公務員が交通違反・交通事故を起こした場合、失職するか?

公務員

公務員、特に教員や市役所職員、警察官などには国民全体の奉仕者としての使命があるため、一般の会社に勤める方よりも厳格な服務規律を守ることが求められています。

そのため、交通違反や交通事故を起こすと違反の重大さによっては停職や免職等の処分になることもあります。仕事中はもちろん、プライベートであっても重大な交通違反や交通事故については重い処分が科されることがあります。

この記事では、教員など公務員が赤切符・青切符をもらうような交通違反や物損事故・人身事故を起こしたときの処分、交通事故・交通違反のプライベートの事故報告義務などがあるか、ばれるか、出世にひびくのか、クビになることあるか、事故報告しないのでもいいのかについて解説いたします。

教員など公務員が交通違反・交通事故を起こすとどうなる?

懲戒処分の対象となる場合がある

教員など公務員の交通違反、交通事故には厳しい目が向けられています。それが飲酒運転など重大な違反行為であればなおさらです。

2006年には福岡市東区で、当時福岡市の職員だった男性が飲酒運転により乗用車に追突し、幼い子ども3名が死亡する「福岡海の中道大橋飲酒運転事故」が発生しました。福岡市はこの職員を懲戒免職処分とし、職員は失職しました。

国家公務員法・地方公務員法では

国家公務員法や地方公務員法には

「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」

には懲戒処分の対象になるとされています

参考「懲戒処分について」(総務省)

非行には、暴行・けんかや痴漢行為のほか「飲酒運転、交通事故、交通違反」も含まれるとされています。

処分の基準

交通事故を起こしたときの処分の基準については、教員など公務員の種類(国家公務員か地方公務員か等)によって異なります。

地方公務員については「交通事故を起こした職員に対する懲戒処分等の基準」という訓令で基準が定められています。

この記事ではこの訓令の基準について解説いたします。

ただし、同じ地方公務員でも自治体によって独自の基準が設けられている場合がありますのでご注意ください。

公務員は物損事故など報告しない?プライベートでも報告義務ある?

公務員は報告義務が科されていることが多い?

公務員が軽微なプレイベートの事故や違反を起こしてしまった場合、それを職場の上司などに報告する義務があるのでしょうか。

多くの市区町村ではプライベートの物損事故、人身事故や交通違反を起こしたときに、基本的には報告義務を科しています。

とはいえ全ての交通事故や交通違反を報告しなければいけないわけではなく、プライベートの「重大な事故や違反にのみ」報告義務を科している場合がほとんどです。

報告義務など含めて、自分が所属する自治体の指針や規定をよく確認するようにしましょう。

公務員は報告しないと、後でばれる?出世など問題になるか?

「プライベートの大した事故だから報告しないでもOK、ばれないのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

プライベートの事故が、ばれるかばれないかはケースバイケースとしか言いようがないですが、報告義務を怠ったことがばれたときに、重い処罰を科せられる可能性がありますし、出世にひびくこともあります。

プライベートの事故を報告しないではなく、指針に従った方が賢明でしょう。

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人身事故などで処分になる?その種類

次に青切符などのレベルを超えて「人身事故」などを起こしたときに科される処分の種類について、クビになるのかなど解説いたします。

免職処分|失職・クビ

免職処分とは、一方的に公務員の職を剥奪される処分をいい、最も重い処分となります。

停職処分

停職処分とは公務員としての身分は維持されたまま、一定の期間職務に就くことができなくなる処分です。

その間の給与は支給されません。

減給処分

減給処分とは、労働者が本来受け取るべき賃金の額から一方的に一定額を差し引く処分をいいます。

いくらでも差し引けるわけではなく、1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、数件の懲戒事案について減給処分を科す場合、その総額が一賃金支払い期において現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えてはならないとされています。

戒告処分・訓告処分

戒告処分とは、本人の将来を戒める旨の申し渡しをする処分のことをいいます。「今後同じことがないように気を付けるように」という注意がなされるだけで、給与等に不利益が生じるものではありません。

訓告処分とは、戒告よりも軽い処分とされています。戒告処分は地方公務員法上の懲戒処分の一種ですが、訓告処分は懲戒処分には当たりません。

交通違反の態様と処分の内容

続いて、どのような違反をするとどの処分が科されるのかご説明します。

飲酒運転|酒気帯び運転・酒酔い運転

まずはアルコールを摂取して車を運転する飲酒運転です。重大な事故に繋がりかねない飲酒運転には重い処分が定められています。

飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類があります。酒酔い運転とは酒に酔った状態で運転が困難だと思われる状態で運転をすることをいい、酒気帯び運転とは呼気中アルコール濃度が1リットルあたり0.15mg以上含まれる状態で運転することをいいます。

酒酔い運転をすると、人身事故や物損事故の場合のみならず、自損事故のみ・無損傷の場合であっても免職処分を受けます。

酒気帯び運転の場合は、人身事故や物損事故の場合は免職処分(クビ)となりますが、自損のみや無損傷の場合には停職処分に留まります。

なお、飲酒運転をした場合の点数や罰金やその後の流れについては、下記の記事が詳しいですので、ご参照ください。

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幇助・同乗の場合は?

