交通事故で整骨院の過剰診療や保険金詐欺を疑われないための基礎知識

詐欺・過剰診療

過剰診療を理由に保険金の支払いを拒否されてしまう裁判例が報告されています。他方、交通事故の保険金をだまし取ろうとして逮捕される事件も報道されています。

どのようなケースが保険金詐欺や過剰診療となってしまうのでしょう?

交通事故の治療で通院を続けるにあたって、妥当な通院頻度があるのか、保険金詐欺や過剰診療と疑われないための基礎知識を解説します。

1.交通事故の保険金詐欺

詐欺とは、「人を欺いて財物を交付させ」る行為(刑法246条1項)です。保険金詐欺は、保険会社をだまし、保険金を支払わせる行為ですから、典型的な詐欺罪です。刑罰は10年以下の懲役刑です。

1-1.保険金詐欺 その1 事故を偽装する

交通事故の保険金詐欺には、事故をでっち上げる「事故偽装」があります。

  • わざと車にぶつかって事故を作り出し、人身事故の被害者となるケース
    いわゆる「当たり屋」です。歩行者を装って車に接触する、車の運転者として急ブレーキをかけて後続車の追突を誘うなどです。
  • 例えば2名の者が、それぞれ車を運転し、実際に2台の車を衝突させて事故を作りだすケース

自賠責保険は、過失割合が7割未満であれば保険金を減額しないので、それぞれが傷害を受けたと報告すれば、両方とも保険金を受け取ることができてしまうのです。

事件報道の例

岡山中央警察署は詐欺の疑いでABCを逮捕した。Aらが乗る停止中の車に、Bが運転する車を追突させ、保険会社から約187万円をだまし取った疑い(2018年6月28日産経ニュースから)

1-2.保険金詐欺 その2 事故に便乗する

もう1つのパターンは、事故の発生は事実ですが、保険金を請求できる機会に便乗して不正に保険金を得る「便乗型」です。

  • 勤務先が発行する休業損害証明書を偽造し、休業日数を水増しして保険会社に提出するケース
  • 整体院など施術機関と口裏をあわせ、通院日数を水増しして保険会社に報告するケース

通院日数の水増しは、施術機関と患者の利害が一致します。施術機関は治療費を余分に受け取ることができ、患者は入通院慰謝料の増額が期待できるからです。

事件報道の例

警視庁は、埼玉県の整骨院経営者Aと患者B、C、Dを逮捕した。追突事故の患者Bらの通院日数を水増しして保険会社に請求し、約120万円を得た詐欺の疑い。Bらは「水増しできる整骨院だと知人に紹介された」と話し、通院日数91日間を196日間と偽った。警視庁はAが10年ほど前から同じ手口を繰り返していたとみている(2018年06月14日、TOKYO MX NEWSから)

施術機関が勝手に水増し請求していたなら別ですが、患者も口裏をあわせていたり、水増しを知りつつ、過剰通院を継続していたときは、詐欺の共犯とされる可能性が高いのです。

2.交通事故で整骨院の過剰診療・過剰通院

2-1.痛みが治ったのに過剰通院を続けたときは保険金詐欺になる

追突事故の被害者Aさんは、事故直後から頸椎捻挫で首や肩の痛みがひどく、会社を休んで毎日通院しましたが、2週間すると痛みが和らいで来ました。

ところが、友人から「通院している期間が長いほど慰謝料が高くなる」と聞かされました。

そこで、賠償額を増やしたいと、毎日通院を続けました。3週間で痛みはなくなりましたが、担当医には「まだ痛い」と告げ、事故から3ヶ月間、2日に1回の通院を続けました。

これは保険金詐欺です。3週間で痛みがなくなった以後は、通院の必要がないのに、一種の仮病を使って治療費を支払わせたのですから、これは詐欺罪なのです。

では、Aさんは逮捕されてしまうのでしょうか?

いいえ、逮捕されません。

詐病による不当請求は、法律の理屈の上では詐欺罪ですが、このケースでは「だますつもり」だったという内心を裁判で証明することは困難だからです。

通院していない日に通院したと過大請求するような場合は、だます意図は明白です。

しかし、Aさんのむち打ち症のように自覚症状しかない例が多い疾病では、本当は痛みが消えていたのかどうか、だますつもりだったのかどうかは、他人からはわかりません。詐欺罪を問うことは困難なので刑事事件とはなり得ないのです。

2-2.保険金詐欺とならなくても、過剰診療で治療費の支払いを拒否される危険

ではAさんは問題なく示談金(治療費、通院慰謝料、休業損害)の支払いを受けることができるのでしょうか?

