過失運転致死傷罪とは?わかりやすく解説

過失運転致死傷罪

交通事故で加害者となると、民事上の賠償責任だけでなく、刑事責任も問われる可能性があります。

飲酒して正常な運転が困難だったとか、あおり行為を行ったなどの格別に危険な運転行為したわけではなく、ごく単純に「不注意」によって事故の加害者となった場合には、過失運転致死傷罪の成否が問題となります。

過失運転致死傷罪は、交通事故事件で、もっとも多く問われる刑事責任なのです。

この記事では過失運転致死傷罪について詳しく説明をします。

過失運転致死傷罪とは

過失運転致死傷罪は、不注意な運転で人を死傷させる犯罪です。

かつては、刑法第211条に規定されていた犯罪ですが、平成25年に、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転処罰法)が制定されると、刑法典から自動車運転処罰法に移されました。

刑法典時代の名称が「自動車運転過失致死傷罪」であり、現在の自動車運転処罰法での名称が「過失運転致死傷罪」となります。

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過失運転致死傷罪の内容と罰則、時効

過失運転致死傷罪の内容、罰則、公訴時効期間は下記のとおりです。

構成要件自動車の運転上必要な注意を怠って人を死傷させた者(5条)公訴時効期間
法定刑・7年以下の懲役もしくは禁錮
または
・100万円以下の罰金。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
死亡事故 10年
(刑訴法250条1項3号)
傷害事故 5年
(刑訴法250条2項5号)
無免許運転のときは10年以下の懲役(6条4項)死亡事故 10年
(刑訴法250条1項3号)
傷害事故  7年
(刑訴法250条2項4号)

過失運転致死傷罪の罰金の金額

平成30年に、過失運転致死傷罪で罰金刑を受けた者の人数と罰金額ごとの内訳は、次の統計のとおりです。

罰金額30万円以上、100万円未満が94人で約73%を占めています。

地方裁判所(※1)簡易裁判所(※2)合計
総数75人53人128人(%)
100万円3人(4%)1人(1.88%)4人(3%)
50万円以上100万円未満34人(45.3%)16人(30%)50人 (39%)
30万円以上50万円未満27人(36%)17人(32%)44人(34%)
20万円以上30万円未満7人(9.3%)12人(22.6%)19人(14.8%)
10万円以上20万円未満4人(5.3%)7人(13.2%)11人(8.5%)

※1:平成30年度・刑事司法統計「第35表・ 通常第一審事件の有罪(罰金)人員、罪名別罰金額区分別・全地方裁判所」による
※2:平成30年度・刑事司法統計「第37表・通常第一審事件の有罪(罰金)人員、罪名別罰金額区分別・全簡易裁判所」による

過失運転致死傷罪の点数

過失運転致死傷罪に問われた場合、行政処分を決める基準となる点数制度における点数はどうなるのでしょうか?

交通事故の時は、通常、まず何らかの道路交通法違反の点数が「基礎点数」となります。

例えば「交差点安全通行義務違反」なら2点が基礎点数です。

これに、事故内容(被害状況と過失の程度)に応じた「付加点数」がを加算します。

事故による付加点数の内容は、次のとおりです。

事故の種類違反者の一方的な不注意による場合左記以外の場合
死亡事故20点13点
傷害事故加療3ヶ月以上(後遺障害含む)13点9点
加療3ヶ月未満9点6点
加療30日未満6点4点
加療15日未満3点2点

例えば、「交差点安全進行義務違反」で、被害者に加療3ヶ月以上の傷害を負わせた場合は、「交差点安全進行義務違反」の2点と「違反者の一方的な不注意による場合以外」の傷害事故の付加点9点を加算して、合計11点となります。この場合、前歴が0回であれば、免許停止60日です。

参考文献:「入門 交通行政処分への対処法」弁護士高山俊吉・現代人文社

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪とは

自動車運転処罰法では、過失運転致死傷罪に、もうひとつの犯罪形態が新設されています。それが、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪です。

これは過失で事故を起こした上に、飲酒運転などの発覚を免れようとした場合などに、より重い刑罰を課すものです。

その内容、法定刑、公訴時効は次のとおりです。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

構成要件・アルコール又は薬物の影響で正常な運転に支障が生じる「おそれがある状態」で運転した者が、
・運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合(過失運転致死傷罪が成立しうる場合)、
・アルコール又は薬物の影響の有無・程度が発覚することを免れる目的で、
・更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させること、その他その影響の有無・程度が発覚することを免れるべき行為をしたとき(4条)
公訴時効期間
法定刑12年以下の懲役(4条)死亡事故  10年
(刑訴法250条1項3号)
傷害事故   7年
(刑訴法250条2項4号)
無免許運転のときは15年以下の懲役(6条3項)死亡事故  10年
(刑訴法250条1項3号)
傷害事故 10年
(刑訴法250条2項3号)

なお、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が成立するには、同罪だけに問われるだけで、同罪と別に、さらに過失運転致死傷罪に問われるわけではありません。

過失運転致死傷罪適用されるケースとは?

警察庁交通局の統計によると、平成29年に交通事故で検挙された人員は46万5301人ですが、そのうち過失運転致死傷罪(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪を含む)及び刑法典時代の自動車運転過失致死傷罪が合計45万9346人で、98.7%を占めています(※)。

平成30年犯罪白書4-1-1-2表 危険運転致死傷・過失運転致死傷等検挙人員(平成29年)による

つまり、およそ不注意で事故を起こした以上は、危険運転致死傷罪に該当しない限り、過失運転致死傷罪で処理されると言って過言でないのです。

信号無視、直進妨害、前方不注視、一時停止違反、徐行義務違反など、とても書き切れない、交通事故に関するあらゆる不注意の形態が含まれることになります。

過失運転致死傷罪で不起訴となるか?

