免許取り消しの再取得は難しいか?|費用、期間、流れまで解説
この記事では、飲酒運転などで運転免許を取り消されて「再取得をしたい」と考えている方を対象に、再取得の方法や、裏ワザは…[続きを読む]
免許が取り消されそう!「意見の聴取」ってどんな手続?行かなくても良いの?
「意見の聴取」で、反省文や嘆願書を使って自分の意見を述べれば、本当に処分が軽くなったり免取りを免れることってあるの?
運転免許の取り消しは、交通違反や事故の深刻さに基づいて判断されますが、決定する過程において「意見聴取」が重要な役割を果たします。
本稿では、ブログやX、Yahoo!知恵袋の体験談でも話題の、免許取り消しを軽減したり、運転免許を再取得するための戦略を詳しく解説します。特に、意見聴取の場で聞かれることと、それに対する効果的な対応方法に焦点を当てています。
意見の聴取とは、交通違反をした方が処分を受ける前に違反者が警察(公安委員会)に対して自分の意見を述べることができる手続です。
免許の停止や取り消しの処分を受ける予定の方の中で、一定の条件を充たす方が利用することができます。
道路交通法の104条によると、
1項には
・相当長期の免許停止や免許取り消しの処分をしようとする場合は、「公開による意見の聴取を行わなければならない」とされており
2項には
・意見の聴取に際しては、当該処分に係る者又はその代理人は,当該事案について意見を述べ、かつ、有利な証拠を提出することができる
と定められています。
簡単に言うと、交通違反に対してある程度重い処分を科す場合には、違反者が自分の意見を述べる機会を与えられるということです。
また自分にとって有利な証拠を提出したり、代理人を付けたりすることもできます。
たとえば、交通違反の背景には
・「スピード違反をしたのは急病人を乗せていたからなのでやむを得なかった」
・「一時停止違反なのはわかっていたが、トイレに行きたくてつい急いでしまった」
・「飲酒運転、酒気帯び運転をしてしまったが、大いに反省して違反後は一切お酒を飲んでいない」
といった様々な事情があり得ます。
このような事情を考慮せずに処分を下してしまうと、本来情状酌量の対象とすべき人とそうでない人が同じ処分を受けることになり、不平等となってしまうようなケースが想定されます。
そこで、違反者が公安委員会に対して意見を伝える場を設けよう、というのがこの手続の趣旨です。
注意しなければいけないのは、交通違反の事実関係そのものを争う場ではないということです。
たとえば、「飲酒運転・酒気帯び運転なんかしていない!」「停止線の前できちんと一時停止していた!」という主張をしても聞き入れてもらえません。
「警察の不当な取り締まりで検挙された」という意見はもってほのかです。
交通違反の内容について争うことができるのは、罰金刑などの刑事処分を決めるための刑事裁判のときです。
意見の聴取はあくまで酒気帯び運転をしてしまった「事情など」を聞いてもらうための手続です。そのことをまず頭に入れておきましょう。
続いて、意見の聴取を受けた場合の効果について解説いたします。
意見の聴取を受けた結果、次のような処分の期間短縮を受けることができる可能性があります。
・免許取り消しで欠格期間2年から5年程度の場合に1年分軽減される
・欠格期間*1年の取り消しが、免許停止180日に軽減される
・停止期間90日間の免許停止が、停止期間60日間に軽減される
もちろん意見の聴取を受けても必ずしも、処分の軽減や短縮が受けられるわけではありません。
処分の短縮を認めるかどうか判断するのはあくまで公安委員会です。
※欠格期間について詳しい内容は下記記事をご参照ください。
皆さんが気になっているのは、「意見の聴取を受けると本当に処分が軽減されるの?意味ないんじゃないの?」ということだと思います。
実は、意見の聴取によって処分が軽減されるケースはけして多くありません。
特に重大な違反や事故の場合や酒気帯び運転等では、軽減も回避も短縮もされないことの方が多いと考えておいた方がよいでしょう。
「だったら意見の聴取に参加しても意味がないではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現実には処分を軽減してもらうチャンスは意見の聴取手続のみですので、これを受けなければ「処分を受け入れる」という選択肢しかなくなってしまいます。
「免許の停止(取り消し)を受けるのは絶対に困る」という方は意見の聴取を利用すべきでしょう。
ただ公安委員会が「この事案で処分の軽減を認めていいか」の判断は、「なんだかかわいそうだから、軽減してやろう」というようなあいまいな感覚ではなく、論理的な基準や相場観に基づいて行われます。
この基準や相場観を理解し、適切な対策をすることで処分の軽減を受ける可能性を高めることはできます。
続いて、実際に意見の聴取がどのような手続で進むのか流れを見ていきましょう。
まず、意見の聴取の対象となるのは次の方です。
・免許の取り消し処分をされる者
・90日以上の免許の停止の処分がされる者
・90日以上の自動車等の運転禁止処分がされる者
すでに説明したとおり、意見の聴取はある程度重い処分を受ける予定の方が対象となり、免停期間が30日や60日の場合には対象にはなりません。
