交通事故で指や手の震え・しびれの後遺障害が残った時の損害賠償

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交通事故に遭い、治療をしたものの、指先や手や腕が震えたり、しびれたりする症状が残ってしまうケースがあります。

日常生活や仕事が制限され、被害者にとっては大変つらい後遺症となるので、適正な損害賠償が欠かせないことになります。

今回は、交通事故で手のしびれの症状が残った際の、後遺障害の認定の条件や、慰謝料・逸失利益の金額などについて説明します。

交通事故による指や手の震え・しびれの症状・原因

症状の具体例

一口に指先や手の「しびれ」、「震え」と言っても、次のように様々な症状があります。

  • 針で刺したようにピリピリ感じる、ジンジン焼けるようといった感覚異常
  • 強くつねっても痛くない、お湯の熱さや氷の冷たさが感じられないなどの感覚低下
  • 手や指に力を入れようとしても入らない、思うように動かないなどの運動麻痺
  • 水の入ったコップを持とうとすると手が震える、箸を上手く使えない、服のボタンをとめられない、字をきちんと書けないなどの運動失調症

しびれの原因となる病気

交通事故の際に、上述したような手・指先のしびれや震えが現れた場合は、次のような原因が考えられます。

  • 脳損傷(脳挫傷)
  • 脊髄損傷
  • 骨折などによる神経の損傷
  • 椎間板ヘルニア
  • 胸郭出口症候群
  • むちうち症(頚椎捻挫)

もっとも、脳損傷、脊髄損傷という重大な傷害では、より重大な上肢全体、四肢、半身の麻痺などが生じていることが通常で、手や指先のしびれ、震えは大きな問題とはならないのが現実です。

参考サイト:「脳神経内科の主な病気」日本神経学会、「外傷性脳損傷のリハビリテーション」慶應義塾大学病院・医療健康情報サイト

ヘルニア・むちうち(頚椎捻挫)等の可能性が高い

交通事故で、手や指先のしびれ、震えが、それ自体で問題となるのは、「ヘルニア」や「胸郭出口症候群」「むち打ち症(頚椎捻挫)」など末梢神経(脳、脊髄以外の神経)の障害である場合です。

この場合、「手指の機能障害」が認定される可能性と、末梢神経障害として後述する「局部の神経症状」に該当する可能性があります。

そこで次に、「手指の機能障害」と「局部の神経症状」が該当する後遺障害等級と認定基準について解説することにしましょう。

局部の神経症状の後遺障害等級

「局部の神経症状」に該当すると、次の各等級に認定される可能性があります。

等級後遺障害の内容
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

12級13号の場合の認定基準

12級の認定基準は、障害の存在を「他覚的に証明」できることです。

具体的に言えば、下記のような要素が必要です。

  1. MRI、CT、X線等の画像所見で神経の損傷、圧迫などの異常が認められる
  2. 反射テスト、筋力テストなどの神経学的検査で症状の存在が認められる
  3. 神経の異常と、患者の訴える症状の部位を支配している神経が整合している

自賠責保険の等級審査では、特に1.のMRI、CT、X線などの画像所見が重視される傾向にあります。

しかし、訴訟となった場合は、裁判所は画像所見だけにとらわれず「総合的に判断」します。

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14級9号の場合の認定基準

14級の認定基準は、障害の存在が「医学的に説明可能」であることです。

まず、治療経過から、症状の一貫性、連続性が認められる必要があります。

事故による症状は、事故直後から数時間で発症し、その時が最も重く、治療の進展と時間の経過によって軽減されてゆくことが通常です。

ところが、事故から相当期間経過してから初めて受診したり、最初はなかった症状が治療途中で現れたり、治療を中断した後に通院を再開したりした場合は、通常の症状の現れ方と異なるため、医学では説明がつかないとして、交通事故による障害であることを否定されてしまうのです。

したがって、交通事故に遭った場合は、事故直後から整形外科を受診し、継続して通院すること、遠慮せずに初めから全ての自覚症状を医師に告げてカルテや診断書に記録してもらうことなどが肝要です。

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手指の機能障害の後遺障害等級

また、手や指のしびれ・震えが完治しない場合、「手指の機能障害」が認定される場合があります。後遺障害等級は次の8つです。

等級後遺障害の内容*1
第4級6号両手の指全部の用廃*2
第7級7号片手の指5本の用廃または親指を含む指4本の用廃
第8級4号片手の親指を含む指3本の用廃または親指以外の指4本の用廃
第9級13号片手の親指を含む指2本の用廃または親指以外の指3本の用廃
第10級7号片手の親指を用廃または親指以外の指2本の用廃
第12級10号片手のひとさし指、中指、くすり指のどれか1本の用廃
第13級7号片手の小指の用廃
第14級7号片手の親指以外の手指の遠位指節間関節*3の屈伸が不能

