準危険運転致死傷罪とは?分かりやすく解説

準危険運転致死傷罪の罰則

この記事では、準危険運転致死傷罪とは何か?分かりやすく解説いたします。

準危険運転致死傷罪とは?

酩酊危険運転は、行為者に「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」を行っているという認識(故意)があることが必要です。

ところが、飲酒運転の場合、運転者は、必ずしも自分が「正常な運転が困難な状態」と認識しているわけではありません。飲んではいるが大丈夫だと過信しているケースは多いですし、仮に正常な運転は難しいと思っていても、運転者の内心を立証することは容易ではありません。

そこで設けられたのが、準危険運転致死傷罪です。自分が「正常な運転が困難な状態」とまで認識していなくても、正常な運転に支障が生じる「おそれ」がある状態で運転していることの認識さえあれば足りるとしたのです。

もっとも、運転を開始した後、「おそれ」が現実化して、実際に「正常な運転が困難な状態」となり、死傷結果が生じたことが必要です。

準危険運転致死傷罪は、アルコール・薬物の影響による場合の他に、「病気」の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある場合についても定めています。

2種類の準危険運転行為の内容とは?

準危険運転行為2種類
1 準酩酊危険運転 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、死傷の結果を生じさせた場合(3条1項)
2 病気危険運転 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者(3条2項)

準危険運転(病気危険運転)の「病気」とは?

政令で、統合失調症、低血糖症、そう鬱病、てんかん、再発性の失神、睡眠障害が定められています(自動車運転処罰法律施行令第3条)。

なお自分が病気の影響で正常な運転に支障が生じる「おそれ」がある状態だとの認識は必要です。

この点、てんかんによる意識障害で車両を暴走させて被害者5名を死傷した事故で、この認識の有無が争点となった事案があります。

裁判所は、被告人が過去に4回の発作を起こしていたこと、被告人が精神科医師であり、てんかんの知識は一般人よりも豊富であったことなどから、この認識があったと認め、懲役5年としました(※)。

東京高裁平成30年2月22日判決

準危険運転致死傷罪の罰則と公訴時効期間とは?

準危険運転致死傷罪の罰則も、結果が傷害か死亡かによって異なり、さらに無免許運転の場合には、より刑が重くなります。

各犯罪の公訴時効期間も、法定刑によって異なるので、便宜上、ここで一緒に説明しておきます。

準危険運転致死傷罪の罰則 公訴時効期間
人を負傷させた者
(準危険運転致傷罪)
12年以下の懲役(3条1項) 7年
(刑訴法250条2項4号)
無免許運転のときは 15年以下の懲役(6条2項) 10年
(刑訴法250条2項3号)
人を死亡させた者
(準危険運転致死罪)
15年以下の懲役(3条2項) 10年
(刑訴法250条1項3号)
無免許運転のときは 6月以上の有期懲役(6条2項) 20年
(刑訴法250条1項2号)

まとめ

この記事では、準危険運転致死傷罪を解説しました。

準危険運転致死傷罪に問われれば、重く処罰されます。交通事故を起こしてしまったときは、できるだけ早く、弁護士に相談されることをお勧めします。

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