免許証の自主返納|手続きの注意点とメリット・デメリット

高齢化に伴い高齢者ドライバーによる交通事故が多発しており、免許証の自主返納が注目を浴びています。

この記事では、免許証の自主返納を考えている方を対象に手続の注意点や代理手続きなどについて解説いたします。

高齢者ドライバーと免許証の自主返納の背景

運転免許の返納とは、高齢等の理由により自動車等の運転をやめて有効期限内の運転免許証を返納したいという方が、公安委員会に申請して免許を取り消す制度です。

運転免許の返納制度は昭和63年4月に高齢ドライバーの事故の多発を受けて導入されました。

また平成14年には、免許証を返納してしまうと身分証明書がなくなって不便だという意見を反映して返納後に身分証明書として使える「運転経歴証明書」が導入されました。

国土交通省によると、65歳以上の高齢者ドライバーによる運転免許返納件数はこの数年で急増しており、平成17年と平成27年を比較すると15倍以上になっています。

平成17年 17,410
平成18年 21,374
平成19年 18,149
平成20年 28,097
平成21年 49,251
平成22年 63,159
平成23年 69,805
平成24年 111,852
平成25年 131,595
平成26年 197,552
平成27年 270,159

運転免許の返納制度の概要

免許返納の対象者・年齢

運転免許の返納の対象となるのは有効期限内の運転免許を有している全ての方です。

つまり高齢者ドライバーに限られず、20代の若者でも返納は可能です。

この後に詳しくご説明しますが、各都道府県は運転免許の返納後にマイカーがなくても不自由がないように様々な支援を行っています。

これらの支援を受けるための条件は65歳以上とされているのが一般的ですので、65歳になったら運転免許の返納を検討するとよいでしょう。

なお、運転免許証の有効期限が切れている方は申請できません。

免許返納手続きの場所・受付時間

運転免許の返納を受け付けている場所は、

・各都道府県の自動車運転免許場
・警察署の交通課
・警察本部の運転免許管理課

などです。

また、受付時間は平日のみで、土曜日、日曜日、休日及び年末年始は受付していません。

免許返納に必要なもの

運転経歴証明書の申請の際は以下4点が必要です。

・運転経歴証明書交付申請書
・住民票または申請者の氏名、住所、生年月日を確認できる身分証明書等
・印鑑
・申請用写真

運転経歴証明書交付申請書は受付を行っている場所に設置してありますので事前に用意する必要はありません。

免許返納の費用

運転免許の返納手続に費用はかかりません。ただし、一部取消しの場合は免許証交付手数料が必要になる場合があります。

免許返納の種類

運転免許の返納には、

  • 全部取消し(免許証返納)
  • 一部取消し(免許証の作成替え)

の2種類があります。全部取消しとは受けている免許の全部を取り消す申請です。

一部取消しとは、大型免許を取り消して普通免許を新たに受けたり、中型免許を取り消して原付免許を新たに受けるなど、受けている免許の一部を取り消して免許証の作成替えをする手続です。

本人以外の代理による免許返納は可能か

運転免許の返納手続は、原則として本人が行う必要があります。

ただし、申請者本人が病気などの理由により窓口に行って手続をすることが困難な場合は本人の意思の確認を行ったうえで家族などが代理で手続を行うことができる場合があります。

詳しくは各都道府県の警察本部のHPを確認するか、問い合わせを行うことをおすすめします。

免許返納のメリット・デメリット

「わざわざ申請をして運転免許を取り消すなんて面倒くさい」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、運転免許の返納にはメリットもあります。

メリット

様々な特典を受けられる|タクシー等もあり

各自治体や事業者は、運転免許を返納した後に高齢者がマイカーに依存することなく移動することができ、充実した生活を続けられるように、様々な特典を提供しています。

特典の内容は地域の実情に応じて様々ですが、いくつか例を挙げてご説明します。

・タクシーの乗車料金の割引を受けられる
・金融機関等で特別な金利で預金できる
・ホテル、デパート、スーパー、商店街、娯楽施設等で割引を受けることができる
・自動車学校で新規免許取得者を紹介したときに謝礼を受けられる
・車を売ったときに商品券等を受けられる

