保険会社が治療費打ち切りを一方的に通達してくる理由と対処法
この記事では、保険会社が治療費打ち切りを打診してくるケースや、その理由、被害者がとるべき対処法を紹介します。打ち切り…[続きを読む]
というように、症状固定については、交通事故の被害者が多くの疑問を抱いていらっしゃいます。
そこで今回は、追突事故でむち打ち症となった方など向けに、症状固定全般について解説いたします。
治療してもなかなか治らない場合、医師から「症状固定」と言われることがあります。
「症状固定」とは、それ以上、医師の治療を受けても症状が良くならない状態のことです。
「治癒」が、症状がなくなった状態を意味するのに対して、症状固定は、症状がなくなった状態を指すわけではありません。
長期的にみて自然治癒することが期待できないわけではありませんが、現在の治療技術では改善が期待できない状態と言えます。
症状固定は、治療を続けてもこれ以上は症状が良くならない状態を基準として、治療を担当した「医師」が判断することになります。
そして、医師から患者に症状固定が告げられ、同意するかどうかの判断を促されます。
症状固定日がいつになるか、判断する医師によって違いが生じることがあります。
その理由には、主に以下の3つが挙げられます。
こういった理由から、症状固定日については医師によって差が出ることがあります。
ただし、訴訟で損害賠償額が決められる場合、いつの時点を症状固定と認めるかは最終的に「裁判所が判断」します。
症状固定のタイミング・時期については、怪我の内容や程度によって異なります。
また、個々人の回復スピードにも差があるため、一概にどれくらいで症状固定ということはできません。
一般的な事故から症状固定までの期間は以下の通りです。
むちうち症(頸椎捻挫) | 3ヶ月~ |
---|---|
骨折 | 6ヶ月程度~ |
外貌醜状 | 数カ月~数年 |
高次機能障害 | 数カ月~数年 |
上記の通り、傷害のある部位や症状によっても大きく異なりますので、担当医師に「医学的にみて、治療に必要な日数はどの程度か」ということを事前に聞いておくとよいでしょう。
一般的な症状固定のタイミングよりも早く症状固定と判断されてしまうこともあるようです。
例えば、追突事故に巻き込まれ、むち打ち症で3ヶ月未満で症状固定を告げられるケースなどがありますが、この場合、後遺障害等級認定の際にデメリットとなることを覚えておく必要があります。
通常、一番低い等級である14級のむち打ち症でも後遺障害等級と認定されるには、最低6ヶ月程度の通院が必要だからです。
事故や症状の程度から明らかに医師の判断がおかしいと感じたら、躊躇せず弁護士に相談してみてください。
他の病院で治療を継続できるようにする、治療費を負担してもらえるようにするといった交渉を保険会社と行ってくれます。
症状固定の時期は、慰謝料を含む示談金の算定にも大きな意味を有しており、度々争いの原因となっています。
損害賠償は、症状固定日を境に「傷害部分」と「後遺障害部分」と2段階にわけることができ、実務上請求できる損害賠償の費目が症状固定前後で変わります。
症状固定後は、治療費・通院費といった費目も症状固定を境に請求できなくなります(もっとも、治療すること自体は可能です)。
つまり、加害者側の保険会社としては、症状固定日が早ければ早いほど、治療費、通院慰謝料、休業損害といった「賠償額を減額できる」ことになります。
そのため、保険会社は実際の「症状固定日より早いタイミングでの症状固定を主張」してくることがあり、症状固定日が争いの原因となるのです。
症状固定日で保険会社に足元をすくわれないためにも、頻度に気を付けた定期的な通院や治療の効果・症状を細かく記録した主治医のカルテなどが重要になってきます。
加害者の保険会社が、「治療費打ち切り」を打診してくることがあります。
保険会社が治療費を打ち切った場合、被害者の自己負担が大きくなり、治療の継続を諦めるケースが多く、その結果、治療の断念を症状固定の証拠として、加害者の保険会社に利用されてしまうことがあります。
もし、加害者の保険会社が治療費打ち切りを言ってきたら、1人で悩まずに是非弁護士に相談することをお勧めします。
なお、打ち切り後は、健康保険を利用して治療することも可能ですが、「被害者請求」と呼ばれる手続きで自賠責保険に治療費を請求したほうが善いでしょう。
それでは、医師に勝手に症状固定されたのではないかと感じる場合や、その判断に納得できない場合に、拒否することはできるのでしょうか?
納得できないときは同意せず、セカンドオピニオンを求めることをおすすめします。
セカンドオピニオンが、まだ症状固定には至っていないという結論であれば、転院して治療を継続しましょう。
ただし、転院は慎重に進めましょう。詳しくは、以下の関連記事をお読みください。
なお、セカンドオピニオンでも症状固定と診断され納得できれば、元の担当医に後遺障害診断書を書いてもらって、後遺障害等級申請を進めます。
症状固定と診断されても、自賠責で後遺障害認定をされなければ、後遺障害が残ったことにはなりません。
認定を受けることができさえすれば「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」といった損害費目の請求が可能になります。
後遺障害に対する賠償額については「後遺障害等級認定の等級」ごとに設定されており、どの等級を獲得できるかによって大きく賠償額が変わります。
例えば、むちうち症で12級または14級の後遺障害等級認定を受けた場合の後遺障害慰謝料は下表の通りです。
後遺障害等級 | 算定基準 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
14級 | 自賠責基準 | 32万円 |
弁護士基準 | 110万円 | |
12級 | 自賠責基準 | 94万円(※) |
弁護士基準 | 290万円 |
※ 2020年3月31日以前に発生した事故の場合は、93万円
詳しくは下記記事をご参照ください。
今回は、症状固定は誰が決めるか、また判断基準や、症状固定日の決め方などを解説して参りました。
症状固定日については争いが起こりやすいですが、基本的に早期の症状固定以外に症状固定のデメリットはありません。
適切な後遺障害認定を受けるためには、症状固定から示談までの流れを知っておく必要があります。
詳しくは以下の関連記事をご覧いただきたいと思います。
後遺障害申請・被害者請求について、また勝手に症状固定された気がする、どうしても医師の症状固定に納得できないといったケースについては、交通事故に強い弁護士にアドバイスをもらいましょう。