駐車場事故での事故|警察呼ばなくていい?過失割合に納得いかない場合は?

駐車場の事故

交通事故が起こるとき、それは公道上のものばかりとは限りません。飲食店やスーパー・ショッピングセンターの駐車場、立体駐車場やコインパーキング、コンビニや自宅があるマンションやアパートなどの駐車場内で起こる事故もあります。

入庫するとき出庫する時、出入り口でおこったり、歩行者がひかりたり、逆凸事故が起きたりします。

ちょっと古い資料ですが、一般社団法人 日本損害保険協会東北支部の平成25年版「駐車場事故の実態」によれば、車両事故の約30%が駐車場で発生しているとのことです。

【参考外部サイト】「駐車場事故の実態」|一般社団法人 日本損害保険協会東北支部

駐車場で交通事故が起こった場合、公道上の事故とどのような違いがあるのかを正しく知っておく必要があります。そして、被害者になったとき、損をしないために適切な法的な保護を受けながら、損害賠償をするために必要な知識、納得いかない場合などについても押さえておきましょう。

今回は、駐車場での交通事故への正しい対処方法について解説します。

駐車場事故と公道上の事故との違い

公道と違い駐車場の敷地内は私有地だから事故にならない?

コインパーキングやマンションなどの駐車場で交通事故が起こった場合、

  • 駐車場内では、道路交通法の適用が無い
  • 駐車場内の事故は、そもそも「交通事故」では無い

などと言われたりします。

駐車場には道路交通法が適用されない?

一般に「駐車場内の事故は交通事故ではない」と言われることがあります。これには、道路交通法の規定が関係しています。道路交通法では、交通事故とは道路上で起こったものとされています。

道路交通法上の道路とは、基本的には公道を言います。とすれば、私有地である駐車場には、道路交通法の適用がないことになります。

そうなると、無免許運転などの道路交通法による規制が及ばなくなり、警察も対処しないことがあるので「駐車場内の事故は交通事故では無い」などと言われるのです。

駐車場でも道路交通法が適用されるケース

ただ、私有地であっても「不特定多数のものが自由に行き交うことができる場所」である場合には、道路交通法が適用されます

よって、駐車場だからと言って一律に道路交通法の規程が適用されないということにはなりません。

たとえば、飲食店やショッピングセンターなどの駐車場の場合には、不特定多数のものが通行する場所と言えるので道路交通法の適用があります。

これに対して「月極駐車場」や「純粋な個人所有の駐車場」などの事故のケースでは、道路交通法が適用されない可能性があります。

また、私有地だからという理由で道路交通法が適用されない場合であっても「刑法」や「自動車運転過失致死傷罪などの刑罰の適用」はあるので、充分注意が必要です。

そして、私有地の駐車場内の事故であっても、民事損害賠償の対象にもなりますので、駐車場内の交通事故で被害にあった場合には、相手に対して賠償金の支払いを請求することができます

道路交通法が適用されない駐車場なら警察を呼ばなくてもいい?

では、マンションやアパート、月極駐車場といった道路交通法の適用がない駐車場であれば、事故が起きても警察を呼ばなくてもいいのでしょうか?実際、警察を呼ばなかった人もいることでしょう。

人身事故の場合|公道でないなら警察呼ばなかったがOK?

確かに公道でなければ、道路交通法72条の交通事故の通報義務はありません。実際に、警察呼ばなかったケースもあります。

しかし、前述した通り、公道でなくても、刑法や自動車運転過失致死傷罪などの刑罰の適用はあるのです。駐車場の人身事故では、警察を呼ぶべきなのです。

また、基本的には、公道にあたらなければ、自賠責保険の使用はできませんが、死傷事故の場合は、自賠責保険でも使用できます。また、任意保険では、通常、公道でなくてもカバーされていることが多いですが、不安な方は、約款を確認するか、加入する保険会社に確認するようにしましょう(※)。

※ 公道での事故でない場合、事故証明書が出ないので、自賠責保険・任意保険いずれの場合も、人身事故証明書入手不能理由書を提出することになります。

物損事故の場合|示談後納得いかない!

