人身事故と物損事故の罰金と違反点数を完璧に知っておく!【2024年版】

人身事故の点数
  • 人身事故を起こしたら違反点数や罰金はどうなる?
  • 人身事故を起こすと、車が運転できなくなるのでは?免許取り消し?
  • 物損事故から人身事故に変更されると点数や罰金はどうなるの?

上記のように、人身事故を引き起こした際、何の責任が生じるか不明瞭で、Yahoo知恵袋、Twitterなどで情報を探しながらも正確な答えが得られず、さらなる不安を抱えることがあります。

特に初めて交通事故や軽い人身事故を経験する方は、混乱をしてしまい、どのように対処すべきかに戸惑うことが予想されます。

人身事故と物損事故では、行政処分の違反点数や刑事的責任、罰金の範囲などのアプローチが大変異なります。

今回は、軽い事故(人身事故や物損事故)を経験した際、違反ポイントがどのように蓄積され、罰金の金額相場はどれくらいなのか、また罰金が免除されるケースはあるのか、免許取り消しか?物損事故から人身事故に変更されたら何が変わるのかなどを、一覧表を用いてわかりやすく解説致します。

追突事故の詳細な違反点数に関しては、「追突事故の点数・罰金」をご覧ください。

人身扱いの事故の加害者が負う3つの責任

人身扱いの事故、いわゆる人身事故(じんしんじこ)を起こすと、加害者は以下の3つの責任を負う義務が生じます。

①行政処分

「行政処分」とは、累積した点数に応じて、運転免許証の効力を一定期間停止させたり、取り消されたりするものです→点数

②刑事処分

「刑事処分」は主に、自動車運転死傷行為処罰法違反(死亡・傷害事故による処分)とその他の道路交通法違反などがあります。→懲役刑・禁錮刑又は罰金

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③民事処分

「民事処分」は、被害者に対して与えた損害を賠償するもので、物損に対してはもちろんの事、死亡や傷害についても責任を負うことです。→損害賠償

それぞれ、行政処分・刑事処分・民事処分を切り分けて解説します。

人身事故の点数

まず物損事故から人身に変更されたら加害者は点数が加点されます。

人身事故の点数一覧表

以下は、人身事故を起こした場合の付加点数の一覧表です。被害者の「負傷の程度」(特に被害者の怪我が「全治 2 週間」以内に収まるかどうか)で、違反点数が大きく変わります。

また、加害者の責任が大きい場合(もらい事故など)は、加点される点数も大きくなります。

安全運転義務違反 基礎点数
2点
被害者の負傷程度 不注意の程度 付加点数  免取・免停
死亡事故 専ら 20点 免取
専ら以外 13点 免停(90日~)
重症事故
3ヶ月以上
後遺障害あり
専ら 13点 免停(90日~)
専ら以外 9点 免停(60日~)
重症事故
30日以上
3ヶ月未満
専ら 9点 免停(60日~)
専ら以外 6点 免停(30日~)
軽傷事故
15日以上
30日未満
専ら 6点 免停(30日~)
専ら以外 4点
軽傷事故
15日未満
建造物損壊事故
専ら 3点
専ら以外 2点
  +
ひき逃げ
(措置義務違反)
35点

上記で「専ら」という用語がありますが、意味は以下の通りです。
※「専ら」・・・・運転者の一方的な不注意によって発生した場合|もらい事故など
※「専ら以外」・・被害者にも過失があった場合
参考「交通事故の付加点数」警視庁

以下、上記の表をもとに、その点数の考え方を詳しく確認します。

なお、後ほど詳しく解説致しますが、被害者が人身事故扱いを取り下げ、物損事故扱いになった場合は、加点は0点になります。

参考記事:人身事故取り下げは可能か?

