禁錮(禁固)と懲役の違い!交通事故の禁錮刑をわかりやすく解説

禁錮刑と懲役の違い

近年、スマホの「ながら運転」などを原因とする交通事故の刑事事件で、禁錮刑の判決を受け、刑務所に服役することになったケースが報告されています。

「禁錮刑」という呼び名を聞いたことはあっても、多くの方にはなじみがないと思います。

そこで、この記事では、禁錮刑について、懲役刑との違いや、刑務所内での禁錮受刑者の生活(※)などを、わかりやすく解説をしてゆきます。

※「禁固刑」はマスメディアや一般で使われることがありますが、「禁錮刑」が正しいです。

※この記事では、刑務所内の規律などを定めた「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」を「刑事施設収用法」と略称し、その細目を定める「刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則」を「刑事施設収容規則」と略称します。

禁錮と懲役の違いは何?

禁錮と懲役はどちらも刑法が定めている自由刑の一種で、受刑者を拘禁してその自由を剥奪することを内容とします。

どちらも、受刑者を「刑事施設に拘置する」という点では同じで、刑期の上限下限も変わりません。

しかし、懲役は拘置したうえで「所定の作業を行わせる」とされている点が、たんに「拘置する」だけの禁錮と異なります。

つまり、懲役は働かされ、禁錮は働かされないのです

刑法
第12条(懲役)
第1項 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
第2項 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。
第13条(禁錮)
第1項 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、1月以上20年以下とする。
第2項 禁錮は、刑事施設に拘置する。

禁錮刑は最長何年?

上の条文にあるとおり、禁錮刑の最長は20年ですが、併合罪加重(47条)や累犯加重(57条)のように法律上の加重原因があるときは、最長30年まで長くすることができます(14条1項)。

禁錮は、刑務作業はできないのか?

懲役における「所定の作業」を「刑務作業」と呼びます。刑務作業を行うことは懲役受刑者の義務ですが、どのような作業を行わせるかは、懲役受刑者ごとに、刑事施設の長(いわゆる刑務所長)が指定します(刑事施設収用法第92条)。

禁錮は、刑務作業の義務はありませんが、長期間、何もすることがなく拘禁されていることは大変な苦痛です。

このため、禁錮受刑者も刑務作業を行いたいと申し出ることができます。これを「請願作業」と言います。実際、ほとんどの禁錮受刑者が作業を希望します(※)

※平成28年3月末時点で、禁錮受刑者143人のうち119人(83.2%)が作業に従事しているとの報告があります(「逐条解説・刑事施設収用法(第3版)」林眞琴他・有斐閣34頁)。

ただし、刑務作業を希望しても、これを許すかどうかは、刑事施設の長の裁量によります。

刑事施設収用法
第93条(禁錮受刑者等の作業)
刑事施設の長は、禁錮受刑者(刑事施設に収容されているものに限る。以下この節において同じ。)又は拘留受刑者(刑事施設に収容されているものに限る。)が刑事施設の長の指定する作業を行いたい旨の申出をした場合には、法務省令で定めるところにより、その作業を行うことを許すことができる。

禁錮受刑者の作業の法的義務、途中で辞められる?

刑務作業の多くは、外部の民間会社等との契約によって、刑事施設内に工場などを設置し、外部から材料などを搬入して加工作業などを行うものです。

このため刑事施設で実施できる作業量や作業スペース、作業指導者などの確保には限界があり、禁錮受刑者が希望したからといって、全ての希望を叶えることができるわけではないからです。

刑事施設収用法が、作業の申し出があった場合に、「作業を行うことを許すことができる」と定めているのはこのためです(刑事施設収用法第93条)。

もっとも、刑事施設の長は、管理運営上支障のない限り作業を許すものとされています。

ただし、過去に作業を希望して許されながら、正当な理由なく作業を怠った者には作業を許さないことができます(刑事施設収容規則56条1項)。

禁錮受刑者の作業は法的義務ではありませんが、刑務作業は注文先企業等との契約に基づく納期、生産計画などにしたがう必要があり、勝手に作業を怠ることは刑務作業の円滑な実施を阻害するにとどまらず、契約先企業に損害を被らせる危険もあります。

このため、過去に作業を怠った者の申し出は許さないことができるとしたのです。もちろん、病気、怪我などの正当な理由によって作業ができなかった場合は別です。

また、いったん刑務作業を許されたら、これをやめるには2週間前までに申し出なくてはなりません(刑事施設収容規則56条2項)。

禁錮受刑者にとって刑務作業は義務ではありませんから、やめることは本来、自由ですが、急にやめられてしまうと、生産計画が狂ったり、代替人員を配置したりしなくてはならず、円滑な運営に支障をきたす危険があります。そこで、2週間前に申し出ることとしたのです。

もしも、2週間前の申し出をせずに刑務作業を怠ったら、その禁錮受刑者は、刑事施設収容規則で定められた手続を実行しなかったことになり、懲罰の対象となります。

刑事施設収容規則
第56条(禁錮受刑者等の作業)
第1項 禁錮受刑者又は拘留受刑者には、刑事施設の管理運営上支障を生じるおそれがある場合を除き、法第93条に規定する作業を行うことを許すものとする。ただし、正当な理由なく、作業を怠ったことがある者については、この限りでない。

