交通事故の休業損害とは?請求出来る場合と請求方法を解説!

休業損害

交通事故に遭い、事故が原因で仕事ができない期間が発生すると、その分減収が発生して損害を受けることになってしまいます。

このような場合、被害者は事故の相手に対して「休業損害」を請求することができます。

一方で、休業損害については、多くの方が次のような疑問をお持ちです。

  • 休業損害はどんな人が請求できるの?もらえない人もいる?
  • 休業損害の計算方法は?
  • 保険会社が払わない可能性がある?どうすればいいの?

そこで今回は、交通事故の休業損害の請求方法や計算方法について詳しく解説して参ります。

休業損害とは

軽い追突事故に遭ってむち打ち等になって、仕事が一定期間できなくなった場合、収入が減って損害を被ることになります。

サラリーマンの場合には欠勤で減収となることがありますし、自分で店を経営している自営業者などの場合でも、例えば店舗を閉めざるを得ない期間があると、その間の売り上げが完全に途絶えてしまいます。

このような場合には、相手に対して休業損害を請求することができます。

休業損害とは、交通事故で仕事を休んだことによって、本来得られたはずの利益が得られなくなったことによる損害に対する補償のことです。

休業損害が認められるケース

休業損害は、どのような人でも認められるわけではありません。基本的には事故前に仕事をして収入があったことが必要です。

サラリーマン・自営業者・アルバイトの場合はもらえる

たとえば、サラリーマンや自営業者は休業損害が認められる典型的なケースです。

また、アルバイトやパート、契約社員でも、現実の収入があるので、休業損害は認められます。

不労所得者・無職無収入の場合はもらえない?

これに対して、家賃収入だけで生活している「不労所得者」には休業損害はもらえません。

減収がないからです。同じように「無職無収入」の人も、休業損害は請求できません。

ただし、交通事故当時は働いていなくても、将来の近い時期に具体的な就業先で働くことが決まっていた場合には、休業損害を請求できます

例えば、内定済みの大学生がこれにあたり、就労時に予定されていた収入を基礎に休業損害が算定されます。

また、具体的な就職先が決まっていなくても、本人に「仕事をする意欲・能力」があり、実際に就職活動をしていた場合には、賃金センサスの平均賃金を利用して休業損害を計算します。

専業主婦などの家事従事者

専業主婦(主夫)などの家事従事者は現実にはお金は稼いでいなくても家事労働に経済的な価値があると評価され、この場合、賃金センサスの全年齢の女性の平均賃金を利用して休業損害を計算します。

また、仕事(正社員、パートにかかわらず)を持っている兼業主婦の場合には、収入が平均賃金より低い場合には、少なくとも家事労働に相応する経済的損失を補償する観点から、平均賃金を利用して休業損害を計算します。

休業損害の計算方法

休業損害の計算式

次に、休業損害の計算方法をご紹介します。

基本的に以下の計算方法を利用します。

休業損害 = 「1日当たりの基礎収入」 × 「休業日数」

上式の「1日当たりの基礎収入」は、自賠責基準と弁護士・裁判基準で異なります。以下、順番に解説します。

①自賠責基準の1日当たりの基礎収入とは

自賠責基準の場合の1日当たりの基礎収入は、原則的に1日6,100円(2020年3月31日以前に発生した事故については、5,700円)で計算されます。

ただし、実収入がそれを超えることを証明できる場合には、19,000円を限度として、「実収入を基準」にすることが可能です。

②弁護士・裁判基準の1日当たりの基礎収入とは

弁護士・裁判基準の場合には、1日当たりの基礎収入は、事故前の実収入を基準にします。

サラリーマンの場合の基礎収入は、事故前の実際の収入の「3ヶ月分の平均」を利用する事が多いです。

ただし、季節によって給与の金額が大きく変動するケースなどでは、「前年度の収入」などを参考にする例もあります。

自営業者の場合には、事故が起こった年の前年度の確定申告書の記載にもとづいて、基礎収入を算出します。

以下では、それぞれのケースで具体例を見てみましょう。

稼働日数を元にした基礎収入の計算方法|給与所得者の場合

サラリーマンなどの給与所得者の場合は、事故前の3ヶ月の給料の合計額を、90日もしくは稼働日数で除することで算出します。

サラリーマンの事故前の3ヶ月の月給がそれぞれ20万円、24万円、23万円で、その稼働日数が91日間である例を考えてみます。

この場合には、次の計算方法で1日あたりの基礎収入を算出します(実際には90日で割るケースが多いです)。

なお、計算方法は給与所得者である限り、アルバイト、パート、公務員すべて同じです。

給与所得者の基礎収入の算出

事故前の3ヶ月の月給:20万円、24万円、23万円
給与支給の日数:91日

(20万円 + 24万円 + 23万円)÷ 91日間 = 7,362円

基礎収入の計算方法|自営業・個人事業主の場合

自営業者・個人事業主の基礎収入は、事故前年度の収入を、365日で除することで算出します。

たとえば、事故前年度の収入が400万円だった人の例を考えてみます。この場合には、10,959円が1日あたりの基礎収入となります(※)。

自営業者の基礎収入の算出

事故前年度の収入:400万円

400万円 ÷ 365日 = 10,959円

※ただし、自営業者の場合は、様々な算定方式があり、むしろ事故前年の確定申告上の所得から、事故当年の所得を差し引いた残額をもって休業損害とする方式のほうが一般的です。自営業者の所得は、サラリーマンのように定期的に一定額を得られるものではありませんし、こちらの算定方法のほうが、端的に「現実の減収」を明らかにできるからです。

