加害者が事故で死亡!損害賠償は誰に請求できるのか?

carcass of crashed car in front side, Car insurance concept

加害者が事故で死亡!損害賠償は誰に請求できるのか?

交通事故で加害者が死亡してしまったケースや、事故後、例えば示談交渉中、事故と無関係に病気などで死亡してしまったケースのように、損害を賠償する責任のある加害者が亡くなったとき、被害者は、誰に損害賠償を請求できるのでしょうか?

ここでは、加害者死亡の場合に、損害賠償を請求できる相手について解説します。

加害者が死亡した場合、賠償責任を引き継ぐ者とは

事故の発生により、加害者には損害を賠償する責任が発生します。これは債務であり、相続はマイナスの財産である負債も相続人が引き継ぐので、加害者死亡の場合は、その法定相続人(※)に損害賠償義務が承継されます。

※法定相続人は、加害者の「配偶者」と「血族相続人」です。血族相続人とは、①子、孫、ひ孫、②直系尊属(祖父母、曾祖父母)、③兄弟姉妹、甥姪です。配偶者は常に相続人であり、血族相続人は①~③の順で優先順位があり、先順位の者がいれば後順位の者は相続人になれません(民法887条以下)。

各法定相続人が承継する賠償義務の範囲は法定相続分にしたがいます。

例えば、加害者の家族が、妻と長男、次男であったときは、法定相続分は妻が2分の1、長男4分の1、次男4分の1です。1000万円の損害賠償債務であった場合は、妻500万円、長男250万円、次男250万円の支払義務を承継します(民法900条)。

但し、加害者の法定相続人は、損害賠償債務を承継したくないときには相続放棄の手続をすることができます。相続放棄をするとプラスの財産を相続できない代わりに、負債も承継しなくて良いのです。相続放棄の手続は相続開始を知ったときから3ヶ月の間に家庭裁判所で行う必要があります(民法935条、同918条、)。

加害者死亡時の損害賠償債務の承継は上のとおりであり、相続人に損害賠償を請求することが可能です。

加害者の相続人はあてにならない

しかし、相続人に請求できると言っても、次の各場合には意味がありません。

  • ①そもそも加害者に法定相続人がいないとき
  • ②法定相続人が相続放棄をしてしまったとき
  • ③法定相続人に賠償金を支払う財力(遺産を含めても)がないとき

とくに交通事故の賠償金は高額になりやすいので、上の③観点からは相続人がいたとしても必ずしもあてにはなりません。

また自賠責保険、任意保険からの支払いを期待できるなら、加害者の相続人に請求する必要もありません。

さらに、加害者以外の者に賠償を請求できる場合もあります。

そこで、加害者死亡の場合の自賠責保険・任意保険の扱い、加害者以外の者へ請求できる場合について説明していきます。

自賠責保険と任意保険から賠償金を受け取るには

加害者が死亡しても、自賠責保険、任意保険から賠償金を受け取ることができます。

自賠責保険

加害者が自賠責保険に加入していれば、加害者が死亡しても、被害者は自賠責保険会社からの賠償を受けることができます。

人身事故で加害者に賠償責任が発生すると、被害者は、加害者を介さずに、自賠責保険会社に対して直接に賠償金を請求することができます。これが「被害者請求」です(自動車損害賠償保障法3条、16条)。

これは加害者の生死に左右されません(もしも、加害者死亡の場合は賠償されないとすると、交通事故被害者の救済を目的とする自賠責保険の意味が失われます)。

ただし、自賠責保険は賠償される金額に上限(※)があり、損害額が上限額を超えるときは、超えた部分は賠償を受けることはできません。

※自賠責保険の上限額:死亡で3000万円、後遺障害で4000万円、傷害で120万円まで

任意保険

加害者が任意保険に加入していれば、加害者が死亡しても、被害者は任意保険会社からの賠償を受けることができます。

任意保険契約の内容は、各保険会社の約款に定められていますが、自賠責保険の被害者請求と同様に、被害者が任意保険会社に対して賠償を請求できることが規定されています。

例えば「対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合は、損害賠償請求権者は、当社が被保険者に対して支払責任を負う限度において、当社に対して(中略)損害賠償額の支払を請求することができます。」という記載です。

そして、加害者に法定相続人がいない場合でも、任意保険会社が被害者に直接に賠償することも約款で定められています。

例えば「当社は、次のいずれかに該当する場合に、損害賠償請求権者に対して(中略)損害賠償額を支払います。」、「被保険者が死亡し、かつ、その法定相続人がいないこと。」という記載です。

(上記約款の例はいずれも、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社「個人総合自動車保険・タフつながる車の保険」平成31年1月「普通契約約款」第8条から)

この任意保険契約の内容から、加害者死亡で法定相続人もいない場合には、任意保険会社自身が賠償義務を負担する当事者となります(民法537条)。

したがって、任意保険会社が示談交渉の相手となりますし、話がまとまらない場合は任意保険会社を被告として訴訟を提起することになるのです。

加害者が無保険のときの対処法

死亡した加害者が、

  • (1)自賠責保険にも任意保険にも加入していない場合
  • (2)自賠責保険にしか加入しておらず損害額が自賠責保険の限度額を超えてしまった場合

には、誰にどのような責任を問えばよいのでしょうか。

考えられるのは、①運行供用者責任、②使用者責任の2つです。

運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)

