後遺障害9級が認定される症状と請求できる損害賠償金について

松葉杖とスーツ

交通事故に遭うと、その後入通院などによって治療を重ねても、症状が完治せずに残ってしまうことがあります。このようにして後遺障害が残った場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求することができます。

中でも後遺障害の「9級」が認定されるケースは、どのような症状なのか、また認定された場合にどのくらいの損害賠償請求ができるのでしょう。

今回は、後遺障害9級が認定される症状と、その場合に請求できる損害賠償金の相場などについて解説します。

1. 後遺障害9級が認定される場合

後遺障害9級が認定される場合とは、どのような症状が残ったケースなのでしょうか?

・単独の症状で認定される場合と、
・複数の症状がある場合に併合して認定される場合

それぞれについて、後遺障害認定のルールが異なるので、以下では順番にご説明します。

1-1. 単独の症状で認定されるケース

まずは、単独の症状で後遺障害9級が認定されるケースを見てみましょう。

後遺障害9級の認定が受けられる症状の種類は17個もあり、他の等級と比べてもかなり多いです。具体的には、以下の表の通りです。

症状自賠責保険(共済)金額後遺障害慰謝料(弁護士・裁判基準)労働能力喪失率
1号:両眼の視力が0.6以下になったもの616万円690万円35%
2号:1眼の視力が0.06以下になったもの
3号:両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4号:両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5号:鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
6号:咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7号:両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
8号:1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
9号:1耳の聴力を全く失ったもの
10号:神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11号:胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12号:1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
13号:1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
14号:1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
15号:1足の足指の全部の用を廃したもの
16号:外貌に相当程度の醜状を残すもの
17号:生殖器に著しい障害を残すもの

以下では、それぞれの症状について、さらに詳しく見てみましょう。

9級1号(両目の視力低下)

9級1号は、交通事故によって、視力が0.6以下になった場合です。また1号の場合は「両目」が低下した場合となります。

交通事故で視力低下は意外と思うかもしれませんが、頭部を強打した際に視力に影響を及ぼす場合があります。

この場合の視力は、裸眼視力ではなく、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正した場合の矯正視力のことです。

9級2号(片目の視力低下)

9級2号は、片眼の視力が0.06以下になった場合です。

この場合も1号と同様、眼鏡やコンタクトレンズを使っても0.06以下になったことが必要となります。

9級3号(視神経・視覚異常・半盲症・視野狭窄)

9級3号は、少し聞き慣れない言葉が多いかもしれませんが、両目が半盲症(はんもうしょう)、また視野狭窄(しやきょうさく)や視野変状が起こったりした場合に認定されます。

簡単に言うと、おもに「視野の広がり」についての症状となります。

半盲症とは、視野の右半分か左半分が見えなくなってしまう症状のことです。

そして視野狭窄(しやきょうさく)とは、視野が狭くなってしまう症状のことです。

視野が全体的に狭くなる場合には「求心狭窄(きゅうしんきょうさく)」といい、不規則な形で視野が狭まる場合には「不規則狭窄」といいます。

視野変状は、視界において、部分的に見えないところがあるケースなどです。実際の視覚としては、見ている景色の中に穴が空いて、その部分が見えないような感覚になります。

このような視覚異常は、交通事故の影響によって視神経に障害が残った場合などに起こります。

9級4号(両眼のまぶた欠損)

9級4号は、両眼のまぶたに著しい欠損が残ってしまった場合です。

具体的には、まぶたを閉じたときに、眼球を覆っている角膜を完全に覆うことができない状態になると、認定されます。

普通にまぶたを閉じたときに、黒目や白目を覆い隠せない状態の場合ですがこのような障害が残った場合、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)も認められることがあります。その場合には、高い方の等級で認定され、7級12号となります。

9級5号(嗅覚障害)

9級5号は、鼻を欠損して、その機能に著しい障害が残ってしまったケースです。

具体的には、交通事故によって鼻の軟骨を全部が大部分失われてしまい、嗅覚や呼吸機能に大きな障害が出ている場合です。

この場合も、顔の美醜に影響が起こるので外貌醜状に認定される可能性があり、その場合には高い方の等級である7級12号に認定されます。

9級6号(口の後遺症)

