交通事故の後遺障害慰謝料の相場と増額方法をわかりやすく解説
交通事故で後遺障害が残ったときは、後遺障害慰謝料をどれだけ増額できるかが全体の保険金をアップするためのポイントとなり…[続きを読む]
後遺障害診断書は、後遺障害等級認定において、判断の中心となる重要な資料です。
ところが、多くの被害者の方は、後遺障害診断書がどう作られるのか、どこでもらうのか、何を記述するべきなのかを知りません。
そこで、今回は自賠責の後遺障害診断書について、その書き方のOK例とNG例を記載しながら、作成のポイントと注意点、料金、主治医が後遺障害診断書を書いてくれない場合の対応策などを紹介します。
目次
後遺障害診断書とは、自賠責保険から支払われる賠償金額を決めるために、損害保険料算出機構が後遺障害等級を認定する際の判断資料のひとつで、正式には「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」という名称です。
後遺障害診断書には、交通事故被害者の怪我と治療に関する詳しい情報が記載されています。
後遺障害診断書の主な記載内容は下記のとおりです。
症状固定の段階で、後遺症があるからといって必ず後遺障害認定される訳ではありません。「後遺障害の等級認定」は原則として書面審査ですので、後遺障害診断書の記載内容が認定を左右することになります。
後遺障害認定を受ける最大のメリットは、示談金(損害賠償額)が飛躍的に上がることです。
後遺障害認定を受けると、「逸失利益」と「後遺障害慰謝料」というものが賠償請求できるようになり、その額も多額(数百万円~)です。認定がある場合とない場合では、賠償額や示談金が大きく変わってきます。
つまり、後遺障害の等級認定の判断材料とされる後遺障害診断書の記載内容が重要な役割を持っています。
後遺障害診断書をいつ、どこでもらい、誰に書いてもらうのでしょうか?
「後遺障害診断書を誰にどこで書いてもらえばよいか?」ですが、一般的にはこれまで治療を受けていた病院で、担当の医師に後遺障害診断書の作成をお願いするのが通常です。
なお、整骨院は医師がいないので、後遺障害診断書を作成することができません。
後遺障害診断書を書いてもらうタイミングは症状固定の後です。
例えば、むちうちの場合だと事故から6カ月程度治療を続け、これ以上通院して良くならないと医師が「症状固定」と判断した後に、後遺障害診断書を作成します。
しかし、後遺障害診断書の記載を依頼しても、快く応じてくれる医師ばかりではありません。作成を拒否されてしまうケースもあります。
書いてくれない理由は、多くの場合「後遺障害診断書の書き方がよくわからない」、「事故の争いに巻き込まれたくない」この2つのいずれかでしょう。
しかし、医師には後遺障害診断書の作成を依頼された場合、正当な理由がない限り、医師法により後遺障害診断書の交付を原則として拒むことはできません。当然ながら先に挙げた2つの理由も正当な理由には該当しません。
診断書を書いてくれなかったり協力的でない医師に対し、弁護士が代理人として働きかけることもできますので、困っている方は一度相談することをお勧めします。
後遺障害診断書の作成費用は、5千円~1万円程度かかります。
後遺障害診断書の料金は医療機関ごとに自由に決められており、一律ではありません。
後遺障害等級が認定されれば加害者に請求できますが、「認定されない場合は自己負担」となる可能性があります。認定されずに自己負担などということがないように、提出する後遺障害診断書の記載については慎重を期すべきです。
また、後遺障害診断書は、依頼からおおよそ1〜2週間程度で完成します。
完成してもすぐに保険会社へ提出せず、自分自身でその記載内容をしっかりとチェックするようにしましょう。
素人では分からない事項も多いですので、弁護士などの専門家に確認してもらうことをお勧めします。
では、医師に後遺障害診断書の作成を依頼する場合に、どのようなポイントに気を付け、作成後にどこをチェックをすればいいのか具体的に解説しましょう。
後遺障害診断書は「診断書」なので、医師が書きます。患者自身では書きません。
しかし、適正な後遺障害の等級認定をしてもらうためには、患者である被害者も「何を記載するべきか」を後遺障害診断書の書き方を絶対に知っておくべきです。
ここでは、交通事故(追突事故)でよくある「むちうち症」を例として、後遺障害診断書の各記載欄の書き方のポイントを見てみましょう。
自覚症状の内容と程度は患者本人にしかわかりません。しかし、自覚症状の有無、内容、程度は、後遺障害等級認定のベースとなる重要な判断資料です。
例えば、むちうち症で14級が認定されるためには、自覚症状が医学的に説明可能であることが要求されますし、12級が認定されるためには、自覚症状と他覚所見(レントゲン等の画像など)が一致していることが必要です。
