交通刑務所|交通事故を起こして刑務所に入る基準とその生活

交通刑務所

交通事故を起こすと交通刑務所に入ることになると言われています。本当でしょうか?

この記事では、交通刑務所とは何か?交通刑務所に入るかどうかの基準は何か?交通刑務所ではどのような生活を送るのか等について説明します。

交通刑務所とは?場所はどこにあるの?

「交通刑務所」とは、交通事故、交通法規違反などを理由として懲役刑・禁錮刑の実刑判決を受けた受刑者が収容される刑事施設の俗称です(法律上、このような名称の施設があるわけではありません)。

一般には、千葉県市原市の「市原刑務所」と、兵庫県加古川市の「加古川刑務所」が有名です。

たしかに市原刑務所は、ほぼ交通事犯だけを受け入れているので、まさに交通刑務所と呼ばれるにふさわしいと言えます。

他方、加古川刑務所は、一般の刑務所の中に、交通事犯だけを収容した区画(交通区)が置かれているものです。

交通事故で入る刑務所は、どのようにして決まるの?

交通事故で刑務所に入る者の全部が、交通刑務所に入るわけではありません。

そもそも、受刑者をどの施設に収容するかは、犯罪の種類だけで決まるものではないのです。

刑務所は自由を奪うだけの場所ではなく、改善・更生、円滑な社会復帰を実現するために、各種の積極的な働きかけを受刑者に行う施設です。これを「矯正処遇」と言います。

刑事施設収用法
第30条(受刑者の処遇の原則)
受刑者の処遇は、その者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨として行うものとする。

矯正処遇には、①刑務作業、②改善指導、③教科指導があります。

  • ①刑務作業は、懲役受刑者が義務として行うものと、その義務がない禁錮受刑者が自ら希望して行うもの(請願作業)があります(刑事施設収用法92条、93条)。
  • ②改善指導は、責任を自覚させ、社会に適応するための知識や生活態度を身につけさせる指導です(同法103条)。

これにはまず、反省文や読書感想文の作成、教育番組の視聴、各種講演会の聴取、体育の実施、規則正しい生活の実施といった一般的な指導があります。

さらに、特別改善指導として、薬物犯罪者を対象とする薬物依存離脱指導、暴力団構成員を対象とする暴力団離脱指導、性犯罪者を対象とする性犯罪再犯防止指導、そして交通犯罪者に対する「交通安全指導」等があります(刑事施設収用法施行規則64条)。

  • ③教科指導は、基礎的な学力が不足している受刑者に対し、中学卒業~高校卒業程度の授業を行うものです(刑事施設収用法104条)。

このような矯正処遇は各受刑者の特性に応じて行われるべきですが、個別に異なる対応をすることは刑務所の施設的にも、刑務官の人員的にも無理があります。

そこで、受刑者の属性(刑名、刑期、性別、年齢等)と犯罪傾向の進度に応じた者を集めて集団に編成したうえで、矯正処遇を行うことになります。

刑事施設収用法第86条(集団処遇)
第1項
矯正処遇(中略)は、その効果的な実施を図るため、必要に応じ、受刑者を集団に編成して行うものとする。

この集団編成の基準となるのが、「処遇指標」と呼ばれるもので、各受刑者を、その受けるべき指導内容、刑名・刑期・性別・年齢等の属性、犯罪傾向の進度の各観点から分類したものです。

例えば、次のような分類です。

「処遇指標」抜粋(※)

符号処遇指標
I禁錮受刑者
Y可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の成人
W女子
L執行するべき刑期が10年以上である者
A犯罪傾向が進んでいない者
B犯罪傾向が進んでいる者

※「受刑者の集団編成に関する訓令」平成18年5月23日・法務省矯成訓第3314号

各受刑者が、このような処遇指標に応じて分類される一方、各刑事施設が受け入れる受刑者も処遇指標に応じて分けられているのです。

処遇指標別の刑事施設一覧は、次の法務省サイトで見ることができます。

参考外部サイト:「刑 事 施 設 一 覧」法務省サイト

市原刑務所は、「I:禁錮受刑者」、「YA:可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の成人で、かつ犯罪傾向が進んでいない者」、「A:犯罪傾向が進んでいない者」の3種類の受刑者を受け入れる施設です。なお「L:執行するべき刑期が10年以上である者」は受け入れていないので、残刑期が10年未満の者しか対象になりません。

