「人身事故証明書入手不能理由書」で必ず知っておくべきリスクとは?

人身事故に遭った際には、基本的には、病院を受診して医師に診断書を作成してもらい、管轄の警察署に診断書を持って人身事故の届出をすることになります。

しかし、始めは軽い物損事故で痛みが出ていなかったり、単に忙しかったり、相手の保険会社の担当者から治療費は払うから人身事故の届出は提出しないよう求められたりするなどして、実際には、人身事故の届出をしないケースは意外に多いです。

その場合、後の損害賠償のために、人身事故証明書取得不能理由書の作成を求められることがあります。

今回は、人身事故証明書取得不能理由書の存在意義や記入方法について詳しく解説したいと思います。

人身事故証明書入手不能理由書とは?

どのような書類なの?

人身事故証明書入手不能理由書とは、文字どおり、人身事故の届出をしなかった理由を記載する書面です。実際の書面は、以下のようなものになります。

https://www.sonysonpo.co.jp/share/pdf/auto/funouriyuusyo.pdf(ソニー損保HPより)

なぜ作成する必要があるの?

人身事故証明書入手不能理由書は、自賠責保険の請求のために必要です。そもそも、自賠責保険は人損を補償するための保険であるため、自賠責保険を請求する前提として、人損の発生すなわち人身事故であることを証明しなければならないのです。

もし、人身事故であるのに人身事故の届出をすることなく、かつ、人身事故証明書入手不能理由書を提出しなければ、物損事故として処理されるため、自賠責保険の請求はできないことになります。

どのように記入すればよいの?

交通事故の被害者として、人身事故証明書入手不能理由書に記載すべき事項は、

  1. 当事者
  2. 事故の発生日時
  3. 事故の発生場所
  4. 物損事故の届出先の警察署及び届出日時
  5. 人身事故証明書を入手できない理由

です。

重要になるのは、5.の人身事故証明書を入手できない理由になりますが、ケガの程度は軽微であることを理由とする欄に記入するのは、できる限り、控えましょう。

後の賠償請求において減額の理由にされるリスクがあるためです。

相手方の保険会社から要請された場合には、その他の欄のところに、その旨を記載します。また、管轄の警察署は遠方であるため人身事故の届出を提出できなかった場合には、当事者の事情の欄に、その旨を記載します。

「人身事故証明書入手不能理由書」のリスクとは?

まず、人身事故の届出をしない場合でも、人身事故証明書入手不能理由書を提出すれば、保険会社は人身事故として扱ってくれるため、人損の賠償について、特に問題の生じることはありません。したがって、どうしても人身事故の届出をしなければならないことはありません。

しかし、人身事故の届出をしないことにより、後の損害賠償請求において、被害者側に不利になる危険のあることは十分に知っておくべきです。

治療費の早期の打ち切りのリスク

先ほど、人身事故証明書入手不能理由書における入手不能の理由を記載する欄について、ケガは、軽微であることを理由にすることは控えるべきだと説明しました。

ケガは軽微であると自認すれば、治療期間は、短期であると保険会社から主張されるリスクがあるためです。

この点、仮に入手不能理由について、ケガの軽微性を理由にしなかった場合でも、事実上、ケガの程度が大きいのであれば、人身事故の届出をして然るべきだと第三者から誤解されるリスクはあるでしょう。

また、事故後は軽いケガだと思っていても、例えば、むち打ちの場合、なかなか症状が改善せず治療を継続せざるを得ないことがあります。もっと治療を続けたいのに、早期に保険会社より治療途中で治療打ち切りを言われるリスクもあることは知っておくべきでしょう。

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過失割合について、もめたときのリスク

次に、後の賠償請求の段階において、事故の過失割合について揉めた場合には、警察の捜査の一環として作成する実況見分調書は、過失割合を判断する際の貴重な客観的資料になります。

ところが、人身事故の届出をしない場合には、実況見分は行われないため、当然、実況見分調書は作成されません。代わりに、警察の処理としては、事故現場や事故状況について簡単に記録した物件事故報告書を作成して終わりです。

そのため、人身事故の届出をしていなかったばかりに、実況見分調書に基づいて過失割合を争うことができなくなる危険があるのです。

将来、過失割合について揉めそうな場合には、必ず人身事故の届出をしておき、泣き寝入りにならないようにしましょう。

どうして警察や保険会社は人身事故の切り替えを嫌がるのか?