過失運転致死傷罪に問われた場合に、不起訴処分となる可能性はあるのでしょうか?

2017(平成29)年の過失運転致死傷罪の検察庁での処理は次の統計のとおりです。

過失運転致死傷等で公判請求されたのは、わずか1.2%に過ぎません。

一般事件でも公判請求されたのは約23%もあることを考えると、過失運転致死傷罪で不起訴となる確率は非常に高いことがよくわかります。

一般事件(※1)過失運転致死傷等
公判請求22.9%1.2%
略式命令請求14.3%9.6%
不起訴51.6%86.2%
家裁送致(※2)11.3%3.1%

平成30年犯罪白書4-1-2-1図「交通事件 検察庁終局処理人員の処理区分構成比」より

※1:ここに、一般事件とは危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪等、道路交通法違反以外の事件です。
※2:家庭裁判所に送致されるのは未成年者の少年事件です。

過失運転致死傷罪で執行猶予はもらえるのか?量刑相場は何年くらい?

過失運転致死傷罪で起訴されてしまったとき、執行猶予はもらえるのでしょうか?
また、量刑の相場は何年くらいでしょうか?

平成29年に、交通事件で第一審で懲役・禁錮刑を受けた者の刑の年数は、次の統計のとおりです。

傷害事故では、総数2670人のうちの2624人(98%)が執行猶予付き判決です。

死亡事故でも、総数1329人のうちの1252人(94%)が執行猶予付き判決です。

刑期については、傷害事故でもっとも多いのは、1年以上2年未満の刑(約59%)であり、次いで6月以上1年未満の刑(約33%)となり、6月から2年未満の範囲が90%以上を占めています。

死亡事故でもっとも多いのは、1年以上2年未満の刑(約63%)であり、次いで2年以上3年未満の刑(約26%)となり、1年から3年未満の範囲が約90%を占めています。

過失運転致傷過失運転致死
総数2670人1329人
10年超0人0人
10年~7年超0人0人
7年~5年超0人0人
5年~3年超2人(0.7%)11人(0.82%)
3年の実刑0人7人(0.52%)
3年の刑で全部執行猶予25人(0.9%)110人(8.27%)
2年以上3年未満の実刑3人(0.07%)39人(2.9%)
2年以上3年未満の刑で全部執行猶予160人(5.9%)302人(22.7%)
1年以上2年未満の実刑8人(0.29%)17人(1.27%)
1年以上2年未満の刑で全部執行猶予1577人(59.0%)828人(62.3%)
6月以上1年未満の実刑20人(0.74%)3人(0.22%)
6月以上1年未満の刑で全部執行猶予862人(32.2%)12人(0.9%)

平成30年犯罪白書「4-1-3-1表 交通事件 通常第一審における有罪人員(懲役・禁錮)の科刑状況」から抜粋

過失運転致死傷罪で実刑となったケース

ほとんど大部分が執行猶予付き判決となると言っても、上の統計からもわかるように、過失運転致死傷でも実刑判決を受ける例もあります。

例えば、近年、目立つのがスマートフォンを操作しながらの「ながら運転」による事故です。

2019年12月には道路交通法施行令が改正され、携帯電話やスマホによる「ながら運転」の違反点数、罰則、反則金が引き上げられるに至りましたが、これを待つまでもなく、既に裁判所では、厳しい実刑判決が出されてきました。

裁判例

スマホゲーム「ポケモンGO」をしながら軽自動車を運転していた男性が、信号のない横断歩道を横断中の女性2名を死傷させた事故。裁判所は過失運転致死傷罪で禁錮1年2月の実刑判決を下しました(徳島地裁平成28年10月31日判決)

裁判例

運転中、助手席に置いたスマホに気をとられ、路上にしゃがんでいた女性をはねて死亡させた事故で、裁判所は過失運転致死傷罪で禁錮9月の実刑判決を下しました(岐阜地裁多治見支部平成28年12月23日判決)。

池袋暴走事故、元院長を書類送検

東京・池袋で車が暴走し12人が死傷した「池袋暴走事故」が、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで加害者が書類送検されています。

この事故では、運転中、ブレーキと間違えてアクセルを踏み込み、赤信号の交差点に進入。ブレーキが利かなかったという主張もあったが、車に異常が発見されておりません。

車の速度は90キロ程度で交差点に進入したと考えられています。

大津園児死傷事故について

ながら運転に限らず、多数人に死傷の結果を及ぼす重大事故が目立つことから、過失運転致死傷罪であっても、検察が厳しい求刑を行う傾向にあります。

例えば、2019年5月20日、大津市の交差点で、被告人が直進対向車の有無を確認することを怠って右折して直進車と衝突し、直進車が保育園児らの列に突っ込んで、16名を死傷した事故(うち死亡2名)の裁判では、過失運転致死傷罪で起訴された被告人に対し、検察官は、同年12月10日、禁錮5年6月を求刑する論告を行いました。

禁錮5年6月(66ヶ月)という求刑は、仮に相場である7掛け判決(求刑の70%の刑期となる判決)であっても、46ヶ月=約3年10月となり、執行猶予をつけることができる条件(3年以下の刑期)を満たしません。この求刑は、裁判所に対して、執行猶予をつけるなという検察の強いメッセージなのです。

この事件の判決期日は、2020年1月16日に予定されており、裁判所の判断が注目されます。

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まとめ

過失運転致死傷罪でも、最悪、実刑判決が下されることがあります。交通事故の加害者となってしまったら、できる限り早く、弁護士による弁護を受けることをお勧め致します。

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