第2項 法第93条の規定により作業を行うことを許された者は、作業を行わないことを希望する場合には、2週間前までに申し出なければならない。

禁錮刑と懲役刑に分かれている理由とは

昔から、「破廉恥」な犯罪には刑罰として労働を課し、「非破廉恥」な犯罪には労働を課さず「名誉ある拘禁」を与えると言われてきました。

「非破廉恥」な犯罪とは、政治犯や過失犯であるとも言われてきました。

なるほど、現行の法律でも、禁錮刑は次のような犯罪の刑罰とされています。

内乱罪(刑法第77条)、私戦予備・陰謀罪(93条)、中立命令違反罪(94条)、公務執行妨害罪(95条)、騒乱罪(106条)、多衆不解散罪(107条)などの政治的確信犯。

業務上失火等罪(117条の2)、業務上過失致死傷罪(211条)、過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)などの過失犯。

しかし、必ずしも「非破廉恥」とは言えない犯罪に禁錮刑が定められているケースもあります。

例えば、名誉毀損罪(230条)、公務員職権濫用罪(193条)、特別公務員職権濫用罪(194条)、特別公務員暴行陵虐罪(195条)などです。

また「破廉恥」か「非破廉恥」かの区別自体が曖昧ですし、「破廉恥」だから労働させるというのは、労働蔑視と批判されます。

このため、禁錮と懲役という区別はやめて、自由刑を一本化するべきだという立法論が根強く主張されています(自由刑単一主義)。

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禁錮刑は懲役刑より軽いのか?罰金刑よりは重いのか?

一般に、懲役刑は禁錮刑よりも重いものと考えられがちですが、そう決まっているわけではありません。

刑法10条という規定が、刑の軽重は「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料」の「順序による」と定めているため、このように誤解されているようです。

刑法
第9条(刑の種類)
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

第10条(刑の軽重)
第1項 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする(以下略)。

しかし、この刑法10条は、刑法の規定上、2つの刑を比較して、その軽重を決めなくてはならない場合があることから、その際の基準を定めた技術的な規定に過ぎません。

例えば、刑法第6条は「犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。」と定めており、犯行が行われた後で、これに適用する法定刑が変更されたときは、変更前と変更後を比較して、軽い刑を適用することを明らかにしています。

このような場合に対処するには、あらかじめ刑の軽重の基準を決めておく必要があり、それが刑法10条を置いた目的です。

したがって、この意味を超えて、禁錮刑が懲役刑よりも軽い刑だとする根拠はありません。

また、先に述べたように、ほとんどの禁錮受刑者が刑務作業を希望しますから、実質的にどちらが重いかを論じても意味があるとは言えないでしょう。

なお、刑法10条が実質的な刑の重さを決めているのでないことは、禁錮刑と罰金刑との間にも言えることですが、実際上、罰金刑は禁錮や懲役よりも軽い犯罪について定められていますから、一般的には、罰金刑は禁錮よりも軽いと考えることができるでしょう(ただし、禁錮6月と罰金1億円のどちらが重いかという問題はあります)。

禁錮刑の生活はどんな生活?暇なのか?

実際には禁錮受刑者のほとんどが刑務作業を希望するので、懲役受刑者と変わらない生活をしています。

その刑事施設にもよりますが、平日(土日祝日以外)のスケジュールは、概ね、次のようなものです。

6時50分起床 床上げ、洗顔、掃除
7時00分点呼
7時10分朝食、歯磨きなど
7時40分出室
8時00分作業開始
10時00分10分休憩・お茶
12時00分昼食・昼休み(テレビ、読書、囲碁、将棋)
12時30分作業開始
15時00分10分休憩・お茶
16時30分作業終了
16時50分点呼
17時00分帰室
17時15分夕食・以後は自由時間(就寝、テレビ、新聞、読書、漫画、手紙、日記)
21時00分消灯

一見、労働時間が長く、忙しいように見えますが、実は違います。

まず、平日は毎日30分間、運動の時間があるので、体操着に着替えて、グラウンドか体育館へゆきます。着替えと往復の時間がかかるので、40分~50分程度、刑務作業は中断します。

夏は週3回、冬は週2回、入浴があり、作業を早めに切り上げることになります。入浴時間帯はシフトが組まれていますが、早い時間に入浴するシフトのときには、15時前に作業を終えてしまい浴場に向かいます。昼の15時から仕事を終えて風呂に入る事もできます。

また、作業時間中も、差し入れ品や購入品の確認、面会、教誨活動、趣味のクラブ活動、更生教育の授業、誕生日会、医務室での診察などで、頻繁に作業を中断する機会があり、実質的には、ほとんど作業しなかったという日も珍しくありません。

しかも、土日祝日、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆はしっかり休みですから、部屋でテレビを見て昼間から布団で寝ることもできます。

刑務作業をしていても、必ずしも、忙しいとは言い切れない所があります。

まして、禁錮受刑者が刑務作業を希望しなかったら、何もすることがありませんから「暇」と感じてもおかしくありません。むしろ刑務作業がなかったら、苦痛で仕方ないでしょう。

なお、刑務作業をする場合、懲役受刑者と禁錮受刑者は同じ工場で一緒に作業をすることになりますが、居室は別々に分離しなくてはならないと定められています(刑事施設収用法第4条)。

「禁錮3年、執行猶予5年」「禁錮2年、執行猶予5年」の意味

「禁錮3年、執行猶予5年」という判決の報道を聞いた方は多いでしょう。これは、刑務所にはいらなくていいのでしょうか?

