むち打ちの治し方と治療期間|通院頻度を保つべき理由は慰謝料にあり
追突事故などによる「むちうち」は、後遺障害で一番多い傷病と言われています。治療に疑問を抱く方も多い傷病です。通院期間…[続きを読む]
後ろから追突事故されて、後遺症が残ったのではないかとお考えの人もいるでしょう。
不意の衝撃を受けた追突事故などでは、足腰や背中、腕、首などに目に見えないダメージを受けており、事故から1~2週間後に症状や筋肉痛のような痛みが生じたり、後遺症が出たり、疲れやすくなる場合があります。人によっては、一ヶ月後に生じたという人もいるでしょう。
そのため、被害に遭った交通事故を「物損事故」として処理してしまった方もいるかもしれません。
交通事後は、できるだけ速やかに、しかも正しく対処しなければ、損害賠償で損をすることになりかねません。
そこで今回は、後ろから追突事故をされて、後遺症の原因となる可能性がある傷害の種類(首の痛み、頭痛、腰痛、むちうちやヘルニア)や、あとから筋肉痛のような痛みが生じてその後治らない場合に病院に行く重要性、適正な慰謝料をもらうための対処法を解説します。
目次
追突事故後、しばらくしてから次のような痛みがでてきたら、むちうちかヘルニアが疑われます。後遺症が残る可能性もあります。
追突事故後数時間から数日、長ければ一ヶ月程度で以下の症状を感じたときは、むちうち症の可能性があります。
このほか、交通事故後、むちうちになった場合、発熱、耳鳴り、聴覚障害を伴うこともあります。
むちうち症の治療期間はいつまでかと言うと、それは症状の重さによります。症状が軽いものであれば、3ヶ月程度で治癒することが多いようですが、事故後、頭痛がなかなか治らないなど症状の回復や症状固定までには、長期の治療が必要になることがあったり、後遺症が残ったりもします。
追突事故直後は症状がなく外見的には異常がないように見えても、事故後しばらくして以下のような症状を感じたら椎間板ヘルニアの可能性があります。
椎間板ヘルニアは、むちうち症の一種(神経根症)であり、むちうち症と同様の症状出ることがあります。
事故直後は、頭痛、首や背中の痛みも出血もなく、めまいや吐き気もない場合が多く、外見的には異常がないように見えます。
ヘルニアの治療方法には、手術と保存的治療の2つがあります。多くのケースで手術は必要ありません。交通事故後の腰痛でいつまでに治るかは人にもよりますが、おおよそ治療期間一ヶ月~三ヶ月でなくなります。
まれにヘルニアが治らず後遺症が残るケースもありますが、その場合は後遺障害認定を受ける必要があります。
追突事故に遭っても、後から痛みが生じる理由は、事故直後の興奮・緊張状態から、アドレナリンやβエンドルフィンが分泌されるので痛みを感じにくくなるからとだ言われています。
物損事故として処理(※)されたまま病院で受診せず放置すると、損害賠償の面でも、被害者には以下のようなデメリットがあります。
※「物損事故として処理した場合」とは警察及び保険会社に対して、車両の損傷などの損害だけを申告し、怪我が発生した事実を申告しないまま事件処理が進行した場合のことを指します。
それでは、交通事故を物損事故として処理してしまった後に症状が出てきたらどうすればいいのでしょうか?
交通事故後に症状が出てきたときには、まずは病院で受診してください。事故現場では痛くなくても、最悪の場合、骨折していることがあるからです。その後の対処をするにも医師の診断が必要です。
以下、物損事故として事故を処理した後に症状が出てきたときの対処法を解説します。
治療費を含め正当な補償を受けるためには、次の手続きで物損事故から人身事故へ切り替える必要があります。
物損事故から人身事故に変化した場合、損害賠償を請求するにあたり、怪我の状況を証明するために「医師による診断書」が必要不可欠です。
病院での治療履歴を証拠として残すことが重要で、診断書がなければ事故との因果関係が明確にならず、示談交渉で不利になる恐れがあります。
診断書は医師によって発行される法的に有効な証明書であり、まずは病院で受診して医師に診断書を書いてもらうことが必要です。
物損事故から人身事故の切り替えは、警察署で行います。診断書を持って、「交通事故の処理を担当した警察署」で手続きをしましょう。
詳しい方法については、以下の関連記事を是非ご覧ください。
通常、物損事故から人身事故への切り替えには、「交通事故証明書」が必要になります。
警察に届け出ていない場合や、物損事故のまま放置している場合でも、相手方の保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」を提出すれば、保険会社から治療費や慰謝料などの請求ができます。
「人身事故証明書入手不能理由書」の書式は、相手方保険会社から取り寄せることが可能です(サイト上でダウンロードできることが多いです)。
以下記事では、「人身事故証明書入手不能理由書」のリスクにも触れています。
理由の欄には、「事故直後は痛みなど症状がなかったが、事故後〇日経って初めて痛みを感じたため医師の診察を受けた」といったことを記載しておきましょう。
もし、警察や保険会社が人身事故への切り替えを拒んだら、弁護士に相談しましょう。
弁護士が介入することで、保険会社が切り替えを認めることがあります。また、保険会社が交通事故との因果関係を認めないときには、裁判で人身事故と認められれば慰謝料の請求も可能です。
後から痛みが発生しても示談書にサインをしてしまっていたら、それを覆して賠償させることは難しいでしょう。
しかし、成立したのが物損事故の示談のみであれば話が違います。
なぜなら、後から発生した痛みについての人身の損害については、示談は成立していません。後から生じた痛みを、示談によって賠償してもらうことは可能です。
実は、最高裁判所には、以下の通り、「示談の当時予想できなかった損害については、示談後も請求可能である」とした判例があります。
最高裁判所 平成43年3月15日 判決
このように、全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。
【出典】裁判所
しかし、お読みになってお分かりいただける通り、この判例には、「全損害を把握し難い状況のもと」といった条件が付してあります。加害者側・保険会社側から「示談当時把握していたはず」といった主張がなされる可能性もあります。
そこで最初から、「示談後に発覚した損害については、別途協議する」旨の留保条項を示談書に記載しておくことをお勧めします。示談後であっても、こういった一文を示談書に記載することで、後から生じた痛みに対応することが可能です。
残念ながら、交通事故から一ヶ月後、痛みが出てきた場合、それまでに病院で一回も診察してもらっていなければ、相手側の保険会社から治療費や慰謝料を支払ってもらうことができなくなる可能性が高くなります。
通常、交通事故後の怪我は、事故時に最も症状が重く、それから徐々に回復していくものですが、一ヶ月後に突然痛みが出てきたと言っても、医学的に証明することは困難です。
特に、むちうち症などは、他覚所見がないことが多いため症状の一貫性・連続性を医学的に説明・証明することが難しく、保険会社から事故との因果関係や、酷いときには詐病を疑われてしまうことさえあるからです。
交通事故、特に追突事故から数日経って後から腰痛や足、背中の痛み、頭痛などが生じることがあります。「痛くないから大丈夫だろう」と決めつけてはいけません。痛くなくても、必ず、病院行きましょう。
交通事故の後、病院にいっておけば、後から痛みが出ても、きちんと対処すれば補償してもらうことができます。
もし、交通事故後の怪我の補償について不安があるなら、交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。無料相談・土曜夜間の相談にも対応してくれる事務所が増えているので、気軽に相談することができるようになっています。