上表のとおり、等級は「用廃した指の部位」と「本数」に応じて大きく変化します。

*1 表現は、実際の自賠責保険の語句を、より理解しやすいようにアレンジしてあります。
*2 用廃については、次項を参照
*3 第14級7号の「遠位指節間関節」とは親指以外の4本指の先端の関節のことを指します。

用廃とは

用廃とは、具体的に言うと次の場合です。

  1. 中手指節関節または近位指節間関節(注1)の可動域が健側(健康なほうの手)の2分の1以下に制限されているもの
  2. 親指の指節間関節(注2)の可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの
  3. 親指の橈側外転、掌側外転(注3)のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているもの
  4. 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚(注4)及び表在感覚が完全に脱失したもの

注1:中手指節関節:手指の根元の関節 近位指節間関節:手指の真ん中の関節
注2:親指の指節間関節:親指の2カ所の関節のうち先端に近い関節
注3:橈側外転:手のひらを床に垂直にして、親指を上方に広げる(開く)運動、掌側外転:手のひらの背を床と平行にして、親指を上方にあげる運動
注4:表在感覚とは指の皮膚で感じる温度や痛みなど、深部感覚とはより深い場所で感じる指先の運動、位置、振動、抵抗などの感覚。

指や手の震え・しびれの後遺障害慰謝料

手や指先のしびれ、震えで認められる後遺障害慰謝料の相場金額は以下のとおりです。

等級後遺障害慰謝料の相場
自賠責基準任意保険基準(※)弁護士基準
4級737万円800万円1670万円
7級419万円500万円1000万円
8級331万円400万円830万円
9級249万円300万円690万円
10級190万円200万円550万円
12級94万円100万円290万円
13級57万円60万円180万円
14級32万円40万円110万円

※ 任意保険基準は、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載

この表を見ると、後遺障害等級の等級が上がるほど(等級の数字が小さくなるほど)、後遺障害慰謝料の算定額は高額になることが分かります。

また「弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準」の順で慰謝料額に差があることも見逃せない点です。

なお、上記の金額はあくまで相場に過ぎませんので、実際の裁判では、事故の態様、被害の程度、加害者の悪質性などの諸事情が総合考慮されて金額が増減されることにはご注意ください。

各基準の詳しい説明は別途記事で解説しておりますので併せてご参考ください。

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指や手の震え・しびれの逸失利益

逸失利益の計算根拠となる労働能力喪失率は各後遺障害等級に応じて下記のとおり定められてます。

等級労働能力喪失率
4級92%
7級56%
8級45%
9級35%
10級27%
12級14%
13級9%
14級5%

逸失利益は、以下の計算式で求めることができます。

逸失利益=
年収額 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に対応したライプニッツ係数

「就労可能年数の対応したライプニッツ係数」については、以下の国土交通省のサイトでダウンロードできる一覧表で調べることができます(※)。

※ 国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表

計算式だけでは実際にどのような金額となるかわからないので、モデルケースで説明しましょう。

例:被害者の年収:600万円 
  被害者の年齢:40歳
  40歳のライプニッツ係数:18.327

※ 2020年3月31日以前に発生した事故については、14.643

等級逸失利益の計算式逸失利益額
4級600万円 × 92% × 18.32710116万5040円
7級600万円 × 56% × 18.3276157万8720円
8級600万円 × 45% × 18.327 4948万2900円
9級600万円 × 35% × 18.3273848万6700円
10級600万円 × 27% × 18.327 2968万9740円
12級600万円 × 14% × 18.327 1539万4680円
13級600万円 × 9% × 18.327 989万6580円
14級600万円 × 5% × 18.327 549万8100円

ただし、上記は40歳のライプニッツ係数を、67歳までの就労が可能と考えての今後の稼働年数(就労可能年数)に対応した数値です。

例えば40歳であれば、残り27年間分の労働能力喪失を計算しているわけです。

しかし、むち打ち症については、労働能力喪失期間を12級は10年程度、14級は5年程度に制限して計算する裁判例が多い傾向にあります。

これを前提に、上のモデルケースを計算してみると次の金額となります。

労働能力喪失期間10年のライプニッツ係数:8.530
労働能力喪失期間5年のライプニッツ係数:4.580

等級逸失利益の計算式逸失利益額
12級
(労働能力喪失期間10年)
600万円×14%×8.530716万5200円
14級
(労働能力喪失期間5年)
600万円×5%×4.580 137万4000円

