後遺障害とは?交通事故の後遺症が残った場合に知っておきたいこと
交通事故で後遺障害認定受けるために必要なことをご存知ですか?後遺障害とは何か、後遺障害として認定されるメリットやデメ…[続きを読む]
後遺障害4級の労働能力喪失率は、1級~3級の100%に次いで重い92%です。実際、4級の後遺障害では、社会生活を1人でこなすのは、相当に困難だと言えるでしょう。
だからこそ適切に対応して損害賠償請求手続きをする必要があります。
では、被害者は、後遺障害4級の認定を受けるために何をすべきでしょうか?慰謝料増額は可能なのでしょうか?後遺障害認定のポイントや慰謝料について知ることで、認められる等級や支払われる慰謝料が違ってくる可能性があります。
そこで今回は、後遺障害4級が認定されるためのポイントや、認定された場合の損害賠償金額の相場、慰謝料の増額のためにすべきことについてご説明します。
目次
後遺障害4級の代表的症状と後遺障害慰謝料相場は以下の通りです。
慰謝料の計算方法には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士・裁判基準の3つがあり、自賠責基準から順に高額になっていきます。
等級 | 症状 |
---|---|
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
4級2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの |
4級4号 | 1上肢をひじ関節以上で失ったもの |
4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
4級の後遺障害慰謝料の相場 | ||
---|---|---|
自賠責基準 | 任意保険基準(※) | 弁護士・裁判基準 |
737万円程度 | 800万円程度 | 1670万円程度 |
表をご覧いただくとお分かりの通り、自賠責基準と弁護士・裁判基準とでは、その差が2倍以上、1000万円近くも開いています。
自賠責基準とは、自賠責保険が公的に定めた必要最低限の補償であり、任意保険基準とは任意保険会社が独自に定めた損害賠償時に使用する基準です。
弁護士・裁判基準とは、実際の裁判でも使用される最終的に賠償額決定の権限を有する裁判所が用いている基準です。
このように説明するとお分かりいただけると思いますが、後遺障害慰謝料は、弁護士・裁判基準を用いて計算すべきなのです。
弁護士・裁判基準を用いずに計算することは、自ら適切な慰謝料を諦めていることに他なりません。
※任意保険基準については、一般に公開されていないので、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載しています。
次に、後遺障害が認定された場合に請求できる大切な損害賠償の項目の一つである逸失利益の計算方法を解説します。
後遺障害逸失利益は、後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入です。後遺障害によって働く力が失われたと考え、その失われた割合が後遺障害の程度に応じて基準化されています(労働能力喪失率)。
逸失利益は、以下の計算式で求めることができます。
「被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」は、国土交通省の以下のサイトで調べることができます。
参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」
実際にこの計算式を使って次の事例の逸失利益を計算してみましょう。
冒頭でも触れた通り、後遺障害4級の労働能力喪失率は、92%です。
事例
被害者の年齢・性別:28歳女性
被害者の年収:370万円
被害者の後遺障害等級:4級6号
370万円(年収)×92%(労働能力喪失率)×22.808(年齢28歳のライプニッツ係数※)=77,638,432円
※ 2020年3月31日以前に発生した事故の場合は、ライプニッツ係数を17.017で計算
計算式に当てはめると、この被害者は、逸失利益として約7700万円を受け取ることができることになります。
適正な慰謝料を受け取るためには、適正な等級の認定を受けることが必須です。
後遺障害の等級認定の請求手続きには、事前認定と被害者請求があります。事前認定は相手の保険会社に請求手をお任せしてしまう方法です。被害者請求は、被害者自身が行う分、手続きが煩雑ですが、自分で提出するので内容についても精査することができます。
こういった理由から後遺障害等級認定の請求は、被害者請求がお勧めです。
また、後遺障害診断書も大切です。後遺障害の審査は、すべて書面審査であり後遺障害診断書はその判断に大きな影響を与えるものです。
被害者請求についても後遺障害診断書についても弁護士に依頼すれば、適切なアドバイスを受けることができます。
交通事故に詳しい弁護士に依頼すれば、希望する等級の認定に大きく近づくことが期待できます。
同じ4級という等級で、慰謝料はどこまで認められるのでしょうか?その疑問に答えるために最初に裁判例を2つばかり取り上げたいと思います。
裁判例1
仙台地裁平成19年2月9日判決
被害者は主婦(事故時34歳)。胸骨骨折、心房破裂、小腸破裂、右腎臓損傷、胸椎骨折などの重傷を負いました。
自賠責保険では、心房縫合、小腸縫合、腸閉塞などによる胸腹部臓器の著しい機能障害(5級3号)、胸椎骨折による背骨の変形(11級7号)から併合4級に認定されました。
被害者には、喉から下腹部にかけて瘢痕(傷跡)が残っていましたが、自賠責保険では、後遺障害等級における醜状障害の対象ではないとされました。しかし、
このように指摘して、入通院慰謝料440万円に加えて、後遺障害慰謝料1800万円を認めました。
参考文献:自保ジャーナル1740号19頁
裁判例2
福岡高裁那覇支部平成23年11月8日判決
被害者は女子医学生(症状固定時34歳)。
被害者が右足で原付バイクを支えながら停車して右折待機をしていたところ、後方から来た加害者の大型バイクが被害者の右足に衝突した事故です。
右下腿切断、右肩関節機能障害などで自賠責保険により併合4級に認定されました。
裁判所は、
などの諸事情を考慮して、入通院慰謝料410万円に加え、後遺障害慰謝料2000万円を認めました。
参考文献:自保ジャーナル1884号75頁
以上2つの裁判例は、弁護士・裁判基準の慰謝料相場である1670万円を超えています。相場を超える慰謝料を裁判所が認めているのです。
本来、後遺障害慰謝料は、事故態様などを基に判断されるので、支払われる額が事故により異なります。
裁判所が認める後遺障害慰謝料は、被害者の性別、年齢、職業や生活状況など後遺障害の内容を含めあらゆる事情を勘案して判断するので、相場を超える慰謝料が認められることがあるのです。
慰謝料が増額できるか否かは、増額理由となるべき事実をすべてを漏れなくすくい上げ、主張・交渉できるかどうかにかかっています。
弁護士に相談、依頼することをお勧めする理由は他にもあります。慰謝料増額が期待できることです。
具体的には、以下3つのメリットがあるのです。
特に慰謝料を弁護士・裁判基準で交渉することは、被害者個人では難しいと言わざるを得ません。
弁護士に依頼すれば、保険会社との示談交渉で、弁護士・裁判基準を主張して慰謝料の増額を期待することができます。
そのためにも、後遺障害認定等級認定に強く、治療、検査の医学的知識が豊富な弁護士を選ぶことこそが大切です。
自分の事故のケースで、後遺障害4級の慰謝料相場を調べたい方は、入通院慰謝料の自動計算ツールをご利用ください。
通院期間や後遺障害等級を入れるだけで、より詳しく自分の慰謝料相場を弁護士基準で計算することができます。
今回は、後遺障害4級の認定を受けられるケースと4級認定を確実に受ける方法、4級の場合に請求できる損害賠償金額などについて解説しました。
後遺障害4級が認定されるのは、相当重度な症状が残っているケースで、労働能力喪失率は92%にも及びます。
4級の認定を受けた場合になるべく高額な賠償金を請求するためには、交通事故に強い弁護士に示談交渉手続きを依頼することが重要です。また、後遺障害認定を被害者請求でする場合も、交通事故の専門的な知識を持った弁護士のアドバイスが生きることでしょう。