椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されるには?14級は?徹底解説!

この記事では、交通事故における、椎間板ヘルニアの後遺障害慰謝料、また椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されるには、14級はどうすれば良いかなどについて解説します。

  • 交通事故で外傷性ヘルニアになったら、慰謝料はいくらもらえるの?
  • 事故による椎間板ヘルニアが治らない。後遺障害認定したいけど、12級に認定されるにはどうするの?

交通事故などで腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアを発症した場合、治療が効果を上げない場合には、後遺症の程度に応じて損害賠償を請求することがあります。

ただし、症状が生じたからといって全てが損害賠償の対象になるわけではありません。損害賠償を請求できるためには一定の条件があります。特に、椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されるにはどのような条件が必要なのか、14級はどうなのか、以下で説明します。

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頚椎・腰椎の「椎間板ヘルニア」とは

背中の中央を縦にまっすぐ走っている、身体を支えている1本の骨を「脊椎(せきつい)」と言います。

脊椎(せきつい)は24個の小さな骨が連なって構成されていることはよく知られていますが、その骨と骨をつなぎ合わせるクッションの役目を果たすのが「椎間板(ついかんばん)」です。

これがもともとあった場所から飛び出してしまうのを「ヘルニア」と呼びます。

椎間板ヘルニアは、追突事故などで椎間板が変形してしまい、それが神経に圧迫を加えることで痛みやしびれなどの症状が生じます。

椎間板ヘルニア

特に交通事故で発生しやすい外傷性のヘルニアは

  • 頚椎椎間板ヘルニア
  • 腰椎椎間板ヘルニア

です。

腰椎椎間板ヘルニアの原因

交通事故に巻き込まれた際に、腰を大きくひねることがあります。

この際に「腰の軟骨」に無理な圧力がかかることによって、腰椎椎間板ヘルニアになり、腰痛や足のしびれのような症状が見られるようになります。

頚椎椎間板ヘルニアは追突事故で首に症状が出る

追突事故の場合などで、首が大きく前後に揺さぶられる場合があります。

頸椎椎間板ヘルニアは、頚部(首の部分)に圧力が加わることによって、椎間板が飛び出して神経を圧迫することで起こります。

椎間板ヘルニアは後遺症が残る|後遺障害12級・14級の認定

後遺障害12級に認定されるには、条件を満たすことが必要です。

首、肩、腕の痛みやしびれの症状が出て、治療をしたけれど症状が残ってしまったという場合、12級13号または14級9号の後遺障害等級に該当する可能性があります。

それぞれの等級の違いを簡単に言うと「医学的に証明できるかどうか」という点になります。

12級と14級の違いは医学的に証明できるかどうか

では、腰椎・頚椎の椎間板ヘルニアによる痛み・しびれが残ったときに、椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されるには、適正な後遺障害等級が認定されるためには、どのような条件が必要か確認しましょう。

椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されるには

治療費の打ち切りを回避する

そもそも保険会社によって治療中に治療費を打ち切られると、後遺障害認定自体が困難になります。

必ず、治療費打ち切りに強い弁護士に相談をしましょう。

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MRI・レントゲンで異常なしだと認定は難しい

後遺障害12級に認定されるにはどうすれば良いのでしょう。

例えば、先述した「医学的に証明できる」とは、言い換えると「他覚的所見」があることです。

他覚的所見とは、医師が医学的な知識をもって症状の存在を認識したという意味です。

つまり、具体的に言うとレントゲン、CT、MRIなどの画像診断で異常を確認できること(画像所見)を意味しており、保険会社は、画像上、異常が認められない場合「後遺障害12級には該当しない」などといったり、事故との因果関係がないと主張することがあります。

しかし、画像上は明白な異常がなくても、筋力検査、知覚検査、反射検査といった、医師が実施する神経障害を確認するための検査(神経学的検査)によって、症状の存在を医学的に判断できれば、他覚所見と言えます*。

*これを神経学的所見といいます。

他方、画像で神経の圧迫が認められても、圧迫されている神経が支配しているはずの身体領域には神経学的な異常がないとか、別の神経が支配しているはずの身体領域に神経学的な異常が生じているという場合は、画像上の所見と神経学的異常が整合しておらず、医学的な証明ができていないことになり12級に認定はされません(※)。

だからこそ、裁判所では、神経学的検査を含めた医学的な所見を総合的に勘案し、後遺障害の判断をするのです。

※「後遺障害入門 認定から訴訟まで」弁護士小松初男外編 青林書院発行170頁以下・「後遺症害等級認定と裁判実務」弁護士高野真人編著 新日本法規243頁以下

後遺障害12級の認定を受けるには画像所見が重要

ただし、そうは言っても、神経学的所見だけで後遺障害12級の認定を受けることは難しいと言わざるを得ません。

自賠責保険は書類審査によって大量の案件を公平に審査する必要があるため、画像の存在を特に重視していることには変わりないからです。

つまり、自賠責保険で椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されるには次のとおりにまとめることができます。

  • 画像所見があること
  • 画像所見と他の神経学的所見が整合すること

頚椎椎間板ヘルニアで後遺障害12級の認定を得るためには、担当医師に依頼して、必ず画像撮影をすること、神経学的諸検査を実施してもらうこと、画像と整合する検査結果を後遺障害診断書に詳細に記載してもらうことが必要です。

