後遺障害診断書の書き方と自覚症状の伝え方・もらい方のポイントを解説
後遺障害診断書は、後遺障害等級認定において、判断の中心となる重要な資料です。本記事では後遺障害診断書の書き方、作成の…[続きを読む]
後遺障害等級6級の労働能力喪失率は67%であり、社会的な影響も大きく、公正な補償を受けるためには適切な等級の認定が不可欠です。
等級が異なる状況において、たとえば両耳の聴力に問題がある場合でも、6級と7級とでは慰謝料においても100万円程度の差が出ることがあります。
では、正当な補償や賠償を受けるためにはどのように行動すべきでしょうか?適切な賠償額を確保するためのポイントや、慰謝料の増額について考えることはできるのでしょうか?
そこで、今回は自賠責保険の後遺障害6級に適切に認定されるための要点や、示談金や慰謝料の一般的な賠償金金額相場、過去の高額な裁判例、慰謝料を増額させるための具体的な手段について詳しく説明いたします。
目次
後遺障害6級が認められる主な症状と後遺障害慰謝料や賠償額の相場は、以下の通りです。
慰謝料の相場には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士・裁判基準の3つの基準があります。自賠責基準から順に任意保険基準、弁護士・裁判基準と高額になっていきます。
等級 | 症状 |
---|---|
6級1号 | 両眼の視力が0.1以下になったもの |
6級2号 | 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの |
6級3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
6級4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの |
6級5号 | 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
6級8号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの |
6級の後遺障害慰謝料の相場 | ||
---|---|---|
自賠責基準 | 任意保険基準(※) | 弁護士・裁判基準 |
512万円程度 | 600万円 | 1180万円程度 |
表をご覧いただくとお分かりいただける通り、自賠責基準と弁護士・裁判基準との後遺障害慰謝料とでは、2倍以上の差があります。
自賠責基準とは、人身事故での最低限の補償額を定めただけのものであり、任意保険基準とは、任意保険会社が独自に設定した賠償額の基準です。
弁護士・裁判基準は、裁判例を基に設けられた裁判でも用いられる基準であり、最終的な賠償額の決定権限を持つ裁判所が使用する唯一の正当な基準です。
弁護士・裁判基準こそが、本来受け取るべき慰謝料の相場となるべきなのです。
次に、後遺障害慰謝料と同様に後遺障害が認定された場合に認められる損害賠償の項目である後遺障害逸失利益について解説します。
※任意保険基準については、一般に公開されておりません。そのため、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載しています。
後遺障害逸失利益は、後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入です。
逸失利益は、下記の計算式で求めることができます。
「労働能力喪失率」や「被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」は、国土交通省のサイトで調べることができます。
参考外部サイト:国土交通省「労働能力喪失率」「就労可能年数とライプニッツ係数表」
そこで以下のケースで逸失利益を計算してみましょう。
後遺障害6級の労働能力喪失率は、67%です。
事例
被害者の年齢・性別:30歳男性
被害者の年収:450万円
被害者の後遺障害等級:6級2号
450万円(年収)×67%(労働能力喪失率)× 22.167(年齢30歳のライプニッツ係数)=66,833,505円
2020年3月31日以前に発生した事故の場合は、ライプニッツ係数を16.711で計算
この事例では、被害者は約6700万円の逸失利益を受け取ることができます。
ここまで、賠償金を中心に解説してきましたが、適正な等級の認定を受けることができなければ、賠償額も変わってしまいます。
そこで、6級の認定を受けるために被害者ができることを簡単に解説します。
社会生活に及ぼす影響が大きい6級の後遺障害認定の請求手続きには、手続きは面倒な反面、被害者自身で請求の中身をコントロールできる被害者請求で行うことをお勧めします。