ご自分の後遺障害慰謝料や逸失利益がいくらくらいになるのか気になる方は、以下の「慰謝料相場シミュレーション」も併せてお試しください。

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指や手の震え・しびれの後遺障害の注意点

よくある保険会社の主張

むち打ち症によるしびれや震え等の場合、10年とか5年などの限定された期間の労働能力喪失しか認めない裁判例が多く存在します。

このような主張は、概ね次のような根拠に基づきます。

  • 手足などを失った障害と違い、神経症状は将来回復する可能性がある。
  • 神経症状の影響は、訓練や慣れによって少なくなってゆく可能性がある。

しかし一方で、次のような反論がなされているのも事実です。

  • これらの理由はいずれも可能性の問題に過ぎない。
  • むしろ逆に、後遺障害のハンディキャップによる経済的な不利益は時間の経過と共に大きくなってゆく。
  • 訓練や慣れによって後遺障害の影響が少なくなるとしたら、それは被害者本人の辛抱と努力によるのだから賠償額を低くする理由にすることは間違いである。

この点、東京地裁民事交通部の裁判官も、ケースバイケースであることを前提としつつも、原則として労働能力喪失期間を制限するべきではないとの下記のような意見を公表しています(※)。

労働能力喪失期間を制限すべきでないケースその理由
症状固定後相当期間を経過しているのに改善の兆候がない場合4年を経過して改善されないのに、労働能力喪失期間を5年に制限するのは不合理
神経症状が、脳損傷、脊髄損傷、骨折を原因としている12級の場合原因から神経症状の改善が容易ではないと通常考えられる
運動障害や機能障害があるが、自賠責の後遺障害等級表に該当しないため神経症状ととらえられている場合便宜的に神経障害と扱うだけで、神経障害ではないのだから回復の可能性はない

※「むち打ち症以外の原因による後遺障害等級12級又は14級に該当する神経症状と労働能力喪失期間」小林邦夫裁判官講演録(民事交通事故訴訟・損害賠償算定基準2007年版・下巻75頁)

労働能力喪失期間を制限しない裁判例あり

では、労働能力喪失期間を制限しない裁判例を見てみましょう。

ひとさし指の痛みで36年間の労働能力喪失を認めた裁判例

大阪地裁平成13年3月7日判決

被害者は症状固定時31歳男性プログラマーです。

右ひとさし指骨折、右くすり指関節捻挫などの傷害で、右ひとさし指の指先に痛み、可動域制限、知覚鈍麻などが残りました。

裁判所は、原則どおり67歳まで36年間の労働能力喪失期間を認めました。

36年間のうち最初の18年間は12級で喪失率14%、残りの18年間は14級で喪失率5%としました(このように、労働能力喪失期間の中で喪失率に段階を設定する例も珍しくはありません)。

本件の加害者側は、痛みなどは将来的に改善されると主張しましたが、裁判所は、その可能性は否定できないとしても、あくまで一般的な可能性であり、本件で具体的な改善の見込みが証拠から認められるわけではないとしました。

(交通事故民事裁判例集34巻2号349頁)

おや指の痛み、震えで41年間の労働能力喪失を認めた裁判例

東京高裁平成14年9月25日判決

被害者は症状固定時26歳男性アルバイトです。

右手親指関節の靱帯損傷などの傷害を受け、同親指の可動域制限、疼痛、震えなどの後遺障害となりました。

裁判所は、事故後6年を経過した時点でも後遺障害が改善していないことを指摘し、この後遺障害が近い将来消失するものと認めるのは相当でないとして、原則どおり67歳まで41年間の労働能力喪失期間を認めました。

(交通事故民事裁判例集35巻6号1792頁)

指や手の震え・しびれの後遺障害認定のポイント

可動域の測定・計測結果に不満が生じるケースあり

手指の機能傷害の認定基準は、可動域制限の数値によります。これは実際に患者が指を屈伸して、医師が計測します。

しかし、計測方法のルールは定められていますが、必ずしも全ての医師が測定ルールに精通しているわけではありません。

また、医師の力加減ひとつで、指が開く角度には違いが生じてしまい、個々の医師によって測定結果はバラバラとなりがちです。

再検査・再測定は可能

そこで、計測結果に不満、疑問がある場合は、必ず「再測定・再検査」をお願いするべきです。

また、可動域の測定だけでなく、指先の感覚の脱失を認定するための「筋電計による検査」「神経症状を医学的に証明するための画像検査」「神経学的諸検査」などをもれなく実施してもらう必要があります。

この点については、弁護士に依頼して、検査に同行してもらうのが無難です。

また、被害者請求手続で後遺障害等級認定の申請を行えば、医療記録、後遺障害診断書を事前にチェックすることができ、万全を期すことができるでしょう。

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