9級6号は、咀嚼及び言語の機能に障害が残った場合です。

交通事故の影響で、咀嚼機能(ものを噛んで飲み込む機能)や言語機能に後遺症が残った場合です。

固形物がほとんど食べられないようなケースでは、より高位の等級が認定されますが、9級の場合には、ご飯などの普通の食事はできます。

ただし、ビーナッツなどの固めの食材を食べることが難しい状態です。

また、それと同時に、言葉を話す言語機能に障害が残ったことも必要です。

具体的には、「口唇音」、「歯舌音」、「口蓋音」、「咽頭音」という4種類の基本的な発音方法のうち、1種類ができなくなったら9級6号に認定されます。

9級7・8・9号(聴力障害)

9級7号、8号、9号は、どれも聴力に関する後遺障害です。

7号は、両耳の聴力において、純音聴力レベル(ピー、という単純な音を聞き取れる能力)が

・60dB以上または50dB以上で、かつ明瞭度(言葉を言葉として聴き取れる度合い)が最高70%以下

の場合です。

9級8号は、片方の耳(悪い方の耳)の聴力が、触れるほどの近くでないと大声でも聞こえない程度になった場合で、もう片方の耳(良い方の耳)でも1m以上離れたら、会話も聞き分けられなくなった状態です。

検査基準としては、純音聴力レベルにおいて

  • 聴力がひどく悪い方の耳:80dB以上
  • それよりは良い方の耳:50dB以上

の場合です。

9級9号は、片耳の聴力が完全に失われた場合であり、純音聴力レベルで言うと、

・90dB以上の場合

に認定されます。

9級10号(脳・脊髄・てんかん等)

9級10号は、神経系統の機能や精神に障害が残って、することができる仕事が相当程度制限される場合です。具体的には、以下のような場合に認定を受けられます。

高次脳機能障害一般就労を維持できるので、一応健常者と同じ仕事ができるけれども、問題解決能力などに障害が残っており、作業効率や作業持続力などに問題があったり、他人のアドバイスが必要になったりする場合。
脊髄障害脊髄損傷のため、1下肢(片脚や片腕)に軽度の単麻痺が残っている場合。文字が書けなかったり、歩行障害が出たりすることなどがあります。
てんかん数か月に1回以上の発作が、転倒する発作等以外で起こる場合、または服薬の継続によっててんかん発作が抑制されている場合
精神障害うつ病・統合失調症などの精神的な障害によって労働能力が失われた場合。客観的な証明が難しくなるケースが多いです。
頭痛交通事故後に、頭蓋骨に残った傷や血管圧迫などのさまざまな原因によって、習慣的な頭痛が起こる場合

9級11号(内蔵機能)

9級11号は、胸腹部の内蔵機能に障害が残り、できる労働が相当程度制限される場合です。
呼吸器、循環器、食道、胃、小腸・大腸、肝臓、すい臓、泌尿器など多岐にわたり、それぞれ認定される条件は異なります。

ただし9級11号の後遺障害の症状は、検査結果によって明らかに証明することができるので、比較的認定を受けやすいといえます

9級12号・13号(手の指)

9級12号は、

・片手の親指1本か
・親指以外の2本の指を失った場合

に認定されます。

9級13号は

・片手の親指を含む2本の指か、
・親指をのぞく3本の指の機能

が失われた場合です。具体的には神経麻痺の影響で指の感覚が無い場合や痛感がなくなった場合なども含まれます。

9級14号・15号(足の指の切断や機能)

9級14号は、

・片足の親指を含む2本の指を失った場合

です。この場合、指は根元から切断されている必要があります。

また9級15号は、

・片足の指の機能が失われたケース

です。

9級16号(外貌醜状・顔に傷跡・線状痕)

9級16号は、外貌(容貌)に相当程度の醜状(しゅうじょう)が残った場合です。

外貌とは、手足の部分をのぞいて、人の身体の中で露出している部分のことです。具体的には、顔や頭、首などを指します。

9級16号の「相当程度」という場合の判定基準としては、顔に5cm以上の線状の傷が、明らかに確認できるほど深く残ったことが必要です。

Q.女の子の顔の傷のほうが高額になる?

