駐車場内の逆突事故。後方不注意の過失割合のポイント・注意点を理解しよう

この記事では、逆突事故の被害に遭い、加害者に無謀な過失割合を主張されたときに、どのように対抗していけばよいか解説します。
駐車場内の逆突事故における正しい知識が、理不尽な加害者に対抗する一つの武器になります。
逆突事故とは?
まず、駐車場事故・逆突事故の基本について理解していきましょう。
逆突事故とは、後方不注意が原因で、バックで衝突する事故
逆突事故とは、「バックするときに後方不注意が原因で、他の車に衝突する事故」のことを指します。なお逆突事故の半数は、「駐車場内」で起きているといわれています。
よくあるケースとしては、駐車場内で、方向転換をしようとする際に衝突してしまうことが多いようです。
なお、バックしてきた車に「ぶつけられた側」のほうは、停車しているケースもあれば、前進・直進しているケース、急発進したケースなどさまざまです。
ただ、後方不注意が原因のバックによる事故ということで、たいていはバックした側に非があり、被害者の『過失割合』は小さくなります。
逆突事故の過失割合の注意点|過失割合が10対0にならない!?
以下では、駐車場内の逆突事故の過失割合の注意点について解説して参ります。後方不注意・逆突事故の過失割合については、客観的証拠で決定的な判断ができない場合は、相手方と裁判に成る可能性もあるので注意しましょう。
加害者だけではなく「被害者に過失」がある可能性に注意
駐車場内の事故の場合、下記の点で「過失」があったかどうかを判断します。
- 「バックしたときに車があるかどうか予想できたか」
- 「しっかりと後方確認をしていたら、逆突事故を回避できたか」
上述したことはごく当然のことのように思えますが、ここでのポイントは、加害者だけではなく被害者側も同様に当てはまるということです。
例えばバックしてくる車に対し、「クラクションを鳴らさなかったり」、「後方に避けると事故は防げることが予想できたにも関わらず、なんら行動を起こさなかった場合」は過失があると判断されるケースがあるのです。
過失は加害者だけに適用される一方的なものではないため、たとえ後方不注意による駐車場事故であっても、両者の過失を公平に算出し、それぞれ過失割合として責任を分配していくことになります。
逆突事故の加害者が嘘をつく・ゴネるケースは証拠が重要
駐車場事故で一般的によくあるのが過失割合に関するトラブルです。
あなたは、当然過失割合が先方10であなたは0という、いわゆる「10対0」で損害賠償金が支払われるものと思っていました。
後日、相手の保険会社から連絡があり、相手は接触前に一時停止していたと主張して来ました。
その上で、あなたにも「前方不注意があった」「直進・前進していた」と主張して、過失割合「8対2」を提示して来るということがあります。
このような主張を退けるためには、下記のように証拠集めが必要になります。
- あらかじめつけているドライブレコーダーを証拠として提示する。
- 駐車場に防犯カメラがあれば、それを見せてもらい証拠とする。
- 事故現場に証人がいる場合も、客観的証拠になる。
上記のような証拠を、弁護士や相手方の保険会社に提示して、過失がないことを主張していく必要があります(具体的な対処方法については、後述いたします)。
警察の実況見分調書に注意
駐車場での事故直後に、警察による実況見分が行われますが、このとき、両当事者の言い分を聞き、供述をまとめたうえで、図面を書いていきます。
図面には、過失割合の元になる「当事者の当時の車の位置」などが記載されることになります。
この時、警察に対して事実ではないことに「そうですね。はい」と納得してしまうケースがあります。
実況見分調書は過失割合を定める上で重要な証拠となります。ですので、納得できない場合は、はっきりと否定した上で正確に伝える必要があります。