請求の方法としては、他に手続きを相手側の保険会社に任せてしまう事前認定がありますが、どのような資料を提出しているのか被害者には窺い知ることができないからです。
また、後遺障害の認定手続きが書面審査であることから、後遺障害診断書の作成も重要となってきます。
弁護士に依頼すれば、被害者請求、後遺障害診断書この2つについて適切なアドバイスをもらうことができます。特に後遺障害診断書については、作成についてのアドバイスから作成後のチェックまでしてもらうことが可能です。
このような方法を採りながら、適正な認定の可能性を上げていきましょう。
後遺障害6級で慰謝料がどこまで認められるかを検証するために、高額裁判例を2つご紹介します。
裁判例1
仙台地裁平成20年3月26日判決
被害者は非常勤嘱託職員の男性(症状固定時55歳)。
自転車で交差点を走行中に、加害者の四輪車と衝突、転倒し、頭蓋骨骨折、脳挫傷、鎖骨骨折などの傷害を負いました。
自賠責保険では、高次脳機能障害、左鎖骨変形障害、左耳難聴で併合6級に認定されました。
被害者は、中学卒業以来、長年務めた勤務先では工場長まで務め、働きながら高校を卒業し、各種資格も取得し、勤務態度、勤務意欲、学習意欲も良好な人物でした。
早期退職し、マンション管理士の資格をとるべく勉強中で、資格取得後の本格的な再就職までのつなぎとして非常勤嘱託の勤務をしていました。また、被害者は、長年、単身赴任であったため、退職後の家族らとの円満な同居生活を楽しみにしていました。
しかし、交通事故による高次脳機能障害で本格的な再就職は困難となりました。
また人格の変化などから家族との会話も成り立たないことがあり、家族に暴言を言ったり、暴力を振るったりするようになってしまい、退職時に描いていた希望はかなえられなくなってしまいました。
裁判所は、これらの事実を指摘して、入通院慰謝料150万円に加えて、後遺障害慰謝料本人分1300万円、妻分100万円を認めました。
参考文献:自保ジャーナル1734号6頁
裁判例2
神戸地裁平成25年12月12日判決
被害者は男性会社員(症状固定時46歳)。
右足関節機能障害等で、自賠責保険により併合6級に認定されました。
これらの諸事情を考慮して、入通院慰謝料400万円に加えて、後遺障害慰謝料1300万円を認めました。
参考文献:交通事故民事裁判例集47巻6号1540頁
※MRSAとは抗生物質の効きにくい黄色ブドウ球菌です。
弁護士・裁判基準の後遺障害慰謝料は、1180万円です。この2つの裁判例は、弁護士・裁判基準の相場である1180万円を超えて高額であるといえます。
もともと慰謝料は、交通事故の態様などを基に個別に判断されるために、その額は事故ごとに異なります。
特に裁判では、被害者の年齢、性別、職業などを念頭に入れて慰謝料を判断するので、相場を超えて認められる場合もあり得ます。
慰謝料増額のカギは、増額理由となる事実を漏れなく拾い上げて主張・交渉できるのかということです。
適正な等級の認定以外にも弁護士に依頼すべき理由があります。慰謝料増額が期待できるからです。
以下の3つがポイントです。
慰謝料については、被害者自身が弁護士・裁判基準で主張しても、保険会社が首肯するかは疑問です。
ここに、交通事故に詳しい弁護士依頼するメリットがあるのです。交通事故に詳しい弁護士であれば、弁護士・裁判基準での交渉を代行してくれます。
その他、異議申し立てや裁判についても慰謝料増額のためには、知識と経験が豊富で、交通事故の被害者救済に熱意のある弁護士を選ぶことこそが重要です。
自分の交通事故のケースで、後遺障害6級の慰謝料相場を調べたい方もいらっしゃることでしょう。
下記の慰謝料自動計算機で、必要なデータを入力すると、より詳しくご自身の慰謝料相場を弁護士基準で計算することができます。
後遺障害6級の場合、後遺障害慰謝料の相場も自賠責基準で512万円、弁護士・裁判基準で1180万円です。
後遺障害等級6級が認定されたら、「後遺症部分の損害」を相手方に請求できます。
後遺障害等級6級の自賠責基準で512万円であり、被害者請求により先取りできます。 そして、不足している損害額を相手方に請求することになります。
今回は、後遺障害認定6級が認定されるケースと、認定を受けるための方法、認定された場合の高額の賠償金の金額などについて解説しました。
後遺障害6級は、労働能力喪失率は67%にもなっており、社会生活への影響は甚大です。
より確実な等級認定のためには、交通事故に詳しい弁護士相談しながら被害者請求でするとよいでしょう。また、慰謝料を弁護士・裁判基準で交渉するためにも、弁護士に依頼するのが最短のルートです。