危険運転致死傷罪とは?~点数・罰則、量刑相場、懲役何年、執行猶予~
あおり運転や暴走事故が多発し、危険運転致死傷罪に対する関心が高まっています。この記事では、危険運転致死傷罪の生い立ち…[続きを読む]
交通事故を起こすと、交通刑務所に入ることになると言われていますが、本当でしょうか?
この記事では、交通刑務所とは何か?、場所はどこか、ゆるいのか厳しいのか、また、交通事故を起こして交通刑務所に入る基準、入るケースとその刑務所での生活に関して解説します。
目次
「交通刑務所」とは、交通事故、交通法規違反などを理由として懲役刑・禁錮刑の実刑判決を受けた受刑者が収容される刑事施設の俗称です。法律上、このような名称の施設があるわけではありません。
交通刑務所の場所はどこにあるのか気になる方もいるでしょう。一般に有名な場所として、次の2つがあります。
たしかに市原刑務所は、ほぼ交通事犯だけを受け入れているので、まさに交通刑務所と呼ばれるにふさわしいと言えます。
他方、加古川刑務所は、一般の刑務所の中に、交通事犯だけを収容した区画(交通区)が置かれているものです。
市原刑務所の場所と概要は、次のとおりです。
住所 | 〒290-0204千葉県市原市磯ケ谷11-1 |
---|---|
電話 | 0436(36)2351 |
収容定員 | 463人 |
一般の刑務所では頻繁に行われる検身(身体検査)・捜検(持ち物検査)は原則的に実施されないうえ、できるだけ受刑者に自主的な運営を行わせます。
加古川刑務所の場所と概要は、次の通りです。
住所 | 〒675-0061 兵庫県加古川市加古川町大野1530 |
---|---|
電話 | 079(424)3441 |
交通区の最大収容定員 | 120名 |
3つの区画に分かれており、交通事犯が収容される交通区は最大収容人員が120名です。
交通区は、やはり解放区であり、「居室や工場に施錠をせず、面会は職員の立会なしで実施するなど、一般の刑務所より管理が緩やかで、受刑者の自主性を重視しています。」(※)
※弁護士木野達夫先生(宝塚花のみち法律事務所・兵庫県弁護士会所属)による「弁護士会人権擁護委員会主催の加古川刑務所見学に関する2012年8月30日付ブログ」より引用させていただきました。
刑務所に入ることになるのは、交通事故を起こして検察官から法廷での正式裁判を求める起訴をされ(「公判請求」といいます)、裁判を受けた上で、裁判官から懲役刑または禁錮刑の実刑判決、すなわち執行猶予なしの判決を宣告されて確定したときです。
交通事犯での検察官の処分状況を見てみましょう。
2018(平成30)年の交通事犯の検察庁での処理は次の統計のとおりです。
道路交通法違反 | 過失運転致死傷等 | 危険運転致死傷罪 | |
---|---|---|---|
公判請求 | 2.8% | 1.3% | 71.4% |
略式命令請求(罰金) | 51.6% | 10.1% | 罰金刑なし |
不起訴 | 41.2% | 85.8% | 19.4% |
令和元年版犯罪白書4-1-2-1図「交通事件 検察庁終局処理人員の処理区分構成比」より
死亡事故も含まれる過失運転致死傷等よりも、道路交通法違反の方が、公判請求される率、略式命令請求を受ける率が高いのは意外かもしれません。
単純な運転ミスが大部分を占め、それゆえ不起訴が多い過失運転致死傷等に比べて、道路交通法違反は何度も違反を繰り返した悪質なケースが多いからだと推測されます。
では、交通事犯で正式起訴されてしまったとき、執行猶予はもらえるのでしょうか?それとも実刑判決で刑務所に入ることになるのでしょうか?