加古川刑務所は、上記I、YA、Aに「W:女子」を加えた4種類の受刑者を受け入れる施設です。同じく、残刑期が10年未満の者だけが対象です。

このように、交通事犯であっても、受刑歴等がある、暴力団構成員であるなど犯罪傾向が進んでいると判断される者や、残刑期が10年以上ある者は、市原刑務所や加古川刑務所には収容されません。交通事犯の女子も市原刑務所には収容されません。交通事犯イコール「交通刑務所」に入るというわけではないのです。

実際、交通事犯に対する特別改善指導としての「交通安全指導」は、平成28年度は55の施設で実施されたと報告されています(※)。交通事犯は、広く全国の刑務所に収容されていて、必ず市原刑務所と加古川刑務所にゆくわけではないことが明らかです。

※「逐条解説・刑事施設収用法(第3版)」林眞琴他・有斐閣509頁

交通事故を起こして、刑務所に入る基準・条件は?死亡事故以外は入らない?

刑務所に入ることになるのは、検察官から法廷での正式裁判を求める起訴をされ(「公判請求」といいます)、裁判を受けた上で、裁判官から懲役刑または禁錮刑の実刑判決、すなわち執行猶予なしの判決を宣告されて確定したときです。

交通事件で正式起訴される割合とは?

そこで、まず交通事犯での検察官の処分状況を見てみましょう。

2017(平成29)年の交通事犯の検察庁での処理は次の統計のとおりです。

道路交通法違反過失運転致死傷等危険運転致死傷罪
公判請求2.6%1.2%74.7%
略式命令請求(罰金)53.6%9.6%罰金刑なし
不起訴39.2%86.2%15.8%

平成30年犯罪白書4-1-2-1図「交通事件 検察庁終局処理人員の処理区分構成比」より

過失運転致死傷等よりも、道路交通法違反の方が、公判請求される率、略式命令請求を受ける率が高いのは意外かもしれません。

単純な運転ミスが大部分を占め、それゆえ不起訴が多い過失運転致死傷等に比べて、道路交通法違反は何度も違反を繰り返した悪質なケースが多いからだと推測されます。

交通事犯で刑務所に入る実刑判決を受ける割合は?

では、交通事犯で正式起訴されてしまったとき、執行猶予はもらえるのでしょうか?それとも実刑判決で刑務所に入ることになるのでしょうか?

平成29(2017)年に、交通事件の第一審で懲役刑・禁錮刑を受けた者の刑の内訳は、次の統計のとおりです(赤色文字が実刑)。

平成29年交通事件の科刑状況致傷致死道路交通法違反
過失運転危険運転過失運転危険運転
総数2670人341人1329人31人5948人
10年超0人0人0人4 人(12.9%)0人
10年~7年超0人0人0人9人(29.0%)1人
7年~5年超0人2人
(0.58%)
0人9人
(29.0%)
2人
5年~3年超2人
(0.7%)
6人
(1.7%)
11人
(0.82%)
6人
(19.3%)
15人
(0.25%)
3年の実刑0人3人
(0.87%)
7人
(0.52%)
3人
(9.6%)
4人
3年の刑で全部執行猶予25人
(0.9%)
17人
(4.9%)
110人
(8.27%)
0人20人
(0.33%)
2年以上3年未満の実刑3人
(0.07%)
6人
(1.7%)
39人
(2.9%)
0人18人
(0.30%)
2年以上3年未満の刑で全部執行猶予160人
(5.9%)
55人
(16.1%)
302人
(22.7%)
0人99人
(16.6%)
1年以上2年未満の実刑8人
(0.29%)
12人
(3.5%)
17人
(1.27%)
0人172人
(28.9%)
1年以上2年未満の刑で全部執行猶予1577人
(59.0%)
196人
(57.4%)
828人
(62.3%)
0人1136人
(19%)
6月以上1年未満の実刑20人
(0.74%)
4人
(1.17%)
3人
(0.22%)
0人518人
(8.7%)
6月以上1年未満の刑で全部執行猶予862人
(32.2%)
40人
(11.7%)
12人
(0.9%)
0人2929人
(49.2%)
6月未満の実刑2人0人0人0人216人
(3.6%)
6月未満の刑で全部執行猶予11人0人0人0人818人
(13.7%)
実刑判決を受けた者の合計35人
(1.3%)
33人
(9.6%)
77人
(57.9%)
31人
(100%)
946人
(15.9%)

