運転中に携帯電話|言い逃れできる?どこまでダメ?信号待ちで持っただけもダメ?
改正道交法が2019年12月1日に施行されましたが、ながら運転をするとどのような罰則や行政罰が適用されるのか、いくら…[続きを読む]
脇見運転や前方不注意による、よそ見運転は、追突事故を発生させることもある危険な運転で「安全注意義務違反」というれっきとした道路交通法に違反した運転です。
これらの違反行為は、事故の原因となり、しばしば被害者に深刻な身体的、精神的な影響をもたらします。事故の発生時、過失割合を決定することは法的な手続きで重要な要素です。
この記事では、脇見運転・よそ見運転による前方不注意で事故を起こしてしまった加害者の責任、点数・罰金などの行政処分や過失割合についてご説明します。
わき見運転・前方不注意運転していた自動車事故の被害者の方も是非参考にしてください。
目次
道路交通法は「安全運転義務」について第70条で以下のように定めています。
第70条 (安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
安全運転義務違反とは、簡単に言うと危険な運転をし他人の生命や体、財産に危害を及ぼしてしまうような行為を言います。
安全運転義務違反は、以下の7つの区分に分類されますが、脇見運転はこのなかの前方不注意に分類される行為になります。
警察庁交通局の平成29年中の交通事故の発生状況によると、全国で発生した交通事故の法令違反別交通事故件数は2018年で合計447,089件です。
このなかで脇見運転が69,815件で全事故の「15%以上」を占めています。
【参考外部サイト】平成29年中の交通事故の発生状況 19頁 (2)法令違反別の状況|警察庁 交通局
また、最近では、スマホや携帯電話でSNSをして、よそ見運転をしていてぶつかってしまうという脇見運転による衝突事故も増えています*。
これらのことを背景として、ながら運転の罰則は、2019年12月1日より厳罰化することになりました。
罰則強化については下記記事が詳しいので併せてご参考下さい。
*「平成30年中の携帯電話使用等に係る交通事故件数は、2,790件で過去5年間で約1.4倍に増加しており、カーナビ等を注視中の事故が多く発生しています。また、携帯電話使用等の場合には、使用なしと比較して死亡事故率が約2.1倍でした」。「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」警察庁より
脇見運転は道路交通法70条に違反するため「点数」の加算と「罰金」が科せられます。
具体的な点数と罰金の金額については、警視庁の「交通違反の点数一覧表」(※1)及び「反則行為の種別及び反則金一覧表」(※2)に示されています。
※1 交通違反の点数一覧表|警視庁
※2 反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
まず、脇見運転などの安全運転義務違反があった場合、運転免許の違反点数のうち基礎点数として一律「2点」が加点されます。
さらに、交通事故が他人に怪我をさせてしまう人身事故だった場合は、付加点数といってその人身事故での相手方の怪我や被害の程度に応じて「2〜20点」の間で加点されます。
点数によっては、「免許停止」や「免許取り消し」などの処分となります。
なお、前方不注意の中でも被害が物損のみ、つまり物を破壊しただけで人の体に影響しない事故だった場合は、よほどの大事故でなければ安全運転義務違反による加点をされる事はないといってよいでしょう。
罰金(反則金)は、次の通りです。
普通車 | 9,000円 |
---|---|
大型車 | 12,000円 |
二輪車 | 7,000円 |
小型特殊・原付 | 6,000円 |
また、安全義務違反については、刑事罰の対象ともなります。道路交通法上は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
事故を起こした加害者は、被害者が負った損害に対しては賠償をしなければなりません。
そこで、賠償金の算定にあたり問題となるのは、加害者と被害者の「過失割合」です。
では、脇見運転では、過失割合がどの程度増えるのでしょうか?
過失割合は、多くの裁判例を基に事故の類型から一定の基準を求めた「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」をベースにを保険会社と交渉することになります。
しかし、基準の過失割合だけでは、公平に欠くことがあります。
例えば、一方が青信号、もう一方が赤信号で交差点に進入した直進車同士の事故では、当然、赤信号で進入した車に100%の過失があります。これが基本の過失割合です。
しかし、青信号で進入した車のドライバーに脇見運転があり事故になった場合、過失が0では、公平ではありません。
この場合「脇見運転があった車には10%の過失」が認められることになります。
こうして、事故状況に応じて基本の過失割合を修正することにより、過失割合を決めていくことになりますが、ここでいう脇見運転が過失割合の修正要素となります。
過失割合には事故類型によって異なる次のような「修正要素」があり、脇見運転は、「著しい過失」に該当します。
※ 「著しい過失」とは、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」によると、「事故態様ごとに通常想定されうる過失を超えるような過失」(※)を指します。「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」58頁 判例タイムズ社
4輪車同士の事故の修正要素(一部)
- 夜間
- 幹線道路
- 大型車
- 徐行なし
- 減速
- 道路交通法50条違反の交差点進入
- 早回り右折
- 大回り右折
- 直近右折
- 著しい過失
- 重過失
など
脇見運転をしていた車両には、基本的に10%程度の過失が加算されることが多いですが、事故類型によって脇見運転により加算される過失割合の上限・下限についてまとめました(追突事故、駐車場内の事故は除きます)。
事故類型 | 脇見運転(著しい過失)で修正される割合 |
---|---|
歩行者と車の事故 | 5%~10% |
4輪車同士の事故 | |
高速道路での事故 | 10%~20% |
単車と自動車の事故 | 5%~20% |
自転車と自動車の事故 |
歩行者との事故では、脇見運転をはじめとする著しい過失によって、原則として10%の過失割合が、ドライバーに加算されることになります。
例えば、歩行者が赤信号、車両が青信号で交差点に進入した場合、歩行者に7割の過失割合が認められますが、車のドライバーに脇見運転などの著しい過失があれば、歩行者の過失割合が10%減算され、6割となります。
ただし、信号機のない交差点での横断歩道上の対人事故など歩行者の過失割合が0や非常に低い場合は、脇見運転といった著しい過失によるドライバーへの加算が5%になることがあります。
ただ、ここに挙げた過失割合と修正要素は、あくまで基準です。
過失割合はあくまで当事者同士の話し合いによって決定します(保険会社が過失割合の提示をしても、当事者が納得しなければ示談はまとまりません)。
また、過失割合について、最終的な判断をすることができるのは裁判所です。
もし、過失割合で納得がいかず、裁判に訴えれば、裁判所が、裁判例や事故態様、被害者の事情などすべてを勘案して判断することになります。
もし、脇見運転の過失割合に納得がいかなければ、弁護士に相談してみましょう。
一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故に強い弁護士は、過去の判例や事例に詳しいので、過失割合で損害賠償額を増額するアドバイスすることができます。
相手方との示談交渉や訴訟を代わりにお願いすることもできます。
弁護士費用がご心配な方は、一度ご自身の任意保険に弁護士特約が付帯されていないか確認することもおすすめです。
弁護士特約が付帯されていれば、自己負担0円で、弁護士に依頼することができます。