後遺障害とは?交通事故の後遺症が残った場合に知っておきたいこと
この記事では、後遺障害とは何か、後遺障害認定されたらどうなるか、メリットやデメリット、認定手続きの流れや注意点は何か…[続きを読む]
「後遺障害14級」は、後遺障害が認められるか否かの境界線にある等級です。
そのため、後遺障害認定の申請をする際に、注意が最も必要な等級でもあります。
後遺障害14級が認められるかどうかによって、受け取れる慰謝料/示談金の金額に大きな影響を及ぼします。
そこで今回は、SNSやYahoo!知恵袋でも話題になりがちな後遺障害14級の慰謝料や示談金の相場はいくらくらいか、逸失利益の計算事例、認定率、弁護士費用、また認定されない事態を回避するためには何をすべきか、認定されるにはどうすればいいか、通院日数と慰謝料との関係、認定のメリット、自賠責の後遺障害分の上限75万円などについて2021~2022年版としてご紹介致します。
目次
自賠責の後遺障害等級14級が認められる主な症状は、以下の通りです。
等級 | 症状 |
---|---|
14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
14級2号 | 3歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの |
14級3号 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(傷跡) |
14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(傷跡) |
14級6号 | 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
14級8号 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
例えば、むちうち症状は、首に痛みや痺れが残る「神経障害」が起こるため、上表の14級9号に認定される可能性があります。
また、首だけではなく「膝の周辺にしびれ」が残ってしまった場合や「握力の低下」が見られるなどの症状の場合も、後遺障害14級9号が認定される可能性があります。
後遺障害14級が認定された場合の慰謝料について見てまいりましょう。
後遺障害による精神的苦痛に対して後遺障害慰謝料の請求が認められます。金額相場は、下記の通りです。
後遺障害14級の後遺障害慰謝料の金額相場 | ||
---|---|---|
自賠責基準 | 任意保険基準(※) | 弁護士・裁判基準 |
32万円 | 40万円 | 110万円 |
※任意保険基準は、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載
上表を見て分かるとおり、自賠責基準と弁護士・裁判基準とでは、3倍以上の金額差があることがお分かりいただけます。
そのため、単に後遺障害慰謝料を請求するだけではなく、弁護士・裁判基準を用いて算定する必要があります。
弁護士・裁判基準とは、裁判例を基に策定された基準であり、本来受け取るべき慰謝料の基準となるべきものです。
これは後ほど解説する通り、弁護士に代わりに示談交渉をしてもらう必要があります。
14級の場合、自賠責保険では「後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益」などとの合計額の上限が、75万円と定められています。
そして、示談交渉や裁判で合意された金額が自賠責保険の上限の75万円を超えてしまう場合はもちろんあります。
だとしても、超えた金額分については加害者側の任意保険会社が負担してくれます(もちろん、加害者が任意保険に加入さえしていればの話ですが)
結局、示談交渉や裁判で、どれだけの損害賠償額を獲得することができるかにかかっていると言えるので、75万円という金額にこだわる必要はないでしょう。
では、実際に交通事故の後遺障害併合14級、また14級10号を裁判で認められた事例を見てみましょう。後遺障害慰謝料はどの程度まで認められるのでしょうか?裁判の事例を2つご紹介します。
裁判例1
東京地裁平成16年2月27日判決
交通事故の被害者は会社員男性(症状固定時32歳)。首、肩、両膝の痛みが残りましたが、自賠責保険が非該当としたため、異議申し立てを行い、3度目の異議申し立てで、頸椎と膝関節の神経症状で「併合14級」の後遺障害を認定されました。
裁判所は本件につき「加算事情が存在する」として、次の各事実を指摘しています。
こうして、通院慰謝料182万円に加え、後遺障害慰謝料250万円を認めました。
参考文献:交通事故民事裁判例集37巻1号239頁
裁判例2
東京地裁平成15年6月24日判決
交通事故の被害者は、プロサッカー選手のメキシコ国籍男性(事故時27歳)。
交通事故による捻挫、靱帯損傷で、寒冷時、運動時、長時間の起立時の右足関節痛が残りました。しかし、自賠責保険は既往症などを理由に事故との因果関係を否定して後遺障害と認めませんでした。
しかし、裁判所は後遺障害14級10号の後遺障害を認定したうえ、次の各事実を指摘しました。
こうして通院慰謝料44万円に加えて、後遺障害慰謝料250万円を認めました。
参考文献:交通事故民事裁判例集36巻3号865頁
この2つの裁判例で認められた後遺障害慰謝料は、いずれも「250万円」です。
つまり、弁護士基準の後遺障害慰謝料の相場110万円どころか、この額は、等級13級の相場180万円をも超える額が認められたことが分かります。
しかも、裁判例2では、自賠責保険が後遺障害を認定していません。
このように、慰謝料を増額できるか否かは、増額理由となる事実をすべて掘り起こし、主張・交渉できるかどうかにかかっています。
次に「後遺障害の逸失利益の計算方法」について、簡単に解説致します。 後遺障害等級が認定されれば、逸失利益も請求可能だからです。
後遺障害が残った場合、今まで通りに働くことができなくなり、仕事に支障が生じます。
もちろん、得られるはずの利益も得られなくなります。