自覚症状は医師にもわからないことですから、できるだけ詳しく、すべての症状を訴え、しっかりと記載してもらうことが必要です。
しかし、医師によっては、患者が訴えている症状の一部しか記載してくれず、例えば「頸部痛など」と省略されてしまうことがあります。
そこで、自覚症状とその内容、程度についてメモを作成して、医師に渡し、後遺障害診断書の作成にあたって参考にしてもらうこともひとつの方法です。
医師によって、患者の作成したメモを後遺障害診断書の別紙として添付してくれる場合もあります。そうなれば、ただのメモでも立派な後遺障害診断書の一部となります。
NG例 | 頸部痛等 |
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OK例 | 頸部痛、右肩痛、右腕痺れ、腰痛 |
自覚症状しかないむちうち症の場合、14級が認められるには、事故直後から一貫した症状が連続していることが必要です。
「初診時から頸部痛が継続」などと、事故から今まで同じ症状が続いていることが明確になるよう、後遺障害診断書に記載してもらえればベストです。
しかし「当医院受診、2週間後から右肩痛」などの記載の場合、症状の一貫性を疑われて事故との因果関係を否定され、後遺障害を認めてもらえなくなる可能性があります。
NG例 | 頸部痛、当医院受診2週間後から右肩痛 |
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OK例 | 初診時から頸部痛が継続 |
痛みを伴う後遺症の場合、後遺障害とされるには、常時痛みが残っていることが必要であり、時々痛いというだけでは14級も認められません。
「長時間歩行時に頸部痛」や「雨天時に頸部痛」という後遺障害診断書に記載は、それ以外の場合は痛みがないと受け取られてしまう危険があります。
「長時間歩行時に特に痛みが強まる」とか「雨天時にはより痛む」などの表現が望ましいでしょう。
NG例 | 「長時間歩行時に頸部痛」、「雨天時に頸部痛」 |
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OK例 | 「長時間歩行時に特に痛みが強まる」、「雨天時にはより痛む」 |
症状によっては、どのように痛むのか、どのように痺れるのかといった内容についても、後遺障害診断書に記入してもらうべき場合があります。
症状固有の表現が必要だとして、後遺障害を否定された以下のような裁判例があります。
東京地裁平成16年2月27日判決
むちうち症と同じく末梢神経の外傷によって疼痛が起きるRSD(反射性交感神経萎縮症)という後遺障害の有無が争われた裁判例で、「『やけるような』、『切り裂かれるような』、『うずくような』、『ジンジンする』、『ひりひりする』と表現される」RSDに特有の痛み(灼熱痛)の記載がカルテにないこと等を理由として、同疾患の後遺障害を否定されました。
次に、後遺障害診断書に「精神・神経の障害、他覚症状及び検査結果」と記載されている欄です。
他覚症状とは、医師が医学的知識に基づき症状の存在を確認した場合を言います。むちうち症で後遺障害12級の認定を受けるためには必須の条件です。
この欄には、症状を確認した医師の所見(他覚所見)と、その根拠を記載します。
根拠とは、X-P(レントゲン)、CT、MRIなどの画像や各種の神経学的検査(※)の結果(神経学的所見)です。
画像が根拠となる場合は、その読影結果をここに記載し、画像自体も資料として損害保険料算出機構から要求されます。
神経学的検査が根拠となる場合は、検査結果を記載します。通常、検査結果が症状の存在を示す場合は「陽性」、そうでない場合は「陰性」と記載されます。
しかし、医学の知識のない患者がこの欄を読み解くことは困難ですので、弁護士にチェックをお願いすることをお勧めします。
※神経学的検査とは、受傷部を動かしたり、圧迫したりして痛みの有無を見たり、刺激を与えて反射反応の有無、程度を観察したり、筋力の低下を測定するなどして、神経の異常を調べる医学的手法です。
最後に後遺障害診断書の「障害内容の増悪・緩解の見通しなどについて」の箇所についてですが、この箇所に「回復の見込みあり」などと記入することはNGです。
「後遺障害診断書作成時における残存した症状について、治癒見込みなし」、「症状は固定と判断」、「症状が長期にわたり継続、残存と思料す」などの記載が望ましいでしょう。
NG例 | 治癒、症状軽快し治療中止、回復の見込みあり、緩解(寛解)見込み、緩和もあり得る |
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OK例 | 治癒見込みなし、症状は固定と判断、症状が長期にわたり継続、残存と思料す |