では、車同士で接触しただけの物損事故などの場合には、警察を呼ばなくてもいいのでしょうか?

人身事故と同様に警察を呼ぶべきです。その理由は、後述するように、過失割合などで相手ともめたときに、公的な処理をしていないため、不利益を被ることを避けるためです。

示談後「納得いかない」というケースが多いのです。

駐車場敷地内の人身事故や物損事故は、警察を呼んだほうが賢明です。

駐車場での事故の罰則は?

次に、駐車場内の交通事故について、どのような罰則があるのか見てみましょう。

駐車場で当て逃げの点数・ケース

駐車場内の交通事故では、当て逃げが多いのが実情です。たとえば、お店やコンビニの駐車場で車の当て逃げ被害にあった場合などが考えられます。

この場合、駐車場であっても不特定多数のものが行き交う場所なので、ラーメン店の駐車場(※1)もコンビニの駐車場(※2)も道路に該当するという裁判例があります。

※1 ラーメン店の駐車場:大阪高裁平成14年10月23日判決
※2 コンビニの駐車場:東京高等裁判所平成13年6月12日判決

では、どのような罰則が適用されるのでしょうか?

当て逃げの場合、道路交通法によって「安全運転義務違反」の行政処分が行われ、点数が加算されます。具体的には、安全運転義務違反の2点に加え、「危険防止措置義務違反」の付加点数5点が加算されて合計7点が加点されます。

また、刑事罰もあり、具体的には1年以下の懲役または10万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

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駐車場でひき逃げの点数・ケース

次に、駐車場内でのひき逃げ事故のケースを考えてみましょう。

ひき逃げの場合、大変に重い処分が下されます。行政処分としては、点数が最低でも35点加算されるのでいきなり免許停止になりますし、欠格期間は最低3年です。飲酒や無免許などの事情があると点数はさらに高くなりますし、欠格期間についても、長い場合には10年にもなります。

ひき逃げは刑事罰も重く、被害者が怪我をしただけの小さな事故でも、最低でも5年以下の懲役または50万円以下の罰金となりますし、被害者が死亡するなどして重大な結果が発生した事故などの場合には20年以下の懲役刑などになる可能性があります。

駐車場事故の過失割合の算定方法で納得いかない?

駐車場の事故では、過失割合が大きな問題になります。納得いかないと感じる方もいるはずです。

駐車場では、公道上とは異なり道路標識や信号などはありませんし、優先道路などもないので、過失割合を決めにくいからです。

道路交通法の適用がない場合には警察も実況見分をしないことがあり、交通事故状況を示す証拠なども少ないことが多いのです。

このような問題があるので、駐車場の敷地内での事故の過失割合を決める場合、保険会社同士の話し合いによって、50:50に近い数値にされてしまうことがあります

保険会社に不当に過失割合を引き上げられる可能性

このことは、自分が被害者である場合、保険会社に不当に過失割合を引き上げられる可能性があるということです。

たとえば、自車が止まっていたり徐行していたりしているのに、相手の車がいきなりぶつかってきたケースや、駐車場内で通行方向が指定されている場合に相手が逆走してきた場合などには、本来であれば加害者である相手の過失割合が高くなるはずです。

しかし、証拠がないということで、50:50に近い数字にされてしまい、賠償金の金額が大きく減額されてしまうのです。

そこで、駐車場内の交通事故で示談に備えるには、証拠集めが大切です。

駐車場内に監視カメラがあるなら、管理者に事情を説明してそれを見せてもらうと良いですし、自車にドライブレコーダーを搭載しておくと、その映像が事故状況の証拠になることがあって役立ちます。

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駐車場の追突事故の過失割合は基本100対0!

追突事故については、原則的には「追突事故を起こした側が100%悪い」これが基本過失割合です。なぜそうなるのか、それは道路交通法第26条を読むと分かります。

道路交通法第26条
「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その車両が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避ける事ができるため必要な距離を、これから保たなければならない。」

つまり、後続車両には前方の車両が急ブレーキ・急停車したとしても追突事故を起こさないだけの「車間距離」をとる法的義務を課しているのです。これを「車間距離の保持義務」と言います。そのため、追突するという事は、この義務を果たしていないという事になるため、追突事故の過失割合は追突した側が100%悪いとなるのです。

※ここに注意!
ちなみに、駐車場内は公共性の高い駐車場でない限り、道路交通法が適用される「道路」ではありません。但し、過失割合の算定にあたっては、一つの目安となり得ます。

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駐車場事故の損害賠償請求方法

駐車場の敷地内では、人身事故も物損事故もあり得ます。こういった場合、どのように損害賠償請求をすればいいのでしょうか?

