自動車の運転が禁止されている持病、症状とは

持病

交通事故というと、加害者側ドライバーの何らかの不注意や安全運転義務違反で起こるものと思われがちですが、交通事故の原因が必ずしもそうとは限りません。

例えば、ドライバーがADHD、てんかん、認知症、統合失調症、うつ病、脳疾患、心臓疾患などの持病を持っている状態で車を運転し、その結果事故に至るというケースがあります。

このような交通事故は、未然に防ぐことはできないのでしょうか。

この記事では、「自動車の運転が禁止されている持病、症状とは」について解説します。

車を運転してはいけない持病とは?

一定の持病がある人については、運転中に万が一症状が出た場合に大事故につながる恐れがあるため、道路交通法施行令33の2の3によって運転が禁止されています。

当施行令では、下記を規制の対象としています。

  • 幻覚の症状を伴う精神病、発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気
  • 自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気

具体的には、次のような病気や持病がある人は車の運転が禁止されています。

てんかん

てんかんとは、大脳が一時的に過剰な活動をするために生じる発作です。

発作の種類はいくつかあり、場合によっては意識障害を伴うものもあります。万が一、これが運転中に発生すると重大事故につながります。

また、てんかん発作による交通事故でも、過去に「自動車運転死傷行為処罰法」が適用された事例があります。

視覚障害

重度の視力障害や視野の制限がある場合、適切な判断や反応ができなくなるため、運転が制限されます。

高度な心臓疾患

心臓病や循環器系の疾患により、運動時の心肺負荷が高くなる場合、運転が制限されることがあります。

再発性の失神

一過性の意識障害で、脳全体の虚血により発生し発作が再発するものについては運転が禁止されています。

なお、運転中の失神の原因として最も多いのが「反射性失神」で、30〜37%を占めています。アメリカの調査によれば、失神患者が運転中に失神発作を起こすケースは9.8%で、運転中の失神リスクは1人当たり年0.33%とのことです。

また、運転中に失神した患者の61〜87%は、失神の前兆となる症状があるとされています。

無自覚性の低血糖症

低血糖状態を繰り返すことで、自覚症状もなく意識障害を引き起こす症状です。

無自覚性低血糖症の人は、免許の申請をすると別途適性検査が求められます。

そううつ病

そううつ病が原因で交通事故を発生させた場合、「自動車運転死傷行為処罰法」により通常よりも重い刑罰を科されるケースがあります。

しかし、症状が自動車運転等に支障のない状態であれば、免許を取得できます。

重度の眠気の症状を呈する睡眠障害

該当する可能性がある症状として、睡眠時無呼吸症候群の患者数は日本で約300万人、ナルコレプシーは約20万人と言われています。

統合失調症

脳内の神経機能が上手く働いていない状態で、100人に1人は発症しているとも言われています。

認知症

高齢者が交通事故を起こすニュースがよく流れるようになりましたが、これは認知症が原因になっているケースも考えられます。

以上の症状に該当し、安全運転に必要な判断能力がないと診断された場合には、大変危険ですので運転は控えましょう。

なお、これら以外にも「目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるもの」に該当する場合は、運転免許の取り消しや効力の停止の対象となります。

具体的には次のような症状が規定されています。

  • 体幹の機能に障害があって腰をかけていることができないもの
  • 四肢の全部を失ったもの又は四肢の用を全廃したもの
  • その他、自動車等の安全な運転に必要な認知又は捜査のいずれかに係る能力を欠くこととなるもの
    (運転免許に条件を付することにより、その能力が快復することが明らかであるものを除く)

てんかんでも運転免許が取れるケース

てんかんの持病があっても、以下の条件に当てはまる場合は運転免許を取得することが可能です。

  1. 発作が過去5年間以内に起こったことがなく、医師が「今後発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
  2. 運転に支障をきたす発作が過去2年間以内に起こったことがなく、医師が「今後、X年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
  3. 医師が1年間の経過観察の後、「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合(ただし上記2の発作が過去2年間以内に起こったことがないのが前提)
  4. 医師が2年間経過観察をした後、「発作が睡眠中に限って起こっており、今後症状悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合

もっとも、自己判断は大変危険ですので、持病をお持ちの方、症状が気になる方は、必ず医師の診断を受けてから車を運転するようにしてください。

車を運転してはいけない病気についてよくある質問

症状を申告しなかったらどうなる?

(1) 懲役、及び罰金刑

上記に記載した症状があるにも関わらず、そのことを隠して免許申請や更新をした場合、「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑」を受ける事となります。

また、これらの症状に該当する場合、診断した医師の側からその診断結果を公安委員会に届け出るという任意規定(医師による報告制度)もできたため、今後は黙っていてもばれる可能性は高くなるでしょう。

(2) 無申告者罰則規定の問題点

このように、無申告者に対しては厳罰な罰則規定がありますが。ただ、その効果については様々な疑問の声が上がっています。

そもそも、これらの申告義務違反が発覚するときとは、そのほとんどが交通事故の時であり、事故の抑止効果としては機能していないという現実があります。

また、てんかんなどの発作については、医師によっても見解が分かれることも多く、「ミオクロニー発作」や「軽微な運動発作」などをどう捉えるか、医師によって違いが出る可能性もあります。

これらの理由から、もっと交通事故自体を未然に防げるような具体的対策が求められています。

持病が原因で交通事故が起きた場合、保険金は出る?

交通事故が発生した場合、任意保険に加入していればその損保会社から保険金が支払われます。てんかんの症状があったとしても、それだけを理由に保険金の支払いを拒まれるケースはほとんどありません。

しかし、保険会社や契約内容によっては、持病の疾病の影響を考慮して保険金を減額されたり、事故原因によっては保険金の支払いを拒否されたりする場合もあるそうです。

なお、被害者側に対しては、過失割合に基づき保険金が支払われるのが一般的ですが、自分や同乗者に対する保険(搭乗者保険、車両保険、人身傷害補償保険など)については、てんかんなどの症状によっては、保険金の支払いを拒否される場合があります。

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