- 初回無料相談
- 土日対応可能
- 慰謝料無料診断
逆突事故の加害者のよくある主張と対抗策
では、逆突事故で加害者側から反論として主張される内容と対抗策についてみていきましょう。
仮に、相手方の主張が認められた場合は、「10対0」ではなくなり、「9対1」「8対2」等の過失割合が認められる可能性があることを理解しておいてください。
クラクションを鳴らさなかった
よく言われる主張がこちら。
「確かに私も後方不注意だったが、クラクションを鳴らさなかったあなたにも過失があります」というのものです。
では、クラクションを鳴らさなかったことは過失に当たるのでしょうか。
結論から言って、ケースバイケースです。事故当時の状況から考えて、明らかにクラクションを鳴らす余裕があったのに、クラクションを押さなかった場合は、1~2割の過失として判断されます。
もっとも、クラクションを鳴らす余裕もなくいきなりバック してきた車にぶつけられたケースでは、過失は0(つまり「10対0」)と見て良いと思います。
相手の主張に納得できない場合は、「クラクションを鳴らしたとしても避けられなかった事情」を相手方に主張していく必要があります。
あなたの車も前進・直進していた! or バック同士の事故だ!
次に、「あなたの車両も前進・直進して動いていた」「あなたもバックしてた!バック同士の事故だ」とする主張です。
基本的に、こちらの車両が停車していて、相手の車両だけが前進・直進していたケースでは、過失割合は「10対0」になります。
しかし、相手方もなんとかして過失割合を減らすために、上記のような主張をしてくることがあります。
この場合は、「鑑定」をする必要があります。車両が事故当時、停車していたのかどうかは「車両の損傷部分」などから、ある程度判断することが可能です。
また先述した、防犯カメラやドライブレコーダーがあれば、より簡単に主張を覆すことが可能です。
私は動いておらず、逆にあなたが車をぶつけてきた!
次に、「後方不注意なんかしていない!あなたが追突してきたんだ!」という逆ギレパターンです。
これは上記と同じように、客観的証拠により相手の主張を崩していくのが妥当です。
目撃者や防犯カメラ、ドライブレコーダーにより証拠を示していきましょう。
1つ1つ丁寧に事実関係を整理することで、相手方の主張の矛盾点を探していく方法で対抗することになります。
徐行速度でバックした
では、急発進でのバックであったのにもかかわらず、「徐行速度だ」と主張してきた場合はどうなるのでしょうか。
急発進であったことが、明らかな場合はこちらに非はなく、過失割合において「10対0」の主張をしていくことが可能です。
しかし、仮に、客観的証拠に乏しく、徐行であったと判断されると、駐車場内での相手方の車のバックを予期して、事故を回避すべき義務があったと考えられます。
この場合は、過失割合10対0とはならず、「9対1」などの過失が認められるケースがあります。実際にコンビニの駐車場での逆突事故で、停止していた車にも1割の過失が認められた裁判例があります(東京地裁平成16年12月24日)
このようなケースでは、急発進のバックでこちらは回避不可能であったという事情を主張していく必要があります。
停止位置が悪い
「停止位置が悪い。もう少し後ろ(違う位置)なら、衝突は回避できた」という主張をするケースがあります。
では、停止位置が過失割合に影響することがあるのでしょうか。
基本的には、停止車両に逆突事故を起こした場合、停止車両の過失は0です。
しかし、「停めてはいけない場所」だったケースなどでは、こちらの過失が考慮されます。
またたとえ「停めてはいけない場所」でなかったとしても、当時の事故時の状況から考えて、その場所に留まる必然性などを考慮し、「違う位置なら回避可能性があったのではないか」という点が争われます。
このような主張がなされた場合は、停止禁止の場所ではなかったこと、他の車両の走行の邪魔にならないようにするために、最善の位置であったことなどを反論として主張していくことになります。
以上から、相手方からはさまざまな主張が行われます。これに対しては冷静に反論することで対処していくことが重要です。
逆突事故の過失割合は、慰謝料計算にも影響を与える
人身事故になった場合、相手に慰謝料を請求することが可能になります。「車の修理が必要になった」というだけでは、慰謝料は請求することは通常できません。
そして過失割合はその「慰謝料」にも影響することになります。
過失割合が、たとえば10対0と8対2の場合では、慰謝料の相場額が大きく変わります(過失相殺)。
また、相手方が任意保険に加入している場合は、基本的に慰謝料は「任意保険基準」によって算定されます。
仮に、その任意保険基準で「慰謝料額」が算定されて提示された場合、相場より低額の慰謝料しかもらえないことがあります。その場合、弁護士に依頼し、弁護士基準での計算を適用してもらう方必要があります。

- 初回無料相談
- 土日対応可能
- 慰謝料無料診断
よくある質問
交通事故の慰謝料がわからないのですが?
慰謝料自動計算機を利用して、計算することができます
すでに事故に遭われて、病院で治療を開始している方は、下記の慰謝料自動計算機で、自分がもらえる慰謝料を計算することが可能です。
逆突事故の示談交渉は弁護士に任せたほうがよいですか?
「納得できない、けれどもうどうすべきかわからない」という状況に陥った場合は、一度弁護士に相談するのが良いでしょう。
逆突事故は、以上解説してきたとおり、駐車場内で多く、示談でトラブルになりやすく特に「過失割合」や「慰謝料」について揉めることが多いです。
そして加害者との最初の話し合いでは「過失割合が10対0」で決着がついていたはずなのに、相手方の任意保険会社からは「あなたにも過失がある」として8対2を主張されたというケースは本当によくあります。
このような場合、被害者はプロを相手に交渉をしていかなければいけません。相手の主張に圧倒され納得してはいません。