人身事故は取り下げ可能?警察に診断書提出せず物損事故にするリスク

The doctor is wrapping a bandage in the hand of a man

交通事故において、加害者から被害者に対して、「怪我の診断書を警察に提出しないで欲しい。」とか、「既になされた人身事故の届出を取り下げ、単なる物損事故にしてほしい」などという依頼がなされる場合があります。

人身事故となると、加害者は、刑事処分としての刑罰や、行政処分としての反則金納付、点数減、免許停止、免許取り消しなどのペナルティを受ける可能性があるため、これを回避したいのです。

人身事故といっても、怪我が軽いときは、被害者も、加害者の心情を察して、その依頼に応じてしまうことが少なくありません。

しかし、人身事故でありながら、物損事故として届けることは、事実と異なる届出をすることです。たとえ、同情心からの行為とはいえ、被害者にとってリスクがないわけではありません。

ここでは、人身事故を、単なる物損事故として届出する場合のリスクについて説明します。

交通事故における「被害者」の報告義務

交通事故の被害者側はどのような義務があるのでしょうか。

警察への事故報告義務

道路交通法の事故報告義務が課されているのは、事故車両の運転者(運転者が死亡や、負傷してやむを得ないときは、その他の乗務員)です。

事故の被害者には、警察への報告義務はありません。

ただし、事故が、車対車である場合は、たとえ過失のない被害者であっても、事故車両の運転者である以上、事故報告義務がありますから、違反すれば処罰される危険があります

3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です(道交法119条1項10号)

被害者が契約している保険会社への通知義務

被害者は、加害者が契約している保険会社に対する事故の通知義務はありません。

しかし、被害者自身が契約している保険会社に対する通知義務があります

被害者が、自動車保険に加入している場合、その保険契約における普通保険約款の基本条項に「事故発生通知義務」、「事故内容通知義務」が規定されています。

被害者が、加害者の加入している保険会社から保険金を受け取るのではなく、被害者自身が加入している保険から保険金の支払いを受け取りたいという場合があります。

例えば、そもそも加害者が無保険であった場合です。また、加害者が保険に加入していても、飲酒運転をしていた場合などの場合は、加害者の保険会社は保険金の支払いを拒否することができます。

そのような場合、被害者は、自分が加入している保険に頼るしかありません。この場合は、「無保険者傷害保険」、「人身傷害保険」、「搭乗者傷害保険」を利用することができます。

この場合に、被害者が通知義務違反を犯していると、上に説明したとおり、通知義務違反によって保険会社が損害を被った場合、その損害賠償を請求され、保険金から控除されてしまうというリスクを負うことになります。

また、事故が車対車であれば、自分の保険で、相手方の損害に対する賠償をすることになりますから、やはり通知義務を尽くしておかなければなりません。

警察に診断書を提出せず、物損事故として届け出るリスク

以上に説明したとおり、交通事故では、被害者にも、警察や保険会社に対して事故内容を報告する義務があります。

これを前提に、人身事故なのに、被害者が警察に診断書を提出せず、物損事故として届け出るという行動のリスクをまとめてみましょう。

道路交通法違反のリスク

前述のとおり、被害者が歩行者の場合は、警察への報告義務はないので、報告義務違反とはなりません。
ただし、車対車の事故のケースでは、双方ともに運転者として、報告義務が生じるため義務違反となってしまう危険があります。

保険契約上の通知義務違反のリスク

前述のとおり、被害者が契約している保険会社を利用したい場合や車対車の事故の場合、通知義務違反として保険会社に生じた損害を控除されてしまう危険性があります。

事故態様を立証できないリスク

人身事故の事故証明書がもらえない

警察に物損事故として届け出ていると、人身事故としての事故証明書を入手できません。事故証明書は、人身事故の事実を証明するための基本的な証拠です。

もっとも、人身事故の事故証明書がなくとも、保険会社に対して、人身事故としての損害賠償を請求できないわけではありません。

人身事故による損害が発生した事実さえ立証できれば、保険会社は保険金の支払義務を負うのですから、人身事故としての事故証明書が必須というわけではありません。

カルテや診断書で、受傷の事実を立証することが可能です。
(なお、保険金を請求する手続きとしては、「人身事故証明書入手不能理由書」を提出する必要上がります。)

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証拠書類を得られない

しかし、深刻な問題に発展する危険があるのは、警察による捜査が行われていない点です。

人身事故であれば、事故直後に実況見分が行われ、事故現場の状況と当事者から聴取した内容に基づく事故態様を記載した実況見分調書が作成されます。

また、被害者の事情聴取、加害者の取り調べも行われ、供述調書が作成されます。これらは、本来は、加害者の刑事処分のための証拠資料ですが、損害賠償請求という民事の手続きにおいても証拠とすることができるのです。

ところが物損として届け出ていると、これらの基本的かつ重要な証拠がないため、もしも当事者間で、事故態様、過失割合の言い分などが対立して争いになった場合、真実を立証することが非常に困難となる危険があります。

後に人身事故に変更できなくなるリスク

物損事故として届け出て、長期間を経てから、痛みの発生など何らかの事情で人身事故に切り替えたいと希望しても、あまり期間が経過してしまうと警察に受け入れてもらうことが困難な場合があります。

人身事故であれば、警察は、刑事処分のための捜査を開始しなくてはなりません。しかし、事故発生から時間経ってしまえば、証拠の収集も困難ですし、当事者の記憶も曖昧となり、事実の確定が難しくなってしまうので、警察からは敬遠されるのです。

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人身事故を取り下げ、物損事故に切り替えるリスク

警察には、すでに診断書を提出して、人身事故として扱ってもらっている場合に、診断書を取り下げて、単なる物損事故とすることができるでしょうか?

診断書を取り下げることができる場合

できる場合もあります。

条件は、まず非常に軽微な怪我であること。次に、まだ実況見分も実施しておらず、当事者の事情聴取もまだ、供述調書の作成もまだ、検察庁への事件送致もまだという段階、つまり本格的な捜査が始まる前であれば、事実上、物損として取り扱ってくれる場合もありえます。

診断書を取り下げることのリスク

ただ、このように診断書を取り下げて物損とすることには、前述したとおり、実況見分調書など、人身事故の重要な証拠を得ることができないリスクがありますので、事故態様などについて、争いとなりそうな場合には、診断書を取り下げるべきではありません

なお、保険会社に対して、人身事故と報告していたものを、物損事故扱いとしてもらいたいなら、人的損害の保険金を請求しなければ良いだけです。

診断書を取り下げることができない場合

実況見分、当事者の事情聴取、取り調べ、供述調書の作成を終えている場合、まして検察庁に事件を送致してしまっている場合は、人身事故でなかったという扱いにすることは無理です

人身事故は、自動車運転過失致傷罪という刑事犯罪であって、非親告罪ですので、被害者の意思だけで事件の取り扱いを変えるということはできません。

もしも、加害者に刑事処分を受けさせることを希望しないのであれば、刑事処分が決まる前に、できるだけ早く、示談に応じたうえで、処分を望まない旨の嘆願書を検察庁に提出するべきです。

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