減収分の補填です。自賠責基準、任意保険基準、弁護士・裁判基準の3つの基準があります。

休業損害は、以下の計算式を用いて求めます。

1日当たりの基礎収入 × 休業日数

自賠責基準の場合、「1日当たりの基礎収入」は1日5,700円で計算されます。ただし、実収入がそれを超えることを証明できる場合には、19,000円を限度として、実収入を基準にすることが可能です。

弁護士・裁判基準の場合、「1日当たりの基礎収入基礎収入」は、事故前の実収入を基準にします。

任意保険の場合は、各任意保険会社が独自に限度額や基準を策定しています。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、入院や通院によって受けた精神的・肉体的な損害に対する賠償です。休業損害と同じく、入通院慰謝料にも3つの基準が存在します。

自賠責保険の場合、以下の計算式で算定することができます。

・実通院日数 × 2
・治療期間
上記いずれか少ない方の日数 × 4,200円 = 入通院慰謝料

任意保険の場合は、休業損害と同様に、任意保険会社の独自の基準があり、弁護士・裁判基準では、入院と通院の期間によって定められています。

後遺障害部分

症状固定後に後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益の請求が認められます。

自賠責保険の後遺障害部分の上限額は、各後遺障害等級ごとに定められています。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故の後遺障害による精神的な苦痛に対する賠償です。

12級と14級の後遺障害慰謝料は、以下の通りです。

等級後遺障害慰謝料労働能力喪失率
自賠責基準任意保険基準(※)弁護士基準
12級93万円100万円290万円14%
14級32万円40万円110万円5%

※任意保険基準については、一般に公開されていないので、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載しています。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害のために得ることができなくなった将来の収入です。後遺障害によって働く力が失われたと考え、それに相当する収入を損害と評価します。働く力が失われた割合を労働能力喪失率といい、後遺障害等級ごとに喪失率が定められています。

逸失利益は、以下の計算方法で求めることができます。

逸失利益=年収額×労働能力喪失率×被害者の年齢に応じたライプニッツ係数

「就労年数に応じたライプニッツ係数」の一覧表は、以下の国土交通省のサイトを参照ください。

参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表

上記の計算式、労働能力喪失率、後遺障害慰謝料の弁護士基準を使って以下の事例で後遺障害の賠償額を計算してみましょう。

被害者

年齢:35歳
年収:600万円
被害者のライプニッツ係数:15.803

逸失利益
600万円×14%×15.803=1327万4520円(A)


後遺障害慰謝料
290万円(B)

後遺障害の賠償額
(A)+(B)=1617万4520円

これが後遺障害の賠償額となります。

同じ被害者が同じ条件で14級の認定を受けることができた場合の後遺障害の賠償額は、以下の通りです。

逸失利益
600万円×5%×15.803=474万0900円(A)


後遺障害慰謝料
32万円(B)


後遺障害の賠償額
(A)+(B)=506万0900円

12級の認定と14級の認定では、これだけの違いが生じます。

気になる方は、以下の関連記事でご自分の慰謝料をシミュレーションしてみてください。

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争点は交通事故との因果関係

後遺障害の損害賠償が認められるためには、事故と後遺障害の症状との間に、因果関係があることが必要です。

交通事故による頚椎椎間板ヘルニアでは保険会社が、この因果関係を認めずに争いとなることが多いのです。

例えばヘルニアの発症部分に加齢による変性(異常)が発見された場合、保険会社は、被害者が事故前からヘルニアを患っていたのだと事故とヘルニアの因果関係を否定することができます。

しかし、仮にヘルニアが事故前に存在していた(既往)だったとしても、事故の前は痛みやしびれはなかったのであり、事故による衝撃などがきっかけ(原因)となって、痛みやしびれの症状が発症してしまったのだと主張することは可能です。

このように保険会社が事故との因果関係を否定した場合でも、弁護士が訴訟を提起して裁判所に後遺障害を認めさせたケースは決して珍しくないのです。

既往症を認めてしまうと素因減額の対象になる

しかし、ヘルニアが事故前から存在していたことを予め認めてしまうことは、被害者に不利を及ぼす「素因減額」をされてしまう可能性があります。

素因減額とは、後遺障害という被害の発生や拡大に被害者側の精神的、肉体的な要素(素因)も寄与していると認められて、損害賠償額を一定割合減額されてしまうことです。交通事故と既往のヘルニアという両方がなければ後遺障害とはならなかったのですから一定割合減額することが公平と判断されるのです。減額の割合は事案によって5%から80%以上まで様々です。

素因減額は、過失相殺と同様に損害賠償の総額に対して一定割合を減額するので、全体の賠償額に大きな影響を与えます。そこで、弁護士としては、まず事故前にヘルニアはなかったと主張、立証を行うことを選択するのです。

被害者に有利な賠償を受け取るために、どのように主張を組み立てることが最善かは、交通事故に関する法的知識と裁判実務経験に基づいて判断する必要があるのです。

既往症についての素因減額の基準や、素因減額されないケースについてもっとお知りになりたい方は、下記の関連記事を是非ご覧ください。

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まとめ

このように、頚椎椎間板ヘルニアで適正な後遺障害等級認定を受け、正しい賠償金を受けるためには、様々なポイントがあり、なかなか被害者お一人で解決できる問題ではありません。ましてや、相手は交渉に長けた保険会社です。

もし、交通事故の頚椎椎間板ヘルニアで悩んでいたら、是非、交通事故に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

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