納得いかない!交通違反で検挙されたときの不服申し立ての方法

信号無視、スピード違反、運転中の携帯電話の使用などの交通違反により警察官に検挙されてしまったが、事実と異なっており納得がいかない!!

そのような不満を感じる方は少なくないでしょう。実際、ドライブレコーダーによる映像などの客観的な証拠がなくても警察官が交通違反の現場を見たと主張すれば交通違反が認定されてしまうのが現実です。

たとえスピード違反のような比較的軽微な交通違反であっても、トラックやタクシーの運転手など仕事で車を運転している方にとっては交通違反で検挙されることは生活の糧を失うことにも繋がりかねない重大な事態です。

また、そのような仕事に就いている方でなくても、「交通違反による処分に納得がいかず、何とかして不服を申し立てたい」と感じる方は多いのではないでしょうか。

交通違反で反則金の納付を命じられたり違反点数を加算されてしまったときにはどのようにして不服を訴えることができるのでしょうか。

この記事では交通違反の不服申立ての方法について解説いたします。

客観的な証拠がある場合

警察署に直接不服申し立てを行う

交通違反で検挙された方が不服を感じるケースとしては、たとえば次のようなものがあります。

  • 「赤信号無視で検挙されたが、実際には黄色信号だった。」
  • 「一時停止違反で検挙されたが、実際には停止線で完全に停止していた。」
  • 「携帯電話で通話をしながら運転していたとして検挙されてが、実際にはハンズフリーで通話していた。」
  • 「スピード違反で検挙されたが、実際には制限速度内の速度で走行していた。」

このようなケースにおいて、自分の車に設置してあったドライブレコーダー、あるいは後続車のドライブレコーダーや現場周辺の防犯カメラなどに実際の違反の様子が記録されていることがあります。

また同乗者や後続車のドライバー、周囲の歩行者などが現場を目撃していることもあります。そのような客観的な証拠を提出して警察官が見た交通違反行為が誤りだったという事実を証明できれば、処分を取り消してもらうことができる可能性があります。

具体的には交通違反による取り締まりを行った警察署に対して証拠を提出したり目撃者による目撃情報を文書や口頭で伝え、警察官が目撃した交通違反が事実ではなかったことを主張することになります。

客観的な証拠がなかったら?

もっとも、実際には交通違反がなかったことを示すための客観的な証拠がないことのほうが多いでしょう。そのような場合はどのようにして不服申し立てを行えばよいのでしょうか。

不服申し立ての手段はケースによって異なります。

反則金の納付を求められた場合

反則金とは

比較的軽微な交通違反では違反の内容に応じて反則金の納付を求められます。

たとえば、普通車の場合、15km未満のスピード違反や赤信号無視では9,000円、15km以上20km未満のスピード違反では12,000円の反則金が科されます。

手続の流れは次のとおりです。まず交通違反をしたとして取り締まりを受けると、警察から交通反則告知書(いわゆる青切符)にサインするように求められます。

これにサインをすると、しばらくしてから自宅に反則金の納付書が送付されます。この反則金を納めれば罰金や禁固などの刑事処分が科されることはありません。このような手続を交通反則通告制度といいます。

では、このような場合に交通違反があったという事実を争うためにはどうすればよいのでしょうか。

反則金の納付命令を争う方法

交通反則通告制度の適用を受けるかどうかは違反をした人の自由ということになっています。

そこで不服がある場合には交通反則告知書へのサインを拒否したり、納付書が届いても反則金を納めないといった方法があります。

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ただし、交通反則通告制度の適用を拒否すると刑事手続に移行して警察官や検察官による捜査が行われることになります。

取り調べの場で警察官や検察官に自分の言い分を訴え、その結果、検察官が「交通違反の事実はなかった」あるいは「本当に交通違反があったかどうかわからない」と判断すれば反則金や罰金を納める必要はなくなります。

検察官が起訴すべきと判断した場合には裁判手続に移行しますので、裁判所で裁判官に自分の意見を主張することができます。

もっとも、刑事手続において裁判所が交通違反の事実が認定すれば罰金や禁固などの刑事処分が科されて前科が残ってしまうことになりますので、ある意味ではリスキーな方法だと言えるでしょう。

交通反則通告制度の適用を受け入れて反則金を支払い行政処分として終わらせるか、刑事処分を受けるリスクを負って自分の言い分を訴えるかはよく検討する必要があるでしょう。

弁護士に依頼する?