事故を起こすリスクがなくなる

車を運転するという行為は、最悪の場合は他人を死に至らせる可能性を含んでいます。

もしそうなれば、ご遺族はもちろん、事故を起こしたご本人やそのご家族にも永遠に傷跡が残ることになります。

「自分は大丈夫だ」と思われている方もいらっしゃると思いますが、残念ながら加齢が運転操作に影響を及ぼすことは医学的にも確かです。

運転免許を返納して車を運転しない生活に切り替えることで、自分が事故を起こしてしまうリスクがなくなります。

家族に「運転やめろ」と言われなくなる

高齢者ドライバー本人は「自分は大丈夫だ」と思っていても、ご家族は心配しているものです。

周りから「もう運転はやめた方がいい」「運転免許を返納した方がいい」と繰り返し言われてうんざりしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

運転免許を返納することで、周囲からこのようなことを言われることがなくなります。

車の維持費を支払う必要がなくなる

運転免許を返納すると車を所有する必要がなくなりますので、自動車税、保険料、駐車場代、ガソリン代、整備やメンテナンスの費用を支払う必要がなくなります。

デメリット

移動手段の制限

運転免許を返納するデメリットは、移動手段が制限されてしまうことです。

すでにご説明したとおり返納の特典によりタクシーなど他の交通手段を利用しやすくなりますが、そのような交通手段が乏しい地域にお住まいの場合や、買い物などのために日常的に車を利用している場合には、大きな不便を強いられることもあるでしょう。

運転経歴証明書の交付申請もすることを忘れない

続いて、運転経歴証明書についてご説明します。

運転経歴証明書とは

運転免許の返納時には運転経歴証明書の交付を申請することができます。

運転経歴証明書は、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として、利用することができます。有効期限に限りがある運転免許証と異なり、永年有効です。

なお住所変更時には届出を行い記載事項の変更をすることが義務づけられているので忘れないようにしましょう。

また、

・自主返納後5年以上が経過している方
・交通違反等により免許取消しとなった方
・免許を失効させた方

等は運転経歴証明書の交付を受けることができません。

運転経歴証明書の交付件数は近年急増しており、平成30年の交付件数は358,740となっています。

令和元年になるとさらに増加する見込みです。

運転経歴証明書の交付手続

運転経歴証明書の交付申請は、運転免許の返納手続と同時に行うことができます。
申請に必要な書類は主に次のとおりです。

・申請による運転免許の取消し通知書(免許の自主返納を同時申請する方は不要)
・本人確認書類(免許の自主返納を同時申請する方は不要)
・申請用写真1枚(自動車運転免許試験場で申請する場合は不要)

これ以外に手数料として1,100円が必要です。

運転経歴証明書の交付申請の手続きは都道府県によって異なる場合がありますので、詳しくは各都道府県の警察本部にお問い合わせください。

免許返納後の生活の例

運転免許を返納すると車を運転できなくなりますので、その後の生活のことを考えておく必要があります。

運転免許の返納後の移動手段はどうなる?

運転免許の返納後はバスや電車などの公共機関やタクシーを利用したり、ご家族に運転をしてもらう必要があります。

 

運転免許の返納後は認知症対策が必要?

車を運転できなくなるとついつい出かけるのが億劫になって引きこもりがちになったり、人と会わなくなって認知症が進行する方もいらっしゃいます。

そのようなことにならないよう、お住まいの地域でどのような特典を受けられるか確認したり、ご家族とよく相談しておくとよいでしょう。

一部の都道府県では保健師やケアマネジャーに返納後の悩みを相談できる取り組みを行っているところもありますので、そのような場所で相談する方法もあります。

最後に

運転免許を返納の返納にはメリットもデメリットもありますが、悲惨な事故を起こさないで済むという何よりも大きな利点があります。

返納後にそれまでと変わらない生活を送れるように特典や支援を受けられますので、65歳を過ぎたら返納を検討してはいかがでしょうか。

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