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後遺障害14級に等級認定される条件

自覚症状だけでも認定される可能性あり

後遺障害14級に認定されるにはどうすれば良いのでしょう。

椎間板ヘルニアで後遺障害12級に認定されなかった場合、14級になる可能性があります。

この場合、自覚症状しかなくとも、医学的に障害の存在が「説明可能」であれば認定を受けることができます。

医学的に説明可能といえるためには、治療の経過から症状に「連続性」「一貫性」が認められることが必要です。

交通事故の障害は、事故後に発症した時点が最も症状が重く、治療を進めるにしたがって症状が軽くなってゆくことが通常です。

したがって、この普通の経過とは異なった治療の経過、症状の経過は、医学的に説明ができない症状、故意に誇張した自覚症状と判断される可能性があります。

問題となるのは症状の「連続性、一貫性」

医学的に説明ができない症状とは例えば、次のようなケースです。

  • 追突事故の後、相当期間を経過してから、病院を初受診した
  • 治療の途中で、症状が悪化した
  • 診療の途中から、当初はなかった新たな症状が現れた
  • 治療に中断期間があり、中断してから再度治療を始めた

これらのケースは、いずれも上記の通常の場合とは違う経過をたどっており、症状の経過に連続性、一貫性がないとされます。

もちろん、そのような通常と異なる事態となった「合理的な理由(※)」があるなら問題はありません。しかし、合理的な理由があると判断されなければ、現時点で痛みやしびれが存在していたとしても、医学的には説明がつかないと評価され「非該当」とされます。

※「合理的な理由」の例としては、事故直後から、痛みを自覚していたが、余人に代えがたい重大な仕事のために初診が遅れた場合。また、事故によりもっと重大な傷害(骨折や臓器損傷など)が生じ、頚椎椎間板ヘルニアの診療は後回しになった場合など。

したがって、頚椎椎間板ヘルニアで14級の認定を得るためには、事故から時間を置かずに診察を受けて、定期的に通院することが必要です。

また、後遺障害診断書の記載内容も重要なポイントとなります。

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椎間板ヘルニアの示談金の計算方法

交通事故で椎間板ヘルニアになった場合に請求することができる損害賠償は、医師に「症状固定」と診断される前後で変わります。

交通事故の損害賠償(傷害部分と後遺障害部分)

①傷害部分の主な2つの請求項目

事故発生から症状固定までは、入通院慰謝料や休業損害などを請求をすることが可能です。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、入院や通院によって受けた精神的・肉体的な損害に対する賠償です。

自賠責保険の場合、以下の計算式で算定することができます。

  • 「実通院日数 × 2」と「総治療期間」を計算する
  • 上記いずれか少ない方の期間 × 4,300円(※)= 入通院慰謝料

※ 2020年3月31日以前に発生した事故については、4,200円で計算

なお、上記はあくまで自賠責保険の基準での計算方法です。弁護士・裁判基準の場合はさらに高額になります。

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休業損害

休業損害とは、交通事故の怪我で仕事ができなかったために発生した減収分の補填です。

休業損害は、以下の計算式を用いて求めます。

1日当たりの基礎収入 × 休業日数

自賠責基準の場合、「1日当たりの基礎収入」は1日6,100円*で計算されます。

*2020年3月31日以前に発生した事故については、5,700円

ただし、実収入がそれを超えることを証明できる場合には、19,000円を限度として、実収入を基準にすることが可能です。

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②後遺障害部分の主な2つの請求項目

症状固定後に後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益の請求が認められます。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、交通事故の後遺障害による精神的な苦痛に対する賠償です。

後遺障害12級と14級の後遺障害慰謝料は、以下の通りです。

等級 後遺障害慰謝料 労働能力喪失率
自賠責基準 任意保険基準(※) 弁護士基準
12級 94万円 100万円 290万円 14%
14級 32万円 40万円 110万円 5%

※任意保険基準については、一般に公開されていないので、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載しています。

つまり後遺障害12級と14級で金額に大きな差があることが分かります。

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後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害のために得ることができなくなった将来の収入です。後遺障害によって働く力が失われたと考え、それに相当する収入を損害と評価します。働く力が失われた割合を労働能力喪失率といい、後遺障害等級ごとに喪失率が定められています。

後遺障害の逸失利益は、以下の計算方法で求めることができます。

逸失利益=年収額×労働能力喪失率 × 被害者の年齢に応じたライプニッツ係数

「就労年数に応じたライプニッツ係数」の一覧表は、以下の国土交通省のサイトを参照ください。

参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表

上記の計算式、労働能力喪失率、後遺障害慰謝料の弁護士基準を使って以下の事例で後遺障害の賠償額を計算してみましょう。

被害者

年齢:35歳
年収:600万円
被害者のライプニッツ係数:20.389(※)

逸失利益
600万円×14%×20.389=1712万6760円(A)


後遺障害慰謝料
290万円(B)

後遺障害の賠償額
(A)+(B)=2002万6760円

*2020年3月31日以前に発生した事故については、15.803で計算。

これが後遺障害の賠償額となります。

同じ被害者が同じ条件で14級の認定を受けることができた場合の後遺障害の賠償額は、以下の通りです。

逸失利益
600万円×5%×20.389=611万6700円(A)


後遺障害慰謝料
32万円(B)


後遺障害の賠償額
(A)+(B)=643万6700‬円

12級の認定と14級の認定では、これだけの違いが生じます。

気になる方は、以下の関連記事でご自分の慰謝料をシミュレーションしてみてください。

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