いいえ、支払いを拒否される場合があります。Aさんの治療が「過剰診療」「過剰通院」と判断される危険があるからです。

過剰診療とは、その受傷に対して医学的必要性ないしは合理性が否定される診療行為を言います。

治療費は、「必要かつ相当な実費全額」の賠償が認められるのであって、医学的に必要でも相当でもない治療費の賠償請求は否定されます(※1)。

※1「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集発行)」

そして、ここが重要ですが、その治療が必要かつ相当であったという事実を立証する責任は被害者側にあり、症状を訴えて通院したというだけで無条件に治療費の賠償が認められるわけではないのです。

裁判所も、訴訟となった場合の治療費の請求については以下のように運用しています。

・「治療費は、必要かつ相当な実費全額が賠償の対象となるのであるから、単に治療を行い、治療費を支出しただけでなく、これらの治療が事故と因果関係があり、治療費として適切な支出であることを主張する必要がある」
・「治療の相当性を判断する重要な事実である治療経過、治療の内容を正確に知るために」、「診療報酬明細書が提出されることが望ましい」(※2)

※2「別冊判例タイムズ16 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂4版」東京地裁民事交通訴訟研究会12頁

過剰診療となれば、その通院期間、そのための休業日数も、不必要な通院、休業となり、入通院慰謝料、休業損害にも影響します。

裁判所でも、例えば休業損害の場合、
・「休業日数は、治療期間内の範囲内で、傷害の内容・程度、治療過程、被害者が従事している仕事の内容等を勘案して相当な休業期間を認定する」
・「無条件で休業した全期間にわたって休業損害が認められるものではない」
と考えています(※3)。

※3 前出「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」14頁

2-3.整骨院などでの過剰診療の問題

過剰診療の問題では、整骨院での施術費の賠償請求をめぐってトラブルになり、争われるケースが増えていると言われています。

最近の裁判例(福岡地裁平成26年12月19日判決)

車同士の軽微な接触事故の当事者Aは、事故から4日後にB病院で「頸椎捻挫」の診断を受け5回通院した。さらにAは事故から約20日後からC整骨院にも4ヶ月以上通院した。C整骨院での傷病名は「頸椎捻挫、右肩関節捻挫、右背部捻挫」だった。AはC整骨院での治療費を損害として請求したというケース。

この裁判例は、Aの治療費と事故との因果関係を否定しました。

まず、この判決は整骨院での施術費用と事故との因果関係が認められる条件を次のように説明しています。

(ア)施術の実施につき医師の具体的な指示があり、かつ、施術対象の負傷部位につき医師による症状管理がなされていること(つまり、「医師による治療」の一環として行われていること。この点で、医療機関への通院をやめてしまって、もっぱら整骨院に通院したという場合は条件を満たさなくなります。)

(イ)(ア)の場合以外は、被害者側が次の①~④の各点を個別具体的に立証すること

  • ①施術の必要性
  • ②施術内容の合理性
  • ③施術の相当性(医師による治療を受けた場合と比較して、費用、期間、身体への負担などの観点で均衡を失していないかどうか)
  • ④施術の有効性(具体的な効果があったかどうか)

これらの条件は目新しいものではなく、すでに東京地裁平成14年2月22日判決(判例時報1791号81頁)が判示した考えを、そのまま踏襲しており、裁判所では、この考え方が定着していることを伺わせます(※4)。

※4:東京地裁民事第27部片岡武裁判官講演録「東洋医学による施術費」(前出「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」2003年版、322頁)

本件では、B病院から整骨院への紹介状には、レントゲン上も、神経学的にも異常が認められないこと、AがC整骨院での施術を希望していることが記載されているだけで、医師が医学的観点から整骨院での施術を指示したものではなかったと認定されました。

したがって、医師の指示と許可がない以上、上の基準からは4要件(必要性、相当性、合理性、有効性)をAが立証しなくてはなりませんが、それができていないとされました。

しかも、Aは事故後、C整骨院に通院する前にテニス大会に出場していたことも認定されています。事故から4日も経ての初受診やテニス大会への出場は、通常は因果関係を疑わせる事情と言えるでしょう。

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3.保険金詐欺や過剰診療を疑われないために

事故をでっちあげることは論外ですが、実際に事故の被害者となって通院を継続する場合には、どのような点に注意すればよいのか、説明したポイントをまとめます。

  • 通院日数を増やしてあげるなどと誘われたら、その施術機関には関わってはいけません。それは、あなたを共犯者に引きずり込もうとしているのです。
  • 医療機関以外での施術は、医師の具体的な指示と許可をもらって下さい。施術が治療上、必要かつ有効であることを紹介状、カルテ、診断書などの書面に記載してもらい、証拠を残して下さい。医師の許可なしで、整骨院に通院することはお勧めできません。
  • 医療機関への通院は、施術機関と併用、同時通院して継続して下さい。
  • 痛みもないのに、賠償金を増額する目的で通院回数を増やすことはお勧めできません
    保険会社は、膨大な数の同じ症例を扱ってきました。
    不自然な通院は必ず目立ちます。過剰請求とされた治療費を自己負担するだけでなく、正当に受け取れたはずの賠償金まで失う危険があります

まとめ

保険金詐欺や過剰診療が疑われるのは、保険会社から見て、行動の不自然さ、不合理さが目立つ場合です。普通に病院に通院しているだけなら、通院期間が長くなったからといって、疑われることはありませんので、あまり過敏に心配する必要はありません。万一、保険会社から、そのような指摘を受けた場合は、交通事故に強い弁護士に相談されることをお勧めします。

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