そのため、後遺障害等級が認定されると、その等級に応じた「逸失利益」を請求できます。
交通事故の逸失利益の金額相場は、次の計算式によって求めることができます。
後遺障害14級の「労働能力喪失率」は5%で計算してください。実際に、次の事例を使って逸失利益を計算してみましょう。
また、「年収額」の詳細な定義や「労働能力喪失率」「ライプニッツ係数」などについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
*ライプニッツ係数については、国土交通省のサイトで確認可能です。国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」
事例
被害者の年齢・性別:52歳男性
被害者の年収:720万円
被害者の後遺障害等級:14級
720万円(年収)×5%(労働能力喪失率)× 11.938(年齢52歳のライプニッツ係数※)=429万7680円
※ 2020年3月31日以前に発生した事故については、10.380で計算
上述の事例の場合、被害者は、約430万円の逸失利益を受け取ることができます。
一方で、後遺障害認定で非該当となってしまったら、後遺障害慰謝料ばかりではなく、逸失利益も受け取ることができません。
また、主婦の方も逸失利益も請求できます。こちらについては別途ページをご参考ください。
「後遺障害14級の認定率は、他の等級に比べて極端に低い」と聞いたことがある人がいるかもしれませんが、これは本当でしょうか。
結論から申し上げると、2021年現在、後遺障害の認定率は公表されていません。
認定率自体は公表されてはおりませんが、認定件数は公表されています。
「損害保険料率算出機構」の公式サイトにて、自動車保険の概況が分かる資料が、毎年公開されています。
2021年に発表された資料*によると、後遺障害の認定は2019年は全体で「年間52,541件」行われたことが分かります。
そして、このうち58%の「30,675件」が後遺障害14級で認定されています。
また、系列別構成比だと「精神・神経症状での認定が42.6%」ということで、後遺障害認定全体から見ると、非常に認定数が多いことが分かります。
もちろん、構成比が多いことによって、14級の認定率が高いと類推できるわけではありません。
しかし、それでも年間で30000件以上の後遺障害14級の認定があるという事実から、適正な認定手続を行えば、後遺障害14級に認定される可能性があると言えるのではないでしょうか。
では、実際に適正な後遺障害14級の認定されるにはどうすればいいでしょう?また、適切な慰謝料/示談金を受け取るにはどうすればいいのでしょうか?
認定されるための効果的な対策・14級認定のメリットを享受するには、専門家である弁護士に依頼することが重要です。
弁護士に依頼すれば、後遺障害等級認定と慰謝料増額の可能性は飛躍的にアップするメリットがあります。その理由は、大きく分けて3つです。
弁護士・裁判基準の慰謝料は、自賠責基準や任意保険基準を大きく上回ることは、前述した通りです。
示談では、弁護士・裁判基準で交渉するとメリットが大きいです。
ただし、被害者自身が保険会社にそれを主張しても、保険会社は素直に受け入れてはくれません。
しかし、訴訟も辞さない弁護士に依頼すれば、保険会社も弁護士・裁判基準に基づく交渉を受け入れざるを得ません。
慰謝料相場を前述しましたが、被害者が実際に受け取れる金額は、事故態様などを考慮して決まるので、個々に違います。相場は、あくまで相場でしかありません。
弁護士に依頼した場合、事故と被害者、加害者をめぐる様々な事情のうち、慰謝料の増額理由となる「事案の特質」を見分けて、その事情を賠償金/示談金算出の際に組み入れることで、相場から更に増額できることがあります。
後遺症に関する部分以外の賠償金(例えば入通院慰謝料等)に関しても、通院日数や治療時の状況などを考慮して適切な交渉をしてくれるので、総額的な金額アップも見込めます。
むちうち症の場合、後遺障害と認定されるだけの症状が実態としてあったとしても、それを示す医療情報が十分にないため、後遺障害として認定されないケースが多数あります(※)。
被害者側の保険会社に後遺障害認定の手続きを任せてしまうと、どのような医療情報を提出したかさえ知ることができません。
そこを解決するには、後遺障害の申請を弁護士に依頼することです。弁護士に依頼すれば、より適切に医療情報を収集できるようになります。
また、仮に一度「非該当」という結果が出た場合でも、弁護士に「異議申し立て」を依頼することで、認定結果を覆せる場合があります。
こうした制度を利用することで、後遺障害等級が認定される確率が上昇します。その結果として、示談金/慰謝料のアップも期待できます。
後遺障害14級が認定されない確率を低くするためにも弁護士に相談しましょう。交通事故の弁護士費用については別途ページもご参考ください。
自分の事故のケースで、後遺障害14級の慰謝料相場を調べたい方は、弁護士基準の2021年版の慰謝料計算ツールをご利用ください。
通院日数・期間や後遺障害等級を入れるだけで、より詳しく自分の慰謝料相場を弁護士基準で計算することができます。
後遺障害14級の場合、後遺障害慰謝料の相場も自賠責基準で32万円、弁護士・裁判基準で110万円です。
後遺障害等級14級が認定されたら、「後遺症部分の損害」を相手方に請求できます。
後遺障害等級14級の自賠責基準で32万円であり、被害者請求により先取りできます。 そして、不足している損害額を相手方に請求することになります。
今回は、SNSやYahoo!知恵袋でも話題になりやすい2021年版の後遺障害14級に認定される症状や後遺障害慰謝料の相場、認定率、適正な等級の認定を受けるためにすべきこと、通院日数と慰謝料との関係や事例などについて解説しました。
後遺障害14級の場合は、後遺障害慰謝料や労働能力喪失率も決して高くはありませんが、認定を受けられた場合の示談金の総額は、認定されない非該当とは大きく違ってきます。
頼りになる弁護士を探してメリットを享受し、適正な等級認定を受け、適切な補償が受けられるようにしましょう。