では、医師に後遺障害診断書の作成をお願いするときには、どのような点に気をつけることが必要でしょうか。
後遺障害診断書作成にあたっては、認定に必要な検査を受けておく必要があります。
認定を受ける症状や期待する等級によっては、レントゲンやMRI、CTといった画像所見に加え、神経学的検査が必要な場合もあります。
まず、医師の診断した内容には意見をしないことが無難です。医学の知識のない素人が医師と論争しても無意味ですし、怒って診断書をちゃんと書いてくれなくなる場合もあります。
ただ、素人である患者が、専門家である医師に質問して、説明をしてもらうことは何ら問題はありません。
後遺障害診断書が出来上がったら、被害者自身が内容に間違いや記載漏れがないか確認することも必要です。
もし、誤記や記載漏れがあったら訂正・追記をお願いすべきです。
後遺障害診断書に納得がいかない場合、医師に書き直しを要求できます。
しかし、医師は一度作成した後遺障害診断書(診断名や所見自体)の内容を書き換えることを好まないのが通常ですので、書き直し要求を拒否されてしまうことがほとんどです。
それでも、誤記などが明白ケースでは訂正を要求するべきですし、自覚症状などの書き漏らしを追記してもらうことは躊躇するべきではありません。
医師によっては、無理な修正の要求をすることで信頼関係が失われてしまう可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
では、
といった不安や心配がある場合は、どうすればいいのでしょうか?
現在、多くの弁護士事務所で後遺障害診断書のチェックなどを含めた後遺障害等級認定のサポートをしています。
後遺障害診断書をこれから作成する場合は、事前に弁護士に相談してみましょう。
医師によって後遺障害診断書の書き方は異なります。後遺障害診断書は、書式は決まっていますが、記載内容は医師に任されているからです。
しかし、多くの医師は、後遺障害診断書の書き方については素人です。
医師は病気やケガを治す専門家であって、書類を書く専門家ではありません。
しかも、「後遺障害」や「症状固定」は、医学の概念ではなく、損害賠償分野に特有の法律概念です。詳しくない医師がいることは当たり前です。
後遺障害診断書の作成は医師本来の仕事ではなく、「後遺障害等級認定」は法律上の制度なので、医師の専門外なのです。
そこで、「後遺障害認定を受けたいので、後遺障害診断書の作成の相談にのってほしい」と、法律事務所に相談の予約を入れれば問題ありません。
弁護士事務所では、主な自覚症状の聞き取り調査や、必要な検査を受けているのかといったチェックが行われます。
その上で、医師に作成要領を提出することで、後遺障害診断書の作成の際に参考にしてもらえます。弁護士が個別の事情に応じた具体的な対応やアドバイスをしてくれます。
すでに後遺障害診断書を作成済みの場合も、弁護士に記載内容をチェックしてもらえます。
実は、後遺障害診断書の記載内容に問題がある場合、弁護士が被害者の代理人として、医師に対し、等級認定されるための条件や過去の事案などを丁寧に説明することで、後遺障害診断書を修正・加筆してもらい、期待通りの等級認定を受けられたケースが数多くあるのです。
また、認定に必要な検査がなされていない場合、検査をお願いする依頼書を作成してくれたりと、後遺障害等級認定に向けて、大きな味方となってくれます。
もし、期待する等級認定が受けられなかった場合には、医師の意見書や治療経過報告書、その他の裏付け書類などを取り付けて異議申し立てを行ってくれます。
最終的には、裁判まで視野に入れたサポートを受けることができます。
後遺障害認定や損害賠償は、症状固定から3年の時効があります。異議申し立てを考えると、症状固定後2年以内には、後遺障害診断書を作成して認定申請を済ませておくようにしましょう。
後遺障害診断書には専用の用紙があり、後遺障害の内容別に記載欄が決まっています。
後遺障害診断書の書式は、下記からダウンロードできます。また、交通事故をよく取り扱う病院には備えられていますし、保険会社に請求して送ってもらうこともできます。
また、後遺障害等級認定のサポートをしてくれる弁護士事務所であれば、交付してもらうことも可能です。
労災の場合は、下記の記事を参考にしてください。
以上、自賠責保険の後遺障害診断書の書き方のポイントや、 どこで もらうか、作成料金、書いてくれない理由等について説明しました。
交通事故で後遺症が残りそうで、後遺障害診断書が必要となる見込みの方は、お早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
後遺障害申請は、弁護士に依頼すると、被害者請求で確実に行ってくれたりと、被害者の大きな支えとなってくれます。まずは、交通事故の後遺症に強い弁護士に無料相談してみるとよいでしょう。