平成30年犯罪白書「4-1-3-1表 交通事件 通常第一審における有罪人員(懲役・禁錮)の科刑状況」から抜粋

上の統計をまとめますと、実刑判決を受けた者の割合は、次のとおりです。

過失致傷1.3%
過失致死57.9%
危険運転致傷9.6%
危険運転致死100%、
道路交通法違反15.9%

傷害にとどまった場合、過失致傷の約99%、危険運転致傷の約90%は刑務所に入らなくてすんでいます。

しかし、死亡という重大な結果に至ってしまうと、過失致死でも約60%が実刑判決を受けて刑務所に入ることになります。

まして危険運転致死なら100%刑務所に入るのです。

さらに、単なる道路交通法違反でも、約16%もの高率で刑務所に入ることになる点に注意してください。「事故ではなく、たかが違反じゃないか。」と軽く見ていると、人生を失うことにもなりかねないのです。

交通事犯で刑務所に入る刑期は?

では、実刑判決の刑期の相場はどの程度でしょうか?これも上の統計を見てください。

各刑期のボリュームゾーンは次のとおりです。

過失致傷6月以上1年未満
過失致死2年以上3年未満
危険運転致傷1年以上2年未満
危険運転致死5年超10年以下
道路交通法違反1年以上2年未満

交通刑務所でも、普通の刑務所と同じく、仮釈放とかある?

仮釈放は、懲役受刑者、禁錮受刑者に改悛の状があり、その刑期の3分の1を過ぎている場合に、更生保護委員会の裁量で満期前に釈放する制度です(刑法28条)。

当然に交通刑務所の受刑者にも仮釈放は認められます。全国の受刑者の平成29年の仮釈放率は58%ですが、交通刑務所の場合は、さらに高い割合で仮釈放が認められると推測されます。

市原刑務所とはどんなところ?

市原刑務所の場所は、次のとおりです。

市原刑務所の場所と概要
住所〒290-0204千葉県市原市磯ケ谷11-1
電話0436(36)2351
収容定員463人

収容される居室は、①単独寮、②準開放寮、③開放寮、④希望寮の4つに分かれます。

単独寮には施錠された個室があり、施設に収容された最初の2週間、施設生活の目的や生活ルール等を理解させる「執行開始時指導」が行われます(刑事施設収用法85条1項1号、同規則44条1項)。

次いで、準開放寮に移ります。準開放寮の建物自体の出入口には鍵がかけられ、外側の窓には鉄格子が備えられていますが、廊下側の窓には鉄格子はなく、各房(各部屋)のドアにも鍵はかけられない半開放の状態です。

さらに開放寮に移ると、廊下側の窓だけでなく、外側の窓にも鉄格子がなく、許された範囲の外(戒護区域外)に通じるドアには、さすがに鍵がかかっているものの、それ以外のドアは無施錠で、その構内に限り独り歩きも認められています。

また一般の刑務所では頻繁に行われる検身(身体検査)・捜検(持ち物検査)は原則的に実施されないうえ、できるだけ受刑者に自主的な運営を行わせます。

交通刑務所の面会

一般の刑務所では回数が制限されている面会及び手紙の発信も、管理上支障のない限り、できるだけ許しており、面会室以外の場所で刑務官の立会いなしで面会を実施することもあります

希望寮では、釈放前の2週間にわたり、社会復帰後の生活において必要となる知識を与えたり、帰住場所、就業先に関する指導を行ったりする「釈放前の指導」が行われます(刑事施設収用法85条1項2号、同規則45条1項)。

参考文献:「刑事政策(第7版)」岩井佳子(専修大学名誉教授・弁護士)尚学社175頁

加古川刑務所とはどんなところ?

加古川刑務所の場所と概要
住所〒675-0061 兵庫県加古川市加古川町大野1530
電話079(424)3441
交通区の最大収容定員120名

3つの区画に分かれており、交通事犯が収容される交通区は最大収容人員が120名です。

交通区は、やはり解放区であり、「居室や工場に施錠をせず、面会は職員の立会なしで実施するなど、一般の刑務所より管理が緩やかで、受刑者の自主性を重視しています。」(※)

※弁護士木野達夫先生(宝塚花のみち法律事務所・兵庫県弁護士会所属)による「弁護士会人権擁護委員会主催の加古川刑務所見学に関する2012年8月30日付ブログ」より引用させていただきました。

交通刑務所の生活はどんなもの?

