TFCC損傷は怖い!交通事故で手首の痛み(小指側)の後遺症

交通事故で転倒して手をついたり、ハンドルを握ったまま事故の衝撃を受けたりした後に、手首をひねると痛む、手首が動きにくいなどの症状がでる場合があります。
たんに捻挫と診断されていたときでも、実は「TFCC損傷」という怪我をしているかも知れません。

「腱鞘炎か軽度の捻挫かな?力が入らない。小指がちょっと痛いな・・・手をつくと痛い」と症状が少し気にっても、なかなか病院に足を運ばない、TFCC損傷と気づかず正当な慰謝料を保険会社からもらえず、後程痛みだけではなく治療費の面でも大きな負担をもってしまうといったケースも見受けられるようです。

ここでは、TFCC損傷とは何か、手首の関節に痛みや運動障害が残った場合の後遺障害等級について解説します。

1.TFCC損傷を知る

1-1.TFCC損傷とは

TFCCは、手首の骨と骨の間にある三角形をした軟骨組織などの総称です。

TFCCという名称は、「三角線維軟骨複合体」の英語名「Triangular Fibrocartilage Complex」の略称です。

わかりにくいので、「三角・線維軟骨・複合体」と分けて読むと理解が容易です。

手首の小指側にある、三角(triangular)形の繊維軟骨(fibrocartilage )(※)とその周りの靱帯(じんたい)からなる複合体(complex)です。

※繊維軟骨:コラーゲンの繊維でできた束を多く含む軟骨の一種、靱帯は骨や軟骨などを結び付けている結合組織

TFCCには、手首のぐらつきを抑える、手首の運動を滑らかにする、手首の小指側にかかる衝撃や荷重を分散、吸収するといった役割があり、複雑な動きを柔軟に行なうために不可欠な存在です。

このTFCCに何らかの強い力が加わり傷ついたことをTFCC損傷と呼ぶわけです。

1-2.TFCC損傷の症状・原因

TFCC損傷の主な症状

  • 手首の小指側が痛む(動かさなくても痛む場合もあります)
  • ドアノブ、蛇口、タオルなどをひねるといった、手首を回す運動の際に痛むことが多い
  • 手首の運動が制限される場合がある手首が不安定となる場合がある(重度の場合は、手首が抜けるような感覚を受けることがある)

TFCC損傷の原因

外傷が原因となるもの

  • 交通事故で転倒して地面に強く手をつくなど手首に強い衝撃を受けた場合など
  • 野球やテニスなどのスポーツ、料理人が重い鍋を振る動作などで手首に繰り返し過剰な負担をかけてきた場合など

 

加齢が原因となるもの

  • 年齢を重ねることで、TFCCの組織が変性し、損傷するもの

 

体質が原因となるもの

  • 生まれつき前腕二本の骨(尺骨(しゃっこつ)と橈骨(とうこつ)下イラスト参照)のうち小指側の長さが長い場合にも生じるとされている

1-3.TFCC損傷の検査方法

TFCC損傷を診断する検査方法には、徒手検査画像検査の2つがあります。

徒手検査

患部に力を加えたり、運動させたりして症状をみる検査です。TFCC損傷の代表的な徒手検査は次の各方法です。

圧痛
圧痛とは、医師が患部などに圧力を加えて、痛むかどうかを検査するものです。手首の小指側、尺骨の先端部分を触るとグリグリと隆起しているコブのような部分があります(尺骨茎状突起といいます)。この周辺を押すと痛みを生じる場合は、TFCC損傷が疑われるとされます。

TFCCストレステスト
医師が患者の手関節を小指側に屈曲させたり、その状態で手首を回転させたりします。痛みが誘発されたときは、TFCC損傷が疑われるとされます。

バロットメントテスト
患者の手首部分を、医師が左右から両手で握り、医師の左右の親指で手首をゴリゴリとすり合わせるように押します。この時に痛みが出たり、コリコリと音がしたり、関節が安定していなければ、TFCC損傷を疑います。

