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▼目次
Q.先日私の不注意で追突事故を起こしてしまいました。その場では物損事故扱いとなったのですが、後日被害者から連絡があり「むち打ちと診断されたので、人身事故に切り替えるために警察に来てほしい」と言われました。
でも、事故の衝撃自体は大したことなかったはずです。私は被害者が仮病を使っているように思えて仕方がありません。彼はばれないと思ってるのです。また、かなり強い口調で暴言を吐き、見た目も不良・暴力団関係者風です。見た目だけで判断しているわけではないのですが、このような場合、私はどうしたら良いのでしょうか。警察に保険金詐欺だと相談するべきでしょうか。
このようなご質問がありました。現場検証では物損事故として処理された交通事故が後日被害者からの申出によって物損事故から人身事故に切り替えられるケースが時々あります。
その際に、今回の質問のように被害者に仮病・保険金詐欺の疑いがあると思われる場合は、どのように対処したら良いのでしょうか?偽造しそうな医者や病院が怪しいのか、警察が怠慢なのか、それとも加害者である私がおかしいか、1つずつ見ていきましょう
また物損事故から人身事故への基本知識は以下の記事をお読みください
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○チェックポイント1:医師の診断書
警察が物損事故から人身に切り替える場合は、必ず医師の診断書の提出を被害者に対して要求します。これは今回の質問者が懸念しているのと同じ「保険金詐欺」・「仮病」による切り替えを防ぐためです。
被害者の自己申告のみに頼っていたら、慰謝料目当てに仮病を使う可能性も十分にあります。
また、今回の事例のように追突事故の場合は「むち打ち」を訴えてくる被害者が多く、むち打ちは神経症状のためレントゲンやMRIなどで検査をしても異常が見られないこともあります。そのため、本人の自己申告と簡易的な検査のみで医師の診断書が発行される可能性もあります。
警察署によって運用は微妙に違いますが、交通事故から1週間以内で被害者が医師の診断書を持参した場合は、人身事故に切り替えられる可能性が高いでしょう。
今回のケースであなたがチェックするポイントは、大きく分けると以下の2点です。
この2点です。まず、交通事故の怪我による診断書は、医師だけではなく接骨院や整骨院の柔道整復師が発行するものもありますが、医学的根拠に乏しいためこれでは不十分です。
そのため、被害者から「診断書があるから一緒に警察へ行ってほしい」と言われたら、必ず医師による診断書なのか、それ以外のものが書いた診断書なのか確認しましょう。
さらに、もう一つ重要な点が検査の内容です。例えば、むち打ち症などであれば、レントゲンやMRIなどの「画像所見」はあるのかなどが非常に重要となってきます。特に交通事故から1週間以上経過しているような場合は要注意です。
医師が診断している以上、偽造診断書ではなく一応は有効な診断書ですので、警察が物損事故から人身に変更することに応じる可能性はありますが、民事上の損害賠償請求においては、その診断書の妥当性を問える可能性は残されていますので、被害者の診断書を確認させてもらいましょう。
※参考おすすめ記事(被害者向けの記事)
交通事故(人身事故)の診断書でご注意!(警察への提出期限&料金&日数)
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なお、後遺障害認定においても診断書は必須ですが、実は事故調査を行なう損害保険料率算出機構からマークされている医師というのがいるそうです。
これは、偽造診断書や保険金詐欺を推奨しているばれないウソの診断書を出す医師ということではなく、患者や弁護士にいわれるがまま診断書に着色を加えすぎる医師のことで、それらの医師が書いた後遺障害診断書は機構側から突っぱねられることもあるそうです。
○チェックポイント2:暴言を吐かれた事に対する対処
また診断書以外にも重要な事があります。それは暴言です。これは暴言の程度や内容にもよります。
例えば、あなたが何かしら身の危険を感じるような暴言を吐かれているのであれば、警察にその旨相談するという方法もありますが、おそらくそこまでの暴言というケースは少ないでしょう。どちらかと言うと、相手にケチをつけたり、強い口調で言ったりする程度が多いようです。
あまりにも聞くに堪えない暴言を言われているような場合は、その会話を録音しておくと良いでしょう。それだけをもって何かできるというわけではありませんが、最終的に保険金詐欺の疑い等で裁判にまでなったときに、被害者側の心証を悪くさせる一要因にはなるかもしれません。
ただ、暴言などは確たる証拠がないと、裁判上軽くスルーされる恐れもありますので、できればスマホの録音機能などを活用して証拠を確保しておきましょう。
○チェックポイント3:詐欺だと思ったら誰に相談すべきか
今回の質問者は、被害者の症状を詐欺だと考えそれを物損事故から人身に変えてしまおうとする警察に相談しようと考えているようですが、これは相談先を間違えています。もしもあなたが、被害者が偽造・慰謝料・保険金詐欺をしようと企んでいると思ったらどこに聞けば良いのでしょう?
被害者が医師の診断書を持参した以上、あなたがいくら詐欺だと騒いでもそれを跳ねかえすことは非常に難しいと言わざる終えません。なぜなら警察はあなたの味方ではないからです。
例えば、被害者が医師から診断書をもらっていない状況であれば、被害者側の詐欺を主張することは簡単ですが、もしも医師の診断書が出てきた場合は、その診断書の妥当性などをめぐって論争する他ありませんので、非常に難しい交渉になります。
いくらあなたが仮病だと思っていても、医師が「これはむち打ち症です」と診断したら、それは仮病ではないのです。残念ながらそう言うものなのです。通常、医師が意図的にウソの偽造診断書を書くということはありませんし、するメリットもないでしょう。ばれないと思ってると別ですが・・・
医師の出した診断書を覆すのは簡単なことではありません。神経症状は目に見えるものではありませんので、痛みや苦しみは本人にしか分かりません。ある意味ばれないということもあるのです。このような場合はケースバイケースで対応していくしかありませんので、もしも被害者が仮病を使っていると感じたら、一番よいのは自分が加入している保険会社と相談などしてどうしていくか決断をしましょう。
弁護士に相談しても、事実関係が確認できず、案件化しにくい相談であり、基本加害者の相談にのる弁護士はすくないので、自分の加入している保険会社の担当者に相談するのがよいでしょう。