昔は、女性だけに認められる後遺障害でしたが、男女によって差を設けることは不合理であるとの指摘により、現在は改正されて男女に平等に適用されます。

9級17号

9級17号は生殖器に著しい障害が残った場合についてです。

男性の場合、ペニスの大部分の欠損や勃起障害など生殖機能を残った場合に認定されます。

2. 併合認定されるケース

次に、併合認定によって後遺障害9級が認定されるケースをご紹介します。

複数の症状が組み合わさって、等級認定されることが併合認定ですが、その具体的なルールは、以下の通りです。

  • 第5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害の等級を3級繰り上げる
  • 第8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害の等級を2級繰り上げる
  • 第13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害の等級を1級繰り上げる
  • その他の場合、等級の繰り上がりは起こらず、最も重い等級が併合等級となる

たとえば、後遺障害10級と11級の症状がある場合には、重い方の等級である10級が1級繰り上がって9級として併合認定されます。
併合認定によって、後遺障害9級が認定された例には、以下のようなものがあります。

3. 後遺障害9級で請求できる損害賠償金

次に、後遺障害9級が認定されたらいくらくらいの損害賠償金が請求出来るのかをご説明します。

2-1. 自賠責の限度額は616万円まで

交通事故で損害を受けたら、相手の自賠責保険から保険金の支払を受けることができます。

自賠責保険から受けられる保険金の金額には限度額があり、後遺障害の等級によって異なります。

後遺障害9級の場合の自賠責保険の限度額は、616万円です。

そこで、この金額を超える損害が発生した場合には、相手の任意保険会社に支払い請求をする必要があります。

2-2. 後遺障害慰謝料は245万円か、それとも690万円か

後遺障害慰謝料の金額を計算する場合には、

・自賠責基準
・任意保険基準
・弁護士・裁判基準

という3つの基準があり、

自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準の順番で高くなっていきます。

自賠責基準とは、自賠責保険で賠償金を計算する場合の基準であり、任意保険基準とは任意保険会社が示談交渉する場合に使う基準、弁護士・裁判基準は、弁護士が示談交渉をしたり裁判で損害賠償金額を決定したりする場合に使う基準です。

それぞれの基準によって後遺障害9級の後遺障害慰謝料を計算すると、以下のとおりの金額となります。

等級弁護士・裁判基準任意保険基準自賠責基準
9級690万円  300万円  245万円

このように、弁護士・裁判基準で後遺障害慰謝料を計算すると、他の計算基準による場合に比べて倍以上の金額になります。

2-3. 逸失利益

交通事故によって後遺障害が残ったら、逸失利益の支払いを請求することができます。

逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって事故前と同じようには働けなくなるので、本来得られた収入が得られなくなった分の利益のことです。

後遺障害が残ると、等級に応じて労働能力喪失率が計算されるので、その割合に応じて逸失利益を計算します。

後遺障害9級の場合の労働能力喪失率は、35%です。後遺障害の中ではさほど高くはない数字とも思えますが、3割以上もの労働能力が無くなるのですから、影響は大きいです。実際に逸失利益を計算すると、数千万円もの金額になることもあります。

後遺障害9級の場合の逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

「事故前の基礎収入×0.35×ライプニッツ係数」

ライプニッツ係数とは、就労可能年数に対応する中間利息を控除するための特殊な係数のことです。

専業主婦などの家事従事者は、実際にお金を稼いでいたわけではありませんが、家事労働には経済的な価値があると認められるので、逸失利益を請求することができます。この場合の基礎収入は、賃金センサスの平均賃金を利用して計算します。

3. 後遺障害9級の損害賠償金の金額

後遺障害9級の損害賠償金の金額は、全体としていくらくらいになるのかをご紹介します。

交通事故に遭ったら、後遺障害慰謝料や逸失利益の他、入通院にかかった治療費や付添看護費、入院雑費や通院交通費、入通院慰謝料や休業損害などの損害賠償請求も可能です。

これらを全部足した金額が、請求できる損害賠償金額となります。

後遺障害9級の場合、逸失利益の有無や金額にもよりますが、事故前に高額な収入を得ていたり、年齢が若かったりする場合には、3000万円以上の損害賠償金を請求出来るケースもあります。