交通刑務所での生活の中心は刑務作業です。これは懲役受刑者にとっては義務ですが、ほとんどの禁錮受刑者も自ら希望して刑務作業を行います(請願作業)。

「禁錮受刑者による刑務作業の詳細」と「刑務所での1日の標準的なスケジュール」については、次の記事を御参照ください。

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交通刑務所での刑務作業は、どんなものがあるの?

市原刑務所での刑務作業

市原刑務所では、12の民間業者と刑務作業の契約をしています。
味噌、醤油の製造が長く有名でしたが、現在は行われておらず、代わりに椎茸栽培が盛んとなっています。

業種工場数就業人数主な作業内容
金属1 箇所26人丁番及び配線器具等の組立・加工・バリ取り・検査等の作業
農業1 箇所13人青物野菜・草花の栽培と出荷、椎茸栽培
その他3 箇所74人紙製品及びプラスチック・ビニール製品の加工製造、分解・分別等のリサイクル作業
職業訓練2 箇所19人自動車整備科、溶接科、ビル設備管理科、情報処理科、電気通信設備科、工芸科

法務省サイト:「刑務作業をご利用される方へ 市原刑務所」より(2019年12月時点)

加古川刑務所での刑務作業

加古川刑務所では、20の民間業者と刑務作業の契約をしています。
木工の応接セット製作、全国刑事施設の受刑者などの衣服の縫製などが盛んです。

業種工場数就業人数主な作業内容
木工1箇所28人応接セット加工作業
洋裁3箇所177人被収容者の被服縫製、各種安全用品の縫製作業
金属3箇所76人棚受金具加工、金属加工品のバリ取り作業
その他11箇所530人生地生産、洗濯バサミ等の組立作業、化学製品組立て及び検査、ゴム製品加工作業
職業訓練0箇所40人ビル設備管理科、自動車運転科、情報処理技術科(端末操作基礎課程)、建設く体科、農業園芸科

法務省サイト:「刑務作業をご利用される方へ 加古川刑務所」より(2019年12月時点)

刑務作業の日当はいくらぐらい?

刑務作業の日当(作業報奨金)の金額は、その刑務所ごと、その受刑者ごとに異なります。

その受刑者が従事する作業の種類、作業内容、作業に要する知識・技能の程度、その作業に従事してきた期間、作業成績、就業態度などを考慮して決定されるからです(刑事施設収用法98条、「作業報奨金に関する訓令(法務省矯成訓第3343号)」)。

平成29年度に、受刑者一人あたりの平均月額は4340円です。出所する際に支給された金額は5万円超が35.0%、1万円以下が15.5%と報告されています(※)。

平成30年犯罪白書

刑務所の食事はどんなもの?

  • 食事の場所は、朝食、夕食、土日祝日の昼食は自室内です。工場での刑務作業がある平日の昼食は各工場に併設された食堂です。
  • 1ヶ月毎に献立が発表されます。1ヶ月間、毎日違うメニューです。毎月、少しずつ異なるメニューが加えられ、まったく同じものの繰り返しとなることはありません。
  • 内容は一般的なメニューと異なることはなく、外の世界の食事と全く同じです。給食をイメージすれば良いでしょう。ただし、生の魚介類は出ません。
  • 白米と麦飯の混合を主食として、肉や魚の主菜、漬物やサラダなのどの副菜、味噌汁、スープなどです。週に何回か、ジュースやヨーグルト、プリンなどのちょっとしたデザート類が加わります。
  • また、施設によりますが、例えば火曜日の昼食は麺類、金曜日の昼食はパン類などというように、麦飯以外が主食となる回が決まっています。
  • 味はメニューによって異なります。大量に鍋で煮込む料理、シチューやカレーはおいしいと好評ですが、一品ごとに手間のかかる料理は出せないので、焼魚・煮魚はレトルト食品の支給になってしまい、味はいまいちです。
  • お正月は、重箱のおせち料理(市販品)、お雑煮等が出ます。クリスマスはケーキとフライドチキン。祝日は、もなか、まんじゅう、柏餅、アイスクリーム、お菓子などが食事とは別に支給されます。また、全部白米の通称「銀シャリ」も出ます。夏の暑い時期は、工場での昼食にもアイスキャンデーが出ます。
  • 全食、栄養士による管理がなされ、食事時間も決まっており、間食もほとんどできないので、非常に健康的な食生活となります。

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