【出典】平成30年犯罪白書「4-1-2-4表 交通事件 通常第一審における有罪人員(懲役・禁錮)の科刑状況」
上の統計をまとめると「実刑判決を受けた者の割合」は、次のとおりです。
過失致傷 | 1.5% |
---|---|
過失致死 | 5.5% |
危険運転致傷 | 9.6% |
危険運転致死 | 100% |
道路交通法違反 | 15.4% |
過失運転の場合は、致傷では99%近くが、致死では、約95%が刑務所に入らずに済んでいます。
しかし危険運転致死であれば、100%刑務所に入るのです。
また、単なる道路交通法違反の場合でも、約16%もの高率で刑務所に入ることになります。
「死亡事故ではなく、たかが違反」と軽く見ていると、人生を失うことにもなりかねません。
では、実刑判決の刑期の相場はどの程度でしょうか?これも上の統計を見てください。
各刑期のボリュームゾーンは次のとおりです。
過失致傷 | 6月以上1年未満 |
過失致死 | 1年以上2年未満 |
危険運転致傷 | 2年以上3年未満 |
危険運転致死 | 7年超10年以下 |
道路交通法違反 | 6月以上1年未満 |
では、交通刑務所に入る受刑者、入るケースとはどのような者なのでしょう?そこには、受刑者の入る基準のようなものがあるのでしょうか?
そもそも、受刑者をどの施設に収容するかは、犯罪の種類だけで決まるものではありません。
刑務所は単に自由を奪うだけでなく、改善・更生、円滑な社会復帰を実現するために、各種の積極的な働きかけである「矯正処遇」を受刑者に行う施設です。
矯正処遇には、①刑務作業、②改善指導、③教科指導の3つがあり、各受刑者の特性に応じて行われるべきものですが、個別に異なる対応をすることは刑務所では施設的・人員的に無理があります。
そこで、受刑者の属性(刑名、刑期、性別、年齢等)と犯罪傾向の進度に応じた者を集めて「集団に編成」したうえで、矯正処遇を行うことになります。
この集団編成の基準となるのが、「処遇指標」と呼ばれるもので、各受刑者を、その受けるべき指導内容、刑名・刑期・性別・年齢等の属性、犯罪傾向の進度の各観点から分類したものです。
「処遇指標」の分類には、次のものがあります(処遇指標」※から一部抜粋)。
符号 | 処遇指標 |
---|---|
I | 禁錮受刑者 |
Y | 可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の成人 |
W | 女子 |
L | 執行するべき刑期が10年以上である者 |
A | 犯罪傾向が進んでいない者 |
B | 犯罪傾向が進んでいる者 |
※【出典】「受刑者の集団編成に関する訓令」より抜粋平成18年5月23日・法務省矯成訓第3314号
各受刑者が、このような処遇指標に応じて分類される一方、各刑事施設が受け入れる受刑者も処遇指標に応じて分けられているのです。
市原刑務所は、以下の3種類の受刑者を受け入れる施設です。入る基準、入るケースとも言えるでしょう。
なお「執行するべき刑期が10年以上である者」は受け入れていないので、残刑期が10年未満の者しか対象になりません。
加古川刑務所は、次の4種類の受刑者を受け入れる施設です。
市原刑務所と同じく、残刑期が10年未満の者だけが対象です。
このように、交通事犯であっても、受刑歴等がある、暴力団構成員であるなど犯罪傾向が進んでいると判断される者や、残刑期が10年以上ある者は、市原刑務所や加古川刑務所には収容されません。
また、市原刑務所には交通事犯の女子も収容されません。交通事犯イコール「交通刑務所」という感じで入る基準があるわけではないのです。
実際、交通事犯に対する特別改善指導としての「交通安全指導」は、平成28年度は55の施設で実施されたと報告されています(※)。交通事犯は、広く全国の刑務所に収容されており、必ず市原刑務所と加古川刑務所にゆくわけではありません。
※「逐条解説・刑事施設収用法(第3版)」林眞琴他・有斐閣509頁
仮釈放は、懲役受刑者、禁錮受刑者に改悛の状があり、その刑期の3分の1を過ぎている場合に、更生保護委員会の裁量で満期前に釈放する制度です(刑法28条)。
当然に交通刑務所の受刑者にも仮釈放は認められます。
全国の受刑者の平成29年の仮釈放率は58%ですが、交通刑務所の場合は、さらに高い割合で仮釈放が認められると推測されます。
一般の刑務所では回数が制限されている面会及び手紙の発信も、管理上支障のない限り、できるだけ許しており、面会室以外の場所で刑務官の立会いなしで面会を実施することもあります。