画像検査

TFCC損傷が疑われる場合の画像検査には次の方法があります。

レントゲン
TFCCは軟組織なので、通常のレントゲンでは損傷を判断できませんが、前述した骨の長さの異常の有無を確認する手段にはなります。

MRI、関節造影検査
MRIや関節に造影剤を注入してレントゲン撮影をする関節造影検査であれば、TFCCの損傷の有無を確認することができます。

2.TFCC損傷の後遺障害

2-1.TFCC損傷の等級

認定される可能性のある等級

TFCC損傷を原因とする以下のような症状が治療後も残った場合、自賠責保険で次の後遺障害等級が認定される可能性があります。

手首関節又は前腕の運動に支障が残ったとき:上肢の機能障害

等級後遺障害の内容
10級10号1上肢の3大関節(※)中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号1上肢の3大関節(※)中の1関節の機能に障害を残すもの

※上肢の3大関節:手首の関節、肘関節、肩関節(上イラスト参照)

手首に痛みが残ったとき:末梢神経障害

等級後遺障害の内容
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

以下で上肢の機能障害、末梢神経障害にそれぞれについて解説していきます。

上肢の機能障害の認定基準について

TFCC損傷の場合、上肢の機能障害となる可能性があるものには、次の2種類があります。

・手首の関節の運動障害
・前腕(肘から手首までの部分)の回転運動障害

手首の関節の運動障害

手首の関節の運動障害は、関節の動く範囲(可動域)が制限されてしまった状態です。手首関節の主要運動(各関節の日常の動作にとって最も重要な運動)として、次の二つの運動を対象とすることが原則です。

・屈曲(掌屈とも言う、手首を下へ曲げる運動)
・伸展(背屈とも言う、手首を上へ曲げる運動)

障害の残った手首関節の可動域の角度と、障害のない健康なほうの手(これを「健側」と言います)の手首関節の可動域の角度とを比較して判断します。

等級手首関節の機能障害の認定基準
10級健側の可動域の2分の1以下の場合
12級健側の可動域の4分の3以下の場合

例えば、健康な右手首が屈曲90度、伸展70度の場合、これを合計した160度が健側の可動域です。

これに対し、障害のある左手首の屈曲と伸展の合計値が2分の1である80度以下の場合は10級、4分の1である120度以下の場合は12級となります。

前腕の回転運動障害

次に、前腕の回転運動障害について説明します。

ご自分の手首をひねってみてください。このとき、手首から先だけでなく、前腕の骨全体も一緒に回転していることがわかります。手首をひねる回転運動は、手首関節の運動ではなく、前腕の運動なのです。これを前腕の回内・回外運動と言います。