また「運転禁止処分」とは、国際免許証等を所持する者に対して所定の期間運転を禁止させる処分で、日本の運転免許をお持ちの方には関係ありません。
意見の聴取の対象となる方には、手続が行われる1週間前までに自宅の住所地に「意見の聴取通知書」が届きます。
意見の聴取通知書の記載は内容は下記の通りです。
・違反の内容
・累積点数
・前歴の回数
・意見の聴取を行うから出席するようにという通知文
・意見の聴取を行う日時や場所、理由
また、意見の聴取通知書には返信用はがきが同封されており、次の3つから自分の希望を選ぶことができます。
(1)出席します。都合で出席できなかったときは欠席のまま審理してください。
(2)欠席しますので、欠席のまま審理してください。
(3)私の代理人が代理人資格証明書を持参して出席します。
意見の聴取は違反者の義務ではなく権利ですので、特に言いたいことがなければ無視でも欠席でも行かなくても問題ありません。
ただ意見の聴取の通知を無視すると、処分を軽減についてアピールする機会を失うことになります。
出席すればある程度の時間を取られることにもなりますので、「面倒だからわざわざ意見を言わなくてもいい」「自分のミスだから仕方ない」「飲酒・酒気帯び運転だから減免は厳しい」と思われる方は欠席でも問題ありません。
意見の聴取に出席を希望する場合には、必ず指定された時間までに会場に行きましょう。
必要な持ち物は次のとおりです。
(1)運転免許証
(2)印鑑
(3)公安委員会から届く「意見の聴取通知書」
それ以外に、自分の意見や自分に有利な証拠を書面で主張したい場合には上申書(嘆願書や反省文のようなもの)を用意していきましょう。上申書についてはまた後述致します。
なお意見の聴取の結果、免許停止や免許取り消しの処分が確定すると、運転免許証は返ってきませんので、意見の聴取には車で行かないように注意しましょう。
意見の聴取は一人ずつ行われますが、当日は意見の聴取を受ける方が同じ待合室に集められて順番を待つことになります。
意見の聴取の時間は10分程度ですので、20人いたとすると最後の方が手続を終えるまで3時間以上かかることになります。
本など時間を潰せるものを持っていくか、意見の聴取の際に何を話すことをまとめたメモなどを用意してそれを読むのがよいでしょう。
自分の名前が呼ばれたら、いよいよ意見の聴取が始まります。
最初に本人確認が行われ、そのあとに違反内容が読み上げられます。
すでに説明したとおり、意見の聴取は違反内容そのものについての意見を述べる手続ではありませんので、「間違いありません」と素直に認めるようにしましょう。
ここで反抗的な態度をとったり警察の取り締まりについて不平を言ったりすることは相手に悪いイメージを与えることにしかなりませんので、絶対にやめるようにしましょう。
本人確認と違反内容の確認が終わると、違反時の状況や違反後の対処について質問を受けます。具体的には聞かれることは次のような質問です。
①同乗者はいたのか
②その道路はいつも走っているのか
③仕事かプライベートか
④どこへ行く途中だったのか
⑤なぜ違反をしたのか
⑥規制自体は知っていたのか
⑦刑事処分(罰金)は終わっているのか
⑧(人身事故のような相手のある事案の場合)相手方に対する賠償はどうなったか
減免したいからと言って嘘をついたりせず、この聞かれることについて真摯に誠意ある態度で答え、反省の意を示しましょう。
次に聞かれることとして「何か弁明することはありますか?」などと聞かれ、反省の弁などを述べることができます。
意見の聴取において自分の言いたいことを自由に述べられる場はこのときだけですので、自分の主張や反省の気持ちをしっかり伝えるようにしましょう。
できればこのときに自分の意見や反省の意をまとめた書面を「上申書」という形でまとめたものを提出することをお勧めします。「上申書」については後で詳しくご説明します。
意見の聴取の結果が通知されて手続は終了します。
どのような場合に処分の軽減が認められるかは、「運転免許の効力の停止等の処分量定の特例及び軽減の基準について」という通達(2009年4月30日警察庁丁運発第44号)に次の6つが定められています。
(1) 「事故の被害」か「不注意の程度」の少なくとも一方が軽く、危険性が低いとき。
(2) 災害・患者搬送などやむを得ない事情があり、危険性が低いとき。
(3) 違反が他の強制によるなどやむを得ない事情があり、危険性が低いとき。
(4) 被害結果を重大にするなど被害者側に特別の事情があり、危険性が低いとき。
(5) 被害者がドライバーの身内で、危険性が低いとき。
(6) (1)~(6)のほか、危険性が低く、改善の可能性があるとき。
わかりづらいと思いますのでより具体的にご説明いたします。
実際に処分が軽減される可能性があるのは次のようなケースです。
当然のことながら、交通事故や交通違反を繰り返しているような方は心証が悪くなります。
ずっと事故や違反をしたことがなくゴールド免許を持っていたのに、最近になって事故や違反を積み重ねてしまった、という場合には処分の軽減を受けられる可能性が高まります。
人身事故など相手がいる事故の場合は、相手方の対応も考慮に入れられます。