免許の点数は「減点」されない

たまにTwitterやyahoo知恵袋などで「免許は持ち点数が15点で、交通事故や交通違反を犯すことで減点される」と勘違いされている方がいるようです。

おそらく日常会話などで「この前駐車違反したら、点数が引かれた」という言い方をするケースがあるからでしょう。

しかし、実際は、交通違反に関する点数制度は「減点方式」で「引かれる」わけではなく「累積方式」です。

違反をする度に違反点数が「累積(加点)」し、点数が一定の基準を超えた場合に処分を受け、最後に免許停止・免許取り消しになる制度です。そのため点数が減点されるわけではありません。

参考:運転免許の交通違反点数|確認方法と点数リセット条件と回復方法

人身事故の点数の考え方

交通事故によって人が怪我をしたり死亡したりした場合は「人身事故」となります。たとえ、打撲やむち打ちなどの一見小さく見える怪我でも、被害者が適切に主張すると物損ではなく人身事故扱いとなります。

また、事故当初は物損扱いだったけど、その後「物損事故から人身に変更される・切り替える」ケースもあります。

いずれにしろ、上記の表の通り、人身事故を起こした時点で、「安全運転義務違反として2点」がつき、これが基礎点数となります。

その上で、事故の個別の事情に応じて、基礎点数に表の点数がさらに加算されます。

加算される点数は、事故の程度によって「2点~20点」まであります。

死亡事故

運転者の一方的な不注意によって発生した場合は20点、被害者にも過失があった場合は13点となります。

重傷事故①

一番被害を受けた負傷者の治療期間が3ヶ月以上で後遺障害がある場合で、運転者の一方的不注意の場合は13点、また被害者にも過失がある場合は9点となります。

重傷事故②

負傷者の治療期間が30日以上3ヶ月未満である場合で、運転者の一方的不注意の場合は9点、また被害者にも過失がある場合は6点となります。

軽傷事故①

治療期間が15日以上30日未満である場合で、運転者の一方的不注意の場合は6点、また被害者にも過失がある場合は4点となります。

軽傷事故②と建造物損壊事故

治療期間が15日未満の場合で、運転者の一方的不注意の場合は3点、また被害者にも過失がある場合は2点となります。

なお、ビルや家屋などの建造物損壊の場合も同様の点数になります。

※ただし、道路上に設置されているガードレールや標識、電柱などは「建造物」ではありません。器物損壊のみの物損では、上記の点数は加算されません。

これらに加え、ひき逃げ(措置義務違反)があった場合は、35点がプラスされます。

 人身事故の点数を計算する期間

今回起こした事故以外に、すでに加点されている方もいるかもしれません。

その場合、結論から言えば、過去3年間に累積した点数が計算されることになります。

ただし、次の場合は点数がリセットされ、以前の点数は加算されません。

  • 過去1年以上の間、無事故、無違反で過ごしたとき。
  • 運転免許の取消しや停止処分を受けて、無事故、無違反で取消し期間、又は停止期間を過ごしたとき。
  • 免許を受けている者が軽微な違反行為(3点以下の交通違反)をし、過去2年間に違反行為をしたことがなく、かつ、軽微な違反行為をした後、3か月間に違反行為をしていない場合。
  • 軽微な交通違反(1点、2点又は3点)を繰り返し、累積点数が6点(1回で6点を含む)になり、違反者講習を受講したとき。