実際には、「被告人を禁錮3年に処する。この裁判確定の日から 5年間右刑の執行を猶予する。」という判決主文になります。

執行猶予制度(刑法第25条)は、平たく言えば、次のような制度です。

「禁錮3年の刑を言い渡すけれど、今後5年間、何も悪いことをしなければ、5年経った時点で、もう刑務所に行かなくていいよ。逆に、5年間のうちに、また悪いことをしたら、刑務所にいってもらうよ。その時には、今回の禁錮3年の刑に、次に犯した犯罪の刑罰も加わることになるから長くなるよ。気をつけてね。」

これは刑務所に入らなくとも、社会内で通常の生活を送りながらやり直すことが期待できる場合に、もうワンチャンスを与える制度と言えるでしょう。

禁錮刑になると、どんなデメリットがあるのか?必ず失職したりするの?

禁錮刑であっても、執行猶予がつかない実刑判決であれば、刑務所に収監されますから、服役する間、これまでの仕事はできません。

労働者の基本的な義務である「就労する義務」を果たせない以上、民間企業の雇用主が解雇することには合理的な理由があり、有効な解雇が可能です。もちろん、解雇するかどうかは、雇用主の考え方次第です。

但し、国家公務員・地方公務員は、禁錮以上の刑を宣告されれば、たとえ執行猶予がついて現実に刑務所に服役しないときでも、国家公務員法(38条)、地方公務員法(16条)が定める欠格事由に該当することになり、当然に失職します(国家公務員法76条、地方公務員法28条)。

交通事故を起こして、禁錮刑になる基準や理由は?

交通事故が危険運転行為に起因しない限り、過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)が適用されます。その法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。

この場合、懲役刑と禁錮刑のどちらを選択するか、それを定める法律の基準はなく、裁判官の自由裁量に委ねられています。

そもそも、実際に服役している禁錮受刑者は圧倒的に少なく(※)、禁錮刑の宣告は、ほとんど執行猶予付き判決だと思われます

※平成27年における入所受刑者は、懲役2万1458人(99.6%)であるのに対し、禁錮73人(0.3%)との報告があります(前出「逐条解説・刑事施設収用法(第3版)」林眞琴他・有斐閣34頁)。

過失運転致死傷罪では、多くの場合、普段は善良な市民が、たまたま不注意で他人を死傷させてしまったというケースです。

死亡事故や傷害事故でも程度が重かったり、被害が多人数に及んでいる事案では、裁判官としては罰金刑で済ませるわけにもゆかず、さりとて本来は善良な市民を現実に服役させるべきではないから、間をとって執行猶予を選択するのです。

その場合、懲役刑でも禁錮刑でも、実質は変わりません。実際に服役する結果となる可能性は低いですし、万一、服役したとして、刑務所内での生活に違いはありません。

しかし、懲役刑か禁錮刑かは、一般人の目からは違います。禁錮刑の方が軽い刑と思われているからです。

それを考えると、懲役を宣告された者というレッテルを貼るよりも、禁錮刑という世間的に幾分はゆるやかな印象の刑を宣告しておいた方が、被告人の立ち直りに資すると考えるのです。

この点は、検察官の求刑にも同じことが言えるでしょう。実際、検察官が実刑を望む場合は禁錮刑ではなく懲役刑を求刑するものだと言われてきたのです。

大津園児死傷事故の「求刑禁錮5年6月」の意味

ただ、近年は、交通事故事案の厳罰化を求める声におされて、このような考え方に変化が見られるようです。

例えば、2019年5月の「大津園児死傷事故」では、求刑は禁錮5年6月です。これは判決相場である求刑の7割の刑期でも執行猶予をつけることはできない(執行猶予は刑期3年以下であることが必要)求刑であり、実刑にしろという検察の強い意思表示です。16人を死傷した結果の重大性故でしょう。

では、何故、懲役5年6月ではなく、禁錮5年6月なのかと言えば、おそらくは過失の態様を考慮したからだと思われます。

報道で知る限りは、事案はよくある右折車による直進妨害であり、その過失が特段に悪質とか重大だったと断ずるには躊躇を覚えるはずです。服役はしてもらわないと困るが、被告人にも配慮が必要、そんな微妙な匙加減が見て取れるのです。

2020年1月16日の判決期日が注目されます。

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