逸失利益がなかったりあまりなかったりする場合でも、1000万円近くの損害賠償請求が可能になることはあります。

4. 後遺障害9級で高額な賠償金を受け取る方法

後遺障害9級が認定された場合、なるべく多額の損害賠償金を請求する方法を簡単にご紹介します。

被害者請求をとる

まずは、後遺障害認定請求手続で、被害者請求の手続をとることが大切です。

後遺障害の認定を加害者の代理人である相手方保険会社に任せる加害者請求をすると、実際にどのような手続が行われているかわからず、適切に後遺障害の等級認定が受けられなくなるおそれがあります。

詳しい専門医に相談

また、後遺障害の診断を、その症状に詳しい専門医にしてもらうことも重要です。

後遺障害の症状はさまざまであり、認定を受けるために必要な検査などもあります。

後遺障害診断書は、後遺障害認定手続きにおいて極めて重要な意味合いを持ちます。後遺障害の症状を相談したり、適切に必要なことを聞き取ってもらう必要などもあります。

交通事故にに強い弁護士に相談

また、交通事故に強い弁護士に後遺障害認定手続をしてもらうことも大切です。

後遺障害等級認定の際には、さまざまな症状が問題になりますし、それを証明するための検査方法や認定基準などもあります。

そこで、手続を依頼する弁護士にもある程度の医学的知識を持っていてもらう必要がありますし、手続に慣れた弁護士に依頼する方が有利です。

よって、後遺障害の等級認定を適切にすすめるために、良い専門医と弁護士を探すことが重要です。

さらに、相手方任意保険会社との示談交渉を弁護士に依頼することも重要です。

交通事故の損害賠償金の基準は、上記で説明したとおり3種類がありますが、弁護士・裁判基準で計算すると他の基準より明らかに高額になるので、損害賠償請求する場合には、弁護士・裁判基準で計算する必要があります。

弁護士に示談交渉を依頼すると、当然弁護士・裁判基準が適用されますが、被害者が自分で示談交渉をすると、任意保険基準で計算されてしまいます。

このことからも、交通事故の示談交渉の手続は、交通事故に強い専門の弁護士を探して依頼することが大切です。

まとめ

今回は、後遺障害9級に認定される症状や認定された場合の損害賠償金について解説しました。

後遺障害9級が認定される症状の種類はかなり多く、併合認定が行われることもよくあります。かなり複雑な考え方なので、適切に後遺障害等級認定を受けるためには、弁護士の助けを借りることが大切です。

後遺障害9級に認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益をはじめとした損害賠償金の請求ができますが、なるべく高額な金額の請求をするためには、交通事故に強い専門の弁護士に後遺障害等級認定請求の手続や相手方との示談交渉を依頼することが大切です。

今回の記事を参考にして、後遺障害9級に相当する症状が残った場合には、適切に等級認定を受けて、正当な金額の補償を受けられるようにしましょう。

交通事故に強い弁護士が無料相談いたします

保険会社任せの示談で後悔しないために、今すぐ弁護士にご相談ください。治療に専念、慰謝料を増額できる可能性があります。
交通事故に関する専門知識をもつ弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。

  1. 保険会社から治療費の打ち切りを迫られている
  2. 過失割合に納得ができない
  3. 適正な等級認定のため後遺障害申請サポートしてほしい
  4. 保険会社との示談交渉が面倒、保険会社の態度が悪い
  5. 保険会社が提示した慰謝料が適正な金額かわからない

交通事故に強い弁護士に相談することで、これらの書類の準備や交渉の負担がほとんどなくなります!弁護士に任せて頂ければ、被害者の方は安心して治療に専念できます。
1つでも当てはまる方は1人で悩まず、今すぐ弁護士に相談しましょう。

弁護士法人 ベリーベスト法律事務所

土日の電話受付対応、弁護士報酬は「後払い」、初回相談料と着手金は完全無料となっております。

土日の電話受付対応、弁護士報酬は「後払い」、初回相談料と着手金は完全無料となっております。

全国対応の「交通事故専門チーム」によるサポートが特徴の法律事務所です。まずは、交通事故専門チームによる「慰謝料無料診断」をご利用下さい。
お電話でのお問い合わせはこちら
050-3759-2099
[電話受付]平日 9:30~21:00 土日 9:30~18:00
電話する 弁護士詳細情報はこちら
都道府県から交通事故に強い弁護士を探す
この記事が役に立ったらシェアしてください!