また、飲酒運転をすることを知りながら酒を提供したり酒を勧めた場合や、飲酒運転に同乗した場合などもあります。

その場合、運転者が人身事故を起こし相手方が死亡するか重傷を負った場合などは、免職処分となります。それ以外の場合は停職処分となります。

無免許運転

無免許運転は、厳しい処分が定められており、人身事故、物損事故、自損のみ、無損傷のいずれの場合であっても免職処分でクビでしょう。

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ひき逃げ(人身事故)

ひき逃げとは、人身事故を起こして道路交通法上の義務を果たさずに現場から逃走することをいいます。

地方公務員がひき逃げを起こした場合、

・相手方が死亡するか重傷を負った場合は免職処分
・相手方が軽傷を負った場合や物損事故の場合には停職処分

となります。

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当て逃げ(物損事故)

あて逃げとは、物損事故を起こしてそのまま逃走する行為をいいます。地方公務員があて逃げをした場合、

・それが「重過失」によるものであれば停職処分
・それ以外の場合は減給処分

となります。

重過失とは、結果の予見が極めて容易な場合や、著しい注意義務違反のための結果を予見・回避しなかった場合をいいます。

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人身事故の場合

運転中に人に怪我をさせてしまった場合、つまり人身事故を犯すとどうなるのでしょうか。

この場合、重過失によるものか、そうでないかによって処分が異なります。

重過失の場合

人身事故の場合、交通事故や交通違反により「相手方が死亡するか重傷を負った場合」には停職処分となります。

「相手方が軽傷を負った場合」や「物損事故で相手方の財産に著しい損害」を与えた場合には減給処分となります。

物的損害で上記に当てはまらない場合や、自損のみの場合、人身事故でも物損事故でもなく違反が発覚しただけの場合には戒告処分となります。

重過失以外の場合

人身事故で重過失以外の場合は、「相手方が死亡した場合は停職処分、重傷を負った場合」には減給処分となります。

人身事故で相手方が軽傷を負った場合や、物損事故で相手方の財産に著しい損害を与えた場合には戒告処分となります。

物的損害で上記に当てはまらない場合や、自損のみの場合、人身事故でも物損事故でもなく違反が発覚しただけの場合には訓告処分となります。

なお、人身事故の点数・罰金等については下記の記事が詳しいのでご参照ください。

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クビ!公務員としての立場を失う場合|ポイントは禁固刑

国家公務員法や地方公務員法には、

「禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」

については公務員である者は失職するという規定があります。

つまり、人身事故などにより罰金刑ではなく「禁固刑以上の刑」が確定すると自動的に公務員としての立場を失うことになっているのです。

赤切符もしくは青切符を切られた場合

禁固刑以上の刑罰が科される可能性がある交通違反は、いわゆる「赤キップ」の場合のみです。

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青キップとは、一時停止違反・駐車違反・30km/h未満(高速道路では40km/h未満)の速度違反など、比較的軽い違反に対して交付されるものです。

一方の赤キップは、30km/h以上(高速道路では40km/h以上)の速度違反、無免許運転、轢逃げ(救護義務違反)など、比較的重い違反に対して交付されます。違反点数でいえば6点以上の違反です。

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「赤キップ」を切られた場合は罰金刑になることが多く、殆どの場合は禁固刑になることはないのですが、悪質な飲酒運転、ひき逃げ、人身事故等を起こした場合は大いに有り得るので十分に注意をしてください。

最後に

公務員が赤キップ、青切符などの交通違反や人身事故・物損事故を起こした場合の処分、プライベートの報告義務などについてお分かりいただけたでしょうか。

教員や市役所職員、警察官が交通違反や交通事故により失職するのは、飲酒運転や無免許運転など重大な違反を犯した場合に限られます。これらの違反は絶対しないようにしましょう。

ひき逃げや当て逃げの場合でも、相手方の損害や過失の程度によっては停職処分など重い不利益が科される場合があります。

国民全体の奉仕者という公務員の使命を忘れず、重大な交通違反は絶対にしないように心がけるとともに、万が一違反をしてしまった場合には適切な措置をとるようにしましょう。

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