違反者だけでなく相手方にも過失がありお互いのミスで事故が発生してしまった場合には、処分の軽減が認められやすくなります。
人身事故の場合や特に被害者の感情が重要になります。怪我をした被害者やその遺族が違反者に重い処分を科すことを望んでいないような場合には処分を軽減する考慮要素となります。
この場合は被害者側に「処分を求めません」という内容の嘆願書を書いてもらうことで説得力が大きく増します。もっとも、事故の相手方にこのような書面を書いてもらうときには十分に慎重になるべきでしょう。
交通違反の内容が比較的軽微な場合には情状酌量の余地があると認められる可能性があります。
たとえば違反時に周りに車や歩行者がおらず実際には通行の危険が生じていなかった場合や、一時停止の交通標識が木の葉などの障害物で見えづらくなっていたような場合です。
なお、飲酒運転、酒気帯び運転や時速50キロメートル以上の速度違反など違反行為が重大な場合については、処分が軽減されることはほとんどありませんので注意が必要です。
当然のことですが、違反をしたことに対する反省の姿勢があることが必要となります。
違反をしてしまったことを真摯に受け止めており、今後同じような違反をしないという決意が表れている場合には、処分の軽減が認められやすくなります。
仕事で車を使用している場合や、車がないと買い物に著しく不便が生じる場合には処分の軽減が認められやすくなることもあります。
しかし、これを理由に処分の軽減を認めてしまうと他の違反者との不平等が生じるおそれがあるため、この要因だけで認められることは少なく、あくまで考慮要素に過ぎないと考えるべきです。
続いて、以上を踏まえて実際にどういう措置をとればよいのでしょうか。
本来、意見の聴取に参加するときの服装は自由です。見た目ではなく、聴取の内容に基づいて処分の軽減の可否が判断されます。
しかし、公安委員会の担当者も人間ですので、だらしない服装で行くと「本当に反省しているのだろうか」という心証を持ってしまうおそれがあります。
できれば意見の聴取の服装はスーツで行くことをお勧めします。
すでに説明したとおり、意見の聴取で聞かれる質問には一定のパターンがあります。
あらかじめどのような質問をされるか想定しておき、それに対する回答の内容をまとめておきましょう。
回答内容を考える際には次の点に注意するとよいでしょう。
(1)違反行為そのものを否定せず、自分の行為を素直に認める。
(2)事故について自分が認識していることを正直に伝え、けして嘘をついたり、ごまかしたりしない。
(3)なぜ交通違反をしてしまったのか冷静に分析し、今後同じことをしないためにどうするつもりなのか伝わるようにする。
(4)事故を起こしてしまったやむを得ない理由があるときは、その具体的な事情についてわかりやすく説明する。
(5)感情的になったり反抗的になったりせず、反省の意がきちんと伝わるようにする。
(6)被害者がいるときには、被害者に対して申し訳ないと思っている感情が伝わるようにする。
自分の主張の内容を上申書(題名は嘆願書や反省文などとしても構いません)として書面にまとめておくのも効果的です。
当日は口頭で事件の意見を述べることができますが、中には緊張して思うように話せない方もいらっしゃるはずです。
上申書を作成して提出すれば、そのような場合にも公安委員会に対して確実に自分の意見を伝えることができます。
上申書には決まった形式はありませんが体裁を整えておくに越したことはありません。
また、読みやすいようにワープロ打ちの方が好ましいです。インターネット上には意見の聴取時の上申書のテンプレートもありますので、「上申書 テンプレート」などのキーワードで検索するとよいでしょう。
すでに説明したとおり、意見の聴取には代理人に代わりに出席してもらったり、付添人として一緒に参加してもらうことができます。
自分ではうまく説明できる自信がないという方は、誰かに代理人を頼むのも一つの手段です。
どのような方が代理人や付添人になれるかについて決まりは特にありませんが、もっともよいのは弁護士や行政書士に依頼することです。
弁護士・行政書士以外にも、交通違反時に車に乗っていた同乗者などに付き添い人を依頼することができれば減免に効果的だと考えられます。
ただし弁護士や行政書士に依頼したからと言って必ず減免するわけでもありませんので、そのリスクは理解しておく必要があります。
今回は、意見の聴取の手続について、また聞かれることなど、意味ないのかなど解説致しました。原則免許取り消しは免れないわけですが、短縮や軽減は可能性としてあります。
免許の停止や免許取り消しは、細かい違反の積み重ねによって誰でも受ける可能性がある処分です。
仕事で車を運転しなければいけない方はもちろん、家族の送り迎えや買い物で車を使う方にとっては少しでも処分が回避でき軽減された方がいいに越したことはありません。
処分の軽減を受けるために違反者が自ら働きかけることができる唯一の機会が意見の聴取です。
「ぜひ処分の軽減を受けたい」と思っている方は、この記事を参考に十分に準備をしたうえで意見の聴取に臨んでいただければと思います。
もし受けない場合はのその後の流れ等は、下記の記事が詳しいのでご参照ください。