人身事故の行政処分

続いて、免許停止処分(いわゆる免停処分)と免許取り消し処分(免取り処分)について詳しく説明します。

免許停止(免停)について|軽い事故は免停にならない

俗に言う「免停」とは、正式には「免許停止」と呼びます。

よく知られている通り、一時的に車を運転出来なくなります。仕事で利用している方にとっては非常に苦しい処分です。

「前歴がない場合」は、6点以上累積すると免停となります。

相手が治療期間15日以下の軽症・無傷である軽い事故の場合は免停にはなりません。

免許取り消し(免取)・欠格期間について

また免停よりもさらに厳しい処分が、「免取」いわゆる「免許取り消し」の処分です。

「欠格期間」という制限期間がついてきて、その期間中はまったく免許がとれない状況となります。

欠格期間が過ぎても、もう一度教習所にお金を払って、免許を取り戻す必要があります。

「前歴がない場合」は、15点以上累積した場合に免許取り消しとなります。

人身事故で違反点数と行政処分の相関表

ここまでの解説は、加害者に「前歴」がないことを前提としておりました。

加害者に前歴がある場合は、交通事故で6点累積せずとも、免停や免許取り消し処分になる可能性があります。下表のとおりとなります。

免許停止期間(免停期間) 免許取消(欠格期間)
前歴 30日 60日 90日 120日 150日 1年 2年 3年
0回 6~8点 9~11点 12~14点 免許取消→ 15~24点 25~34点 35点以上
1回 4~5点 6~7点 8~9点 免許取消→ 10~19点 20~29点 30点以上
2回 2点 3点 4点 5~14点 15~24点 25点以上
3回 2点 3点 4~9点 10~19点 20点以上

人身事故の罰金の金額相場|罰金ありか罰金なしかの境目

物損事故から人身に変更されたら加害者は罰金がある場合があります。

物損事故から人身に変更された!罰金の金額相場一覧表

以下は、人身の交通事故で「罰金刑が確定した場合」の相場表です。最初、物損事故だったのにあとから被害者が、物損事故から人身に変更されたケースでも同様です。

被害者の「負傷の度合い」で処分が変化することがわかります。また「もらい事故」など加害者が一方的に悪いかどうかでも罰金相場は変化します。

被害者の負傷程度 不注意の程度 刑事処分
重症事故
3ヶ月以上
後遺障害あり
専ら 懲役刑・禁錮刑又は
罰金30万円~50万円
専ら以外
重症事故
30日以上
3ヶ月未満
専ら 罰金30万~50万円
専ら以外 罰金20万~50万円
軽傷事故
15日以上
30日未満
専ら 治療21日以下
原則不起訴
罰金15~30万円
専ら以外
軽傷事故
15日未満
建造物損壊事故
専ら 原則不起訴
罰金12~20万円
専ら以外

※「専ら」・・・・運転者の一方的な不注意によって発生した場合|もらい事故など
※「専ら以外」・・被害者にも過失があった場合

交通事故の人身で罰金40~50万円か?罰金なしか?

人身事故の加害者は、交通事故を起こした結果「罰金あり」か「罰金なし」になるのかが非常に気になるところだと思います。

上表を見てわかる通り「軽傷事故15日未満」でも人身事故は最低でも12万円の罰金相場で多いと40万円や50万円の金額になり、厳しい刑事処分を覚悟する必要があります。

しかし、これはあくまで「罰金刑が確定した場合」の金額相場です。

人身事故の怪我の程度がそれほど重くなく、さらに被害者から加害者に対して「軽減させてほしいとの申し出」があれば、刑事罰に課せられない可能性があります。

また、略式起訴されず、不起訴になった場合は「罰金なし*」になります。

*ただし、あくまで罰金がないだけで「反則金を支払うケース」はあるのでご注意ください

ともかく、被害者に怪我をさせてしまった場合、お見舞いや当日の態度が非常に重要です。誠意を常に示すこと、謝罪すること、礼を尽くすことです。

参考記事:人身事故(追突)のお詫びの仕方・謝罪文の書き方【文例付き】

検察庁からの呼び出し|不起訴になるか実刑になるか

人身事故を引き起こした際、その後2~3ヶ月内に検察庁から事故に関する出頭要請(呼び出し)がなければ、刑事処分を受ける可能性は低いと言えます。(出頭要請は、事故の経緯を聴取し、求刑が適切かどうかを判断するために行われます。)

なお、人身事故の大部分(90%以上)は罰金刑で処理されており、実刑判決を受けるケースは懲役や禁錮刑を受けた人のおおよそ3割程度です。

被害者が亡くなった場合や悪質な運転でない限り、実刑ではなく「罰金刑の処分」となることが一般的です。

人身事故の刑事処分

続いて、人身事故を起こした際の刑事処分について解説致します。

「自動車運転処罰法」による刑事処分厳罰化

昨今、「交通事故の刑事処分」が厳罰化されています。

特に「飲酒運転」「薬物」などを使用した状態で車を運転し、人を死傷させて刑事罰を受ける事故が頻繁にニュースで報道され、被害者から加害者の厳重な処罰を求める声が高まった結果、平成26年5月20日に運転者の処分を厳罰化するため「自動車運転処罰法」(自動車運転死傷行為処罰法)が施行されました。