以上の手続においては弁護士に依頼して自分の代わりに意見を述べてもらうこともできます。

法律と裁判手続の専門家である弁護士に代理人として意見を述べてもらうことによるメリットは大きいですが、当然ながら費用もかかりますので、ご自身で対処するか弁護士に任せるかはよく検討すべきでしょう。

違反点数を加算された場合

違反点数とは

交通違反をすると違反の内容に応じて違反点数が加算されます。たとえば15km未満のスピード違反であれば1点、赤信号無視であれば2点が加算されます。

交通違反を繰り返すと違反点数が積み重なり、一定の点数を超えると免許停止(いわゆる免停)や免許取り消しなどの行政処分が科されます。

よく「交通違反で減点された」といわれることがありますが、実際にはこのように点数が加算されていく方式になっています。

では、違反点数の加算について不服を訴えたいときにはどうすればよいのでしょうか。

違反点数を争う方法

違反点数が加算されたことにより免許停止や免許取り消しなどの処分を受けたり、免許更新の際に優良運転者(いわゆるゴールド免許)でなくなってしまったなどの具体的な不利益が生じたときには、行政に対して不服申し立てを行ったり、裁判所に対して取消訴訟を提起することによって争うことができます。

不服申し立てや取消訴訟の手続きの中で自分の言い分が認められれば、処分は取り消され、不利益を受けることはなくなります。

残念ながら、単に違反点数が加算されただけでそれによる不利益が何もない場合には取消訴訟を提起することはできません。

これは取消訴訟を提起するためには法律上「訴えの利益」が必要となるとされており、実際の不利益が生じていなければ訴訟による行政処分の取り消しはできないとされているからです。

また、取消訴訟は交通違反による処分が行われたことを知った日から6か月以内、処分の日から1年以内に訴えを提起する必要があり、この期間を経過すると訴えを提起することはできなくなります。

弁護士に依頼する?

行政に対する不服申し立てや取消訴訟の提起をするためには自分の主張を法律に組み立てる必要があり、専門的な知識がなければ裁判所によって主張を取り下げられてしまったり、訴えが却下されて門前払いされてしまうことがあります。

したがって、これらの手続を利用するためには法律の専門家である弁護士に依頼することが不可欠であると言えるでしょう。

そのためには弁護士に費用を支払わなければいけませんし、取消訴訟を提起するときには裁判所に手数料を支払う必要もあります。処分を取り消すことができる可能性の大きさや取り消すことによるメリットなどを考慮したうえでこれらの手続を利用するか検討するようにしましょう。

その他よくある質問

免許停止や免許取り消しの処分が行われる場合は?

交通違反を繰り返したり、重大な交通違反を犯したときには、免許停止や免許取り消しの処分を受けることになります。

免許停止とは運転免許の効力が一時的に無効となることをいい、免許取り消しとは運転免許そのものが取り上げられてしまうことをいいます。

免許停止や免許取り消しの対象となる違反をしたときには、「意見の聴取」と呼ばれる手続が行われます。

これは処分が行われる前に公安委員会に対して自分の言い分を述べることができる手続です。意見の聴取で言い分が認められると、処分が軽減されたり、処分そのものが取り消されることがあります。

意見の聴取では口頭で自分の主張を述べることができるだけでなく、自分の意見を書面にしたり、自分に有利な証拠を資料として提出することができます。

また、弁護士などに同席してもらって自分の意見を代わりに述べてもらうこともできます。

不服申し立てが認められることはどれだけある?

交通違反の不服申し立ての手段について解説しましたが、このような手続によって言い分が認められることはどれだけあるのでしょうか。

現実には、警察官が交通違反の現場を目撃したと言っている以上、これを覆すことは簡単なことではありません。

単に「違反などしていない」と不満を明らかにするだけでは処分の取り消しが認められることはありません。

不服申し立てを認めてもらうためには警察官が目撃したと言っている内容を覆すような客観的な証拠を新たに提出するなど行政側の主張を根本から覆す必要があるのです。

最後に

交通違反の不服申し立ての方法についてご理解いただけたでしょうか。

交通違反の不服申し立てを行うためには手間や費用がかかりますし、そのような手間や費用をかけたからといって必ず不服申し立てが認められるわけではありません。

この記事で説明したような方法で不服申し立てを行うのか、反則金の納付や違反点数の加算を受け入れるかは慎重に検討した方がよいでしょう。

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