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基礎収入の計算方法|主婦・就業前の人の場合

就職前の人や専業主婦などの場合で平均賃金を用いる場合には、賃金センサスの1年分の平均賃金の金額を365日で割り算して、1日あたりの基礎収入を算出します。

専業主婦の場合の基礎収入はだいたい1日1万円くらいになります。

主婦の休業損害については、下記記事もあわせてご参照ください。

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事故前の基礎収入を証明する方法

なお、事故前の基礎収入を証明するためには、サラリーマンやアルバイトの場合、事故前の給与明細書、源泉徴収票などが必要です。

自営業者の場合には、事故の前年度の確定申告書の控え(税務署の受領印あるもの)を用意する必要があります。

③休業日数と通院日数の注意点

休業損害の金額を計算する際、「休業日数」も大きな問題になります。

休業日数は、実際に仕事を休んだ日数ですが、必ずしも休んだ日数がすべて認められるとは限らないので注意が必要です。

休業日数に含めてもらえるのは、仕事内容や症状から、休業が必要で相当と認められる限度に限られます。

入院した日数についてはすべて含まれることが通常ですが、「通院日数」については必ずしも全部含まれるとは限りません。

自宅療養の場合

自宅療養も治療の一環ですから、治療に必要かつ相当な範囲内でのみ休業日数と認められます。したがって、自宅療養の必要性と予定日数を記載した「診断書」を作成してもらう必要があります。

休業日数を証明する資料としては、サラリーマンやアルバイトの場合には、勤務先に「休業損害証明書」を記載してもらう必要があります。

休業損害証明書は、具体的に休業した日付や日数などを記載してもらう書類で、保険会社に書式があります。

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休業損害はいつもらえるか|先払いは可能か

休業損害補償金を実際にいつもらえるでしょうか?

休業損害は、示談成立前に先払いしてもらうというわけにはいきません。

「交通事故の損害賠償金」は、すべての損害額が確定してからまとめて支払われるのが基本なので、休業損害だけを独立して先払いで受け取ることはできず、後で示談が成立した際にまとめて受けとる形になるからです。

すぐにお金が必要な場合には、「自賠責の仮渡金」などを利用する必要があります。また、「労災保険」が利用できる場合には、労災による休業補償給付を利用すると、示談が成立していなくとも休業損害の補償を受け取ることができます。

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休業損害をサラリーマンが請求する場合の注意点

サラリーマンが休業損害を請求する場合、いろいろな問題が起こることがあります。たとえば、「有給を利用して通院した場合」や「ボーナス・賞与が減額された場合」、「昇級が行われなくなった場合」、「退職を余儀なくされた場合」などがあるので、以下で順番に見てみましょう。

有給休暇を利用した場合|半日も可

有給休暇を利用して通院をした場合にも休業損害が認められます。通院のために、半日有給を消化した場合には、半日分のみが休業損害としてが認められます。

有給休暇は、勤め先からみれば休んでいないものとして扱われますが、有給休暇とは「就労しなくても給与の支払を受ける権利」であり、余暇それ自体に経済的価値があります。それを怪我で無駄にしたのですから、損害と言えるのです。

ボーナス・賞与が減額された場合

交通事故による休業によって、ボーナスが減額されることがあります。休業自体で査定評価を下げられることもありますし、営業の成績などが下がってボーナスが減額されることも多いです。このような場合には、ボーナスの減額分についても休業損害を求めることができます。

そのためには、勤務先に「賞与減額証明書」という書類を書いてもらい、具体的なボーナス減額分を明らかにする必要があります。

昇進が遅れたり、なくなったりした場合

交通事故によって、予定されていた昇進が遅れたり、昇進の話がなくなったりすることがあります。

このような場合には、「昇進があったことを前提にして休業損害を計算」してもらえることがあります。

たとえば、もともと400万円の年収だったけれども、事故がなければ収入が500万円に上がる予定だった場合には、500万円の年収を基本として基礎収入を算定してもらえるということです。

この場合、公務員などのように昇進基準、昇給基準が明確な場合には、減収分を算定しやすいですが、そうでない民間企業では算定とその立証に苦労することになります。

客観的な基準は、就業規則、賃金規程などが証拠資料となる場合がありますが、実際に昇進が予定されていたかどうかは、こういった資料では明らかにならないので、雇用主、上司、人事部署に依頼して、報告書を作成してもらう必要があります。