この前腕の回内・回外運動は、ドアノブを回す、タオルをしぼる、鍵をかける、茶碗と箸で食事をする、車のハンドルを回すなどの日常生活において欠かせない重要な動作です。

このため関節の運動ではないものの、前腕の回内・回外運動は、特に関節の機能障害に準じて扱うものとされています。

肘を90度曲げた状態で前腕を床と平行にし、指を伸ばした手のひらを体の内側(回内)、外側(回外)に回す動作をして回転する角度を測ります。

等級前腕の回内・回外運動の可動域制限の後遺障害認定基準
10級健側の可動域の4分の1以下の場合
12級健側の可動域の2分の1以下の場合

例えば、健康な右前腕が回内90度、回外90度の場合、これを合計した180度が健側の可動域です。

これに対し、障害のある左前腕の回内と回外の合計値が4分の1である45度以下の場合は10級、2分の1である90度以下の場合は12級となります。

末梢神経障害の認定基準について

手首の痛みが残った場合が末梢神経障害です。TFCC損傷の場合、2つの等級が考えられます。

等級認定基準※
12級障害の存在が他覚的に証明できるもの
14級障害の存在が医学的に説明可能なもの

12級の「他覚的に証明できる」とは、検査画像や各種検査結果を前提に、医学的知識に基づき、痛みの存在を証明できる場合です。

TFCC損傷では、MRIや関節造影によってTFCCの損傷を確認できれば、他覚所見ありと認められる可能性が高いでしょう。

※認定基準は、「交通事故損害額算定基準26訂版」日弁連交通事故相談センター本部347頁による

2-2.TFCC損傷の等級認定のポイント

上肢の機能障害の等級認定ポイント

上肢の機能障害が後遺障害と認定されるには、可動域制限の原因である器質的損傷(身体組織の物質的な損傷)が確認できることが必要です。

TFCC損傷が原因である場合は、MRIや関節造影によってTFCCの損傷という器質的な損傷が画像上明らかとなっているはずです。

そこで、むしろ問題は、可動域制限の基準数値に達するかどうかです。

TFCC損傷の典型的な症状は、手首をひねる運動の際に痛みや支障が生じるものであり、屈曲、伸展という手首関節の可動域制限の基準に達するケースは少ないと思われます。

前腕の回転運動の可動域に制限が生じた場合でも、その程度は10度から20度程度の制限にとどまることが多く(※1)、重度の回内外可動域制限を生じることはまれと言われています(※2)。

そして、前腕回内外運動の参考可動域角度(平均的な可動域の数値)は180度(回内90度+回外90度)とされていますので、健側の角度がこれに近い数値となるのが通常です。

したがって、多くのケースと言われる、10度から20度程度の可動域制限では健側の4分の1以下(10級)や2分の1以下(12級)という基準に届くことは少ないと思われます。

このような事情から、TFCC損傷の場合、機能障害で等級認定を得ることは、あまり期待できないのが実際です(もちろん、例外的に、回転制限の大きな重症例は別です)。

ただし、機能制限の基準に達していなくても、痛みの症状が残っているなら、次のとおり、末梢神経障害で後遺障害を認定してもらえる可能性があります。

※1:日本医事新報社サイト中村俊康医師(国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院整形外科部長)によるTFCC損傷疾患メモを参照
※2:慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「KOMPAS」「三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷」(文責:同病院整形外科)を参照

末梢神経障害の等級認定ポイント

TFCC損傷は、MRI画像や関節造影で損傷が確認されますので、他覚所見は一応存在することになります。

画像で確認された損傷の内容、徒手検査の結果、患者の訴える痛みの自覚症状が、矛盾なく整合するならば12級に認定される可能性があるでしょう。

また前述した機能障害の基準には至っていなくとも、可動域制限が生じているなら、神経症状が発生していてもおかしくない状況の裏付けとなるので、12級の可能性はより高いと言えます。

他方、画像で損傷を確認できない場合は、少なくともTFCC損傷であるとは判断できません。

しかし、この場合でも、治療の経過から、患者の訴える痛みの自覚症状が単なる「故意の誇張」ではないと言える場合、端的に言えば詐病や心因的なものではなく、事故によるものと医学的に説明できる場合には、14級が認定される可能性があります。

2-3.TFCC損傷の等級認定で特に争いのある部分

訴訟で問題となるTFCC損傷と事故との因果関係

TFCC損傷では、保険会社が事故との因果関係を疑い、訴訟で争うケースがあります。

保険会社が、このような対応をとり易い理由として、以下の点を指摘することができます。

  • TFCC損傷はレントゲンでは判別しがたく、たんなる捻挫と診断されやすいので、事故から相当な期間が経過して、初めてMRIなどの検査を受けて、損傷が判明することが多いこと
  • スポーツなど、事故以外の日常生活でも発症しやすいこと
  • 加齢による変性や生まれつきの骨の異常が原因の場合があること

TFCC損傷が問題となった裁判例

そこで、TFCC損傷と事故との因果関係が実際に問題となった裁判例を2つ紹介しましょう。

裁判例1.

東京地裁平成27年12月16日判決

車両同士の軽微な接触事故にもかかわらず、事故から一ヶ月後になって初めて手首の症状を訴えた被害者について、TFCC損傷と診断された時期が事故から相当長期間経っており、損傷の時期についても医師の間で意見に相違があるケースで因果関係が否定された。

この裁判例からは、事故後、手首に異常を感知したならば、できるだけ早く受診すること、その際、TFCC損傷の可能性も念頭において、レントゲンだけでなく、念のためにMRI検査を実施してもらうことが大切なポイントと言えます。

裁判例2.