希望寮では、釈放前の2週間にわたり、社会復帰後の生活において必要となる知識を与えたり、帰住場所、就業先に関する指導を行ったりする「釈放前の指導」が行われます(刑事施設収用法85条1項2号、同規則45条1項)。
参考文献:「刑事政策(第7版)」岩井佳子(専修大学名誉教授・弁護士)尚学社175頁
まず、交通刑務所の生活はゆるいか厳しいのか気になる方もいるかと思いますが、それは人によって異なるとしか言えません。
交通刑務所での生活の中心は刑務作業です。
これは懲役受刑者にとっては義務ですが、ほとんどの禁錮受刑者も自ら希望して刑務作業を行います(請願作業)。
「禁錮受刑者による刑務作業の詳細」と「刑務所での1日の標準的なスケジュール」については、次の記事を御参照ください。
刑務作業の日当(作業報奨金)の金額は、その刑務所ごと、その受刑者ごとに異なります。
その受刑者が従事する作業の種類、作業内容、作業に要する知識・技能の程度、その作業に従事してきた期間、作業成績、就業態度などを考慮して決定されるからです(刑事施設収用法98条、「作業報奨金に関する訓令(法務省矯成訓第3343号)」)。
平成30年度の受刑者一人あたりの平均月額は4,360円です。出所する際に支給された金額は5万円超が37.0%、1万円以下が13.7%と報告されています(※)。
※【出典】平成30年犯罪白書
市原刑務所では、12の民間業者と刑務作業の契約をしています。
味噌、醤油の製造が長く有名でしたが、現在は行われておらず、代わりに「椎茸栽培」が盛んとなっています。
業種 | 工場数 | 就業人数 | 主な作業内容 |
---|---|---|---|
金属 | 1 箇所 | 26人 | 丁番及び配線器具等の組立・加工・バリ取り・検査等の作業 |
農業 | 1 箇所 | 13人 | 青物野菜・草花の栽培と出荷、椎茸栽培 |
その他 | 3 箇所 | 74人 | 紙製品及びプラスチック・ビニール製品の加工製造、分解・分別等のリサイクル作業 |
職業訓練 | 2 箇所 | 19人 | 自動車整備科、溶接科、ビル設備管理科、情報処理科、電気通信設備科、工芸科 |
【出典】「刑務作業をご利用される方へ 市原刑務所」より(2019年12月時点)|法務省
加古川刑務所では、20の民間業者と刑務作業の契約をしています。
「木工の応接セット製作」、全国刑事施設の受刑者などの「衣服の縫製」などが盛んです。
業種 | 工場数 | 就業人数 | 主な作業内容 |
---|---|---|---|
木工 | 1箇所 | 28人 | 応接セット加工作業 |
洋裁 | 3箇所 | 177人 | 被収容者の被服縫製、各種安全用品の縫製作業 |
金属 | 3箇所 | 76人 | 棚受金具加工、金属加工品のバリ取り作業 |
その他 | 11箇所 | 530人 | 生地生産、洗濯バサミ等の組立作業、化学製品組立て及び検査、ゴム製品加工作業 |
職業訓練 | 0箇所 | 40人 | ビル設備管理科、自動車運転科、情報処理技術科(端末操作基礎課程)、建設く体科、農業園芸科 |
【出典】「刑務作業をご利用される方へ 加古川刑務所」より(2019年12月時点)|法務省
食事の場所は、朝食、夕食、土日祝日の昼食は自室内です。工場での刑務作業がある平日の昼食は各工場に併設された食堂です。
1ヶ月毎に献立が発表されます。1ヶ月間、毎日違うメニューです。毎月、少しずつ異なるメニューが加えられ、まったく同じものの繰り返しとなることはありません。
内容は一般的なメニューと異なることはなく、外の世界の食事と全く同じです。給食をイメージすれば良いでしょう。ただし、生の魚介類は出ません。
次のようなメニューが刑務所の食事の典型です。
また、施設によりますが、例えば火曜日の昼食は麺類、金曜日の昼食はパン類などというように、麦飯以外が主食となる回が決まっています。
味はメニューによって異なります。大量に鍋で煮込む料理、シチューやカレーはおいしいと好評ですが、一品ごとに手間のかかる料理は出せないので、焼魚・煮魚はレトルト食品の支給になってしまい、味は今一つです。
お正月は、重箱のおせち料理(市販品)、お雑煮等が出ます。クリスマスはケーキとフライドチキン。祝日は、もなか、まんじゅう、柏餅、アイスクリーム、お菓子などが食事とは別に支給されます。また、全部白米の通称「銀シャリ」も出ます。夏の暑い時期は、工場での昼食にもアイスキャンデーが出ます。
全食、栄養士による管理がなされ、食事時間も決まっており、間食もほとんどできないので、非常に健康的な基準を満たしています。