昇進や昇給を証明できなかった場合には、事故前の実収入によって基礎収入を算定することになります。

退職を余儀なくされた場合

サラリーマンなどの場合、休業が長引くことによって退職を余儀なくされることがあります。

このような場合にも、休業損害の対象になります。

退職による損害を請求するためには、退職が交通事故によって起こったものであるという因果関係を証明する必要があります。これはまさか会社に証明書を作成してもらうわけには行きませんから、本人の陳述書、法廷での供述、それに元職場の同僚などの協力者の陳述書、証言がとても重要となります。

なお、退職による休業損害を請求する場合の退職後の休業日数は、症状固定までの日数です。

たとえば、1日当たりの基礎収入が8000円の人が、交通事故によって仕事を続けることが困難になって退職を余儀なくされたとして、退職後80日が経過してから症状固定したケースでは、次の休業損害を請求できます。

1日当たりの基礎収入8,000円 × 退職後80日 = 休業損害64万円

ただし、これは症状固定までは休業が必要だったと認定された場合です。

症状固定に至らずとも、その症状や治療内容から不必要な休業と判断されれば、休業日数に含めて貰えません。

逆に、その症状から、症状が固定したからといって、すぐに再就職することは困難という場合に、症状固定から数ヶ月間を休業日数に含めて算定した裁判例もあります。

休業損害と休業補償の違い

交通事故が起こった場合、それが「勤務中」や「通勤中の事故」であったケースでは、労災保険の適用があります。

事故後4日目以降、労災保険から休業補償給付という「休業補償」を受けとることが可能です(労基法上の災害補償制度により、3日目までの分は、その60%を、労働者から使用者に請求することが認められています)。

労災による休業補償給付は、「休業損害」とは異なる制度で、労災で使用者が労働者に支払うべき補償を労災保険が負担することで労働者を保護するものです。

労災の休業補償を請求すると、相手との示談が成立していなくとも、速やかに休業補償金を受け取ることができます。

労災保険の休業補償給付の金額

労災保険の休業補償給付は、事故前3ヶ月間の平均給与額である「給付基礎日額」(休業補償の1日あたりの基礎収入と同じ考え方です)の60%と定められていますが、これとは別に、「休業特別支給金」という福祉事業としての給付を受けることもできます。

休業特別支給金は、休業4日目から給付基礎日額の20%なので、労災による休業補償を受ける場合には、休業補償給付の60%と休業特別支給金20%の、合計80%を受け取ることができるます。

休業補償の金額はどれだけ減額されるか

労災から休業補償を受ける場合には、交通事故によって相手に請求できる休業補償の金額がその分減額されますが、福祉事業である休業特別支給金の分については、減額の対象になりません。

ですから、労災によって休業補償を受けとる場合でも、損害賠償金から減額されるのは給与基礎日額の60%の範囲にとどまり、残り20%の分は減額の対象になりません。この部分については労災保険と相手方保険会社から「2重に金銭をもらえる」のです。

このように、労災が使える場合には、労災の休業補償制度も併用して利用して、休業補償給付や休業特別支給金の給付を受ける方が得になります。

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休業損害は弁護士相談する

休業損害の提示に納得いかない場合

交通事故によって休業損害が発生した場合に相手方の任意保険会社に休業損害を請求しても、納得のいく金額の提示がないことがあります。

たとえば、専業主婦などの場合に、1日あたりの基礎収入を自賠責基準の5700円に設定されたり、「専業主婦で実収入がないので休業損害が発生しない」などと言われたりすることがあります。

サラリーマンの場合に、ボーナス分の減収が認められなかったり、昇級・昇進分が考慮されなかったりすることもあります。

休業日数についても、休業の必要性がないとして、日数をかなり減らして休業損害を計算されることなどもあります。

弁護士に相談して示談交渉

以上のように、休業損害について正当な金額が支払われない可能性がある場合には、弁護士に相談して示談交渉を依頼することが効果的です。

弁護士であれば、どのようなケースでどのような証明書類が効果的であるかなどを熟知しており、適切な対処をして、正当な金額の休業損害を請求することができるからです。

勤務先にどのような書類を書いてもらったら良いのかわからない場合などにも、弁護士にアドバイスをもらえば、勤務先に適切な証明書を発行してもらうことなどが可能になります。

このように、適切な休業損害を受けるためには、交通事故事件を得意としていて、休業損害の請求手続などにも慣れている弁護士に手続を依頼することが一番の近道になります。

まとめ

今回は、交通事故によって発生する休業損害について、請求できる休業損害とその計算方法、休業損害にまつわる問題点、もらえる・もらえない条件、いつもらえるかなどについて解説しました。

休業損害とは、交通事故によって働けなくなったことによって発生する減収分に対する補償のことであり、1日の基礎収入に休業日数をかけ算して計算する例が多いです。

休業日数が認められるのは、基本的に追突事故などに巻き込まれてむちうち等になる前から、仕事をしていた人であり、無職無収入の人の場合などには休業損害を受けることはできません。

休業損害の金額に納得ができない場合、交通事故に強い弁護士に請求手続を依頼したら、適切な金額の休業損害を請求することができてメリットが大きいです。

今回の記事を参考にして、交通事故後の休業分について、正当な休業損害を請求しましょう。

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