自賠法3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者」に人身事故の賠償責任を負わせています。

つまり、事故のときに車を運転していた加害者でなくとも、この「運行供用者」に該当すれば、損害賠償責任を負うのです。

その趣旨は、報償責任(利益を得るものは損失も負担すべき)、危険責任(危険なものを管理するものは危険が現実化した責任も負担すべき)という2つの理念にあります。

そこから「運行供用者」とは「運行利益」と「運行支配」が帰属する者と理解されています。

  • 運行利益……車の運行で利益を得ている立場
  • 運行支配……車の運行を支配し制御できる立場

この運行利益・運行支配は、抽象的・観念的に判断され、具体的な利益があることや車の走行をコントロールできることは要求されていません。

多くの場合、所有者には運行供用者としての責任を問えます。

  • 加害者に車を貸したレンタカー会社(最高裁昭和46年11月9日判決)
  • 加害者に車を盗まれた車両所有者。但し、キーをつけたまま路上に放置して盗難されたという過失がある場合
    (札幌地裁昭和55年2月5日判決・交通事故民事裁判例集13巻1号186頁)
  • 加害者に車を貸した車両所有者(最高裁昭和48年1月30日判決)

しかし、たとえ所有者でなくとも運行供用者として責任を問える場合があるのです。

  • 加害者に名義を貸して車両の登録名義人となっていた父親(最高裁昭和50年11月28日判決)
  • 加害者にマイカー通勤を許していた会社(最高裁昭和52年12月22日判決)
  • 自動車修理のために預かった車を、従業員である加害者に無断で私的使用された修理業者(最高裁昭和44年9月12日判決)

これらの裁判例は、いずれも具体的な事情のもとで、運行利益、運行支配の有無を認定しています。

誰に運行供用者責任を追及できるかの判断は、難しい法的判断ですので、弁護士に相談されるべきでしょう。

関連記事
運行供用者責任
運行供用者責任の免責要件とは?自賠責保険も受け取れなくなる危険!
交通事故の被害者が、相手方の損害賠償責任を追及する根拠として、最も利用される法律が自動車損害賠償保障法(第3条)の運…

使用者責任(民法715条)

民法715条は、従業員が「その事業の執行について」他人に与えた損害の賠償責任を使用者(雇用主、会社)が負担すると定めています。

「事業の執行」にあたるかは、客観的外形的に職務の範囲内の行為と認められるか否か、会社の内部事情も加味して会社に責任を負担させるだけの理由がある否かという観点から判断されます。

従業員が勤務中に会社の車で事故を起こした場合は会社に使用者責任を問うことができますし、通勤途中のマイカーでの事故であっても会社がそれを許容していたなどの事情があれば、やはり使用者責任を問うことができる場合があります(最判昭和52年9月22日判決など)

関連記事
従業員が犯した交通事故に対する会社の責任とは?
従業員が犯した交通事故!どのようなケースで会社に責任が生じるのでしょう?会社に賠償責任が生じたときの従業員の賠償責任…

被害者が加入する任意保険の利用

加害者が死亡して無保険の場合、被害者が自分で契約している保険を被害の補償に利用できる場合があります。

例えば「人身傷害補償保険」は、被害者側の保険会社が損害を補償してくれる保険商品で、事故の過失割合を問わない点にもメリットがあります。

他にも「搭乗者傷害保険」は、保険対象とした車に乗車中の事故での人身損害を補償する保険商品で、契約中の車に乗っている際の被害であれば補償されます。

また「無保険車傷害保険」は、加害者が任意保険に未加入で、損害額が自賠責保険の上限を超えてしまう場合に、被害者側の保険会社が補償をしてくれる保険商品です。

これらの保険商品は自動車保険の特約となっているので、事故にあったときは、ご自分の自動車保険の保険会社に確認されることがお勧めです。

関連記事
bed
人身傷害保険と搭乗者傷害保険!被害者が利用できる自分の任意保険
交通事故の被害者になってしまったら、相手の保険会社から賠償金(示談金)の支払いを受ける事ができます。 このように、通…

政府補償事業

加害者が死亡し、自賠責保険にも任意保険にも未加入で、相続人もおらず、被害者側の保険で利用できる保険もない、このような場合は、政府補償事業が最後の救済となります。

政府補償事業は、自賠責保険が利用できない場合(加害者が未加入、ひき逃げで不明など)に、政府が自賠責保険と同じ水準の損害補償をしてくれる制度で、国土交通省が担当し、各損害保険会社が窓口となっています。

まとめ

加害者が死亡した場合でも、損害賠償を請求することができなくなるわけではありませんので、ご安心ください。

しかし、実際に誰にどのように請求するかについては、法的な知識が必要ですので、弁護士にご相談ください。

交通事故に強い弁護士に無料相談できます

  1. 保険会社が提示した示談金・慰謝料に不満だ
  2. 事故の加害者・保険会社との示談交渉が進まない
  3. 適正な後遺障害等級認定を受けたい

弁護士に相談することで、これらの問題の解決が望めます。
保険会社任せの示談で後悔しないためにも、1人で悩まず、今すぐ弁護士に相談しましょう。

土日の電話受付対応、弁護士報酬は「後払い」、初回相談料と着手金は完全無料!

土日の電話受付対応、弁護士報酬は「後払い」、初回相談料と着手金は完全無料!

全国対応の「交通事故専門チーム」によるサポートが特徴の法律事務所です。まずは、交通事故専門チームによる「慰謝料無料診断」をご利用下さい。
お電話でのお問い合わせはこちら
050-5267-6329
[電話受付]平日 9:30~18:00 土日祝 9:30~18:00
電話で相談する 弁護士詳細情報はこちら 弁護士詳細情報はこちら
都道府県から交通事故に強い弁護士を探す