いずれの場合も、基本的に公道上の損害賠償請求の方法と変わりません。

損害賠償請求の方法については、それぞれ次の関連記事をお読みください。

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ひき逃げの場合は、政府保障事業を利用する

ただし、ひき逃げでは、加害者が不明であり、加害者や加害者の保険会社に請求をすることができません。

この場合には、政府保障事業を利用して補償金を受け取ることができます。政府保障事業とは、ひき逃げなどで加害者が不明なケースや相手が無保険(自賠責保険にも加入していない)のケースで、被害者が最低限の自賠責保険の限度内で政府から補償金を受け取ることができる制度のことです。

政府保障事業を利用したい場合には、最寄りの任意保険会社の窓口に行って申請をすれば、審査を経て補償金の支払いを受けることができます。
交通事故で相手方が不明や無保険の場合にはとても助かる制度なので、是非とも覚えておきましょう。

駐車場事故の責任は管理人や店舗側にもあるのか?

スーパー駐車場

駐車場には「駐車場で起きた事故につきましては一切責任を負いません」と看板に書いてあるのを見かけることがあります。実際に、スーパーや、月極駐車場やお店で起きた駐車場事故の場合、どこまで管理人や店舗側の管理責任がとわれるのでしょうか?

これはいくつかのケースに分けて考える必要があります。

駐車場内の環境に起因する事故の場合

駐車場を貸している、あるいは、店舗が提供している場合は、安全に駐車ができる環境を構築する必要があります。

次に挙げるような事故が起きやすい環境だった場合、駐車場のオーナーが事故が起きない環境を提供しなかったとして、何等かの責任が発生する可能性はあります。

  • 照明が暗い
  • 駐車スペースが不当に狭く出し入れがしづらい環境
  • 誘導標識が分かりづらく事故がおきやすい環境
  • 誘導員の誤った指示に従った事故
  • フェンスや堀や柵がないため車上荒らしが入りやすい環境だった

照明などの「事故対策」をしっかりしていたかを問われるでしょう。

駐車場内の設備に起因する事故の場合

以下に挙げるように、駐車場の設備の点検が不十分で事故が起きた場合は、管理者やオーナー責任が発生する可能性があります。

  • 駐車場に設置していた看板が落下して車が損傷した
  • 駐車場の塀やブロックが崩れて車が損傷した

有料駐車場の場合

店舗の場合は、無料で駐車できる場合が多いですが、時間制の有料駐車の場合は、賃貸借契約が成立するため、店舗側にはより管理責任が発生します。

防犯カメラで駐車場の監視を行う、警備員を配置するといった対策を講じる必要があるでしょう。

対策をせず事故が発生した場合、店舗側に何らかの責任が問われる可能性があります。

駐車場事故は弁護士に相談しよう!

駐車場内で交通事故が起こった場合、警察が積極的に対応してくれないこともあり、被害者が困惑することが多いのも事実です。

また、証拠が少なかったり過失割合を決める基準が少なかったりするため、被害者側の過失割合が高めにされてしまうこともあります。

そのため、駐車場内で交通事故被害に遭った場合には、弁護士に手続を依頼する必要性が高くなります。

弁護士であれば、被害者に有利な証拠や資料を適切に集めて被害者に有利に手続をすすめてくれます。損害賠償金も、基本的には弁護士・裁判基準での計算となるので、増額が期待できます。

示談では、被害者の過失をできるだけ低くするように適切に交渉してくれますし、もし、交渉がうまくいかず裁判になったとしても、弁護士であれば裁判のプロなので、安心です。

駐車場の敷地内で交通事故に遭ったら、公道上とは異なる点に注意が必要になります。まずは、交通事故に強い弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。

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