警察や保険会社に言われて人身事故の届出をしないケースは結構ある

交通事故によりケガをすれば人身事故に当たるのですから、被害者としては、軽微なケガだと思っても、基本的には、病院の医師に診断書を書いてもらい人身事故の届出を提出します。

ところが、実際には、警察や相手方の保険会社の担当から、人身事故の届出はなしくていいですよ、とか、しないでほしい、と言われたため、届出を控えることが結構あります。

どうして、警察や相手の保険会社は人身事故の切替を嫌がるのでしょう。

警察が人身事故の届出を嫌がる理由

不注意により他人の物を壊す行為は犯罪ではありません。他方、不注意により人の身体にケガを負わせた場合には、過失運転致傷罪などの罪に当たり処罰される可能性があります。

そのため、警察は、人身事故の届出のなされた場合には、その事故について、犯罪として扱うことになり、捜査をしなければなりません。具体的には、事故現場、事故態様について当事者の話を聞きながら詳細に記録して書面にしなければならないのです。これを実況見分といい、作成された書面は、実況見分調書といいます。

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重大事故の場合には、加害者を処罰する可能性は高いですから、警察は人身事故の届出を嫌がることはありません。しかし、軽微な追突事故のようなケースでは、形式的には、犯罪ではあるものの実際に加害者を処罰することは稀ですから、警察としては詳しく捜査することは、ある意味では無駄に労力を費やすことになるのです。

警察が軽微な事故について人身事故の届出を嫌がる理由は、あまり意味のない犯罪の捜査をしたくないからです。

相手の保険会社が人身事故の届出を嫌がる理由

先ほどの警察が人身事故の届出を嫌がる理由のところでも触れたように、人身事故は、犯罪になるため、加害者は犯罪の捜査の対象者になります。

これに加えて、人身事故の場合、加害者には、自動車運転免許の制度との関係において、点数加算される可能性があります。つまり、人身事故になると、加害者は、場合により免許停止や免許取消になり、自動車を使用する仕事に従事しているときには、大ダメージになるのです。

そのため加害者側の保険会社は、自分の契約者の不利益を避けるため、人身事故の届出を控えるように求めてくることがあるのです。

人身事故の切り替えには期限はあるの?

一般に人身事故の切り替えに期間制限はありません。但し、たとえば、事故日から1ヶ月以上を経過した時点において、医師に診断書を作成してもらい、人身事故に切り替えようとした場合には、警察に拒否される可能性があります。

事故日から日数を経過しているため事故とケガの因果関係に疑義が生じるからです。また、そのような事情のない場合でも、事故日から数ヶ月経過した後に人身事故に切り替えようとすると、今更、実況見分できないとの理由から人身事故の届出を受理することを渋ることも考えられます。もちろん、そのような警察の対応に対しては、抗議して、人身事故の届出の遅れた経緯などを説明して、受理してもらうようにしましょう。

人身事故の切り替えに関して詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

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まとめ

人身事故証明書入手不能理由書は、実際には、人身事故であるのに物損事故として届出しているケースにおいて、人損のみ補償対象とする自賠責保険の請求のために作成すべき書類です。

これを提出しなければ、自賠責保険金の請求はできません。

そもそも、人身事故である以上は、しっかりと人身事故の届出をしておくべきです。人身事故の届出をしていなかったばかりに治療費の早期の打ち切りや過失割合について泣き寝入りを強いられるリスクがあるのです。

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