この施行により、刑事処分の内容が大幅に変更されておりますので、加害者は把握しておく必要があります。下記記事も併せてご参照下さい。

関連記事:自動車運転処罰法違反とは

人身事故の刑事処分・罰則一覧

下表は人身事故を起こしてしまった場合の、主な刑事処分・罰則一覧です。

刑事責任 罰則
過失運転致死傷罪
刑法211条2項
7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪
刑法208条の2
 死亡の場合1年以上の有期懲役
(最高20年)
傷害の場合は15年以下の懲役
(これは、悪質、危険な運転(飲酒運転等がこれに該当)によって人を死傷させた場合に適用されます。)
殺人罪
刑法199条
死刑または無期もしくは5年以上の懲役
(死亡するかもしれないと思いつつも被害者をひきずったような場合に適用されます。)
緊急措置義務違反
人身事故
5年以下の懲役または50万円以上の罰金

人身事故の民事処分|保険会社が対応

刑事処分と行政処分以外にも、「民事処分」があることを説明します。

自動車事故加害者には、被害者の負傷状況に応じて慰謝料、損害賠償を行う責任があります。

損害賠償額(慰謝料等)は、被害者との示談交渉により決定されます。

ほとんどの加害者は、自賠責保険会社・任意保険会社と保険の契約をしているはずなので、損害賠償金は自腹ではなく「保険会社」が支払ってくれます。

万が一、無保険だった場合は自腹になってしまうので、保険には必ず加入しておきましょう。

物損事故・自損事故なら違反点数なし・罰金なし?

違反点数 罰金
物損事故・自損事故 0点 罰金なし

まれに「相手が怪我をしたように見えたけども、後日聞いてみると相手には幸い怪我がなく、車の破損だけで済んだ」というケースがあります。

この場合はもちろん「物損事故」扱いとなります。

物損事故や自損事故はそれだけをもって罰金はありませんし、免許の点数が加点されたり減点されたりすることはありません。これらの責任を追及されるのはあくまで「人身事故」だけです。

例えば、運転が下手で、自分の自宅の塀を壊したとしても、物損事故として警察への連絡は必要となります。しかし、赤切符や青切符を切られることもないため、反則金、減点、罰金、損害賠償(自宅だからなし)などは、何もありません。

万が一、他人の器物(車両など)を壊した場合に、それに対する「損害賠償」が発生するのみです。

ただし、上記の説明は、あくまで交通違反を犯さずに物損事故を起こした場合であり、以下のような場合は、罰金がないわけでも点数がないわけでもありません。

当て逃げは点数が加算、罰金が科される

事例1.「駐車場で他人の車にぶつけたが(衝突したが)、怖くなってそのまま逃走した」

これは道路交通法上、「安全運転義務違反」の2点に加え、「危険防止措置義務違反(あて逃げ)」の付加点数5点が加算される事になります。

この場合、合計で6点を超えるため、即時30日の免停となります。

無免許は点数が加算、罰金が科される

事例2.「バイクを無免許で運転中に、他人の車に接触した」

事故自体は物損事故でも、無免許運転による道路交通法違反として、25点の加算(赤切符)によって免許取消(免取)という行政処分と、刑事処分が発生して罰金刑となります。

さらに、何度も繰り返している場合は懲役刑もあり得ます。

このように、たとえ「物損事故」でも、道路交通法違反があれば行政処分や刑事処分があるので注意しましょう。

まとめ

今回はYahoo!知恵袋やTwitterなどでも話題になりがちの、交通事故の人身、また物損事故の場合の罰金や点数の一覧表、罰金なしの場合はどういう時か、減点の意味などを解説しました。

軽い事故の場合は免停にはならないですが、相手が2週間以上治療するようなケースの場合は免停になったり、40万円、50万円など高額の罰金を支払うケースも出てきます。

刑事処分や行政処分の支払いで焦ってしまう方も多いと思いますが、正確な知識を得て、冷静に対処することが一番です。

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