交通事故の手足の傷跡で後遺障害14級認定される条件と注意点
交通事故による外傷や手術痕が残ってしまった場合には、醜状障害という後遺障害等級認定を受けることができる可能性があります。
醜状障害は、頭部、顔面、頚部だけでなく、手足の傷跡などについても後遺障害等級認定の対象になります。
ただし、傷跡の位置や程度によっては後遺障害等級認定の対象外になるものもありますので、醜状障害の認定基準をしっかりと押さえておくことが大切です。
今回は、交通事故による手足の傷跡を理由に後遺障害等級認定を受ける条件や14級、注意点についてわかりやすく解説します。
目次
手足の傷跡で後遺障害等級14級が認定される条件
手足に傷跡が残った場合、後遺障害等級の認定を受けることができるのでしょうか。
また、その場合にはどのような条件で後遺障害等級認定が受けられるのでしょうか。
(1)手足の醜状障害とは
醜状障害とは、交通事故により外貌(頭部、顔面、頚部)またはそれ以後の部分(上肢、下肢など)に傷跡が生じ、症状固定後も傷跡が治らず残ってしまう障害をいいます。
醜状障害というと頭部、顔面、頚部などの外貌が対象だと考える方も多いですが、上肢や下肢も対象に含まれますので、手足の傷跡であっても後遺障害等級認定の対象になります。
(2)手足の醜状障害の認定を受けるための条件
手足の傷跡も後遺障害等級認定の対象に含まれますが、後遺障害等級14級の認定を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
①上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(14級4号)
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとが残った場合には、後遺障害等級14級4号が認定されます。
「上肢の露出面」とは、肩関節から指先までの部分を指します。
労災基準では、肘関節以下を指しますので、労災基準よりも自賠責基準の方が広範囲になっています。
「てのひらの大きさ」とは、手の全面から指を除いた部分を指します。醜状障害の測定に使用する「てのひら」は、被害者本人の手を使用します。
そのため、ご自身のてのひらを実際の傷跡に当ててみることで、後遺障害等級認定の条件を満たすかどうかをある程度判断することができるでしょう。
②下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの(14級5号)
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとが残った場合には、後遺障害等級14級5号が認定されます。
「下肢の露出面」とは、大腿部と足の付け根(股関節)から足の背までの部分をいいます。労災基準では、膝関節以下を指しますので、上肢と同様に労災基準よりも自賠責基準の方が広い範囲になっています。
なお、てのひら大の測定方法は、上肢と同様です。
手足の傷跡で13級以上の等級になることはあるのか?
上肢または下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとが残った場合には、後遺障害等級14級が認定されます。
しかし、交通事故の怪我の程度によっては、てのひらよりも大きい瘢痕が残ってしまうことがあります。このような傷跡が残ってしまった場合には、以下の要件を満たせば、後遺障害等級12級相当の認定を受けることができます。
- 上肢の露出面にてのひらの大きさの3倍程度以上の醜いあとを残すもの
- 下肢の露出面にてのひらの大きさの3倍程度以上の醜いあとを残すもの
「露出面」および「てのひらの大きさ」の考え方は、14級の後遺障害等級と同様です。
なお、複数の傷跡がある場合、それらを合算した面積がてのひらの大きさの3倍程度以上になれば、後遺障害等級12級相当の認定を受けることができます。ただし、複数の傷跡の面積を合算するには、てのひら大以上の傷跡が1か所以上存在する必要があります。
このような傷跡がない場合には、傷跡の面積の合算によりてのひらの3倍程度以上となったとしても、後遺障害等級12級相当の認定は受けられません。
手足の醜状障害の認定にあたっての注意点
手足の醜状障害を理由に後遺障害等級認定を受ける場合には、以下の点に注意が必要です。
(1)後遺障害等級認定のポイント
手足の傷跡のような醜状障害は、症状固定後も時間の経過により徐々に傷跡が小さくなったり、薄くなるなどして目立たなくなることがあります。
後遺障害等級認定は、症状固定と診断された後であればいつでも申請できますが、あまりにも時間が経ってからでは、本来認定されたはずの等級よりも低い等級になるおそれがあります。そのため、醜状障害で後遺障害等級認定を行う場合には、できる限り早いタイミングで行うことが大切です。
また、醜状障害の等級審査では、写真や後遺障害診断書などの書面審査だけでなく、調査事務所の担当者との面接調査が行われることがあります。醜状障害は、実際に目でみなければ傷の程度などがわかりずらいこともありますので、必ず面接調査を受けることが大切です。調査事務所から面接調査の省略を打診されたとしても、それに応じずに面接調査をしっかりと受けるようにしましょう。
(2)醜状障害と逸失利益との関係
後遺障害等級認定を受けることができれば、後遺障害逸失利益を請求することができます。たとえば、後遺障害等級14級であれば5%、12級であれば14%の労働能力が制限されると考えられていますので、労働能力喪失率に応じた逸失利益を請求できます。
しかし、醜状障害は、直ちに労働能力に制限が生じる障害とはいえません。そのため、醜状障害で後遺障害等級認定を受けたとしても、保険会社からは、「醜状障害では逸失利益は生じない」として、逸失利益の支払いを否定されるケースが多いです。
醜状障害を理由とする逸失利益を認めてもらうためには、醜状障害により労働能力が制限されていることを具体的に主張立証していくことが大切です。逸失利益が認められるかどうかにより、損害額が大きく変わってきますので、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
(3)醜状障害で男女差は生じない
以前は、醜状障害の後遺障害等級は、男女で分けられており、同程度の醜状でも男性よりも女性の方が重い等級が認定されていました。これは、醜状障害が生じた場合の精神的苦痛が男性よりも女性の方が大きいと考えられていたからです。
しかし、このように男女で異なる取り扱いをすることには、合理的な理由がないとする裁判所の判断が出たことを受け、現在では、男女で醜状障害の等級に差はありません。
まとめ
交通事故により手足に傷跡が残った場合には、傷跡の部位および範囲に応じて、後遺障害等級14級または12級が認定される可能性があります。
pもっとも、後遺障害等級認定を受けたとしても、逸失利益が認められるかどうかは別問題になりますので、適切な賠償金の支払いを受けるためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。