下肢の関節機能障害|後遺障害等級と可動域制限について解説
後遺障害の可動域制限とは 交通事故に巻き込まれた際、ケガをした関節が通常の関節と比べて曲がりにくくなる状態が生じるこ…[続きを読む]
交通事故で手や足の指を負傷した場合、治療やリハビリを続けても、事故前に比べて指が曲がりにくくなってしまうケース、またまったく曲がらないケースもあります。
交通事故のケガが原因で指が曲がりにくくなったり曲がらない場合、後遺障害等級の認定を申請しましょう。認定される等級に応じて、加害者に後遺障害慰謝料と逸失利益の損害賠償を請求できます。
今回は、交通事故による指の後遺症について、認定される後遺障害等級・後遺障害慰謝料・逸失利益などを解説します。
目次
交通事故によって、手や足の指に負ったケガが完治しないケースがあります。
この場合、「用廃」などの状態に至った場合、機能障害が生じており、後遺障害等級の認定を受けられます。
他にも指の後遺障害の場合、神経障害もありますが、今回は割愛します。
後遺障害等級認定の対象となる手や指の「用廃」とは、以下のいずれかに該当する状態を意味します。
指先の爪部分の骨を半分以上失った場合は、「用廃」に該当します。
なお、親指の場合は「指節間関節」、その他の手指の場合は「近位指節間関節」以上を失った場合に、「手指を失った」ものとみなされます。
ここで言う「著しい運動障害」とは、可動域が正常な側の「2分の1以下」に制限されている状態をいいます。
親指の場合は爪部分の骨、その他の指の場合は第1関節以上を失った場合、「用廃」に該当します。
なお、足指を根元から全部失った場合は「足指を失った」ものとみなされ、後遺障害等級が繰り上がります。
「著しい運動障害」とは、可動域が正常な側の「2分の1以下に制限」されている状態をいいます。
なお手指については、「用廃」のほか、片手のおや指以外の4本につき、遠位指節間関節を屈伸することができなくなったものについても後遺障害等級認定の対象です。
また、足の指が曲がらない可動域制限については、下記のページもあわせてご参照下さい。
手指・足指の用廃等について認定される後遺障害等級は、以下のとおりです。
4級 | ・両手の指全部の用廃 |
7級 | ・片手の指全部、または親指を含む4本の用廃 |
8級 | ・片手の指のうち親指を含む3本、または親指以外の4本の用廃 |
9級 | ・片手の指のうち親指を含む2本、または親指以外の3本の用廃 |
10級 | ・片手の親指1本、または親指以外の2本の用廃 |
12級 | ・片手の人差し指、中指、くすり指のうち1本の用廃 |
13級 | ・片手の小指1本の用廃 |
14級 | ・片手の親指以外の4本につき、遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
7級 | ・両足の指全部の用廃 |
9級 | ・片足の指全部の用廃 |
11級 | ・片足の親指を含む2本以上の用廃 |
12級 | ・片足の親指1本、または親指以外の4本の用廃 |
13級 | ・片足の人差し指1本、人差し指を含む2本以上、または中指、くすり指、小指の3本の用廃 |
14級 | ・片足の中指、くすり指、小指のうち1本または2本の用廃 |
一方、手指・足指を失った場合には、以下の後遺障害等級が認定されます。
3級 | ・両手の指全部を失ったもの |
6級 | ・片手の指全部、または親指を含む4本を失ったもの |
7級 | ・片手の指のうち親指を含む3本、または親指以外の4本を失ったもの |
8級 | ・片手の指のうち親指を含む2本、または親指以外の3本を失ったもの |
9級 | ・片手の親指1本、または親指以外の2本を失ったもの |
11級 | ・片手の人差し指、中指、くすり指のうち1本を失ったもの |
12級 | ・片手の小指1本を失ったもの |
13級 | ・片手の親指の指骨の一部を失ったもの |
14級 | ・片手の人差し指、中指、くすり指、小指の指骨の一部を失ったもの |
5級 | ・両足の指全部を失ったもの |
8級 | ・片足の指全部を失ったもの |
9級 | ・片足の親指を含む2本以上を失ったもの |
10級 | ・片足の親指1本、または親指以外の4本を失ったもの |
12級 | ・片足の人差し指1本、人差し指を含む2本以上、または中指、くすり指、小指の3本を失ったもの |
13級 | ・片足の中指、くすり指、小指のうち1本または2本を失ったもの |
交通事故の後遺症が残った場合、指が曲がらない、指の可動域がおかしいという場合、被害者はその精神的苦痛について、加害者に後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料の金額目安は、認定される後遺障害等級に応じて以下のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害等級によって、請求できる後遺障害慰謝料の額が大きく変わります。
そのため、適正な後遺障害等級の認定を受けることが非常に重要です。
後遺障害等級は、後遺症について加害者に請求できる「逸失利益」の金額にも大きく影響します。
逸失利益とは、後遺症によって労働能力を失った結果、将来得られなくなった収入です。逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。
参考:就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf
上記の式のうち「労働能力喪失率」は、認定される後遺障害等級に応じて、以下のとおり目安が決まっています。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 33% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
たとえば後遺障害9級(33%)の場合と比べると、後遺障害8級(45%)の場合に認められる逸失利益の金額は、30~40%程度増額となることが見込まれます。
後遺障害慰謝料と同じく、逸失利益についても、後遺障害等級が1つ違うだけで金額が大きく異なることを知っておきましょう。
手指・足指が曲がりにくくなった場合や、可動域がおかしい場合、その一部を失った場合には、後遺障害等級の認定を受けられます。
機能障害をが生じた際には、適正な後遺障害等級の認定を受けることで、加害者に対して、十分な後遺障害慰謝料・逸失利益を請求する可能になります。
機能障害、後遺障害等級の認定について、わからないことや不安な点がある場合には、早い段階で「後遺障害に強い弁護士」に相談すべきでしょう。当サイトにも、後遺障害に強い弁護士を多数掲載しています。ぜひご参考下さい。