大阪地裁平成28年12月8日判決

自賠責保険でTFCC損傷による12級の後遺障害等級認定を受けた被害者が、交通事故の1ヶ月前に自転車のアクロバット走行の練習中に右手首をひねり、小指側の痛みや回外運動時の痛みを訴えて、病院を受診し、TFCC損傷と診断されていた事実があったことから、交通事故と後遺障害の因果関係を否定した。

この裁判例の場合、真実は交通事故によるTFCC損傷だったのかも知れません。しかし、TFCC損傷がスポーツや日常の行動が原因となり得る性質の疾病とされているうえ、事故の1ヶ月前に同じ診断を受けた事実がある以上、因果関係を立証することは極めて困難と言わざるを得ません。

このケースのように、事故前の損傷であれば不運としか言いようがありませんが、事故後に疑われる状況を作らないように注意することは可能です。

したがって、事故にあって、手首に異常を感じたなら、スポーツや手首に負担をかける行動は避けるべきでしょう。

3.TFCC損傷でお悩みの方へのアドバイス

TFCC損傷で自賠責保険により14級が認定された場合でも、裁判所によって通常の14級よりも高額の賠償が認められるケースもあります。

自賠責保険の基準では、後遺障害逸失利益を決める労働能力喪失率は14級では5%です。

しかし、機械的な取り扱いをする自賠責保険と異なり、裁判所では、後遺障害の内容はもとより、被害者の性別、年齢、職業の内容、生活状況など、あらゆる事情を総合的に考慮して喪失率を決めます。特に重視されるのは、実際にどのような支障が生じているかという損害の実態です。

実際に以下のような裁判例があります。

仙台地裁平成27年12月17日判決

被害者の職業が整体師で、痛みと可動域制限によって左手首を屈曲して力を入れることが困難となったため、指圧やマッサージといった整体施術に支障をきたして売り上げも減少してしまったとし、14級の5%を大きく超えて、12級と同様の14%の喪失率(67歳までの30年間)を認めた。

このように、画一的な処理を行う自賠責保険に比べて、訴訟では、個々の被害について詳細な実態を主張して、救済を求めることが可能です。

したがって、TFCC損傷で自賠責保険の等級認定の結果に不満がある場合は、あきらめてしまう前に、弁護士に相談して、訴訟でよりより結果を勝ち取れる可能性がないかどうか、よく検討されるべきです。

参考文献
「新訂版・労災保険後遺障害診断書作成手引」公益財団法人労災保険情報センター
「後遺障害入門 認定から訴訟まで」弁護士小松初男外編 青林書院発行
「後遺障害等級認定と裁判実務 訴訟上の争点と実務の視点」弁護士高橋真人編著 新日本法規発行
「弁護士専門研修講座・交通事故の法律相談と事件処理」東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編

交通事故に強い弁護士が無料相談いたします

保険会社任せの示談で後悔しないために、今すぐ弁護士にご相談ください。治療に専念、慰謝料を増額できる可能性があります。
交通事故に関する専門知識をもつ弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。

  1. 保険会社から治療費の打ち切りを迫られている
  2. 過失割合に納得ができない
  3. 適正な等級認定のため後遺障害申請サポートしてほしい
  4. 保険会社との示談交渉が面倒、保険会社の態度が悪い
  5. 保険会社が提示した慰謝料が適正な金額かわからない

交通事故に強い弁護士に相談することで、これらの書類の準備や交渉の負担がほとんどなくなります!弁護士に任せて頂ければ、被害者の方は安心して治療に専念できます。
1つでも当てはまる方は1人で悩まず、今すぐ弁護士に相談しましょう。

弁護士法人 ベリーベスト法律事務所
 現在営業中( 本日9:30~21:00 ) ]

土日の電話受付対応、弁護士報酬は「後払い」、初回相談料と着手金は完全無料

土日の電話受付対応、弁護士報酬は「後払い」、初回相談料と着手金は完全無料

全国対応の「交通事故専門チーム」によるサポートが特徴の法律事務所です。まずは、交通事故専門チームによる「慰謝料無料診断」をご利用下さい。
 現在営業中( 本日9:30~21:00 ) ]
お電話でのお問い合わせはこちら
050-5267-6329
[電話受付]平日 9:30~21:00 土日 9:30~18:00
電話する 弁護士詳細情報はこちら
都道府県から交通事故に強い弁護士を探す
この記事が役に立ったらシェアしてください!